町田の独り言 キャンピングカーのガイド本を編集する町田が語るよもやま話

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>TOMYさん、よう…
町田 03/17 14:39
町田さんこんにちは。…
デルタリンク宮城 鈴木 03/17 11:32
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町田 03/14 00:28
町田さんご無事で何よ…
s-_-s 03/13 22:55
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町田 03/12 17:43
町田さん。ご無事でし…
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夜明けのR&B

 静まり返った会社の部屋で、独り70年代SOULミュージックを聴きつつ、原稿を書いている。

ホワッツ・ゴーイング・オン01

 明け方の5時。
 『キャンピングカー スーパーガイド2009』 の締め切りまであとわずか。
 もうじき会社の裏を走る私鉄の始発が動き出す。

 眠気を追いやるために、身体はカフェイン漬け。
 30分おきにインスタントコーヒーを飲んでいるし、 「眠気ざまし」 の内服液も必需品。
 いろいろ試してみたが、ゼリア新薬工業というところの 「ポンツシン内服液」 というのが一番効くようだ。  

 「使用上の注意」 というところに、 「してはいけないこと」 というのが書いてあって、 「コーヒーやお茶などのカフェインを含有する飲料と同時に服用しないでください」 と書いてあるのだけれど、全然気づかずに、コーヒーを飲む合間にガンガン飲んでいた。
 
 併用するとどうなるのだろう?
 胃でも悪くなるのだろうか。

 今のところなんともない。
 鈍感な身体にできていることを、親か神に、感謝しなければならない。

 それにしても、結局、また同じ音楽を聞いてしまう。

 スピナーズの 『アイル・ビー・アラウンド』 。
 メインイングリーンディエントの 『独りにしないで』 。
 ステイプルシンガーズの 『レッツ・ドゥ・イット・アゲイン』 。
 テッド・テイラーの 『オンリー・ザ・ロンリー・ノウ』
 チャイライツの 『オー・ガール』 。
 スモーキー・ロビンソンの 『ベイビー・カム・クローズ』 ……

 演歌も、Jポップも、ロックも、ジャズもさんざん聞いてきたけれど、最後はこのへんにたどり着く。

 とうとう、音楽に関してはな~んにも進歩しなかった。

 なんのことはない。
 20代の初めにのめり込んだ音に、結局、一生支配されてしまったわけだ。

 「70年代ソウル」 …というと、マービン・ゲイがいて、スティービー・ワンダーがいて、スタイリスティックスがいて、アル・グリーンがいて…と、なんだか黒人音楽の豊饒期という感じがするけれど、考えてみると、ごく短い間でしかなかった。

 たぶん、その黄金期は '72年から '74年までの2年間である。

グラディス・ナイト01
 
 この時期、黒人音楽が、突然閃光を放った。
 それまでのポップでダンサナブルな音楽からするりと身をかわし、艶やかな陰影と先鋭的な批評性を携えた、大人が観賞するに堪えうる音楽に生まれ変わった。

 自分はディスコ小僧だったから、60年代のジェームス・ブラウン、サム&デイブ、ウィルソン・ピケット、テンプテーションズ、フォートップス・シュープリームスの方に身体がなじんでいる。

 しかし、そのあたりの曲は、聞けばなつかしく身体がスィングするけれど、しょせんはナツメロ。

 だけど70年代ソウルは、心がスィングする。

 そして、それを聞いていると、この都会の片隅のどこかには、いまだ自分が経験したこともないような贅沢な恋が待っていて、そのまま死んでもかまわないようなディープな快楽が口を開いていて、そこにハマったらもう後に戻れなくなるに違いない。
 …という感じの胸騒ぎが、胸をかきむしるのだ。

セーヌ左岸の恋01

 この時代のR&Bだけに存在する不思議なゴージャスさ。
 泡がツブ立つシャンパンのような華やかさと、チョコレートのようなビターな甘さ。
 それでいて、鋭利な刃物で身を切られるような冷たさ。
 人なつっこい優しさの奥に秘められた不良のふてぶてしさ。

 そういった感触が、「70年代SOUL」 という音楽からこぼれ出てくる。

 この時代の音は、ざわめくパーティ会場で聞いても似合うし、朝の冷気の中で、独りで聞くのにも合う。

街01

 そういう音楽性というのはどこから来たのだろう?
 …と、いまだに不思議に思う。

 70年代当初のアメリカ社会では、あいかわらず黒人たちは差別の中であえいでいたが、彼らは、少しずつ身につけた経済力を背景に、政治的な差別とは関係ないところで、自分たちの楽しみ方を見出しつつあった。

 彼らは、白人のモテ方とは違うモテ方を知ったし、白人の快楽とは違う快楽を知った。
 それまで、白人のように振る舞わないとバカにされると怯えていた彼らは、自分たちの縮れた髪に抱いていた劣等感をかなぐり捨て、わざと縮れ髪を頭上高く盛り上げるアフロヘアにして、路上を闊歩した。

 そんな彼らが見たアメリカの風景は、同じ景色を見ても、彼らのオヤジやオフクロが見ていた風景とは違って見えたはずだ。

 「70年代SOULミュージック」 は、たぶんそういう景色を見た人間たちがつくり出した音楽なのだ。

 だから、音そのものに、 「未知」 だった世界が開けてきたときの新鮮なときめきがある。

 20代のはじめに、この音に接した自分もまた、70年代ソウルミュージックのなかに、 「新鮮なときめき」 があることを知った。

 そして、50代もそろそろ終わろうとしているこの年になっても、この音を聞くと 「新鮮なときめき」 が襲ってくる。
 涙が流れるほど、暴力的に。

アメリカのハンバーガー屋

 70年代SOULミュージックは、衰退するのも早かった。
 70年代も半ば以降になると、ディスコミュージックの全盛期がやってくる。

 それは健康的で楽しい音楽だったが、それだけだった。

 ディスコビートが 「世界言語」 化して、民族や文化を超えて普遍化したときに、何かが終わった。
 それは、白人社会の快楽とは違った 「快楽」 を見出した黒人の若者たちが、そのうち、その刺激にも慣れ、自分たちの見出した新しい世界に無頓着になったのと同じタイミングだった。

 SOULミュージックは、またただのダンス音楽に戻った。

 だから私は、突然雲間が切れて、地上にまばゆい光が差し込んだような 「70年代初期のSOUL」 を聞き続ける。
 それは、あの時代だけに生まれた奇跡のように思える。


音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 05:00 | コメント(5)| トラックバック(0)

クエスト雅

 昨年開かれた 「RV世界会議」 で、日本を代表するバンコンとして写真で紹介され、世界のRV関係者の注目を集めたクエスト。
 障子と畳という伝統的な日本文化のエッセンスを採り入れた室内造形に、欧米風のRVがスタンダードだと信じていた人たちは大いに好奇心を刺激されたという。

 そのクエストのベース車をスーパーロングからコンパクトな標準ボディに替えたのが、この 「クエスト雅 (みやび) 」  (バンテック新潟)

クエスト雅外装01

 全長・全幅が短くなった分、狭い市街地や温泉街を走り抜けるときもストレスが溜まらなくなった。
 にもかかわらず、和室空間の雰囲気はスーパーロングモデルとまったく変わらず。優雅な温泉旅館に泊まってのんびりする時の、あの落ち着き感が踏襲されている。

クエスト雅内装01大

 そのような、日本旅館でくつろぐ時の快適性を実現するために、FFヒーターから電子レンジ、インバーター、クローゼット、大型換気扇、傘立てに至るまで、すべてが標準装備されている。装備面でも手抜かりのないクルマだ。

クエスト雅内装04

 スーパーロングモデルと違うところは、セカンドシートが廃されて、代わりに機能的なキッチンスペースが設けられたこと。それによって、和室との一体感も強まり、コンセプトもより明瞭になった。
 和室部分からもアクセスできるミラー付きクローゼットがあるため、室内で着替えることも可能。掘りごたつが使える床下収納空間も広々している。

クエスト雅02

 畳と障子で構成される和室風キャンピングカーというのは、過去にも何度か試されたことがあったが、そのほとんどは実験の域を出なかった。
 しかしクエストシリーズは、まれにみる完成度を高め、見事に商品としての自立性を発揮している。
 その理由は、緻密な縦横比の計算に基づいたバランス感覚の良さと、作り込みの緻密さがものをいっているからだ。
 世界に誇れる日本のキャンピングカーが誕生したと思う。

クエスト雅照明

 お値段は。4,935,000円から

※ 『 キャンピングカー スーパーガイド 2009 』 より一部を抜粋。

 
campingcar | 投稿者 町田編集長 10:48 | コメント(2)| トラックバック(0)

手作り用キット

 ハンドメイドキャンピングカーに取り組む人が、また増えているという。
 今のように、キャンピングカービルダーがこれほど多くなかった時代。すなわち1970年代頃は、日本のキャンピングカーは、ほとんどが手作りキャンピングカーだった。

 その後、80年代から90年代にかけて、日本のビルダー数が増えていくに従って、質の高い量産キャンピングカーが安く出回るようになり、ハンドメイドキャンピングカーは一時の勢いを失っていく。

 しかし、ここのところ長引く不況の影響を受けてか、キャンピングカーを安く手に入れるために、再び自分でキャンピングカーを作ろうという人が増える傾向にあるのだそうだ。

 そんなタイミングを見計らってか、大手キャンピングカービルダーのバンテックから、200系ハイエース・スーパーロング用の手作りキャンピングカーキット 「D-BOX」  が発売された。

バンテックキット001

 なにしろ、国産ビルダーとしては、生産規模においても商品クオリティにおいても日本でトップと謳われるバンテック。
 そこが開発したキットには、どういう特徴があるのだろう。
 また、その狙いは何なのか?
 バンテックの開発部に所属する中島宇一郎さんに、話を聞いてみた。

バンテック中島氏01
 ▲ 中島宇一郎さん

【町田】  キットを手掛けるようになったのは、どういう理由からですか?
【中島】  ひとつには、キャンピングカーの普及を目指して…ということが大きいですね。
 いろいろなお客様の話を聞いていると、
 「キャンピングカーが欲しいけれど、まだお金の余裕がないから買えない」
 とか、
 「もう少しお金が貯まってから…」
 と話される方が実に多いんですね。
 そういう方々の要望に応えて、少しでも買いやすい価格帯のクルマを提供したいという気持ちは当然あるのですが、価格を抑えるにも限度があるんですね。
 特に、工賃の部分はこれが目一杯。
 …だったら、お客様に工賃をご負担いただいて、こちらは材料だけを提供するような形をとれば、お安く提供できるのかなと…」

バンテックキット002

【町田】  バンテックさんは、こういうキットの販売は初めて?
【中島】  いえいえ、日本にキャンピングカーが普及し始めた頃、うちでは2000キット以上のキットを販売しているんですよ。
 今回も、そのときの経験を生かして商品開発していますね。

【町田】  実際に、完成車を買うのと、このキットを買って自分で組み立てるのでは、どのくらいの差が出るのですか?

【中島】  たとえば、最近私たちが出した新車で 「フレア」 というバンコンがありますが、その車両本体価格が378万円。
 それを実際に取得するとなると、登録費が別にかかるので、約400万円ぐらいになります。
 ところが、このキットを買っていただいて、ご自分でキャンピングカーを組み立てられる場合は、ざっというと、80万円くらい安く仕上げることができます。
 内訳で言いますと、まずベース車 (ハイエースバン) の料金が値引きを入れて、だいたい200~210万円。
 そして、キットの料金が59万8,000円。
 それに梱包料、送料が多少それに加わります。
 それでも、完成車に比べて、大雑把に80万円程度の差はつきますね。
 少し贅沢したいということで、バッテリー、ヒーターといった充実装備を加味していっても、お客様が負担する額は300万円ぐらい…といったところでしょうか。
 もしベース車を新車で買った場合は、それに取得税や重量税がかかりますから、登録費用が20万円ぐらい加算されますけれど、それでもおよそ320万円。
 登録費用も入れて目一杯高くなった状態でも、300万円台の前半で堂々たるキャンピングカーを所有できます。

バンテックキット003

【町田】 しかし、価格が安いのはいいけれど、作るのが面倒くさいというお客さんもいるでしょうね。
【中島】 そういう方には、弊社で組み立て済みの完成車を販売することもできます。
 しかし、補償に関しては、あくまでもキットとしての補償しかできませんけれど…。
 でも、せっかくですから、“作る喜び” というのも味わってみることをお勧めします。
 というのは、このキットはもうプラモデルの感覚で組み立てられるんですよ。
 工具も、基本的にはマイナスのドライバーが一本あれば十分。
 家具がすべて 「組み立て済み」 になっているんですね。
 天井の吊り棚から、ベッド兼用のシート、テーブル、サイドカウンター、ベッド用マットなど、すべて完成されたユニットになっているんです。

バンテックキット005

【町田】  吊り棚なんかは、どうやって付けるのですか?
【中島】  吊り棚などにもブラケットが付いているので、窓枠のところとルーフのフランジのところに引っかけるだけなんです。
 だから、ハンドメイドとはいいつつも、お客様はただ 「設置するだけ」 でいいんですね。
 しかも、全工程が写真付きの組み立て説明書によって、つぶさに分かるようになっていますし、8ナンバー登録するための改造申請書も付いています。
【町田】  至れり尽くせりですね。

【中島】  床には、すべて家具を固定するためのマーキングがなされていて、それに応じて穴も空いていますから、家具位置を決めるも簡単です。
 その穴に専用のナットを埋めてもらって、それに対して家具側のピンを差し込む。
 そして、家具を固定してピンを差し込んだら、マイナスドライバーでキュッと締めてあげれば、めでたく完了。
 それだけで、すべての家具がしっかり固定ができるようになっています。

バンテックキット004

【町田】  実に簡単ですね。
【中島】  ええ。ただシートベルトの取り付けだけは、やはり保安基準と安全上の問題から床に止めるというわけにはいかないものですから、ボディを貫通する穴を空けていただく必要がありますね。
 その作業だけには、電動ドリルが必要となりますが、それ以外はマイナスドライバーが一本あれば問題ありません。

【町田】  そんなに簡単に組み立てられるのに、家具にはバンテックさん自慢の家具がそっくり使えるというのが魅力ですね。
【中島】  ええ。組み立てるのはお客様であっても、できあがったクルマのクオリティはバンテックの工場から出てくる完成品と変わらないということを訴えていきたいですね。

バンテックキット006

【町田】  バンテックさんには充実した品数を誇るパーツセンターさんもあるわけですから、ユーザーは手作りを楽しみながら、自分のクルマに合ったパーツ探しも楽しめるということになりますね。
 団塊の世代には手先の器用な人が多いから、彼らがリタイヤした後の趣味として、「キャンピングカー作り」 っていうのが流行るかもしれないですね。
【中島】  そうですね。自分好みのクルマに仕上げていくというのは、ハンドメイドでしか味わえませんものね。



campingcar | 投稿者 町田編集長 00:22 | コメント(0)| トラックバック(0)

バルミィ

 大森自動車のバルミィというバンコンは、日本のバンコンデザインのひとつの到達点を示すようなクルマだと思う。

バルミィ外形01

 そのインテリア造形は、一見キャンピングカーには見えない。
 どこかクルーザーか、高級ホテルの室内のような雰囲気が漂っている。

バルミィ内装01大

 特に、09年の春に発表された新型モデルは、基本レイアウトは前モデルのものをほぼ踏襲していたが、シート素材にざっくりした感触を生かした平織りを採用し、未来的なデザインの室内に、少しレトロな味わいを導入していた。
 それがちょうど、このモデルから投入されたLED照明の間接照明的な光の中で、50年代から60年代頃に作られた映画に出てくる“超モダン住宅”のインテリアのように見えた。

バルミィメイン1

 その時代の人々が考えていた近未来というのは、今の人々が心の中に描くような終末論的な彩りに染められた未来像とは異なり、明るく希望に満ちたものだった。

 当時の人々が、思い描いていた奇抜でカッコいい 「未来」 。
 それが、時間の波のくぐり抜けて、眼前に現れているのを見ると、私などの世代は若い頃に見た光景を思い出し、鼻孔いっぱいに甘酸っぱい香りが広がっていくのを感じる。

 この 「レトロ感覚」 と 「未来感覚」 が不思議に融合した不思議な味わい。
 そこに、このバルミィの独自性があると思う。

大森太朗氏01
 ▲ 大森自動車 大森太朗さん

 設計・開発を担当した宮永さんは、特にそういうことを意識したわけではないと語っていたが、 「他のバンコンにはない意匠を創案して、ブランド化を図りたい」 という思いはあったという。
 その意図はうまく実現され、バルミィというクルマをひときわ個性的な輝きで彩ることになった。

宮永氏01
 ▲ 大森自動車 宮永京介さん

 デザインの遊びが先行したバンコンのような書き方になったが、実は、かなり使い勝手を考慮した、実用性の高いクルマであることにも触れなければならない。

 このクルマの特長は、リヤシートの展開が自在なこと。
 通常は横向き3人掛けシートになっているが、上下2段の大型ベッドにもなり、すべて跳ね上げると、キッチンスペースや荷室が広がるという妙味を見せる。

バルミィ08

 マルチルームの扉などにも二つ折り扉が採用されており、開閉する時も場所を取らない。
 また、扉を二つ折りの状態で使うと、 「リビング部」 と 「寝室&キッチン」 を分ける間仕切りとしても機能するために、プライバシーの部分をさらすことなく、ゲストをリビングに招き入れることができる。

バルミィ05

 もうひとつのポイントは、運転席・助手席のシートバックを利用したリクライニングソファ。
 そのままの状態でも対面ダイネットを構成するが、マットを埋め込むだけで変形コの字ラウンジにもなり、フロアベッドにもなるという自在な組合せが可能で、リビングスペースの使い勝手を無類に向上させている。

バルミィ3

 キッチンも楕円型シンクを組み込んだ素敵なデザインでまとめられ、蓋をするとカウンターとして使える。

 このクルマにおいては、デザインの斬新さは、すべて使い勝手の合理性を追求した結果から生まれている。
 そういうバンコンが出てきたことを思うと、日本のキャンピングカーもようやく成熟期に入ってきたのかもしれないという気がする。

バルミィメイン01


 お値段は4,442,000円から。
 
campingcar | 投稿者 町田編集長 05:38 | コメント(0)| トラックバック(0)

ガマの油に出る車

 役所広司さんが自ら主演して、監督も務める 『ガマの油』 が、今年の6月6日に公開されるという。
 すでに試写会も行なわれ、記者発表も開かれて、ホームページも立ち上がっている。

ガマの油スチール01

 で、この映画を、なんでこのブログで紹介するかというと、どうやら、これが日本では最初の、本格的なキャンピングカーを使った 「ロードムービー」 になるという話があるからだ。

 役所さんの役は、数台のパソコンを使うだけで、短期の株売買で何億円も稼ぐというデイトレーダー。
 そういう仕事を、何のためらいもなく続けていたのだが、息子 (瑛太) の交通事故をきっかけに、次第に人生観が変わっていく。
 そして、何かを求めるように、息子の友人だった若者 (澤屋敷純一) を相棒に伴って、放浪の旅に出る。
  
 その放浪の旅に使われるクルマがキャンピングカー。
 …といっても、ただのキャンピングカーではない。

 ウィネベーゴF17

ガマの油のF17_1

 1970年に日本にやってきた米国ウィネベーゴ社のクラスAモーターホームなのだ。
 もちろん、本国においても、もう現役で走っている車両はないだろうと言われるほどの希少価値のクルマ。今年の幕張キャンピングカーショーで、ニートRVのブースで展示されていたから、来場した人の中には記憶にとどめている人もいるかもしれない。

 で、なんで、このクルマが映画に?

 …というわけだが、どうやらこの映画の構想を練った役所さんの頭の中には、最初から 「キャンピングカーを使った旅」 というイメージがあったらしい。

 そこで、どんなキャンピングカーがいいのか。
 役所さんは、いろいろとキャンピングカーについて調べたのかもしれない。

 デイトレーダーの仕事をしながら旅を続けるという企画なので、まずテーブルの上にパソコンを何台か置いても狭苦しくない車両が求められた。
 当然、ゆったりしたアメリカンモーターホームなどが念頭に浮かんだのではないだろうか。

 いろいろ探しているうちに、役所さんが訪れたのは、千葉県のニートRVの展示場。
 ところが、どうもイメージにぴったり来るモーターホームがない。

 で、ふと展示場を見回したときに、目に入ったのが、この40年も前に造られたF17であったそうな。

F17外装02

 「あ、あれがいい。あれを貸してくれませんか?」
 と頼み込んだ役所さんに、困ってしまったのはニートRVのスタッフたち。

 「いや、あれは…本来なら博物館にでも保存するべき貴重な車両で、われわれも “腫れ物に触る” ように大切に扱っているクルマで…」
 と最初は断ったそうなのだが、役所さんはこのクルマを見て、ますます構想が豊かに広がってしまったらしい。

 そして、ついに貸し出しが決定。
 さらに、ニートRVの人々を困らせたのは、車内で撮影するとき、カメラの引きが足りないから、バスルームのところを撤去していいか?
 という相談を持ちかけられたことだそうだ。

F17内装01

 ええっ !?
 アメリカでも “天然記念物” 的な扱いの受けるくらいのクルマなのに!

 …と、最初はそれも断ったそうだが、芸術を創ろうとする人間の意志は固く、 「現状復帰」 を条件に、車内の改造も許可したという。

ガマの油のF17_2

 この映画の試写会を見たニートRVの猪俣慶喜常務はいう。

 「キャンピングカーをテレビや映画に使いたいという申込みは今までもよくあったのですが、たいていは、ほんの1カットか2カット出る程度。
 しかし、今回は本当に “クルマが主人公” 。
 映画の3分の1は、このモーターホームが登場します」

 古いモーターホームとはいえ、それによって、キャンピングカーを知らない人たちにとっても、 「モーターホームの旅」 がどんなものであるかを、よく伝える映画になっているらしい。

 「あれは映画としても素晴らしい! きっとヒット間違いなしですよ」
 と、猪俣常務。

ガマの油のF17_3

 映画の公式サイト (http://gama-movie.com/) を見ると動画が張られており、その最初のシーンには、確かに、役所広司さんの後ろにウィネベーゴF17が道ばたにしっかりと停まっているのが見える。
 そして、動画の最後には、役所さんが、F17の室内でパソコンを叩いているシーンも登場する。

 関連記事 「ウィネベーゴF17」


 
音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 21:59 | コメント(8)| トラックバック(2)

粋なRVとは

 最近の世の中で分かりづらくなっている概念のひとつに、「粋」 がある。

粋 (いき)

 三省堂の 『大辞林』 によると、粋とは、 「気性、態度、身なりがあか抜けてしていて、さっぱりとしており、自然な色気が感じられること」 とある。
 さらには、 「遊里・遊興に精通していること」 という項目も加えられているから、 「色っぽさ」  への理解が根底にある概念であることもつけ加えていいかもしれない。

 江戸文化から出てきた言葉だから、たぶん江戸町人の間で理想とされた精神構造なのだろう。
 そう思って、あらためてこの言葉を噛みしめてみると、イケメンの歌舞伎役者などが、切れ長の目を光らせて、キセルの灰をさらりと盆に落としたりする情景が浮かんだりする。

 ところが、この 「粋」 が、現代社会ではなかなか通じない。

 言葉としては残っていても、その言葉が成立した時代とはだいぶ違ったニュアンスのものになっているように思う。
 「あか抜けた」 とか 「さっぱりした」 といった情感は、今でもその言葉の中から嗅ぐことはできるが、 『大辞林』 が触れているような 「自然な色気」 といったものは、かなり後退している。

 その理由は、日本の現代社会においては、 「あか抜けてさっぱりしている」 感覚と、 「自然な色気」 というものが両立していないからだ。

 「さっぱり」 路線を目指したものは、いつのまにか 「爽やか」 、「清潔」 、「健康」 といった文脈にからめ取られ、冒険のない退屈な生き方を奨励する思想に行き着いてしまう。
 逆に 「色気」 路線をたどると、卑猥でエゲツない風俗文化に埋没し、ずぶずぶと退廃の極みに沈んでいく。

 この2極分解が起こったあたりから、たぶん、日本人は 「粋」 という感覚を失ってきたのだろうと思う。

 ところが、アメリカ人などは、案外この 「粋」 の感覚をつかんでいるのではないか、という人がいる。
 キャンピングカービルダー 「カトーモーター」 の社長、加藤次己智さんだ。

 加藤さんがアメリカで暮らしていた頃の体験を聞かせてくれたことがある。

カトーモーター加藤氏(車内)
 ▲ カトーモーター 加藤次己智さん

 「アメリカ人の間では、男女を問わず、最高の誉め言葉として通用するのは “セクシー” という言葉なんですよ。You are sexy …というと、“あなたは本当に素晴らしい魅力がある”という意味なんです」

 つまり、加藤さんは、アメリカ人が使う 「セクシー」 という言葉の響きに、日本の 「粋」 に近いニュアンスを嗅いだらしいのだ。

 彼らは 「セクシーだ」 と誉められると、男なら 「ハンサム」 、女なら 「ビューティフル」 などと言われるよりも率直に喜ぶという。

 「ハンサム」 といえば、向こうでは、外見の良さに頭の良さが加味された程度の言葉でしかない。
 同じように 「ビューティフル」 というのも、外形的な美しさを表明するに過ぎない。
 しかし、 「セクシー」 という言葉には、人の心をときめかせ、辺り一面にさざ波を広げていくような力があるのだそうだ。

 もちろんそこには、性的な情感を喚起するという意味も含まれるが、それ以上に、 「洗練された」 とか 「あか抜けた」 という意味があって、そこにこの言葉としての価値が生まれているという。

 ところが、日本では、男が女に 「セクシーだね」 というと、 「やらせろよ」 という表現になり、女が男に 「セクシーよ」 といえば、 「お相手するからバッグを買ってね」 という意味になってしまう。

 要するに、日本では「粋」という言葉もあいまいならば、「セクシー」 という感覚も誤解されて伝わっていると、加藤さんはいう。

 加藤さんが、なぜそのような話を私に始めたかというと、要するに、キャンピングカーに 「粋」 の精神を取り込む方法はあるのか。そしてまた、それをユーザーに理解してもらう方法があるのか…という問題を抱えていたからだ。

カトーモーター加藤氏

 以前から加藤さんは、カトーモーターで造っているキャンピングカーを、メディアの人たちが 「高級」 、「上質」 などという言葉で飾ってくれることを、うれしいと思う反面、どこか違うように感じていた。

 「高級」 や 「上質」 では、何かが欠けている。
 少なくとも、それらの言葉には、わくわく感、ぞくぞく感、うっとり感が含まれていない。
 自社製品の中に、 「わくわく感」 やら 「うっとり感」 を追求し、少しはそれを実現してきたように思っている加藤さんは、そのことをうまく伝える言葉が見つからず、広告のキャッチ考えるときなども、いつも考えあぐねていた。

カトーモーターオークサイドロイヤル01大

 かろうじてイメージの中にあったのは、 「色気」 という言葉。
 しかし、その言葉をストレートに使うと、日本ではどこか下品な響きが漂ってしまう。
 そんなとき出会った言葉が、 「粋」 であり、アメリカ人たちが使う 「セクシー」 であったという。

 こうして、加藤さんは、 「粋」 について、古典落語なども研究しながら、さらにその意味を調べていくようになった。

 分かってきたのは、粋というのは見た感じのことだけを言うのではなく、人の態度や意志としても存在するということだった。

 つまり、 「粋」 の反対が 「野暮」 だとしたら、加藤さんは、少なくとも野暮なクルマは造りたくないし、野暮な宣伝はしたくない、と思うようになった。

 どういうクルマが野暮かというと、 「価格が安い」 ことだけが取り柄となるような、造り手の志が感じられないようなクルマ。
 ブームとなったレイアウトだけを採り入れて、ブームが去れば絶版にしてしまうような節操のないクルマ。
 そういうクルマは野暮なので、自分では造りたくないという。

 また、宣伝の仕方においても、一般的に普及している技術を、ことさら 「うちの専売特許」 だと誇張するような野暮な宣伝もしたくないとも。
 技術というものは、製品のクオリティを支える “黒子” であり、本来ならば、表舞台には立たないものだ、というのが彼の持論だ。

 もちろん、カトーモーターにも、他社に先駆けて力を入れて開発してきた技術があり、声を大にしてその効力を訴えたいというものがある。
 しかし、そのような技術を宣伝するとしたら、それは 「さりげなく、さっぱりと」 行うことがあか抜けているし、洒落ているのではなかろうか…

 加藤さんはそういうセンスを大事にしたいというのだが、そのセンスをどうお客さんに伝えればいいのか。なかなか、その方法が見つからないという。

オークサイドロイヤルテーブル

 確かに、 「粋」 という感覚的なものを、キャンピングカー造りの中に生かすのはとても難しいことだし、それを言葉で伝えることは、さらに難しい。

 しかし、加藤さんは、とても “良い問題” に直面しているように思った。
 たぶん、日本にキャンピングカーを普及させるという課題の中で、いま一番問われているところがそこの部分なのだ。

 つまり、 「粋」 という言葉に代表されるような感覚的で抽象的な概念を、日本のビルダーも、またメディアの方も掘り下げることなく、今日まで来てしまったのだ。

カトーモーター車内メイン01

 私が思うに、カトーモーターさんのキャンピングカーは、そうとう昔から 「粋」 という基準を確立していた。
 しかし、私も含め、キャンピングカージャーナリズムはそれを表現する言葉を持たなかった。

 同社のキャンピングカーは、常に精緻をきわめた木工家具の出来映えを特徴としていたので、私なども記事を書くときは、長い間 「精度の高い木工家具が創り出す贅沢な空間」 などと、通りいっぺんの言葉で飾っていた。

オークサイドロイヤル001

 しかし、 「粋」 という観点から見てくると、また違った相が現れてくる。

 カトーモーターのクルマには、目立たないところにも、しっかりとしたこだわりが貫かれ、こだわりの蓄積が内装全体としてまとまったときには他車には追従できないような、華が生まれ、洒落が匂い、色気が漂ってくる。

 人は、まったく同じ物を見せられたとしても、言葉によって説明が加えられた物と、そうでない物では見え方が違ってくることがある。
 スポットライトの当て方で、舞台に立つ役者の表情が変わるように。

 たとえば、同社の造り出すクルマを 「粋」 という光の中で見てみると、ベッドを支えるポールを埋めるために設けられた木枠などが、突然、機能を超えたアートとして立ち上がってくるのが分かる。
 断熱効果と密閉性を得るために設けられた窓の木枠なども、それが外の風景を絵画に見立てたときの額縁として見えるようになる。

 言葉の力はバカにできない。

 加藤さんは、いまキャンピングカーというものに異なる角度からスポットライトを当て、それによって、キャンピングカーを語る新しい言葉を開拓しようとしているように思う。

カトーモーター002

コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 00:44 | コメント(0)| トラックバック(0)

ダブスターの物語

 キャンピングカーの商品開発や広告展開の 「ブランド化」 、つまり 「物語性」 の付与が始まっていると前回書いたが、そのひとつの例として、デルタリンクさんの手掛けた 「ダブスター」 というキャンピングカーがある。

dabster外形001

 ハイエースのロングバン・ワイドボディを使い、お洒落なシートやアーバンデザインの家具を投入した “遊び心” に満ちたバンコンである。
 
 ちょっと車高を落としたローダウン仕様。
 デイトナのアルミホイール。
 その風情には、どこかストリート系のファッションにも通じるカスタムカーのテイストがにじみ出る。

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 運転席周りにも、凝ったデザインが施されている。
 シートは、スポーティな印象をかもし出すレザーとパンチングレザーを組み合わせたダブルステッチ&ハードシングルステッチ仕上げ。

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 さらには、 「DVDヘッド」 という見た目のデザイン性と実用性を追求したオリジナルヘッドレストが装着され、ノーマル車との違いを歴然と主張する。

 DVDとは、 「DELTA VAN DESIGN = デルタバンデザイン」 の意味。
 デルタリンクのオリジナル性を主張する新しい 「バンデザイン」 を謳ったものだ。

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 このバンコンが、なぜ 「物語性」 を秘めた 「ブランド」 として機能するのか。

 そこには、このクルマの企画を練った山田秀明社長の、ブランド構築に対する並々ならぬ決意と情熱が注ぎ込まれているからだ。

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 山田さんは、商品がブランドとして立ち上がるためには、もちろんイメージ戦略が重要であることもしっかり認識している。
 しかし、それだけでなく、ブランドとして機能するためには、商品そのものがしっかりした目的を持ち、その目的に応じた実用性、堅牢性、信頼性を確保することが先決であることも知っている。

 ダブスターが秘めた実用性、堅牢性、信頼性とは何なのか。

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 一見、このクルマはカスタムの流れを汲んだ、ストリートユースを目的としたシティカーのように見える。 
 そういうクルマが、今の若者の嗜好を満たし、キャンピングカーとは違った分野で支持を集めているということも、山田さんはマーケティング調査によって把握している。

 しかし、キャンピングカービルダー&ディーラーとして、商品開発に取り組んできた山田さんにとって、外せないものがあった。

 それは、 「遊ぶ」 「泊まる」 「積む」 というキャンピングカーとしての基本的な機能。
 それがなければ、どんなに若者が憧れるカッコいいバンをリリースしても、自分にとっては意味がないという決意がある。

 つまり、ダブスターというクルマは、山田社長自身がそのクルマを使うことで獲得される、大きな 「夢」 を盛り込んだバンコンなのだ。

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 夢とは何か。

 「僕が学生時代からヨットが好きで、それが縁となってこのキャンピングカーの世界に入ってことは、知っている人も多いかもしれません。
 でもね、本当にやりたかったのはサーフィンなの。
 若い頃、湘南の海に通って、ずっと波乗りをやっていたんですよ。
 しかし、当時はサーフィンブームで人口も多かったし、良い波が来たら、パドルのうまい人がみな先に行って、その波を取ってしまう。
 僕のような駆け出しの若者は、なかなか波が取れないわけ。
 そんな悔しい思いが、ヨットの方に向かわせたけれど、今でもやりたいのはサーフィン」
 と語る山田さん。

千葉の海サーフィン

 ずばり、ダブスターというクルマは、彼がやりたかったサーフィンを実現するときのイメージをベースに造られたバンコンなのだ。

 「このクルマができる前には、それをサーフィンの基地とするために、新しいサーフボードも作っていたんですよ。
 千葉に新しいデルタとしての拠点を作ったのも、あそこならサーフィンのメッカである九十九里に近いという計算もあった」

 山田さんの趣味は、サーフィンだけとは限らない。
 スノーボード。
 そして、バイク。
 そういう遊びのギアを搭載して、 「アウトドアライフを自由に楽しむ」 というイメージが、開発の最初の段階から存在した。

 だから、一見シティ派風に見えるダブスターのインテリアには、実はハードな使用に耐えられるさまざまな工夫が凝らされている。

 フロアには、サーフボード、ジェットスキー、バイクなどを搭載することを前提に、耐候性・耐磨耗性を備えた重歩行用のクッションフロアが使用され、カーペットには、防水効果が高く保温性、断熱性にも優れたアルセポリを裏地に使ったものが採用されている。

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 家具は、傷に強いメラミンを全面的に採用し、モールは、衝撃に強いエボキシ樹脂の削り出し。
 しかし、その出来映えは、新たに塗装したかように自然な仕上がりを見せて、得もいわれぬ高級感を漂わせている。

 目に見えないところに、そっと隠された実用性と堅牢性。

 この都会派的な装いに満ちたお洒落なバンは、ハードなアウトドアユースに耐えられる実力を内側に秘めているのである。

デルタリンク山田氏01

 「スポーツギアを搭載することを前提としたトランポは、みな機能をむき出しにした “素朴さ” を売りにしているようなところがありますよね。
 でも、僕はそれがいやだったんですよ。
 街を走るときは、やはりそれなりにソフィストケイトされた華やかさを発揮したいし、彼女とデートするときの “恋愛空間” としての夢は維持しておきたい」

 そういうデザインコンセプトを持ったバンコンが、すなわち 「デルタバンデザイン」 。 

dabster_in_01

 40歳代の後半を迎えようとしている山田さん。
 しかし、若者たちに混じってサーフィンやスノボーを楽しむことに、彼はまったくためらいを持たない。
 そのためにキャンピングカーの世界に接しているという自負もある。

 開発者の夢を存分に託された商品というのは、放っておいても艶 (つや) がこぼれ出る。
 そこにオーラが生まれ、見る人や使う人に感動を与えることも、山田さんは見抜いている。
 そして、それが、ブランド化には不可欠の 「物語」 によって生まれることを、誰よりも、山田さん自身がよく知っている。

 「ダブスター」 とは、華やかな街の夜景を堪能し、そして海や山のナチュラルな素顔にも接したいという、山田秀明さんの欲張った “生きざま” を投影したひとつの 「物語」 なのだ。

ダブスター看板01

campingcar | 投稿者 町田編集長 01:21 | コメント(0)| トラックバック(0)

ブランドとは物語

 キャンピングカーの造り方、売り方が変わってきたという印象を持つ。
 最近のことだ。
 何がどう変わったのか?

 どこのビルダーも 「ブランド」 というものを意識するようになってきた。

 もちろん、 「ブランド」 という言葉から連想するものは人さまざまで、この言葉を口にする人たちは、それぞれ自分なりのイメージを抱いていると思うけれど、私なりに、この言葉を解釈すると、それは 「物語」 ということに尽きる。

 つまり、読者を魅了し、その世界に引きずり込み、次のページをめくる時に、未知の世界に踏み込むようなドキドキ感を与えるもの。
 そのような力を与えるものを 「物語」 と呼んでいいだろう。

 世にブランドとして認められた品々もまた、みな固有の 「物語」 を持っている。

 たとえば、ルイ・ヴィトンは、創業期はただのトランク工場に過ぎなかったが、トランクの上に布地を張るというアイデアを生み出し、さらに、創業期が馬車の時代であったことに注目して、
 「馬車の荷台に載せても壊れないバッグ」
 「濡れても平気な革製品」
 という物語を作り、それを伝説化したことによってブランド化に成功した。

 フェラーリが自動車の中のブランドとして輝き続けているのも、その背後に背負った物語の力だ。

 レースに情熱を傾けていたエンツォ・フェラーリは、サーキットで陣頭指揮を執るときは、安全なマージンを取って完走することよりも、車体が砕け散ろうが1位に向かって爆走することを常に目指し、それをイタリア人のプライドだと誇示した。

フェラーリ01
 ▲ テスタロッサ

 そのような、エンツォ・フェラーリのレースに賭ける情熱。
 「美しいものは速い」 という狂気としか思えないような信念。
 それが 「物語」 となって、フェラーリというブランドの輝きを作っているのである。

フェラーリ02 

 トヨタの送り出したプリウスというハイブリッド車がブランドになったのも、同じ原理が働いている。
 世界でも最も早くハイブリッド車の量産化に成功したトヨタは、これを徹底して 「クリーン」 「エコ」 「省エネ」 という文脈のなかで喧伝した。

 ラッキーなことに、それがハリウッドの大スターたちに注目された。

 「これからの世は、環境を大切にする意識を持たないと人気を維持できない」 と感じたスターたちは、それまで、大型リムジンで乗り付けていたようなアカデミー賞の授賞式などにも小型のプリウスで乗り付け、観客やメディアに向かって、 「自分は環境意識の高い俳優である」 というイメージを植え付けようとした。
 そういう役者の中には、レオナルド・ディカプリオ、オーランド・ブルーム、キャメロン・ディアスなどの名が含まれていたという。
 これなども、プリウスが獲得した 「物語」 の例といえるだろう。

レオナルド・ディカプリオ01
 ▲ ディカプリオ

 マーケティングの世界では、よく 「needs (ニーズ = 必要) 」 という言葉に対して、 「wants (ウォンツ = 欲求) 」 を対比させる。
 「物語」 というのは、この 「ウォンツ」 に属するものだ。

 つまり、食欲を満たすために、とりあえず街の弁当屋で買った弁当を食べるというのが 「ニーズ」 。
 それに対し、高級レストランに行って、ビルの夜景などを眺めながらワインを楽しみ、フランス料理を食べる…というのがウォンツ。

 お腹に入ってしまえば、どちらもただの “栄養素” に過ぎないが、後者には消費を楽しむ 「ストーリー」 が存在している。
 大げさにいえば、そこには 「ライフスタイル」 の創造がある。

 キャンピングカーというのは、実は最も 「物語」 を作りやすいところに位置する商品である。
 今までこの業界から、そのような 「物語性」 を打ち出した広告展開がなされてこなかったのは、製品としての成熟度…つまりは、機械的な完成度を高める途上にあったからである。

 開発技術や製作技術が躍進している間は、広告戦略やパブリシティ戦略においても、技術の向上によって達成できた部分を拡大するようなアプローチが中心となる。
 技術的な完成度が上がってこないかぎり、 「物語」 の展開などに智恵を絞る余裕は生まれないからだ。

 ところが、ここ最近のキャンピングカー業界からは、そのような技術主義から少しずつ離れ、 「ライフスタイルの提案」 や 「雰囲気づくり」 に力点を置いた商品展開や広告戦略が増えてきた。

 その傾向は、キャブコンよりバンコンに顕著だ。

 日本のキャブコンはまだ発展途上の段階にあり、技術的な完成度を高めるためには、ベース車と架装部分の連携においても、いくつか乗り越えなければならない課題を残している。
 当然、キャブコンの開発者たちは、個々の課題に取り組むことで精いっぱいとなり、その課題をクリアしていくプロセスが、広告戦略やパブリシティ展開の軸になっている。

 しかし、ベース車をさほどいじることのなバンコンの場合は、キャブコンに先駆けて、自動車部分が抱える問題点からフリーとなった。
 そのことによって、バンコンビルダーたちには、 「ブランドとして生き残るにはどうしたらいいか?」 という次なるステップを考える余裕が生まれた。

 こうして、現在、日本のバンコンビルダーの中では、かなり意図的に 「ブランド化」 を目指している会社が生まれており、そのうちの何社かは、 「物語」 の作り方に関心を示しつつある。

 ただ、CM戦略として 「物語」 を取り込もうという試みは、今に始まったことではない。
 実は、1980年代の末期、電通のスタッフたちの間で 「ストーリー・マーケティング」 という手法が編み出されたことがある。

 こういう考え方の背景には、この当時に流行ったボードリヤールなどの記号論の影響があった。
 この時代、 「商品には使用価値のほかに、記号的価値がある」 というような言説がマーケッターや広告代理店の間に大流行して、各企業のCMが一斉にイメージ広告化したことがあった。

 コップひとつ売るのにも、 「お洒落なコップは、水を飲む道具ではなく、インテリアを飾るアートだ」 といった意味付けがなされ、コップの “物語性” がむりやりに高められて、食器コーナーの棚に置かれていたコップはインテリア家具のコーナーに移ったりもした。

 しかし、このストーリー・マーケティング的な広告展開は、バブルの崩壊と同時に廃れてしまう。
 バブルが破れて、夢から醒めた人たちは、商品としての実態がないものが、どんな 「物語」 にくるまれようが、そのことの無意味さを分かってしまったからだ。

 しかし、キャンピングカーは、バブル期のストーリー・マーケティングで 「物語性」 を付与された商品群とは大いに異なる。

 その時代に 「物語」 の体裁を与えられた商品のほとんどは、実態とは縁もゆかりもない 「心地よいイメージ」 だけにくるまれた無内容なものばかりだったが、キャンピングカーには実態がある。
 
 ユーザーが、 「乗って」 「遊んで」 「泊まって」 という実体験の中で、すでにそれぞれの 「物語」 を醸成しているような商品なのだ。

 だから、キャンピングカービルダーが 「物語」 を構築するのはすごく簡単。
 すでに、ユーザーが獲得している 「世界」 に、雰囲気のよい演出や美しい映像を加味するだけで十分だからだ。
 そこに提案者のちょっとした 「哲学」 が込められていれば、もう完璧。

 たぶん、ここ1~2年の間に、キャンピングカーの商品展開や広告手法には大きな変化が訪れるはずだ。
 私はそれを興味深く観察していきたいと思っている。


コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 00:04 | コメント(2)| トラックバック(0)

父が老いた日

 父親というのは、息子に何を教えてやれるのだろう。

 よく、テレビや雑誌の有名人インタビューなど見ていると、
 「……そういう厳しさってのは、父から学びましたね」
 などと言っている人を見かけるが、ホントかな? っていう印象を持つことがある。

 父親を語るとき、とりあえずそう言っておけばカッコがつくので、ポロっと口から出ちゃったけれど、本当は、
 「……そういうだらしなさってのは、父から学びましたね」
 と思っている人だって、けっこういるに違いない。

 何が言いたいかというと、もし自分がどこかの雑誌とか新聞からインタビューを受け、
 「町田さんが、お父さまから教えられたものって何ですか?」
 などと聞かれたら、はて、…なんて答えるだろう? と思ったからだ。

 なーんにも浮かばないのだ。

 もちろん、私の親父は立派な勤め人で、世間的にも、人の尊敬だって集めるような仕事をしていたけれど、
 「親父のあの一言が、俺の人生を変えた!」
 なんていうドラマチックな思い出を、何も残してくれなかった。

 ただ、親父から学んだと思えることが、一つだけある。

 麻雀 (マージャン) だ。
 親父の趣味といえば、これしかなかった。
 
 正月などに親戚縁者の家に遊びに行ったときも、やぁやぁ、まぁまぁ、久しぶり…とかいう挨拶が終わり、お茶を一杯飲んだらマージャンが始まっていた。

麻雀01

 家にも、マージャンをやる客たちが大勢集まった。

 休日になると、親父の4畳半の仕事部屋は “雀荘 (じゃんそう) ” になり、昼間から、チー、ポン、ロン…とかいうかけ声が家中に響きわたった。

 その部屋で4卓のメンバーを集めたことがある。
 わずか4畳半に、計12人の人々がひしめき合ったわけだ。
 満員電車の中にいるような状態で、ほぼ1日過ごすのだから、ストレスだってそうとう溜まるだろうに、集まっている連中は嬉々としていた。

 そんなにマージャンって面白いのか?

 興味も出てきたし、ヒマもあったので、いつの間にか、マージャン客の後ろに座って、牌 (はい) の流れなどを観察するようになった。

 「あ、おじちゃんのところには、何も描いていない真っ白なヤツが三つも並んでいる!」
 「シー! だめだめみんなに教えちゃぁ」

 ってな、会話を客たちと交わしながら、少しずつマージャンを学んだ。

 親父は、若い頃、仲の良いポン友と組んで、街の怪しげなマージャン屋によくくり出していたらしい。

 「御一人様でも大歓迎」
 などという看板を出している雀荘には、昔は、ギャラリーを装って、仲間に 「通し」 のサインを送る人間がいたりして、そういう連中に囲まれると、ほとんど身ぐるみ剥がされてしまうこともあったという。

 ところが、こちらも2人で組むと対抗できるのだそうだ。
 相手が大きな手を仕掛けていそうなときは、自分たちも呼吸を合わせ、仲間の安い手にわざと打ち込んで、その局を流してしまう。

 そんな武勇伝を日常的に聞いているから、マージャンの裏世界の雰囲気も、子供の頃から覚えてしまう。

 ある日、徹夜マージャンの最中に、親父が具合が悪くなったことがあった。
 ゲームの途中で、 「これ以上やるのが辛い」 と言い出したから、まだ起きていた私も、心配で様子を見にいった。
 あれだけ好きな親父が中断する気になったのだから、よほど体調が悪かったのだろう。

 残された3人は困った。
 もう終電も出てしまった時間なので、帰るあてがない。

 「お前、代わりに打て」
 と、なんと親父は、中学1年生だった私を 「代打ち」 に指名したのだ。

 「いくら負けても、払うのは俺だから、好きなように打て」
 …といって、親父はさっさと寝室に入ってしまった。

 ようやく親父の仲間たちとマージャンを打てるという喜びはあったが、はて困った。
 並べることはできても、役も知らないし、点棒の計算もできない。
 第一、いくらのレートで打っていたのか、そんなことすら見当もつかない。

 残された3人は…というと、これでゲームも続行できるし、しかもカモが入ってきたので、 「チャンス!」 とばかりにニコニコしている。

 打ち始めた頃は、
 「ボク、分からないことがあったら、遠慮しないで聞いていいんだよ」
 「誰かの牌で上がったと思ったら、間違ってもいいから、堂々と言うんだよ」
 …などと、みな優しい。

 しかし、こういうときって、だいたい何も知らない方が勝ったりするものなのである。
 マージャンはツキのゲームであるが、その晩は、恐ろしいほど私はツイた。

 「あ、それ上がりです。当たり…」
 と、手を開くと、ほとんどが満貫だった。
 もちろん、高い手も安い手も分からないから、とにかく無心に上がりの形だけに持っていく。
 そういう邪気のない打ち方が幸いしたのかもしれない。

 優しかった3人は、最後の方になると、もう口すら聞いてくれなかった。

麻雀02

 そんな形で、私はマージャンにハマった。

 学生時代…それも後半の頃は、一番遊んだ時期だったと思う。
 昼は、授業をサボって学校近くの雀荘にくり出し、学生同士のマージャンを打った。

 私の通った学校には、 「全国学生麻雀大会」 などでチャンピオンになったという学生もいたりして、そういう卓で打っている連中には凄みがあった。

 雀荘でも、彼らが囲む卓の周りにだけはギャラリーが集まり、みんな固唾 (かたず) を呑んで、牌の流れを見守っている。
 シーンと静まり返った対局中に、誰かが有効牌を引いたりすると、おぉー! というギャラリーたちの声にならないため息が気配として伝わってきた。

 日頃そういう卓で打っているメンバーが1人でも入ってくると、私たちのレベルでは誰も勝てない。

 ある日、私が1人負けしていた状態を見るに見かねた、そのメンバーの1人が、
 「町田、もし字牌の孤立牌をツモってきたら、とっておけよ」
 と、目配せしたことがある。

 言われるとおり、字牌のツモ牌をとっておいたら、いつのまにか、手の内で大三元ができあがっていた。

 当時は、手積みの時代。
 詰め込みの技術を持っていた人間には、簡単にツモ牌をコントロールすることができたのだ。

 勉強もせずに、学校ではそんなことばかり繰り返していた。

 週末になると、今度は近所のポン友が誘いに来る。
 こっちは社会人マージャン。
 相手は、美容師とか旋盤工、ヤクザ。

 ヤクザといっても、昔から知っていた友だちの兄貴なので、別に怖いことはない。
 そのヤクザの家で開かれる家庭マージャンにときどき招待された。

 スナックのママさんあがりの奥さんが作ってくれた稲荷寿司などをツマミに、酒を飲みながらの “和気あいあいマージャン” がスタートする。

 しかし、さすがに家主が酔ってくると、めちゃくちゃなマージャンになった。

 「おぉっらぁ、当たるもんなら当たってみやがれぇ!」
 まるでドスでも振り回す勢いで、卓に牌を叩きつけてくる。

 そういうときは、さすがに訓練のたまものなのか、この手の人たちは相手をビビらせるのが上手い。
 眼の光り方が尋常ではなくなってくるのだ。
 その勢いに飲まれ、満貫クラスの上がりを何度も見逃したことがあった。
 
 そんなところでマージャンを打っていたから、もう親父の仲間たちと打つマージャンは気楽なものだった。

 ある日、親父と対戦していて、ふと気づいたことがある。

 たぶんチンイツ (清一色) かホンイツ (混一色) 系の手だったのだろう。
 親父は自分の手を見て、少しリーパイ (理牌) し、待ちが分かるように、待ち牌と、他の牌との間を、ちょっとだけ開けたのだ。
 他の牌から切り離されたのが2枚並んだ牌だったから、たぶんリャンメン受けだったのだろう。

 「あ、老いたな」
 と思った。
 そんなことをしなければ、待ちが分からないようになっていたのだ。

 マージャン打ちにも、盛りのときと衰運のときというのがある。
 あれだけ強かったはずの親父が、その頃から、大敗を喫することが多くなった。
 年を取って、勝負に執着する気持ちが薄れていったからだろう。

麻雀01

 私もまた、結局、息子にはマージャンしか教えてやれなかった。

 ただ、これだけは熱心に指導した。
 仕事帰りに息子を呼び出して、居酒屋などに連れていったときも、割り箸の入っていた袋の裏に、ボールペンで牌を描きながら、
 「イースーチーとか、リャンウーパーとかいうのは、いわゆる筋。だけどホントに気を付けなければならないのは、裏筋といって…」

 そんなことを、居酒屋のカウンターで教える父親というのを見たこともない店主から、
 「 (麻雀) 連盟か何かのお仕事ですか?」
 なんて聞かれたこともある。

 しかし、マージャンというのは、ちょっと間を空けてしまうと、もう勝負勘というものが失われてしまうゲームだ。
 ゲームは行えても、牌の流れが読めなくなっているのだ。

 「今、この牌は危ない!」 とか、
 「打つならこれが最後のチャンス」
 とかいったゲームの流れを読む力は、10年も遠ざかってしまうと、もう甦ることはない。

 マージャンから遠ざかって、それこそ10年後ぐらいに、昔のメンバーが集まってマージャンをやろうということになった。

 メンバーが1人足りない。
 そこで、私はまだ高校生だった自分の息子を呼び出すことにした。

 しかし、その日のマージャンは、私の1人負け。
 対戦相手の1人に役満まで振り込んでしまい、その落ち込みをカバーしようと思えば思うほどドツボにハマって、マイナス街道ひた走りとなった。

 ところが、私の負け分を、息子がしっかりカバーしていたのである。
 トータルトップにはならなかったものの、彼は乱戦を勝ち抜いて、私の負け分をフォローしつつ、さらに自分の小遣いまで稼いでいた。

 息子に借りを作ってしまった日だった。

 そのときヤツは、私のことをどう思ったか。
 きっと、
 「老いたな」
 と、心の中でつぶやいたことだろう。



コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 08:05 | コメント(4)| トラックバック(0)

レガード伝説

 もしかしたら、ロデオ以来の “伝説の名車” になるのではないか。
 そんな予感さえ抱かせるすごいクルマの登場である。

 カムロードをベースにしたキャブコンは、レイアウトも装備内容もあらかたのアイデアが出尽くした感があったが、ヨコハマモーターセールスの開発したレガードを見ると、工夫によっては、このシャシーにもまだ豊かな可能性が残されていたのだな…という気がする。

レガード外装01大
 ▲ レガード

 レガードは、居住空間の充実、収納能力の向上、走行安定性の確保などという、それぞれ対処方法の異なる課題を、すべて根底から解決してしまうという途方もないもくろみを持ったキャブコンである。

 まず、そういう発想を持つということ自体が並みのビルダーにはできない。
 ロデオなどの開発で国産キャンピングカー製作の先陣を切り、さらに官公庁や各種企業からさまざまな特装車を受注してきたヨコハマモーターセールスだからこそ、その領域に敢然と足を踏み込んでいくことができたのかもしれない。

 経験は力なり。
 老舗の底力というものを、そこから感じることができる。

レガードリビング01 
 ▲ レガードのリビング

レガードプルダウンベッド01
 ▲ プルダウンベッド

レガード・リヤ2段ベッド01
 ▲ リヤ2段ベッド

 では、居住空間の充実と、荷物などの収納容積の拡大といった相反するベクトルを、このレガードではどう調和させようとしたのか。

 室内面積を単純に追求するだけだったら、リヤオーバーハングを伸ばせばいいということになる。
 しかし、それでは後軸に荷重が集中し過ぎて、走行安定性の確保もままならず、安全性も保てない。

 そこで、ヨコハマモーターセールスの開発陣が考えたのは、ホイールベースそのもののストレッチ (延長) だった。
 そうすれば、後軸に集中する荷重を前軸に分散させることが可能となり、理想に近い重量配分が実現する。もちろん、直進安定性も格段に向上していく。

レガードシャシー02
 ▲ 治具を用いたホイールベースの延長

 ところが、問題も出てくる。
 当然、フレームやドライブシャフトなども延長されることになるので、重量増という問題を抱えることになる。

レガードシャシー01

 そこで、彼らは次の手を考えた。

 もともと、ヨコハマモーターセールスには、地面から上がってくる湿気や水はねを遮断するために、木製床面をFRP製フロアユニットでサンドイッチするという技術がある。
 このフロアユニット機構をさらに緻密化させ、あらかじめ床下収納、タイヤハウス、ステップ、シャワーパン、シートの台座まで一体成形で型取ってしまえば、起伏が多くなった分…つまりリブ構造を採った分、フロア剛性も上がり、サブフレームのコンパクト化が図れるのではないか。
 つまりは、その分、軽量化を詰めていくことが可能となるはずだ。

 …ということで、レガードでは、このフロアユニットを有効活用することによって、スチールフレームなどを削減し、軽量化を押し進めるという手法が採られることになった。

レガードフロアユニット模型01 
 ▲ FRP製フロアユニット

 しかし、レガードの凄みが光るのは、ここから先だ。
 それが、低重心設計。

 キャブコンの走行性を不安定にさせる要因のひとつに、重心高が上がりすぎるというのがある。
 居住空間を水平方向に広げるには、どうしても限度があるために、キャブコンの場合は、バンクベッド、縦長収納庫、さらにはルーフにトランクを積むなど、装備や荷物が垂直方向に積み重なっていく傾向がある。
 当然、重心高が高くなり過ぎた場合は安定性を欠き、走行中のふらつきやコーナリング時の横転なども考えられるようになる。

 ここで、PRP製フロアユニットがレガードに投入されたもうひとつの意味が浮かび上がる。
 このユニットは、低重心設計を追求するためのものでもあったのだ。
 なにしろ、これを設定することによって、室内の一般床面が、フレームの上面から63mmも低位置に設計されたというから、そのもくろみの徹底性をうかがい知ることができる。

レガード外部収納01
 ▲ 低重心設計された各収納庫

 特に収納庫は、のきなみ低重心設計の “洗礼” を受けた。
 2重底となったリヤ大型収納庫の底面などは、ダウンフレーム化することによって一般床面よりも400mm下げられ、リヤ側荷室部分の床面は250mm。ボディ左右の外部収納庫は、一般床面から375mm下げられたという。
 これらの収納スペースの低重心化は、同時に荷物の収納容積の拡大を果たすことになった。

 低重心対策は、それだけではない。
 燃料タンクやスペアタイヤの位置も下方に移設された。
 燃料タンクは標準の高さから50mm。
 スペアタイヤの搭載位置は60mm下げられたというから、ベース車そのものの改良もハンパじゃない。

 バンクを削ぎ落としたのも、軽量化と低重心化を考慮したものであるが、それ以上に、これには風の抵抗をやわらげるという狙いがある。
 ルーフの各コーナーには、R100以上の形状を持たせて、空力特性の向上を図ったというから、何から何まで徹底している。

レガード外装01
 ▲ 空力特性を追求したエアロフォルム

 このような画期的な試みが、何のために行われたのか。
 ヨコハマモーターセールス営業部の平野一幸さんは、それについて、こう語ってくれた。

ヨコハマモーターセールス平野氏01
 ▲ 平野一幸さん

 「レガードは、人間が快適に旅をするには何が必要かという原点に立ち返って開発したクルマなんです。
 たぶん、このクルマが誕生したことによって、キャンピングカーの快適さと安全に対する基準が変わると信じています。
 大きなことをいうと、これから先の社会は、 “モノ” から “ココロ” の時代へと移っていくでしょう。
 そうなると、旅というものが、今以上に人間の心を解放し、人間に豊かな人生を約束するものだという認識が高まっていくでしょう。
 その旅を、いかに快適に、安全に楽しむか。
 レガードはそれへの提言なのです」

レガード外装01

 観光庁も 「ニューツーリズム」 という、地域資源を活用して観光産業を活性化させようという新しい旅のスタイルを国民に呼びかける時代になった。
 レガードというクルマは、そういう社会が実り多きものになることを願った、ヨコハマモーターセールスとしての提案なのだという。

 平野さんは、続けて言う。

 「20世紀までは、道具を進化させれば、人間の幸せも着いてくると信じられた時代でした。
 つまり、道具そのものを複雑にして、その数を増やしていけば、それで人間も安心していられたんですね。
 しかし、その結果、人間は環境に負荷をかけ、有限な資源を無駄に使うことも覚えてしまった。
 もう、そういうプラスにプラスを重ねる思考方法そのものの限界も見えてきたように思うんですよ。
 これからの社会に大切なのは、 “引き算” の思想。
 このレガードは、ベース車のキャパシティを理解した上で、本当に大切な要素を抽出するためには“何を取り除くのか”ということを、引き算で組み立てたクルマなんです。
 …こういう装備を増やせば、さらに便利になるだろうという発想を捨てたんです。
 レガードに投入された技術は、すべてが、大切な要素を抽出するための引き算から導き出された技術です。
 重量を減らす。
 風の抵抗を減らす。
 消費エネルギーを減らす。
 不安定材料を減らす。
 事故を減らす。
 引き算によって、逆に得られる幸せというものがあるはずです。
 それを形に現したものが、このレガードです」

 キャンピングカーは人間の幸せにどう関わっていくのか。
 そういうことについての哲学を持とうとするビルダーが、少しずつだが現れてきたように思う。


campingcar | 投稿者 町田編集長 16:05 | コメント(5)| トラックバック(0)

タコスのWith

 キャンピングカー業界で、女性の店長がいる店となると、まずは増 (ます) ひろ子さんがいる 「TACOS (タコス) 」 が有名。

タコス展示場1 タコス展示場2
▲ タコス展示場

 昨年、新しい展示場を東京・武蔵村山市に構え、社長の田代民雄さんが近くの工場で車両のメンテナンスなどにいそしんでいる間、接客やマスコミへの応対、経理事務などに励んでいる。

 実は、この私もまたタコスクラブのメンバーである関係上、彼女とのつき合いは長い。
 しかし、店長となってからの取材ははじめて。
 同社の新しいオリジナル車 「With (ウィズ) 」 の取材も兼ねて、武蔵村山の展示場を訪ねてみた。

tacos増ひろ子さん01
 ▲ 増ひろ子さん

【町田】  「店長&営業部長」 という重責ですね。大変でしょうけれど、まずはおめでとうございます。
【 増 】  重責だなんて… (笑) 。やっている仕事は昔から同じですよ。
 でも、もう12年もこの仕事を続けているので、キャンピングカーの面白さ、素晴らしさをお客様に伝えること力はつきましたね。

【町田】  ご自分でキャンピングカーを使って旅に行かれることは?
【 増 】  今は残念ながら、本格的なキャンピングカーというものを持っていないんです。
 ステップワゴンに、オーニングとテーブルを取り付けて、旦那さんと一緒にクラブキャンプに行くぐらいで。
 でも、昔は 「チャンプ」 に乗っていましたから、キャンピングカーの旅の面白さというのはよく分かっているんです。
 その頃は、ゴールデンウィークを利用して、10日ほど岐阜、富山、兵庫、広島、小倉あたりまで旅して…。
 本当に楽しかったんですよ。

【町田】  そのクルマをどうして手放しちゃったんですか。
【 増 】  ほら、排ガス規制に引っかかって。
【町田】  それは残念。
【 増 】  だから、下取りのクルマが入ってくると、いつも自分が買う視線で眺めてしまうんですね。
 「あ、このクルマ、絶対自分が乗る!」 …とか (笑) 。
 でも、お客様が欲しがると、やっぱり商品ですから、潔く売らざるを得ない。
 いつもそのジレンマですね。

【町田】  どんなキャンピングカーが好みですか?
【 増 】  私、特にうるさい注文ってないんです。基本的に5mサイズのキャブコンで、個室のトイレがあればいい…という感じなんです。
 そのほかのことは、レイアウトの方に自分の身体を合わせてしまうようなところがあります。
 それよりも、クルマを気に入るということが大事で、気に入ったクルマならば、そんなに使いづらいレイアウトでない限り、私なんかは楽しく使ってしまいますね。

tacosウィズ外形01
 ▲ With (ウィズ)

【町田】  ところで、 「With (ウィズ) 」 という久々のオリジナル車が誕生しましたね。リヤに大きな開口部を持つ大型トランク付き。
 昔から有名だった 「タコス仕様」 の復活ですね。

ウィズバゲッジドア開口部

【 増 】  これはお薦めです! このサイズのキャブコンで、これだけ使い勝手のいい “マルチスペース” を持ったクルマは、そうないと思うんですよね。
 なにしろ、奥行きが1900mm、幅1100mm、高さが1900mm。
 125ccクラスのバイクなら問題なく入りますし、自転車も大丈夫。
 キャンプ道具だって、これぐらいの容量があれば、まず積めないものはない!
【町田】  だいぶトークがお上手になりましたね。

【 増 】  いえいえ… (笑) 。ただ、自分でも欲しいと思うクルマなんですよ。
 自分は個室トイレが欲しい人間なんですけど、これ、リヤのカーゴスペースが引き戸で閉まるので、ポータブルなど置けば、立派なトイレルームになるんですね。
 もちろんベッドにすれば、幅1100mm、長さ1900mmの2段ベッド。
 大柄な私でも、ゆったりと寝られますし、遊びのギアを搭載しなければ、リヤ2段ベッドのクルマともなり、トイレルーム仕様のクルマにもなる…という、まぁ、魔法のクルマ (笑) 。

ウィズリヤ収納スペース01

【町田】  「マルチに使える」 というところが、昔から評判だった 「タコス仕様」 の特徴ですものね。
【 増 】  やっぱり社長の田代の発想がすごいんですよ。特に重量物を載せるときのことを考えて、ウィンチを付けるという発想。
 そのへんは、やっぱり私などには考えつかないことですね。
【町田】  ウィンチはいくらで付くんですか?
【 増 】  オプションで、4万5,000円くらいですね。
 でも、これがあると、いろいろなスポーツギヤを載せたい人とか、ちょっと体力に自信がない女性などは、本当に助かるのではないかしら。

ウィズ外部収納電動車椅子

【町田】  価格的にも魅力的なプライスですよね。
【 増 】  やはり、500万円の前半でナンバーが付いてしまうというのは、お客様にはお買い得感があるのではないかと思うんです。
いっぱい売れるといいな (笑) 。

ウィズ・ダイネット01
 ▲ ウィズ ダイネット

【町田】  ところで、従業員から見た田代社長って、どうですか?
 いつも夜になると飲んだくれている…という印象があるんだけど。

タコス田代社長01
▲ タコス 田代民雄 社長

【 増 】  すごいタフな人ですね。実は、私もよく一緒に飲みにいくんですよ。時には旦那も交えて3人で。
 田代社長は、やっぱり若い頃からバイクやアウトドアでさんざん鍛えてきた人ですから、クルマ造りなども、いつもそれが原点になっているんですね。
 遊んできた人間は、こういうクルマの開発には強みを発揮するということが、そばで見ているとよく分かるんですよ。

【町田】  ああ…。また一緒にキャンプに行きたくなったな。
【 増 】  ええ、ぜひ!

タコス増ひろ子さんVサイン
campingcar | 投稿者 町田編集長 13:20 | コメント(0)| トラックバック(0)

フィールドライフ

 群馬県を拠点とするキャンピングカービルダーの 「フィールドライフ」 さんが、昨年の暮れに新しい工場を設立し、展示場をリニューアルした。
 同社の福島雅邦社長に、その新工場と、装いを新たにした展示場を案内してもらうことができた。

 どの企業も、生産調整を行い、設備投資も控えようとするご時世。
 フィールドライフさんの事業展開は、大胆すぎると思われるところもなきにしもあらず。

 しかし、福島社長は、 「うちが発展することを狙うというよりも、お客様に信頼できる商品とサービスを提供するための当たり前の責務」 と、こともなげに言う。
 そこに、この不況の時代ともいわれる今の情勢下で、それを乗り切ろうとする日本のキャンピングカー業界の力強くも確実な足取りを見ることができた。

 新しい事業展開に着手した福島社長に、その狙いどころと、決意のほどをうかがってみた。

フィールド福島社長01
 ▲ 福島雅邦社長

ルーツ室内=大
 ▲ フィールドライフの看板車種ルーツ・トリップ (室内)

《 充実した工場機能 》

【町田】  新しく工場を建てられた意図はどういうところにあったのでしょう。
【福島】  ひとつは、工場ともなると、やはりFRPなどを削ったりするときの粉塵をお客様に吸わせてしまったりするということも出てくるわけですね。
 社員は、集塵機の前でマスクをするなど防備をするわけですけれど、お客さんはそうでもない。
 だから、あくまでもお客様に迷惑をかけたくなかったということが一つ。
 それと、社内的にいえば、計画生産をする意味においては、工場と展示場を別にすると、工場と販売との収支をしっかり比べたりできるようになるので、目標設定などをやりやすくなるというメリットが生まれますね。

フィールドライフ工場全景01

【町田】  これだけの規模の工場ともなると、日本でも有数なものになると思うのですが、その機能と特徴などを、ちょっとご説明いただけますか?
【福島】  敷地は600坪ぐらいですが、木工家具づくりのブースから、パネルをつくるブース、さらに塗装ブース、組み立てブースなど、基本的にキャンピングカー造りの全行程をまかなえるようになっています。

フィールドライフ工場組み立てブース
 ▲ 組み立てブース。軽キャンパー用で3台収納可能
 
フィールドライフ工場木工ブース
 ▲ 木工ブース。コンピューターでデータ入力して、部材を切り取るNC旋盤が活躍

【町田】  ここで車両のメンテナンスなどもやるのですか?
【福島】  軽整備は展示場の方で行いますが、重整備の場合はこちらに持ち込むことが多いですね。
【町田】  フィールドさんの場合は、単に内装のリフォームや搭載機器のメンテだけでなく、エンジンの積み下ろしまで含む駆動部分の整備もなさいますよね。
 自社工場内でそれだけの整備を行えるキャンピングカーファクトリーというのは、まだ少ないだけに、ユーザーにとっては頼もしいショップだと思えるのですが。

【福島】  レッカー車もあるので、旅の途中に故障してしまった車両に対しても、引き取って面倒を見ることができます。
 さらに、パーツの取り付け、車検、リフォーム…。
 展示場のメンテスペースと、工場の整備機能をフル稼動させれば、まぁ、キャンピングカーに関わるお客様のご要望には、すべて対応できるはずです。

【町田】  工場の新設と同時に、展示場の方もリニューアルされましたね。
【福島】  ええ。これを機に、会社を二つに分けました。
 工場の方は、 「フィールドライフ本社工場」 。展示場は 「キャンピングカーパーク」 という名前で、会社名を 「フィールドライフ販売」 にしました。

フィールドライフ展示場01

《 ユーザーが楽しめる展示場 》

【町田】  展示規模も素晴らしいものですね。ヨーロッパとアメリカの代表的なメーカーのものを揃え、さらに各ビルダーさんの国産車の品揃えも豊富。それにオリジナルが加わって、鉄壁の布陣ですね。

フィールドライフ展示場HPより

【福島】  お客様のご要望も多様化していますからね。ヨーロッパ車としては最高峰のハイマー。アメリカ車では、ニートRVさんが扱うウィネべーゴ。
 世界の一級品を揃えたつもりなんですよ。
 これは、 「常に最高級のモーターホームに触れて刺激を受けてほしい」 という、社員の勉強も兼ねての展示という意味もあります。
 それに、国産車としては、アム・クラフト、インディアナRV、キャンピングカー広島、キャンピングワークス、セキソーボディ、バンテック、ファーストカスタム、レクビィ、ロータスRV販売…。そして当社のオリジナル。
 まぁ、日本でも人気のあるメーカーさんのものは、ほぼ揃えていると思いますね。

フィールドライフ展示場03

【町田】  これだけバラエティに富んだ車種を用意した展示場というのは、最近ではちょっと珍しいくらいですね。
 また、キャンピングカーだけでなく、移動販売車の展示がこれほど多い店というのも、他にはありません。
 それにパーツやアクセサリー関係も充実していますね。
 このような、「キャンピングカーのデパート」 みたいなショップを目指された理由はどんなところにあるのですか?

フィールドライフ展示場02

【福島】  クルマの修理やパーツの取り付けに寄られる方に、とにかく安心したいただきたいということが一つ。
 もう一つは、ここを 「くつろぎの空間」 として楽しんでいただきたいといのがあるんですよ。
 旅の途中にダンプや給水に寄ってもらう。つまり 「旅の中継ステーション」 ですね。
 それだけでなく、ここでキャンプもしてもらう。
 歩いて10分のところに温泉もありますし、食堂やコインランドリーもすぐ近くにあります。
 こういう宿泊システムというものをお客様に提供していくことも、これからはディーラーの責務になっていくのではないかと思っています。

《 団塊世代の参入はこれから 》

【町田】  来店を想定されている 「お客様像」 とはどんなものでしょう。
【福島】  やっぱり目立って増えているのは、団塊の世代あたりに位置する熟年層ですね。
 ただ、彼らが本格的にこの世界に参入してくるのは、もう少し後になるだろうと読んでいるんです。
 というのは、一昨年ぐらいに 「2007年問題」 などといわれて、団塊世代を中心としたマーケットが急激に広がるだろうという観測があったのですが、実際は、それほど力強い動きにはならなかったんですね。
 それには理由があるんです。
 彼らの定年が延長されたり、年金を支給される年齢が65歳なったりして、まだまだ 「現役」 にとどまらざるを得なくなってしまったんですね。
 彼らがこのマーケットに関わるようになるのは、来年、再来年くらいからだろうと思っています。

【町田】  最近のショーでは、新規のファミリー層などの来場も目立ってきていますし、それに団塊世代が加わるようになれば、業界としての展望も開けてきそうですね。
【福島】  逆にいうと、われわれの正念場でしょうね。
 確かに、パイは広がっているように感じますが、今度は、車両を提供しているわれわれの方が、それに合った車両開発をしてきたのか…というと、まだまだ業界としての課題はたくさん残っているように感じます。

《 重量表示はメーカーとしての責務 》

【町田】  どういうことでしょう?
【福島】  ひとつは、 「安全なクルマの提供」 ですね。
 国産車においては、今や各ビルダーさんの安全意識がものすごく高揚してきて、安心して提供できる車両が増えているのですが、まだまだ完全なものとはいえない。
 というのは、 「便利な装備」 「豊かな居住性」 を志向するばっかりに、許容荷重を見たときには、安心できないような車両もぽちぽち散見される傾向もあるからです。
 そういう車両に、もしお客様が許容荷重を超えるような装備をたくさん求められたり、また重量のかさばる荷物をたくさん収納されたりしたら、どうなるか。
 まず、タイヤに負担がかかるでしょうから、バーストなどの問題が出てくる。
 さらに、安定性が損なわれて、転倒などの危険も生じるかもしれない。

【町田】  それは、ビルダーさん方の大きな課題になりますね。
【福島】  ええ。だからうちで開発したクルマには、昨年から 「重量表示」 を明記することにしました。
 「現在このクルマの車両重量はいくらで、あとどのくらいの重量的な余裕があるか」
 そういうことを一目で分かるような表示を心がけました。
 お客様が追加装備を求められたり、たくさんの荷物を収納しようと思った場合、それがあると、自分のクルマの “限界” というものが見えてくるわけですね。
 ビルダーとしては、そういう配慮を示すことがぜひとも必要で、それが事故をなくして、安全なドライブを約束することにつながると思うのです。

【町田】  現状では、まだそれが徹底されていないと?
【福島】  それが業界としての今後の課題ですね。…本来ならば、キャンピングカーのベース車にはそれぞれ許容荷重というものが定められているわけですから、その範囲で架装していれば、足の強化なども特別に必要ないんですね。
 ところが、軸重オーバーを補正するために、強化サスを入れたりしてカバーしようとするところもあります。
 考え方はそれぞれでしょうけれど、走行安定性を増すための強化はいいとして、軸重オーバーを是正するための足回りの補強は、どこか本末転倒ではないか…と、私などは思ってしまうんですけどね。

《 ルーツに見る軽量化の技術 》

【町田】 やはり 「軽量化」 というのは、キャンピングカー開発の大きなテーマですね。フィールドさんのオリジナル車では、どのような対応をなされているんですか?

ルーツ外装01 
 ▲ ルーツ外装

【福島】  ルーツなどの場合は、…あれはマイクロバスのボディをカットして、一応 「セミ・フルコンバージョン」 ともいえる独自のスタイルを追求したクルマですが、バスボディの鉄板を切って、代わりにハイドロバックパネルに架装しただけで、相当の軽量化を達成しているんですね。
 バスとしての総重量は6トンぐらいで、軸の許容は6トンと800kgぐらいあるんですが、ルーツの場合はハイドロバックのおかげで、フル装備で燃料を満タンにしても、4トンぐらいにしかならないんです。
 つまり、約3トンの余裕がある。
 だから目一杯に装備を施しても、走りも快適だし、安定性も高い。

ルーツハイドロバック

【町田】  そのほかの軽量化には、どのような技術を投入されていますか?
【福島】  あとは…当然のことですが、家具なども、中をハニカム構造にして重量を減らしています。
 芯材も、今はアルミに替えて松材を使うようにしました。これも軽量化を狙ってのことですが、もうひとつは水に強いんですよ。
 アルミも確かに軽量化には貢献するのですが、熱伝導率も高いので、芯材として使っていると、グラスファイバーに接しているアルミ部分に結露が生じることがあるんですね。
 そういうことを解消するために、松材を使うようにしたのですが、これは本当に水に強い。
 当社では、もう3ヶ月ぐらい、松材を水に浸けて変化の様子を観察しているのですが、ほとんど水を吸っていないんです。
 そういうように、軽量化と同時に耐久性を維持するための研究も当社は重ねています。
 まぁ、ルーツの軽量化に関しては、すでにハイドロバックパネルを使用することで、相当な軽量化を達成しているわけですから、家具にはそれほど神経質にならなくてもすんでいます。

ルーツ内装01
 ▲ ルーツ内装

【町田】  なるほど。軽量化に関して、フィールドさんが相当の神経を払っていることはよく分かりました。
 タイヤの空気圧チェックなどは、ユーザーの管理する範囲でしょうけれど、許容荷重の問題は、やはりビルダーさんが取り組むべき領域でしょうから、業界としても、より安全なクルマとしての完成度を高める道を歩んでほしいですね。
【福島】  ええ。この度 「日本RV協会」 の会長にも選ばれたことだし、そのへんの課題に対しても、鋭意取り組んでいきたいと思っています。


campingcar | 投稿者 町田編集長 11:17 | コメント(0)| トラックバック(0)

大阪ショー速報

 インテックス大阪で開かれた 「大阪アウトドアフェスティバル2009」 に行ってきました。
 キャンピングカーショーとしては、幕張、名古屋と続く大都市圏の3番目のビッグイベントになったわけですが、ここでも驚いたのは入場者の多さ。
 業者さんたちは、 「こりゃ本当にキャンピングカーブームが到来したのか?」 と驚いているようです。

 しかし、 「見に来られたお客さんは多くても、買いに来られたわけではない」 と、慎重に構える業者さんもいて、思ったほど商談が進んでいるわけでもないことから、やはり長引く不況を深刻に受けとめている方もいらっしゃいました。

 それでも、会場のにぎわいに応えるように、このショーでも見学者の注目を集めるような新型車が多数デビューしました。

《 スナフキンGJ 》

スナフキンGJ01

 まずは、デルタリンクさんオリジナル車 「スナフキンGJ」 。
 GJは 「グレートジャーニー」 の略。
 基本レイアウトは、スナフキンシリーズのSWをベースとしているのですが、ボディ右側に大きく張り出した “出窓” が特徴となっています。

スナフキンGJ02

 この出窓のおかげで、1m88㎝×1m20㎝の横方向のベッドを確保することができたので、大人用の就寝スペースが増えています。
 しかも、窓側にはしっかりしたアクリル窓が装備され、断熱、結露防止が図られています。
 発売記念セールということで、FFヒーター、インバーター、バックアイカメラ、ナビゲーションが標準で、498万円というプライスが掲げられていました。

スナフキンGJ04 スナフキンGJ03

《 チッタ 》

 ロータスRVさんは、新型バンコン 「チッタ」 の投入です。
 こちらも出窓付き。
 ロータスさんは、この出窓に 「ウィンドボックス」 という名称を与えています。

チッタ03

 基本コンセプトは、 「街乗り気楽にワゴンキャンパー」 …というわけで、8人が前向きに座れるワゴン感覚を重視したレイアウトになっています。
 もちろん、対面対座にすれば、足元の広々感も十分なゆったりしたリビングが生まれます。

チッタ01
 
 フロアにはスライドレールが付いていて、セカンド&サードシートを前側に寄せて畳んでしまえば、リヤには広大なラゲージスペースが誕生。
 もちろん、付属のベッドマットを使えば、リヤ部分がハイマウントベッドに早変わり。
 ウィンドボックスのおかげで、リヤサイドにも大人が横に寝られるスペースが確保されています。

 大きな特徴としては、リヤ部の床下を加工して作られたグラスファイバー製の床下収納。スペアタイヤをその中に入れることができますが、タイヤの上にボードを被せても、まだ収納スペースが残ります。

チッタ02

《 プレシャスβ 》

 キャンピングカー広島さんのブースからは、ポップアップルーフを持ったバンコン 「プレシャス」 のニューモデルが登場しました。
 車名は 「プレシャスβ(ベータ) 」 。

プレシャスベータ01

 前モデルに対してレイアウトが大幅に変更され、リヤにはゆったりしたコの字ラウンジが設けられました。
 ここで夫婦2人がのんびりとくつろぐのもよし。
 大勢でワイワイやるのもよし。
 ベッドにすれば、1m85㎝×1m70㎝の広々ベッドが展開します。

 特徴的なのは、室内照明にはすべてLEDが採用されたこと。
 電子レンジとインバーター (1500W) が標準装備されたため、消費電力を抑えようとする意味があるのですが、間接照明としても、このLEDがいい雰囲気をかもし出しています。

プレシャスベータ03 プレシャスベータ02

《 アスカ 》

 キャンピングカーフジワラさんからは、新型ライトエースをベースにしたオリジナルキャブコンの 「アスカ」 がリリースされました。

アスカ01

 バンクを小さく絞ったすらりとしたスタイルが優美です。
 キャブコンでありながら、ファーストカーとしても使えるというのが、このライトエースをベースとしたキャブコンの特徴で、軽自動車キャンピングカーにはない居住性を確保しながら、ボンゴクラスのキャブコンよりも、さらに取り回しが良いという絶妙のポジショニングを獲得しています。

アスカ02 アスカ03

《 バルミィ 》

 地元の 「キャンピングカーフィールドオオモリ (大森自動車) 」 さんが発表したのは、同社の人気バンコン 「バルミィ」 の最新モデル。
 大胆なほどに美しいレイアウトは、もうおなじみのものですが、LED照明などを多用して、電気消費量の削減を図るとともに、照明効果の豊かさを同時に追求しています。

バルミィ01

 このモデルでは、ざっくりした天然素材の味を持つシートと木目調家具を採用して、今までの近未来的なインテリアに 「レトロ」 の味を加味しています。
 インテリアのテイストは、60年代頃の映画に出てくる “超モダン建築” 。懐かしさを伴う未来感覚が横溢していて、なかなか味があります。
 そういうところが、逆に、若い人たちから見ると、ものすごく新鮮な内装に見えるのではないでしょうか。

バルミィ02 バルミィ03

《 かるキャン 》

 参考出品として登場したのが、コイズミさんの 「かるキャン」 という軽自動車キャンパー。

かるキャン02

 軽トラックの上に、FRP製のユニットを取り付けたものですが、ボディ右サイドにスライドアウト機構を持ち、しかもルーフをはね上げると、三角屋屋根を持ったバンガロー風の居住空間が生まれるという面白い試みです。

かるキャン02 

 窓などは、まだ付いていませんでしたが、今後はよりキャンピングカーらしく仕上げていくとか。
 今後の熟成が楽しみです。

かるキャン01

campingcar | 投稿者 町田編集長 18:24 | コメント(6)| トラックバック(1)

ピーズの畑中氏

 日産車をベースにしたキャンピングカーで、その存在感を示している 「日産ピーズフィールドクラフト」 の畑中一夫常務。

ピーズ畑中氏01

 飲み友だちなのである。
 例えば、お台場のキャンピングカーショーでは、会場内で開かれる夕食会にいつも招待してもらい、夜更けまで飲み明かす。
 大阪のショーでは、行きつけの立ち飲み串揚げ屋にくり出し、安焼酎を酌み交わす。

 あごヒゲが自慢の、一見 「野人」 。
 宴の席で話す内容も、たいていヨタ話、ホラ話。

 しかし、ふと真面目な話になると、都会的な明晰さと、奥行きの深いインテリジェンスを感じさせる知的な風貌になる。
 不思議な魅力を湛えた人だ。

 この人との宴の席は、まぁ最初は、業界の動向に対する情報交換などから始まる。
 業界は、ここ数年、団塊の世代にキャンピングカーの魅力を訴求することに力を注いできた。
 しかし、畑中さんは数年前から、その次の訴求対象を模索して、市場分析を行っていた。

 「確実に若い世代の時代が来る! 今の市場調査では、キャンピングカーショーに来る若者の減少や購買欲の低下を嘆いているけれど、その理由を、彼らの所得水準の低下に求めてはならない。
 業界が、彼らにとって、魅力ある商品を創り出していないのではないか。 
 そこで、きっちりとした答を出していけば、この業界は若い世代で溢れかえる可能性がある」

 …というのが彼の持論であって、ライバル社が開発する新車を眺める視線にも、常にそういう意識を絡ませている。

 「アトランティス」 というキャブコンまで開発するようになった同社は、今や幅広い年齢層の顧客を対象とする総合的なビルダーとしての道を歩んでいる。
 しかし、畑中氏が常に考えているのは、 「今の時代が終わった後の、その次に来るもの」 。

アトランティス外装01
 ▲ アトランティス

 アンテナ感度を研ぎ澄ませて、彼は、キャンピングカー以外のカスタムカーの動向を観察する作業も怠りないし、趣味の釣りやジェットスキーなどのフィールドを観察して、アウトドア人口の動向を探ることにも気を配る。

 このような畑中氏の才覚を全面的に信頼して、彼に大きな活躍の場を保証している人物として、同社の田村幸彦社長の存在は大きい。
 田村社長は今のところ、畑中さんの前向きの提案に全面的に信頼を寄せているように思える。
 もちろん、畑中さんも、その信頼を裏切らないように、営業方針の立案においても最大限の注意を払っているように見受けられる。

 周りの状況は、決して彼らにとって甘くはない。
 トヨタハイエースをベースにしたバンコンで埋め尽くされる市場の中で、日産キャラバンを売っていくのは、ハタから見ると、まさに 「孤軍奮闘」 といった感じだ。

グルーヴィー外装01
 ▲ キャラバン・グルーヴィー

 なにしろ、開発されてからだいぶ時間が経ってしまったキャラバンに比べ、後から登場したハイエースは、顧客に与えるインパクトにおいても新鮮さを保っている。

 しかし、畑中氏は、そのへんをまったく気にしていない。
 
 「時代が変わりましたからね。僕らが若い頃は、クルマに注目する視点というのは、まずエンジン出力、ギヤ比、足回りでしたよね。
 だけど、今の人たちは、居住性、ファッション性、使い勝手を重視する。
 つまりね、かつては “付加価値” のようなものとして扱われていた領域が、今の時代では、クルマの “性能” を決める重要なファクターになってきたんですよ。
 要するに、ベース車の機械的な能力よりも、生活空間としての能力が問われる時代になっているんですね。
 そこで勝負するのが、キャンピングカービルダーの仕事だと思いません?」

 …だから、モデルチェンジのサイクルが来るごとに、ころころ変わっていくベース車に振り回されるのではなく、ビルダーとして、いかに魅力ある生活空間をデザインして、それをブランド化するが鍵となるという。

カノン内装01
 ▲ キャラバン・カノン

 …ってな話が進んでいるうちは、2人ともまだ酔いがあまり回っていない。

 が、少しいい気分になって、仕事に関わる話がメンドォーになると、次第に昔ばなしに移っていく。
 この人、キャンピングカーの仕事に関わる前は、モータースポーツの世界で生きていた人なのだ。
 日産プリンスでメカニックをやっているうちにレースの面白さに気づき、プライベートチームを組んで、富士スピードウェイにくり出していたという経歴の持ち主なのである。

 チーム名は 「ランダムカンパニー」 。
 自己主張が強い人間が集まりだったので、いつも統制はバラバラ。
 それが、チーム名の由来になったという。

 「だって、どこそこの “頭” やっていたなんていう夜走 (よばしり) が得意なヤツが平気で入ってきたりするんですよ。もうワケが分かんねぇ… (笑) 」

 そのプライベートチームで、畑中氏は、1200ccの 「110サニー」 をチューニングしてスピードを競った。

サニー1200

 ライバルは、トヨタのスターレット1200。
 同排気量同士のクルマであっても、スターレット勢からは 「TOM'S (トムス) 」 のようなトヨタの支援を受けるショップが参戦し、サニー勢は苦境に立たされる。

 TOM'S仕様のスターレットは、ほぼフルチューン。
 後にトヨタの耐久マシン (グループCカー) まで開発するようになるTOM'Sは、この頃からすでにセミワークスだった。
 にもかかわらず、好成績を収めたのはたいていサニー勢だった。

 この時代、私は畑中さんとは違った立場からレースの現場を見ていた。
 私の方は、彼とは逆に、仕事の取材を通じて 「TOM'S」 に出入りすることが多く、自然とトヨタ側を応援するようになっていた。

 だから、私が最初に買ったクルマも、スターレットST。
 (そのノーマル車に、ステッカーだけはTOM'Sの “トビウオ” を大仰に貼って走り回っていた)

 そのうち、ラリーやレース、ジムカーナの取材がどんどん増え、2T-GエンジンをチューンしたTE27レビンなどを操るラリーストやレーサーのところにも足しげく取材に回るようになった。
 ボアアップ、スープアップなどという言葉も覚え、そういう言葉を使って記事を書くことが面白くてたまらなかった。

スターレットジムカーナ

 今思うと、畑中さんとは、FISCOのピット裏あたりで、すれ違っていたのかもしれない。

富士スピードウェイ01

 …ってな感じの話になってくると、私と畑中さんとの酒宴は、だいぶ盛り上がってきたことになる。

 プライベートチームでレース活動をしていた畑中さんは、やがてプライベーターの限界を感じ、その後は、グラチャンマシンを整備する日産レーシングチームのエンジニアとして活躍するようになる。
 その頃は、ピットに入るマシンのエンジン音を聞くだけで、あと何回転ぐらい回るかもすぐ察知できたという。

 当時、グラチャンのヒーローといえば、日産勢では星野一義、高橋国光、長谷見昌弘。

 「みんな面白いおっちゃんたちでね… (笑) 」
 畑中さんは、いまだに彼らと共にピットの中で過ごしているような気分で語る。

 「なにしろ、あの頃はキャブレターを替えただけで10馬力アップ、マフラー替えただけで5馬力アップ…そういう世界だからさぁ、クルマとチューナーのレスポンスが密でしたよね。
 あの時代のクルマは、いじれば必ず応えてくれたわけじゃない?
 クルマの鼓動が聞こえてきてさ、そのメッセージを感じて、こっちも応えてやるという、まぁ、人とマシンの交流があったよね」

 乾いたマシンの世界にも、人間と同じような “命の躍動” を感じるのが、畑中さんなのである。
 感受性も豊かならば、表現も詩的だ。

 そういう時代のクルマを知っている彼からすると、
 「今はみんなコンピューターチューンになったから、いじれるのは一部の専門家だけ。
 今の若者がクルマに魅力を感じなくなってきたというのも、たぶん、クルマとの対話ができなくなったからだろうね」
 …ということになる。

 だから、「対話のできる」 余地をいっぱい残したキャンピングカーの方が、これからは若者の心を惹き付ける、といういつもの持論になっていく。

 そんな彼でも、会社の方針に従ってキャンピングカーを売る世界に移ったときは、さすがに面食らったそうだ。
 それまで生きてきた世界とは180度違う世界なので、最初は、何をどうすればいいのか見当も付かなかった。

 しかし、すぐにレースの世界と似ていることに気がついた。

 F1のようなものを別にすれば、レース業界もキャンピングカー業界も、裾野は広くとも、頂上までの層が薄いという。

 「広大な裾野を持つ産業というのは、普通は裾野の上にそびえ立つ “峰” も高いんですよ。
 ところが、両方とも峰が形成されずに、すぐフラットなてっぺんに行き着いてしまう」

 そのため、なかなか “うまみ” のある商売にはならない。

 「でもね、逆にいうと、この業界では誰もが “天下を取る” チャンスを持っているということなんですね。
 てっぺんまでの距離が短いから、誰が天下を取ってもおかしくはない」

 まさに、戦国時代のようなもの。

 「ビルダーの社長さんたちの顔を最初に見たとき、ホントみな戦国時代の大名に見えましたもの (笑) 」
 いちばん戦国武将の顔つきに近い畑中さんがそう言うのだから、間違いはない。

ピーズ畑中氏02

 「で、この業界がレースの世界と似ているのはね、社長さんたちがみな一家言を持っていることなんですね。
 レース界では、チューナーたちが、みな自分がこの世界では一番だと思っているんですよ。まさに、ワンパク小僧がそのまま大人になった感じ。キャンピングカー業界もそっくり (笑) 」

 そういう “乱世の時代” が、畑中さんにとっては面白くて仕方がないようだ。

 しかし、女性たちを交えた宴の世界で、彼はいつもそんなことを語っているわけではない。

 「旦那のウソの見分け方」
 「旦那が朝帰りの言い訳に使うベスト3」
 「思わず旦那が惚れ直す、奥様の会話術」

 ……女性週刊誌のネタにでもなりそうな話題をつぎつぎとくり出して、クラブキャンプで焚き火を囲んでいる奥様方の好奇心を、ずばりとワシづかみ。

 女性たちだけでなく、マグカップに焼酎を注いだ男衆も、おもわず身を乗り出して、畑中さんのしゃべりに耳を傾ける。
 ウソがホントか分からぬが、畑中さんの魔術のノリを持った会話術は、酒が回るにつれて、金を取ってもおかしくない 「話芸」 の域まで突き進む。

 「私のことをホラ吹きと呼んでください」
 畑中さんはそう広言する。

 ウソつきは人を不幸にするけれど、ホラ吹きは、人を楽しませる。
 どうやら、そういうことらしい。
 この業界に、一人のエンターティナーが生まれようとしている。


コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 21:29 | コメント(4)| トラックバック(0)

アムクラフト新車

 今ちょうど 『キャンピングカーsuperガイド2009』 の原稿を書いている最中なので思うのだけれど、一連の作業を通じて感じるのは、日本のバンコンビルダーが新車開発に対して並々ならぬ戦略を立てているということ。

 マーケティングの手法も緻密ならば、ブランド力の高め方も計算しつくしている。
 今、固定客をしっかりつかんで確実にシェアを広げているビルダーというのは、みな市場分析、企画力、デザイン力で、数年前とは比べものにならないくらい緻密な作業を進めている。

 そんなビルダーのひとつに、アム・クラフトさんがいる。

アム・クラフト山口社長01
 ▲ アム・クラフト 山口寿子 社長
 
 同社は、幕張、名古屋と続く春のショーで、 「アウラ」 、 「オーロラ」 という新型車を立て続けにリリースした。
 アウラは、レジアスエースのロングバン・標準ボディのハイルーフ。
 オーロラは、ハイエーススーパーGLワイドボディをポップアップルーフ化 (op.) しているが、どちらもボディサイズとしては、全長5m未満のコンパクトボディを使っている。

 ともに、コンセプトは 「街乗りプラス α」 。
 キャンプにも使えるが、通勤、買い物、子供の送迎、ドライブ、ピクニックという日常の足を意識したものだ。

 そうなると、ベース車はスーパーロングであるよりも、それより短いショートボディである方が説得力を増す。

 狙いは、 「ミニバンイーター」 。
 価格、サイズもできるだけ乗用車メーカーの造るミニバンに近づくような設定にして、ミニバンからの買い替えを狙う。

 もちろん、そういうクルマは、昔からバンコンには多かった。
 ただ、その手のクルマは、価格を下げることと、 「何にでも使える」 という便宜性を優先させようとしたばっかりに、華がなかった。

 では、 「華」 とは何か?
 というと、これは 「機能」 に還元できない領域なので、一言では説明がつかない。
 しかし、アム・クラフトさんの新型車は、その 「華」 の領域に踏み込んで、それを理論化し、計量的に分析し、的確にプレゼンしている。
 プロのワザを感じるのだ。

アウラ外装01
 ▲ アウラ

 アウラというクルマは、ずばり 「女性のハート」 を狙ったものだ。
 同社はこのクルマを開発するにあたり、ユーザーや社員の家族関係から約200人の女性の声を拾い集めたという。

 すごいのは、そこで上がってきた声をストレートに車両開発に採り入れるのではなく、デザイナーを中心に企画会議で討議し、その声を、見栄えのある形に 「翻訳」 したことだ。
 つまり、ユーザーから上がってきた声を 「華」 に置き換えるために、デザインの濾過を試みているのだ。

アウラ内装01
 
 このクルマで “見所” となるところは、リヤゲートを上げたときに、冷蔵庫を格納したキッチンユニットの後ろ側に張り付けられたショッピングカート。

アウラ・ショッピングカート01

 つまり、行楽の帰りにスーパーなどに寄ったとき、このカートを引っぱり出して、翌日に使う食材などを買い込めるようにしている。

 これぞ 「女性の視点」!
 なのに、このカートのデザインが実にヨーロッパ風で、車両のデザインセンスと絶妙にマッチングしている。
 市販のものから探してきたというが、こういうものを選び抜くセンスがすでに他社より一歩先んじている。


オーロラ外装
 ▲ オーロラ

 「オーロラ」 というクルマも、綿密な市場調査から生まれてきていることが分かる。
 これは、ある意味で 「トランポ」 だ。
 ただし、もちろんただのトランポを狙っているわけではない。

 トランポというと、一般的にはバイクやジェットスキーを載せるというスポーツギアのイメージが強い。
 造る方も使う方も、その固定観念からなかなか抜けられない。 
 
 しかし、オーロラはそのようなトランポの発想から飛び出したクルマである。
 むしろ、トランポとして使えるほどの空間を、 「癒し」 「やすらぎ」 「広々感」 に翻訳しようとしたクルマなのだ。

オーロラ内装04

 家具なども、少し濃いめの家具を使い、今までのファンシーでフェミニンなアム・クラフト路線とは一線を画したモダンテイストを貫いている。

 この狙いはどこにあったのか?

 ポップアップルーフを開口すると、それがよく分かる。
 ルーフの内側に埋め込まれたLED照明が、微妙に色を変えて、ルーフの内側をまさに 「オーロラ」 の輝きに変える。
 同社はこれを 「オーロラシステム」 (op.) と呼ぶ。
 もちろん、これは単なる遊び。
 
 しかし、この天井に広がる “大宇宙のパノラマ” を堪能しようしたとき、濃いめにしつらえたモダン調家具類が、夜空を支える地球の大地として浮かび上がるのだ。
 よく計算していると思う。

オーロラ内装01 オーロラ内装02

 こういう仕掛けを 「ギミック」 というのは簡単だ。
 だけど、私などは、ルーフ内の色が変わっていく瞬間を写真で捉えながら、小さなプラネタリュームの中にいるような気分になった。 

 このような遊びは、ガチガチなアウトドア派からは、キャンピングカーの機能とは関係ないと嫌われるかもしれない。
 しかし、こういう部分に 「華」 を感じ、キャンピングカーの面白さを感じる新しい顧客層は確実に育っている。

 アム・クラフトというビルダーは、すでにその新しい顧客層のひしめく大海に、堂々と漕ぎ出していこうとしている。


campingcar | 投稿者 町田編集長 22:44 | コメント(0)| トラックバック(0)

コンクエスト23

 09年に入って、キャンピングカー業界では国産車の勢いが目立つようになってきたが、輸入車の方にもユニークなクルマが登場してきている。
 たとえばボナンザさんが、この春に導入したコンクエスト23。

コンクエスト外装01

 これ、アメ車かな?
 ヨーロッパ車かな?

 ベースシャシーはフィアット。
 シェルの形状は、まさに典型的なヨーロッパ車風アルコーブン。
 だけど、デカールのデザインなどはアメ車っぽいし、それによく見ると、バンク部とボディ側面にアメリカのモーターホームメーカー 「Jayco」 社のマーク。

ジェイコ社マーク

 ついに、ジェイコ社がフィアットを導入?
 仕入れが高いだろうに……。
 だけど、不思議。
 左エントランスに右ハンドル。
 なんだ? これは…。

 と、いろいろ考えてしまったのだが、ボナンザの比留間社長にうかがうと疑問は氷解。
 このモーターホームは、オーストラリア製なのだ。

ボナンザ比留間社長01

 オーストラリアが、近年にわかにRV大国になっているということは、 「RV世界会議」 のレポートなどからも分かっていたが、このような堂々たるモーターホームが造られるようになっていたとは、ちょっと知らなかった。

 その中でも、このコンクエストを造った 「オーストラリア・ジェイコ社」 というのは、全オーストラリアのRV車両の中でも48パーセントのシェアを持つ大メーカーなのだとか。
 アメリカのジェイコ社とは交流はあるものの、独立した資本によって運営されている地元のビッグメーカーであるという。

コンクエスト外装03

 このコンクエストを導入するために、オーストラリアで同車を試乗していた比留間社長は、現地のモーターホームの普及ぶりに目を見張ると同時に、そのベース車にフィアットが浸透していることにも驚いたという。

 で、このコンクエスト23。
 われわれ日本人にとってうれしいのは、まずオーストラリアがイギリス連邦の一国であるために、右ハンドルであるということ。
 しかもオートマ。
 右ハンドルでATというのは、実に商品価値が高い。

コンクエスト右ハンドル01

 シャシーとして使われているフィアットは、リヤワイドトレッドを持つスペシャルバージョン。
 スタンダードのトレッドが1790mmであるのに比べ、このワイドトレッド仕様は1980mm。
 リヤタイヤがボディ枠いっぱいにまで広がっているので、 「踏ん張り」 の良さが、見ただけでも伝わってくる。

コンクエスト外装02

 内装はちょっと不思議なムード。
 レイアウトや家具の作り方は、もろヨーロッパ車なのだが、どことなく微妙にアメリカンな匂いが漂ってくる。
 アメリカのジェイコ社との交流もあるから、アメリカンモーターホームの情報も頻繁に流れてくるからだという。

コンクエスト内装05 コンクエスト内装06

 家具色や内装色はアメ車っぽいし、コンロの辺りの形状もアメリカンだ。
 コンロは4口。
 そのうちの三つはLPGを熱源に使うガスコンロだが、一つだけがIHクッカーになっている。
 時代の波を感じる。

コンクエスト内装08

 ベッドは、ヨーロッパ車風のリヤハイマウントベッド。
 もちろん、その下は大型外部収納。
 ベッドはウッドスプリングが入っているので、通気性もよく、寝心地も十分。

コンクエストリヤベッド コンクエストベッド下収納

 もちろん、オーストラリアだけの創意工夫もある。
 たとえば、エントランスドア。
 表扉の裏側に、格子上の補強が入った網戸が設けられ、さらに、子供が触って開いたりしないように、チャイルドロック機構が備わっている。

コンクエストエントランスドア

 パーツもほとんど自国内で生産されるようになったらしいから、オーストラリア独自のアイデアを盛り込んだパーツもどんどん開発されているらしい。
 
 オーストラリアといえば、おなじみのカンガルーバー。
 だけど、野性のカンガルーが飛び込んで来る心配のない日本で使う限り、現地の大げさなカンガルーバーは必要ないという判断で、小型のものが付けられている。

コンクエストコアラバー

 ボナンザさんでは、これをちょっと可愛く 「コアラバー」 と呼ぶそうだ。
 フロントバンパーの役目をするので、付いていると便利だ。

 オーストラリアのキャンピングカーが正規に日本に導入されたのは、これがはじめて。
 日本のキャンピングカーシーンは、輸入車の方でもバラエティに富んだ品揃えが目立ってきた。

 お値段は、車両本体価格8,980,000円 (税込み9,429,000円) 。


campingcar | 投稿者 町田編集長 20:31 | コメント(4)| トラックバック(0)

断熱と遮熱

 キャンピングカーの冷暖房を考えるとき、ボディを断熱加工することの重要性が、最近とみに認知されるようになってきたが、それと同時に、「遮熱」 という考え方も進めていかなければならない、というビルダーの社長さんがいる。
 RVランドの阿部和麿氏である。

 阿部さんがいうには、人間が体感する 「暑さ、寒さ」 の感覚は、 「遮熱」 によって左右されることが多いのだそうだ。

 「遮熱」 とは、文字通り 「熱を遮る」 ことをいい、正確には 「熱をはね返す」 ことを意味する。
 「断熱」 と違うのは、 「断熱」 が熱を受け止めて、その熱の伝導を遅らせるということを意味するならば、 「遮熱」 は、熱そのものをはね返してしまうことをいう。

 その 「遮熱」 が、なぜキャンピングカーの 「断熱」 と同時に重要になるかというと、それが、熱の移動量の一番多い 「輻射 (ふくしゃ) 」 を遮ることになるからだそうだ。

 理科に強い人ならば、この 「輻射」 という言葉で、すでにピンと来るかもしれない。 
 理系の勉強をサボってきた私には、以下の阿部社長の講義は、はじめて聞くものばかりだった。
 
阿部和麿代表 
 ▲ 阿部和麿氏

【阿部】 人間が 「暑い」 「寒い」 「冷たい」 と感じる温度や熱の伝わり方には、3種類あるんですね。
 その一つは、 「伝導」 です。
 氷などに触れると冷たく感じるのは、氷の温度が指先に伝導されるからです。火にかけたヤカンが熱くなるのも、伝導ですね。

 二つ目は 「対流」 です。
 部屋の中の温まった空気は比重が軽くなって上昇し、冷たい空気は下に回って、部屋全体がかき回されながら温かくなるというのは、この対流の効果が現れるからなんです。

 そして三つ目が、 「輻射」 です。
 これは赤外線などに代表される電磁波による熱のことで、太陽の熱の伝わり方を思い浮かべてもらえれば分りやすいと思うのですが、例えば、天気の良い冬の日など、太陽に当たった身体がポカポカと温かくなりますよね。

 それって、不思議だと思いませんか?
 なぜなら、別に空気そのものが熱くなっているわけではないからです。

 では、なぜ、外気温が人間の体温より低い冬の日でも、人間は太陽に当たると温かく感じるのか。

 それは、太陽の赤外線が、物体と衝突するときに熱を発生するという性質を持っているからなんですね。
 このような熱の伝わり方を 「輻射」 といいます。

 で、この 「伝導」 、 「対流」 、 「輻射」 という熱の伝わり方の中で、私たちが熱量の多寡を一番強く感じるのが、実は最後の 「輻射」 なんですね。
 人間の生活空間の中で、熱の移動量全体を100とすると、 「輻射」 がそのうちの75を占め、 「対流」 が20、 「伝導」 はわずか5だと言われています。

 キャンピングカーの冷暖房を考えるとき、 「遮熱」 という考え方が大事だと言ったのは、 「遮熱」 による対策が、熱の移動量の一番多い 「輻射」 を遮ることになるからです。

 では、具体的に、この 「遮熱」 という考え方は、キャンピングカーにどのように取り入れられているのかというと、……残念ながら、この世界ではまだ大きな成果としては実っていないんですね。

 というのは、この業界では 「遮熱」 に効果のある素材を導入するための研究もまだ途上であるし、またそのような素材があったとしても、コスト高が予想されるからなんです。

 では、その素材とは何か。

 研究によると、 「輻射」 による熱反射率の最も高いものは金属の銀 (シルバー) だといいます。
 その反射率を数値で表すと、99パーセントに及びます。
 2番目は金 (ゴールド) で、その熱反射率は98パーセントになります。

 ですから、金銀で外皮を構成したキャンピングカーがあったなら、さぞや夏は涼しく、冬は暖かいキャンピングカーになることでしょう。

 しかし、これは現実的ではありませんね。
 そのようなキャンピングカーは、一部の大金持ちでも敬遠してしまうでしょう。
 なぜなら、そのような 「走る宝石」 で旅行していれば、盗難や強奪の恐怖にいつも怯えていなければならなくなるからですね。

 幸いなことに、それほど高価でない素材として、私たちは 「アルミ」 という素材を持っています。
 アルミの熱反射率は91パーセントだと言われますから、金銀に及ばないまでも、現実性はぐっと近づいてきます。

 では、キャンピングカーの外装をアルミで被えばいいかというと、そう簡単ではないんですね。
 まず、そのようなボディ技術があまり普及していないため、耐久性への配慮を含めてデータが不足していて、素材そのものも、現状ではコスト高になってしまいます。

 しかし、建築の世界において、遮熱材としてアルミ素材を上手に使う工法が普及しているといいますから、そのように住宅への浸透が進んだ段階で、キャンピングカーに適した使い方の研究も進んでくるでしょう。

 すでに、キャンピングカー以外の自動車においては、観光バスやトラックの一部で、屋根にアルミ的な効果をもたらす銀色の蒸着フィルムを貼ったり、銀色の塗装を施す試みも行われるようになってきました。

 また食品関係においても、このアルミ素材の遮熱性を利用した包装システムが普及してきました。
 コンビニなどで売られているスナック菓子の袋などを見ますと、その大半が、内側にアルミ箔を蒸着した素材を使用して、赤外線などをカットし、品物の劣化を防ぐようになっています。

 このような応用技術がキャンピングカーに採り入れられるようになるには、まだもう少し時間がかかるでしょうけれど、実は、すでにユーザーさんたちは実行しているんですね。

 たとえば、キャンピングカーでは、室内を外気温の変化や結露から守るために、フロントガラスや側面の窓ガラスを “銀マット” などで覆うマルチシェードのようなものが開発されていますが、これを使う方々がどんどん増えています。
 これなど、断熱と遮熱を効果的に行なったものといえるでしょう。

 今後は、各ビルダーさんが 「断熱」 と同時に、 「遮熱」 技術を研究・開拓することになっていくでしょう。
 そうなれば、エアコンやヒーターなどを無制限に使用することを避けることも可能となり、エネルギー資源の確保や、温室効果ガスの削減に寄与するようになるでしょう。

 ……以上、阿部社長の講義、終わり!
 勉強になりました。


campingcar | 投稿者 町田編集長 22:58 | コメント(4)| トラックバック(0)

大人の恋の国

 昔、鹿児島まで旅したことがあった。
 「独り旅」 。
 …といえば、カッコいいのかもしれないが、まぁ、取材。
 つまり、仕事。

 一応、取材するべきものをあらかた取材して、1日だけ日程が余った。
 南に行ってみようかと思った。

 「指宿 (いぶすき) スカイラン」 という看板が出ていたので、それに乗ることにした。

 “スカイライン” という名からは自動車専用ハイウェイという感じが伝わってきたが、実際は片道1斜線の 「信号がない」 というだけの道だった。

 道の途中に現れる展望台に何回か止まって、噴煙を噴く桜島を撮影した。

 不思議な気持ちになった。
 富士山などがあのような噴煙を撒き散らしたりしたら、大変なニュースになるはずなのに、ここに住んでいる人々はそれを日常的な景色として眺め、気にもせずに暮らしている。

桜島噴煙
 
 薩摩人というのは、太っ腹な人たちだ。
 明治維新から西南戦争にかけての時代、鹿児島はほとんど日本国内における 「独立国」 といった体裁を示すが、薩摩人のそういう剛胆さというのは、 “火を噴く山” を町の中に抱えているという風土が生んだものかもしれないと思った。

 指宿スカイラインを走って南に下ってくると、今度は、開聞岳が見え隠れするようになった。
 富士山と似たコニーデ型の美しい山だ。

 ヤシの木などの隙間からみる開聞岳は、なんだか行ったことのないバリ島とか、ハワイとかいった、 “南の楽園” をイメージさせた。

開聞岳02

 幼少の頃、街角に貼られた 『南太平洋』 というミュージカル映画のポスターを見たことがある。
 それを思い出した。

 どんな俳優が出演するどんなストーリーの話なのか。実はいまだによく知らない。
 しかし、そのポスターに秘められた南国の官能というものだけは、ガキの自分にも理解できた。

南太平洋ポスター01

 「南の国には大人の恋がある」
 何の根拠もなく、そう思い込むようになったのは、もしかしたら、そのとき刷り込まれたものかもしれない。
 
 「大人の恋」 を探すために、さらに南下したら、ウナギを見つけた。

 池田湖というところまで来ると、湖岸のボート乗り場やみやげ物屋には、どの店も 「一番大きなウナギ」 という看板が掲げられている。
 「一番…」 が何件も連なっているのだが、そのへんは、お互いにあまり頓着してない様子だ。
 おおらかな土地柄である。

 そのうちの一軒を覗く。
 体長2メートル、胴回り50センチという “お化けウナギ” がいた。
 ウナギというより黒いニシキヘビである。
 顔なんかナマズに近い。

池田湖大ウナギ01

 店の人に聞くと、その1匹で、20人分の蒲焼ができるらしい。
 ただ、味は大味で、まずくて食える代物 (しろもの) ではないという。
 あくまでも観光用。
 うっかり食べたら、一晩中ウナギの夢にうなされそうだ。

 さらに走って南へ。

 目指すは指宿。
 いつのまにか頭の中では、指宿の町が、ミュージカル 『南太平洋』 に出てくるような南国リゾートのイメージに染め上げられている。
 今晩は、そこで 「大人の恋」 を見つけよう。

南太平洋ポスター01

南国の海の夕陽02

 南へ、南へ。
 国境の南へ。

 あたりは典型的な日本の田舎道になった。
 小高い丘陵がうねうねと続き、その間に田畑が広がっている。 
 
 その光景は、日本中どこの田舎にも溢れていそうなものだったが、ただ一点、陽光が違う。
 明らかに、南国の日差しだ。
 夏でもないのに、道の彼方に陽炎でも立っているような気がする。

 坦々とした一本道が続くなか、視線が妙な看板を捉えた。

 「ムー大陸の秘宝館」

 周りが畑だけに、 「ムー大陸」 と大きく出たところが、なにやら 「怪しげ」 で 「妖しげ」 。
 無性に寄り道したくなった。

 看板の指示する矢印通りに進むと、これがとんでもない山の中だった。
 地元のクルマさえ1台も通らない。

 その寂しいワインディング・ロードを、上へ上へと登っていくと、いきなり眺望が開け、人気のない広場の向こうに、なんともいえない奇妙な門が立ちはだかった。

 インド風というのか、イスラム風というのか。
 仰々しい赤い門が、 「寄ってらっしゃい」 とも 「立ち去れ!」 とも、どちらとも取れる風情で、じっと見下ろしてくる。
 テーマパークか?
 遊園地か?
 それとも宗教施設か?

 この摩訶不思議な味わいが、いい感じで、人の好奇心をくすぐってくる。

 門の横の事務所にはスピーカーが備え付けられていて、そこから、初期のコンピューターゲームで使われたようなふわふわした電子音のメロディが流れている。

 クルマを止めておそるおそる事務所 (受付?) の中を覗いてみたが、もとより客などあてにしていないのか、事務所には人っ子一人いない。

 門から中を覗くと、意外に奥行きがあって、山あり、谷ありの公園のようになっている。
 “秘宝館” は山の向こうにでもあるのか、ここからは姿が見えない。

 門から先は “古代ローマのアッピア街道” といった感じの石畳の小道が伸びていて、その彼方の丘の上には、白くピカピカ光る象の彫刻が横たわっている。
 ますますもって、わけが分からなくなる。

ムー大陸秘宝館01

 門の横にこの施設の由来を説明した碑があった。

 読むといよいよ大変な施設であることが分かった。
 なんでも、
 「世界平和の実現のため、3000万年の昔に太平洋に沈んだ理想の仏国土ムー大陸の秘宝を展示」
 …した施設なんだとか。

 ムー大陸が、釈迦が生まれる前はおろか、人類が生まれるまえから仏教の国だと初めて知って、びっくりした。

 よっぽど入ってみようと思ったが、日のあるうちに指宿の町に行きたかったので、残念だったが、あきらめて山道を引き返すことにした。


 陽が西に傾きかけた頃、南九州屈指の温泉街である指宿に着く。

 「ビッグウェンズデー」 級の大波が押し寄せる南国の浜辺をイメージしていたのだが、海岸沿いに並ぶホテル、スナック、ストリップ小屋、ソープランドのたたずまいは、わりと日本のどこでも見られる観光温泉街だった。
 
 ウィークデイのせいか、人の姿もまばら。
 どこかの宿に飛び込んでも、だだっぴろい大広間で、浴衣を着たまま一人で食事をとっている光景が目に浮かんだ。
 
 街並を見ながら走っているうちに、いつのまにか町を出てしまった。

 ……どうするか。

 今から戻れば、鹿児島の町には戻れる。
 やっぱり、旅の最後の夜は、天文館あたりの居酒屋で、さつま揚げに焼酎でも飲みたい。

 南国リゾートの 「大人の恋」 はあきらめて、再び来た道を引き返す。

 途中、ちょっと洒落た喫茶店が見えた。
 田舎の町並みにポツンと立っているモダンな店構えが、周りの景色から浮いている。
 どんな客が入るのだろうと…と、好奇心が湧く。

 店の中には、60年代~70年代のロック・アーチストのLPジャケットやCDが飾られ、心地よいノリのロックが、適度なボリュームで流れていた。

 カウンターでは、40ぐらいの中年のマスターが地元の青年と話していた。
 話題は音楽のことではなさそうだ。

 コーヒーを注文し、しげしげと店内のディスプレイを眺める。
 ニール・ヤング、CCR、バンド。
 古びた30㎝LPのジャケットが、壁いっぱいに飾られている。

アフターザゴールドラッシュ01 band

 マスターの人生が分かりそうだった。
 若い頃 都会の大学でロックの洗礼を受け、それにのめり込み、故郷に戻って、趣味を生かした喫茶店を開く。
 そういう人生設計を描いたんだな…という感じがひしひしと伝わってくるのだ。

 なんとなく (…年齢的にも近そうだったし) 親近感を覚えたので、帰りぎわに、
 「今かかっているのは、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングでしょ?」
 と聞いた。

 マスター、こともなげに、 「そうですが…」 (それが何か?) と怪訝そうな表情で見つめ返してくる。
 こんな田舎でロックの話なんかするなんて、お前よっぽど変わりものだなぁ…というような感じなのである。

 ちょっと鼻白んでしまったが、 「ま、いいか…」 と思って、勘定を済ませて外に出る。

 ちょっと休んでいる間に、町はすっかり夕暮れの色に染めあげられていた。
 夕方になると淋しい町だ、この辺は。
 
 さぁて、ひとっ走り。
 天文館で、気の利いた居酒屋でも探し、街の喧騒をサカナに焼酎でも飲もう。

 「大人の恋の国」 が後ろに遠ざかる。
 ふと見上げると、空には早々と一番星。


旅&キャンプ | 投稿者 町田編集長 01:45 | コメント(4)| トラックバック(0)
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