町田の独り言 キャンピングカーのガイド本を編集する町田が語るよもやま話

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>TOMYさん、よう…
町田 03/17 14:39
町田さんこんにちは。…
デルタリンク宮城 鈴木 03/17 11:32
こんばんは、町田さん…
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世界中に5億人を超え…
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町田 03/14 00:28
町田さんご無事で何よ…
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一夜だけの居酒屋

 自分のキャンピングカーを 「居酒屋」 代わりに使った。

 昔からの知り合いで、最近キャンピングカーに興味を持った人がいたからだ。
 「どんな使い勝手なのか、室内の生活ぶりを知ってみたい」
 という。

 普通だったら、
 「じゃ、一緒にキャンプでも」
 ということになるのだけれど、この時期、彼も私も忙しい。

 「じゃ家まで乗っていくから、中で飲もうよ」
 という話になり、酒とツマミを買い込み、駐車場に停めたキャンピングカーの中で酒宴となった。

 「じゃ冷蔵庫 (3ウェイ) を冷やすから、ガスのコックを開けて…」
 という話がもう通じない。
  
 なるほど…と思った。
 ガスを燃やして、炎の力で 「冷やす」 という感覚が分からないという。
 言われて、そのとおりだと思った。
 
 「寒くなったから、ヒーターでもつけよう」
 という話になり、FFヒーターのつまみを回したのだけれど、ベース車の燃料タンクから引いた燃料が、どうして暖房器具に使えるのか、その構造が不思議だという。
 言われて、そのとおりだと思った。

 「トイレが使えるよ」
 と言ったのだけれど、たまった汚物をどう処理するのか、そのからくりが分からないという。
 言われて、そのとおりだと思った。

 「見れば見るほど、不思議な空間だ」
 と、焼酎の水割りを飲みながら、彼がしげしげと室内を見回す。
 「まったく “普通の部屋” なのに、それがクルマの上に乗っかって動いていくという感覚が、何だかとても不思議だ」
 という。
 言われて、そのとおりだと思った。

 使い慣れてしまって、自分ではもう不思議だと何とも感じないキャンピングカーだけど、初めて使ってみる人にとってはどれもこれも “ワンダーランド” なのだ。

 そう人と話すのはとても新鮮だ。
 自分がとんでもなく面白い生活空間を所有しているという感覚がよみがえってくる。

 照明を絞って、少し暗くして、ジャズを流す。
 酒がどんどん進んでしまう。

コマンダー室内3

 「山奥などで一人で夜を迎えていると、怖いと思ったことはないか?」
 と聞かれた。

 昔、『キャンプ場ガイド』 の取材などをしているときは、よくそういう生活を送ったが、慣れてしまえば特に怖いということもない。
 だけど、人気のない山の駐車場などで過ごした最初の日は、やはりちょっと怖かった。
 そんなことをしばらく思い出すこともなかったので、また新鮮な気分になった。 
 
 話は大いに盛り上がって、寝たのは夜中の3時ごろだった。
 楽しかった。
 また、いい思い出が増えました。

旅&キャンプ | 投稿者 町田編集長 23:52 | コメント(4)| トラックバック(0)

タコスのテント

 キャンピングカーを使ったアウトドアライフを実践する男。
 それがTACOS (タコス) の田代民雄さんのひとつのイメージとなっている。

tacos田代氏
 ▲ TACOS田代氏

 いつも日焼けした肌を風にさらし、語る話題も、若い頃から野山を駆けめぐった武勇伝ばかり。

 バイクで林道を走り、秘湯の温泉を探して、夜は草原にあぐらをかいて月見酒。
 川原の向こうに消えゆく流れ星を見つめながら、時にブルースハープを吹く。
 若い頃から、そんな人生を楽しんできた田代さん。
 アメリカン・ロードムービーの主人公が務まりそうな人だ。

 田代さんがかつて開発してきたオリジナルキャブコン 「タコス仕様」  は、そういう彼のライフスタイルを忠実に反映したアイデアがさんざん盛り込まれ、アウトドア派のユーザーから絶大な支持を受けた。

 バイクやら遊びのギアをふんだんに積める広い開口部を持った大きなバゲッジルーム。
 増設された水タンク。
 リザーブ可能なスペースをいっぱい設けたLPガスボンベ収納庫。

キング5.7タコス仕様
 ▲ タコス仕様のキング5.7 リヤトランクを設けたところに注目

 タコスのオリジナルキャブコンというのは、そういうアウトドアユースを想定においた仕様を突き詰めたものだった。

 そのアウトドア文化のアイデアマンである田代さんが開発したオリジナルテントルームが、この 「MiMie ミミーテント」 。

タコステントキャブコン用
 ▲ キャブコン用

 既成の商品も出回っているが、それらの先行商品と比べると、軽い、設営が簡単、安いという特徴がある。

 キャブコン用とバンコン用の2種類が開発されているが、どのような車種にも適合できるように、高さ調整機能がついている。
 つまり、オーニング高に合わせて織りシロが設けられており、オーニングのアームにくるりと巻いて、マジックテープで止められるようになっている。

タコステント室内
 ▲ テント内は広々

 こうやって、オーニング下をテントで囲めば、キャンピングカーの外にまたひとつ “小部屋” が誕生。家族や親しい仲間が集うパーティルームとして最適だ。

タコステントバンコン用
 ▲ バンコン用

 もちろんこのテント、フィアマにもオムニスターにも装着可能。
 脚立さえあれば、一人でも設営ができるし、畳んだときの重さも6.2kgなので、持ち運びも楽。

タコステント側面 タコステント畳んだ状態
 ▲ 窓が開いていて便利    ▲ 折りたたむとコンパクト

 テント地にはUVカットが施されているために、日除け効果も抜群。
 モスキートネットを張った小窓が設けられているために、夏は虫の進入をシャットアウトしながら、テント内を吹き抜ける涼しい風を堪能できる。

 ボディとタイヤの隙間から進入する冷気も防風シートで遮断できるので、冬も威力を発揮。
 テント地は防水加工されているため、雨が降ってきても大丈夫。

 山奥のキャンプ場などでは、夜は野生動物がテーブルの上の食べ残しの食料を狙ってくるが、このようにテントでテーブルを囲んでしまえば、食器を外に残したままクルマの中で寝てしまっても安心。

 お値段は、税込みで60,900円 (送料別) 。
 ただし、テントを支える “つっぱり棒” は別売。

 問い合わせは下記に。

 TACOS展示場 東京都立川市武蔵村山三ツ木2-38-9
 電話 042-560-2265
 TACOSガレージ 東京都立川市西砂町3-29-6
 電話 042-531-0108
 http://www.tacos.co.jp


campingcar | 投稿者 町田編集長 00:58 | コメント(4)| トラックバック(0)

凄いタレントたち

 おお、凄いな…と、最近ちょっと感心しているタレントさんを二人ばかり。
 一人は、爆笑問題の太田光さん。 

爆笑問題2

 これは、たまたまなんだけど、11月23日、爆笑の二人が京都大学の教授たちや学生さんたちと討議する 『爆笑問題のニッポンの教養』 (NHK再放送) と、続いて、…これも、たまたまなんだけど、25日に、早稲田大学の学生さんや教授たちと討議する同シリーズの 『平成の突破力』 というのを見て、あらためて太田光さんて、「やるぅ~」 と思ってしまった。

爆問笑問

 二つとも、実にシンプルなトーク番組だった。
 太田光さんが学者さんたちに咬みつき、学者さんたちが反論し、聴講していた学生たちが感想を述べる。

 単にそれだけ。

 太田さんは、いつもの当意即妙の “はぐらかし” を披露するわけでもなく、お茶目な “悪ノリ” を見せるわけでもなく、ただ、ムキになって真面目なことを、クソ真面目に語っていた。

 その態度には、ちょっと自分の知的レベルを鼻にかけて威張っているような気配も漂うし、発言内容も 「アオい」 「クサい」 。
 話す言葉も明瞭でなく、何をしゃべっているのか、よく分からない。

 ……が、「何を伝えたいのか」 が、実に強くこちらに向かって発信されてくるのだ。

 お偉い学者さんや頭のいい学生さんたちを相手に、おそらく読書も好きであろう太田さんなら、学者さんたちが好む言葉を使った効率のいい議論の進め方も心得ているはずだ。

 しかし、彼はそれをやらない。
 あくまでも、日常生活の中にどっぷり浸かった平易な言葉で、…つまり  「辞書」 を引かなければならないような言葉を一言も使うことなく、彼は、まだみんなの考えていないようなことを、一生懸命表現しようとしていた。

 ちょっと知的な言辞やレトリックを心得ている人だったら、きっと太田さんの弁舌は、いたずらにもどかしく、幼稚で、不恰好に見えたはずだ。

 だけど、「誰でも使える言葉」 で、「誰も考えたことのない意見」 を伝えようとした太田さんは、“思想” の生まれるスリリングな瞬間を独占していた。

 「きっとあとね、何十年、何百年経ったら、それは凄いコトでも何でもなくて、誰もがみ~んな当たり前のコトだと思うような時代が来ると思うんだけど、俺って、そういうのイヤなの。
 いま凄いコトを実感したいわけよ。分かる? あ~、俺、凄いコトに直面しているんだっていう実感が欲しいわけよ」

 ってな調子で、太田さんは語る。
 上のトークは、今とっさに思いついた “創作” だけど、たとえばこういう調子で語るとき、彼は 「凄いコト」 が何なのか? …などと説明することなく話を進めていくので、聞いている人間には、具体的なことが分からない。

 だけど、気分として、彼の伝えたいことは熱い波動となって、ビンビンとこちらに押し寄せてくる。

 発言の結末がどうなるのか。
 それは、しゃべっている太田さん自身にも、まだ見えていないのかもしれない。
 だけど、聞く人間は、彼の思考の軌跡を同じタイミングでたどるというライブ感覚を味わえる。

 ジャムセッションの面白さだ。

 たぶん、釈迦もキリストも、簡単な言葉を使っただけなのだ。
 その簡単な言葉で、いままで誰も考えなかったようなことをしゃべった。
 だから、説法を聞いていた誰もが、その場の雰囲気に乗せられて考えた。

 そうやって、新しい思想が生まれていった。
 太田光さんのやろうとしたことは、それに近いものなのかもしれない。


 もう一人、凄いなぁ…と思ったのは、ベッキーさん。
 これも、たまたま 『古代ローマ大発掘スペシャル』 (25日夜の日本テレビ) を見ていたときに感じたことだ。

ベッキー2

 彼女はレポーターとして、ベスビオ火山の噴火によって埋もれた古代都市ポンペイの町を訪れた。

 ガイドを務めるイタリア人スタッフが、ポンペイの住民がどのような死に方をしていったのか、彼女に説明する。
 その中に、家族の安否を気づかい、噴煙による窒息の苦痛をこらえながら、上半身を立てたまま息絶えた (と推測される) 父親の石膏像があった。

 その姿を見て彼女の目から涙が流れる。

 たぶん、これを 「あざとい演出」 として嫌う視聴者が多かったろうと思う。
 自分も普通だったら、こういう安直な 「お涙ちょうだい」 的視聴率稼ぎにうんざりしていたと思う。

 だけど、この涙のタイミングは見事だった。
 演技では、こういうタイミングでは泣けない。

 たぶん、ごくごく単純に、(たとえ設定が虚構であったにせよ) 、彼女はその家族を襲った悲劇にストレートに感情移入できたのだ。

 甘っちょろいセンチメンタリズムをそこに読みとるのは間違っている。
 そこには、悲劇をしっかり悲劇として感受できる、きわめて高度で知的な感性が存在していた。

 これは、ベッキーならではのものだと思った。
 そこには無知から来る素直さとは別の、洗練された素直さがあるような気がした。
 たぶん、他の女性タレントが同じ反応を示したら、自分は 「アホらし」 と思ってチャンネルを変えていたかもしれない。

 そうさせない 「涙の力」 というものを、このタレントは持っている。
 今までファンでも何でもなかったのに、ちょっとした発見だった。

 バカバカしいバラエティ番組ばかりはびこっているように思える今日このごろだけど、着実に良いタレントは育っている。
 少しだけうれしかった。

コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 00:32 | コメント(4)| トラックバック(0)

木村流スープ術

【町田】 みなさまこんにちは。
 アウトドア料理の達人を一人ずつお迎えして、秘伝の野外料理のコツをお伝えする 『楽しい外ごはん』 の時間がやってまいりました。
 
 ええ、キャンプ料理といいますとですねぇ、バーベキューとか燻製づくりとか、「野外だぁ、焚き火だぁ、マキだぁ、キャンプファイアだぁ、フォークダンスだぁ」
 …と限りなく大げさな方向に広がってしまうことが多いんですけれど、まぁ、家にいるときには時間がないために挑戦できないような、「ちょっと凝った料理を楽しむ」 …ってな風に考えればよろしいのじゃないでしょうか。

 で、凝った料理って何だろう…といいますとですね、フォアグラ、トリュフ、キャビアとかいう “高級食材” を使えば凝った料理になる……というわけではないんですね。

 料理の中で、いちばん凝り甲斐があるのはですねぇ、実はツユなんですね。

 うどんのツユ
 ラーメンスープ
 クリームシチュー
 カレーのルー

 すべての味は、汁モノが基本であります。

 というわけで、今日の 『楽しい外ごはん』 ではですねぇ、「スープの達人」 をお招きしております。
 東京キャンピングカーランドの店長を勤めていらっしゃる木村元一さんとその奥様でぇーす。
 さぁどーぞぉ!

木村夫妻

【木村】 え、こんなふうな処理になるんですか? 町田さんのクルマの中で交わしたあの雑談が…。
【町田】 まずいすかね? しゃべりにくい?
【木村】 いえいえ、しゃべりにくいも何も…。だってこの導入部分は創作でしょ? 実際に僕がしゃべっているわけではないんで…もうお任せしますよ。
【町田】 ありがとうございます。……で、おいしいスープの作り方って、何かコツがあるんですかね?

【木村】 これは、もう、ただただ時間をかけるのが一番なんです。
 で、僕なんかキャンプ場で連泊するじゃないですか。
 すると、もう着いたらすぐに、火に鍋をかけて、ゆっくり煮出していくんですよ。60度ぐらいの温度でトロリトロリと。
 それを2~3日続ける。

【町田】 え? じゃキャンプ中にはスープは飲めない?
【木村】 いやいや、2~3日というのは 「理想」 という意味ですよ。そのくらい手間ヒマかけるとおいしくなる…ということなんですね。
 よくラーメン屋さんなんか寝ないで鍋に張り付いている、というじゃないですか。
 でも、さすがにそれはきついので、夜は1回保温鍋のようなものにあけて保存するんですね。
 そして、3時間くらいしたら起きて、また火を入れる。
 で、実際に少し時間をおいた方がいいんです。味がしみ出してくるわけです。
 ずっと熱を加え続けると、スープが疲れちゃうんです。……あくまで素人の意見ですけどね。

【町田】 …というと、最初の日はスープは飲めないわけね?
【木村】 そのくらいの意気込みでやると、おいしいものができるんですよ。
 だから1泊のキャンプ場じゃ無理ですけどね。

【町田】 で、肝心のダシは何で取るんですか?
【木村】 どんな料理にするかによって違いますけど、高級なのはやはり牛ですね。
 よくフォンドボーとか、いいますけれど、これは本当に琥珀色に輝くいいスープになります。

【町田】 豚でもいいの?
【木村】 もちろん豚でも鶏でも…。特に、鶏は何でも使えますね。
 で、鶏はダシにする前に、一回洗うといいんですね。
 普通ダシを取るときは、洗わないで、そのまま水の状態から煮立てていくんですよ。シイタケなんか、絶対に洗っちゃダメですからね。
 しかし、鶏はそうしちゃうと、ちょっと血生臭さが残ります。
 だから、ちょっと洗う。
 これラーメン屋さんでやっているのを見て覚えたんですけどね。

【町田】 ほかに手を加えることはないんですか?
【木村】 ラーメンスープなどを作るときは、ほのかに甘さを加えるといいですね。
 簡単に思い浮かべるにはリンゴなんですけど、ただ、そのままのリンゴを擦ると酸っぱくなっちゃうんですよ。
 そこに隠し味的な何かを加えるとか、そういう工夫が必要だと思うんです。

【町田】 あ、その感じ、分かりますね。
【木村】 僕が試して良かったのは、桃なんです。これを果汁にして入れる。
 これはとても上品な、いい甘さが出ます。

【町田】 そうやって作ったスープをどう使われるんですか?
【木村】 ベーススープさえ作っておけば何にでも使えるんですよ。
 それを元にクリームシチューにしてもいいし、そこからカレーのルーもできる。うどんのツユもOK。
 で、こいつでミソ汁を作る。
 これはねぇ、もう今までこんなうまいミソ汁があったのか! と思えるくらいすごいミソ汁になります。豚汁でもいいですしね
 だから、ベーススープはけっこう量を作っておくと便利ですね。

【町田】 他にはどんな料理を楽しまれるんですか?

ボスケ
 ▲ 木村シェフのボスケ

【木村】 「ボスケ」 ってご存知ですか?
 パエリアの一種なんですけど、パエリアっていうと、普通エビとか貝とか、海鮮主体でやるじゃないですか。
 だけど 「ボスケ」 は鶏とキノコでやるの。最後にレモン汁をバーっとかけて。おいしいですよぉ! 
 うちのカミさんがねぇ、これをレストランで食べただけでマスターしたんです。すごいんですよ、彼女。
 「味の天才」 です。

【町田】 ご飯主体のものは、付け合わせがあるといいですね。
【木村】 あるんですよ、これがまた!
 「パピーノ」 というスペインの漬け物があるんですよ。
 これはね、ホールトマトをつぶして、塩、ローリエ、ガーリック、レモンとで味付けする。
 タバスコ入れてもいいかもしれないですね
 そこに、キュウリを縦に4分の1ほどに切ったもの…1口サイズですね。それを漬け込むわけですね。
 さらにセロリやビーンズなどを加えてもいいし、要は 「漬け物」 ですから、自分の好みで何でも。
 酒が進みますよぉ!

パピーノ
 ▲ パピーノ

【町田】 いやぁ、楽しそうだなぁ。
【木村】 キャンプっていろいろな楽しみ方がありますけど、やっぱり料理というのは、作っているときからすでに面白いし、夜は作ったものを味わいながら酒が飲める。
 今度一緒にキャンプに行きましょうよ。

【町田】 いいですねぇ! いつ?
【木村】 町田さんの都合に合わせます。
【町田】 ではでは、ぜひ近日中に。
 …というわけで、今日の 『楽しい外ごはん』 は、東京キャンピングカーランドの木村店長をお迎えして、お話をうかがいました。
 それではまた来週!

【木村】 本当に、来週もやるんですか?
【町田】 いいのいいの。ただのノリで書いているだけだから。




コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 00:42 | コメント(2)| トラックバック(0)

桐野夏生のダーク

《 Ⅰ 読者に与えた衝撃 》

 桐野夏生さんの 『ダーク』 という小説は、彼女の華々しい作家活動の中では、特に賞の対象になったわけでもなく、映画化の話が出ることもなかった作品だ。

 しかし、21世紀を迎えたばかりの日本社会とは、何であったのか。
 また、そこに生きた個人はどういう状態に置かれていたのか。
 それらのことを、これほど適切に捉えた小説は類例がなく、彼女の作品群の中でも、きわめて鋭く時代と切り結んだ作品の一つだといえよう。

桐野夏生ダーク

 同書が発表されたのは2002年。
 すでに桐野さんは、『顔に降りかかる雨』 で江戸川乱歩賞を受賞し、『OUT』 では日本推理作家協会賞を受賞。『柔らかな頬』 で直木賞を獲得していた。
 小説家としては揺るぎない地位を確立した時期の作品といってよい。

 そうなると、どうしても作家というのは、その時に支持してくれるファン層を大事にしたくなるものだ。
 冒険するよりも、すでに獲得した多くの読者ニーズに合わせて芸風を確立していくという “守りの姿勢” に入りがちになる。

 しかし 『ダーク』 は、ある意味、「それまでの読者を裏切った」 作品だった。

 ここに登場するヒロイン 「ミロ」 は、いうまでもなく著者のデビュー作である 『顔に降りかかる雨』 に主役として登場し、『天使に見捨てられた夜』 などで、新しいハードボイルド・ヒロインとして認知された女探偵の村野ミロである。

 固定ファンに愛され、作者にとっても大切なはずの主人公ミロは、ここでは、父を殺し、韓国人の愛人になり、やくざな男にレイプされ、殺人犯として追われる。

 多くのミロファンは、この新しいミロ像に衝撃を受けた。
 事実、それまで桐野さんの愛読者を務めていた一部の人たちは、この救いのないミロ像に幻滅して、作家とファンとしての距離を少し空けるようになった。

 しかし、そのような代償を支払いながら小説家桐野夏生が新しく切り開いた地平は雄大だった。

 結論から先にいうと、これは 「閉ざされた世界からの脱出」 をテーマにした作品なのだ。

 20世紀末から21世紀に移るときの世界的な激動期を経験しながら、実はな~んにも変わっていない 「日本」 という国のどうしようもなさ。
 そのことから生じる閉塞感。

 多くの人が、窒息しそうになっていても、そのことに気づせないほど巧妙に練り上げられた密閉社会の安定感。
 そういう状況からの脱出は可能なのか?
 出口はどこにあるのか?

 それが、この単行本にして厚さ6センチというブ厚い物語の中の、最後の最後に明かされる。

 だが、そこに至るまでのストーリーは読者にとっては辛い。
 まず読者は、40歳になったら死ぬつもりでいる38歳の陰鬱なミロに出会わなければならない。

《 Ⅱ すべてが閉ざされた国日本 》

桐野夏生1
 ▲ 桐野夏生さん

 ミロの心の中を吹き抜けるニヒリズムは、それまで彼女の心を支えていた男 (成瀬) が、出獄を前に、獄中で自殺してしまったところから生まれた。

 彼女の抱えた喪失感は、やがて、自分をそのような状態に追い込んだものすべてに対する異和感へと変わるのだが、そのような 「異和」 がどうして湧き起こってきたのか、またその 「異和意識」 は誰に向けられたものなのか、それは彼女自身にもまだよくつかめない。

 彼女が、自分の養父の住む北海道に渡り、久しぶりにその養父と顔を合わせてみようと思ったのも、周りの世界に 「異和」 を抱く自分の秘密を探ろうという衝動があったからだ。

 ミロの養父である村野善三は、ミロが幼い少女であった頃から決して彼女を愛そうとはしなかった。
 そして、今もミロの出現に冷ややかな態度を崩さない善三が、目の前にいる。

 突然の心臓発作で苦しむ善三に対し、ミロは手を差し伸べることもなく、冷ややかに死にゆく義父の姿を見つめる。

 読者は、まずこのミロの心の荒廃にたじろぐ。
 小説の主人公として見た場合、そこには読者の感情移入を拒むような冷酷さがにじみ出ているからだ。

 善三には、ミロの母親が亡くなった後につくった愛人がいた。
 久恵と名乗る盲目の女性である。
 久恵は、ミロが善三を殺したと思い込み、後にミロに対する復讐を開始する。

 しかし、ここではその話には触れない。
 それよりも、ミロと善三、そして久恵という3人の登場人物が、それぞれ何を象徴しているのかということを考えてみたい。

 まず、村野善三。
 彼は、知性に長け、感受性も豊かな紳士だ。
 若い頃から、やり手の私立探偵としてならした男で、裏社会で生き抜くしたたかさと怜悧な判断力を持っている。
 平均的な日本の父親に比べ、はるかに 「カッコ良くて上等な男」 である。

 にもかかわらず、彼は、娘と真正面からぶつかったことが一度もないという意味で、親子の対立を恐れる日本の父親の典型だった。
 常に親の愛情を疑い、親の視線の真意を探ろうとするミロのような存在は、善三にとっては、落ち着かない気分にさせる 「他人」 でしかない。

 彼が相手にできるのは、自分の庇護をそのまま 「愛」 と受け取ってくれる久恵のような従順な女だ。

 愛人の久恵が盲目であるという設定は、非常に象徴的である。
 久恵は、目は見えないが、勘だけは異様に研ぎ澄まされた女性として描かれている。
 その鋭敏な勘によって、彼女は常人のセンスを遥かに超える特異な美意識をつくりだしている。

 しかし、久恵の美意識は、目の見える健常者から見れば滑稽であり、時に醜悪ですらある。
 彼女の美意識が通用するのは、彼女と価値観を共有する人々が住む狭い世界の話でしかない。
 久恵は、その価値観を認めてくれる絶対的な後ろ盾としてのみ善三を必要とした。

 この善三と久恵の関係に、読者は何を読みとればいいのだろうか。

 そこに、高度成長期からバブルの時代に至るまで、日本国内でしか通用しない価値観を練り上げることに腐心してきた、日本の平均的な中流家庭の 「父と母」 の姿を読みとることは可能だろう。

 このような善三と久恵に対し、ミロは一人の 「外国人」 として登場する。
 もちろん彼女は、人種的には日本人でしかない。
 しかし、若い頃から自分の周りを包む空気に同調できないものを感じていたミロは、意識の上ではすでに 「外国人」 だった。

 彼女が 「外国人」 として生きざるを得なかったのは、その生い立ちにおいて、日本では当たりと思われる親子関係から疎外されていたからである。

 表面的にはひとつの家族であるように装われていたが、その裏で、ミロは自分の大切な母親を養父である善三と奪い合わなければならなかった。
 そんな奇形的な親子関係を、むしろ 「常態」 として生きてきたミロの目から眺めれば、周囲にいる普通の親子たちは、よその国の家族に思えたことだろう。

 ミロは、普通の日本人が無邪気に尊ぶものに何一つなじめなかった。
 「植物の芽が黒い土から現れるような豊かな春の気配」 をベタ付いた嫌なものと感じ、電車の中で戯れる小学生たちが発する 「日向の犬のような匂い」 を嫌悪した。
 彼女は、日本人なら当たり前のように尊んでいる日常生活の価値観を信じられない人間として成長した。

 善三とミロの関係は、激動する世界の動きに首をひそめて、おのれの安定だけを希求する日本人と日本社会に対し、そのような社会の欺瞞性と閉塞性に窒息しそうになった人間の悲鳴を暗示したといえよう。

《 Ⅲ 激動する世界 》

桐野夏生2

 1990年代から2000年代にかけて、国内では失業者が大量に誕生し、リストラによる自殺者も急増した。
 しかし日本は、世界の状況から比べると信じられないくらいの安逸な空気に包まれた 「平和な国」 だった。

 餓死者が当たり前のように出る北朝鮮。
 今なおテロ事件が絶えないイラクやアフガニスタン。
 富者と貧者の格差がますます拡大していく南米諸国。
 内戦が絶えないアフリカ諸国。

 そのような国々の実状を伝える映像がテレビに映ったとしても、そこに現れる戦禍に苦しむ外国人たちは、日本のお茶の間でテレビを見ている視聴者に対して、物乞いもしなければ、窮状を訴えることもない。

 しかし、突然家を訪問したミロは、善三にとって 「窮状を訴え、物乞いをする外国人」 に見えた。
 つまり彼女の来訪は、善三にとって、今まで直視して来なかった自分のいびつな親子関係を問い直し、その修正を迫り、反省を促すまがまがしい 「事件」 であった。
 彼の突然の心臓発作は、そのことへの耐え難き負担を暗示している。

 そして、ミロ自身も、何年も会うことのなかった養父と顔を合わせたことで、ようやく、自分が村野家では一人の 「外国人」 であったことに、そして、自分は日本という国においても 「外国人」 であったことに気づく。

《 Ⅳ 閉域からの脱出 》

 善三の死に立ち会い、自分の置かれた状況を納得したミロに、やがて転機が訪れる。
 転機をもたらしたのは、徐鎮浩という韓国人の男だった。

 徐は、バッグや貴金属のコピー商品を売ることを生業にする男だが、時には覚醒剤や銃の密輸も平気でやってのける。
 言ってしまえば、儲けるためには何でも行う冷酷なやくざ者でしかない。

 しかし、彼は韓国の民主化を実現するきっかけとなった光州事件に参加して、そこで繰り広げられた殺戮、テロ、リンチを自分の身体で体験していた。
 そういった意味で、徐は、現在世界中の貧困社会ではどこにでも溢れ、60年前には日本にも当たり前のように溢れていた、たくさんの死体が発する 「死臭」 を知っている男である。
 つまり、観念ではなく生理として戦争や悲惨を感じとれる人間だった。

 ミロは、その徐に、日本の男たちが持っていない 「毒」 と 「強さ」 を感じる。

 彼女は徐と愛人契約を結び、やがて本物の愛に目覚めていく。
 なぜなら徐は、日本においては 「外国人」 でしかなかった自分を、当たり前のように受けとめてくれた最初の人間だったからだ。

 彼女は、徐の仕事を手伝うために在日朝鮮人になりすまし、衣裳もヘアスタイルも変え、ついには日本の国籍さえ捨て去る。
 そして、偽造パスポートをあやつりながら、日本と韓国の国境にとらわれない自由人として生き始める。

 しかし 「自由人」 とは、逆に、国家のルールに守られることのない人間であることも意味する。
 自分の才覚だけで、いかようにも稼げる自由がある代わりに、降りかかる危険を自分でかわさなければならなくなる。
 警察も、やくざ組織も、彼らにとっては同じような 「敵」 でしかない。

 身を焦がすような快楽と、胃の縮まるような不安が、彼らの毎日を彩る。
 しかし、そういう暮らしこそ、実は 「日本」 という閉塞社会で押しつぶされそうになっていたミロが求めていたものだった。
 彼女は、ついに生きることの実感と躍動感を手に入れる。

 しかし、代償も大きかった。
 彼女が愛した徐は、久恵の企む復讐によって下半身不随になり、さらに警察に逮捕されてしまう。

 ミロ自身も、ヤクザ組織に関わる男にレイプされ、その極限状況の中でその男を殺してしまう。
 レイプした男は死んだが、彼女のお腹の中には、その男のタネが宿ることになる。

 警察からもヤクザからも追われ、これ以上の悲惨さはないだろうという最悪の状態に落ち込んでいくミロ。

 しかし、彼女は、そこからたくましく生き始める。
 多くの日本人が直面することのない、人間の根元的な力が試される機会を経験して、彼女は生き抜くための最終的な武器を手に入れる。
 その武器こそ 「私にはまだ命が残されている」 という “開き直り” だった。

《 Ⅴ ダークの意味 》

桐野夏生3

 ラストシーンは象徴的である。
 ミロは、レイプされた時にはらんだ息子の手を引き、自分たちを追う者を出し抜いて、未知の土地 (沖縄) の見知らぬ町に逃れていく。

 住むところも仕事もない逃避行の果てに、心細さと闘いながら、ミロは徐が出所するまで、その子供を育てながら強く生き抜く決意を固める。

 普通の日本人なら 「破滅」 という言葉でくくるしかないような絶望的な状況を、彼女は自分の活路を切り開くチャンスに変えようとする。
 そこには、負を積み重ねることによって逆にプラスに転じようとした 『OUT』 の雅子にも似た強さが感じられる。

 タイトルとなった 「ダーク」 とは何を意味するのか。
 ミロの心が抱えた闇を表現していることは容易に想像がつく。
 しかし、この闇は、その奥に踏み込んでいくことによって、逆に開けていく世界があることも暗示している。

 光明にあふれた世界は、行ってはならない場所、触れてはならない物を明示する。だから、光りは 「人間が行うことには限界がある」 ことを示すものとなる。

 だが、闇は、その限界を突き抜ける力を人間に与える。
 この本に限っていえば、ダークの同義語はフリーダム (自由) である。

音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 00:22 | コメント(2)| トラックバック(0)

レインダンス

 こんばんは。町田でぇ~す。
 火曜日のJポップ・クリティークの時間がやってまいりました。

 早いものですね。
 11月ももう終わり。
 だんだん街のクリスマス・イルミネーションも増えてまいりまして、気分はもう年の瀬モードですね。
 紅白歌合戦の司会も決まったとかで、芸能界の話題もですねぇ、年末っぽくなってまいりました。

 忘年会のシーズンになりますと、昔はけっこうカラオケなどにも行っていたのですが、最近は “酒ざんまいの日々” も医者に止められるようになりまして、最近はホント、「思い出したように」 行く…というペースになっちゃいましたね。
 そんなわけで、新しい歌を知るのはテレビぐらいになっちゃいましたので、最近のJポップはさっぱり。
 
 んなわけで、ここで採りあげる曲も、どうしても、一番カラオケの現役をやっていた80年代までの曲が中心になっちゃいますね。
 ご容赦を。

 で、今回も80年代の曲ということで、吉川晃司さんの歌を採りあげてみようかと思っております。

吉川晃司ジャケ
 
 ええ、前回はですねぇ、バービー・ボーイズの 『チャンス到来』 と、ポリスの 『見つめていたい』 を聞き比べていただきまして、80年代の終わりごろからJポップのリズムパターンがものすごく “洋楽化” されてきたというお話をさせていただきましたけれど、今日はちょっとその続きのようなお話をいたします。

 前回もお話ししたと思うんですが、Jポップという言葉が生まれ、その概念が定着したのは、まさに80年代の終わりなんですね。
 それまでは、日本人のつくった現代的歌謡曲を表現する言葉として、「ニューミュージック」 などという言葉が使われておりました。
 さらに、大昔は 「和製ポップス」 なんて言葉も使われておりましたですね。

 で、「ニューミュージック」 なんですが、これは、70年代的なフォークブームと、その後のアイドルポップ路線が合わさったような音楽でありまして、曲調やアレンジは、都会的なポップ感覚に満ち溢れていながら、曲作りはアーチストが自分自身で手掛けるという意味で、フォークブームの延長でもあったという音楽なんですね。

 それが、いつ頃から 「Jポップ」 なる言葉にとって代わられるようになったのか。
 おそらくそこには、なんらかの大きな転換があったように思われます。

 どんな転換だったのか。

 リスナーの志向の変化、音楽産業の構造的変化など、いろいろな理由があるかとは思いますが、私めが考えるのはですねぇ、80年代に入って、「録音技術」 が急速に進歩したからではないか…というふうに考えております。

 というのは、1970年代の後半からですねぇ、音楽を録音するスタジオにおいて、「デジタル録音技術」 が導入されてきたんですね。

 それによってですねぇ、多重録音技術などもどんどん進んできまして、1980年代の終わり頃には、48トラックなどというオーバーダビングも可能になってきます。

 これなんか、ビートルズが最初にスタジオで録音した時などは2トラックだったということを考えると、すごい時代の進化ですよね。

 それだけじゃないんですね。
 録音技術のデジタル化によってですねぇ、同じリズムが続くような曲では、最初に16小節だけのリズムセクションを用意しておけばですねぇ、後はそれを機械的につなげていくというような録音の仕方が可能になってきたんですね。

 こういうことが可能になっていくと…、たとえばですねぇ、洋楽のセンスがたっぷり盛り込まれているようなリズムセクションがワンセット用意されればですねぇ、それが使い回しできるようになってきたんですね。

 さらに 「リバーブ・シミュレーター」 などというデジタルオーディオ機材が発達してきましてですねぇ、カッコいい欧米の音がデジタル処理によって、簡単に真似することができるようになってきたわけです。

 今までは、海外のアーチストが出す音……ギターなり、ドラムスに関してですけれども…その音を真似するにはですねぇ、「チューニング」 というアナログな方法しかなかったわけです。

 たとえば、
 「ヴァンヘイレンは、ノーマルチューニングした後に、ギターの各弦を半音低くチューニングしている」
 とかですねぇ、
 「ローリングストーンズは演奏前に完璧なチューニングを施した後で、少しだけそれを狂わせて、ノイズィなサウンドをつくっている」
 これ、「バッドチューニング」 などという言葉と一緒に、一時 「神話」 になりましたね。
 …ホントかどうか分かりませんが、そんな逸話が、まことしやかに流行った時代がありました。

 で、このようにですねぇ、現代のようなサウンドエフェクトが発達していなかった昔はですねぇ、誰もが必死になって、海外の音楽ビデオなどを何度も巻き戻しながらチェックしてですねぇ、まぁ好きなミュージシャンの奏法やチューニングを盗んだわけですが、今は音響特性を簡単にコントロールするミキシング技術が相当発達いたしまして、誰もが簡単に原曲のイメージに近い音を出せるようになったわけであります。

 そんな例をひとつ取りあげて、聞き比べてみましょう。

RAINDANCEがきこえるジャケ

 まず最初に、吉川晃司さんが1985年にリリースした 『レインダンスがきこえる』 。
 次に、その歌のヒントになったと思われる、同年パワーステーションが海外でヒットさせた『サム・ライク・イット・ホット』。

 これを2曲続けて聞いてみたいと思います。

 では最初に、吉川晃司さんの 『RAIN-DANCE がきこえる』 を聞いてみてください。

 ▼ 『RAIN-DANCE がきこる』 (YOU TUBE より)


 ええ、いかがでしたでしょうか。
 では、次。
 パワーステーションの 『サム・ライク・イット・ホット』 をどうぞ。

パワーステーションジャケ

 ▼ The Power Station 『Some Like It Hot』 ( YOU TUBE より)


 2曲続けてお聞きいただきましたが、ええ、この2曲が似ているのはですね、ともにリズムセクションがタイトで、しゃきっと決まっているところなんですね。

 これは、ドラムスの残響処理に、ゲートリバーブという手法が使われているわけなんです。それによって、カミナリのようにバシャコン! と響きわたる音が前面に出てきているわけなんですね。

 このゲートリバーブという手法は80年代初頭にけっこう流行りまして、それを意識的に全面に打ち出したパワーステーションは一時期、時代の寵児になっています。

 もともとこのパワーステーションというのはですねぇ、デュラン・デュランのメンバーの一部と、古くからヴォーカリストとして活躍したロバート・パーマーが一時的に組んだセッション用のバンドだったんですけれども、これが商業的に大ヒットしてですね、ロバート・パーマーの人気も復活したわけですね。

ロバート・パーマー1

 ええ、聞いてお分かりのように、非常にデジタルで人工的な音ができあがっておりまして、まぁ、当時の雰囲気というものをよくつかんでいるわけですが、それと同じ手法で音をまとめた吉川晃司サイドもですねぇ、なかなか負けない音を出していたように思います。

 で、このような進歩を遂げることによって、「Jポップ」 は初期の目的を遂げたように、私は感じております。

 どういうことかというと、1988年、J-WAVEのスタッフたちと、邦楽担当のスタッフたちが集まって 「洋楽っぽい邦楽」 をつくるという試み。
 つまりですねぇ、「日本人による洋楽」 を確立しようとしたしたもくろみ。

 そのもくろみは、今はもう完全に果たされたなぁ…と、私などは感じておりますね。
 サウンド的には、もう 「洋楽」 を聞く必要がなくなってきた。
 そんな思いすらいたします。
 だから、今の若い人たちにとって、「音楽」 といえば、ほとんどの人にとって 「邦楽」 を意味するようになったのではないでしょうかね。

 ただ、私めが考えるのは、このようにサウンド的な成熟を遂げたJポップスからですねぇ、抜け落ちたものがひとつあるように思います。
 それは 「歌詞」 の部分ですね。

 歌詞においては、むしろ多くのJポップが昔より “後退” している。
 テキトーにノリのよい英語を交えた、単なる 「響き」 と化した歌詞か、あるいは誰も否定できない 「愛」 、「誠実」 、「優しさ」 などを無条件に歌い上げる歌詞。
 今のJポップの歌詞は、そのどちらかに集約されてきたような感じを受けます。

 歌詞の面白みがなければ、私はやっぱり洋楽を聞いていた方がいい…と、感じちゃいますけどね。

 ま、そんなことを言っているうちに、今日もまた時間となりました。
 それではみなさん、ごきげんよう。

音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 00:16 | コメント(7)| トラックバック(0)

キャリオン

 キャンピングカーショーに出展してくるビルダーさんで、いつも気になるバンコンをリリースしてくる会社がある。
 京都の 「アルフレックス」 さんだ。

キャリオン外装1

 この会社の造るクルマは、純然たるキャンピングカーとはいえない部分がある。
 写真でみるように、大胆なローダウン。
 目立つアルミホイール。
 凝った意匠のエアロパーツ。

 どちらかというと、カスタムカーの流れを組んでいる。

 しかし、まったくのカスタムカーなのか?
 …というと、これまた微妙で、そこに収まりきらない造りになっている。

 たとえば、ファミリーユースを意識した子ども用2段ベッド。
 収納性を意識したリヤラゲージスペース。
 アウトドアユースを意識した、清掃が楽なクッションフロア構造。
 …等々。
 キャンピングカーとしてのツボも外していないのだ。

 この微妙なスタンスが、妙に心にひっかかる。

 どういうユーザーを想定した、どういうコンセプトのクルマなのだろう。

 11月初旬にデビューした 「CARRION キャリオン」 という新車を見ながら、開発にあたった同社の竹山嘉伸 (たけやま・よしのぶ) 社長に話を聞いてみた。

アルフレックス竹山社長

 「うちの下取りのクルマを見てみると、アルファード、エスティマ、マツダのMPV、オデッセイ、ステップワゴン…そういうミニバン系のクルマが圧倒的に多いんですよ。
 それも少し手の入ったクルマ。
 たとえば、アルファードでも純正のエアロが付いているタイプとか、オデッセイやステップワゴンにしても、小さなエアロが付いているとか…」

 ノーマルなミニバンよりも、ちょっとだけドレスアップしたクルマに乗る人たちが、アルフレックスの開発するバンコンのファンだという。

 しかし、そのドレスアップが
 「ちょっとだけ…」
 というところがミソだ。

 一般的にカスタムカーは、見た目の華麗さ、ゴージャスさを重視する傾向にあるが、そこを “抑える” ところに、同社のポリシーがあるらしい。

 竹山社長はいう。
 「僕らのつくるクルマはスニーカーなんですよ。お洒落な革靴でもなければ、実用本位のスパイクでもない。
 スポーティーではあるけれど、ストリート系のファッションにも合うというところが狙いどころで、ラグジュアリーとは一線を画するものとして考えているんです」

 つまり、見た目を重視するカスタムカーでもなければ、「道具」 として割り切れるキャンピングカーとも違うという。
 その微妙なスタンスを保つことに、同社はもっとも神経を注いでるようなのだ。

 「キャリオン」 が、まさにその代表的なクルマだそうだ。

 「位置づけでいうと、好評をいただいたフレックスランドナーという機種のファミリー版であり、その普及版なんですよ。
 ランドナーは2人用として割りきったクルマでしたけれど、これは小さなお子様が寝られるように、リヤに “チャイルドスリーパー” という折り畳み式の2段ベッドを設定しています」

キャリオン内装7

 …とはいっても、家族旅行で遠出をするようなクルマにはしていない。
 普段の街乗りを優先して、ベース車はハイエースのロングバンナローボディを使って取り回しを重視。
 これ1台で、通勤、買い物、ピクニック、子どもの幼稚園への送迎、1泊程度のキャンプなどをオールラウンドにこなすようにまとめられている。

 だから、内装もシンプル。
 普通のバンコンが装備するようなオーバーヘッドコンソールや、扉で仕切った収納庫などはあっさりと省かれている。

 代わりに、このクルマでは 「バッグユーティリティ」 なるスペースが設けられた。
 飛行機などには、足元にカバンを置けるスペースが確保されているが、それと同じ感覚で、セカンドシートに座ったときに足元の右側にバッグを放り込む場所が設定されているのだ。

キャリオン内装4

 「要は、ただの “空間” なんですけど、夜中でも荷物の中を調べられるように、フットライトを兼ねた照明を2灯埋め込んでみました」

 そういう微細な部分の積み重ねが、このクルマの使い勝手を高める秘密となっているようだ。

 メインベッドを展開するときも、独特の仕掛けがある。

 「いちいちベッドの支えとなるポールを取り出して、それをシートの間に挟み込むというのは面倒ですから、支えはセカンドシート下に埋め込んだ台座をスライドさせればいいという構造を採り入れました。
 その上にサブマットを載せてサードシートと繋げれば、それだけで、全長2mというマスターベッドができあがります」

キャリオン内装5 キャリオン内装8

 話を聞いていると、普通のミニバンやワンボックスカーを使って車中泊を楽しむ人たちには、もってこいのクルマに思えてきた。

 しかし、そういうニーズを持つ 「車中泊派」 は、このクルマでは少数派だという。
 車中泊に欠かせないFFヒーターなどを欲しがる人たちは、全体の2割。
 多くの人は、オプション設定されているサブバッテリーすら装着しない。

 「結局キャンプよりはピクニックというお客様なんでしょうね。
 メインはシティユース。
 ただ “保険” の意味で、いざとなったら寝られるキャパシティも確保しておきたい…。そういう独特のファン層に支えられたクルマだと思います」

キャリオン内装3

 こういうクルマのライバルメーカーは、どこなのだろう。

 意外なビルダーさんの名前が挙がった。

 「よく当たるのはアム・クラフトさんなんですよ」

 「えっ! あっちはしっかりしたキャンピングカーコンセプトのバンコンがメインじゃないか」
 「そうなんですけど、クルマを開発するときの考え方が僕らとよく似ているんですね。
 ひと言でいうと、自社ブランドに対する “こだわり” がすごい。
 アムさんという会社は、オリジナリティを高める意欲をものすごく持っているビルダーさんなんですよ」

 たとえば、シートひとつとっても、そこに自社ロゴをデザインしたタグを入れる。
 フロアマットにしても、家具にしても、必ずオリジナル性を訴えるデザインを施す。
 細かいことだが、シートバックの裏にネットを張って、小物を挟み込めるようにする。
 日常的にはユーザーが目にすることのないテーブルの裏側にもクロスを施す。

 「そのようなトータルコーディネートにこだわるアムさんの姿勢に、うちと共通したものがあるように思えるのです。
 つまり同類の匂いを嗅ぐんです。
 …そんなことを言ったら、アムさんには迷惑なのかもしれないですけれど (笑) 。
 要は、同じ車種を継続しながらも、常に手を加えていって、絶えず進化させていく。
 そういう形でブランドを育てていくというアムさんの姿勢に、僕はものすごく共感します」

 他社のクルマへの言及でありながら、そこで語られる言葉は、まさに竹山さんのクルマ造りの哲学そのものである。

 さらに面白い話も聞いた。
 ユーザーは、自分の選んだクルマに自信を持ちたがっているというのだ。
 そのためには、分かる人には “すぐピンと来る” 差別化ポイントを上手に盛り込むことが大事だという。

 そのひとつの例が、アルミホイール。
 さりげなく履いているホイールが、ベンツ、BMW、ベントレーなどのアフターパーツで人気を得ているWald (バルド) 製。
 それをアルフレックス・オリジナルとして、わざわざハイエース用に開発したもらったものを装着している。

キャリオン外装2

 このホイールといい、ホワイトレザーで統一されたインテリアといい、ストリート系ファッションにも通じる同車のアーバンデザインは、何を参考にして生まれてくるのか。

 「それは秘密…」 と笑いながら、竹山さんはこう語る。 
 「デザインするときの参考として見るのはアパレルなんですわ。服飾とか靴とか…。
 結局、人の生活にいちばん密着したデザインが試されるのはアパレルの世界ですよね。
 そのデザインがカッコいいかカッコ悪いかというのは、使う人間との関わりで生まれるものだから、キャンピングカーのインテリアだって、人が関与した状態で眺める視点がないとダメだと思うんです」

 竹山さんは、普通のキャンピングカーデザイナーが勉強するために通う住宅展示場や家具屋には行かないという。

 「それだったら、むしろホテル。それも室内ではなく、ロビーなどの雰囲気。
 海外のリゾートホテルなどは、キャンピングカーのインテリアを勉強するときの宝庫ですね」

リゾートhotel1

 アルフレックスのバンコンは、そのような繊細な観察によって、周到に造られている…と、竹山氏は言いたいようなのだ。

 だから、一見派手さを強調白いレザーシートも、実はイベント用。

 「シート地も、このキャリオンに関しては、白、黒、ライトグレー、サンドベージュの4色を用意しています。
 白は室内も広く見せますし、うちのイメージカラーのように思われているので、展示車としてはこれ一本で押していきますが、購入されるお客様はいろいろと自分の好みのシート柄を選ばれています」

 ショーではインパクトの強いディスプレイに徹しながら、実際には、きめ細やかな選択肢を用意しているのが同社の特徴。
 “やんちゃ” に見える思い切ったローダウン仕様も、これまたイベント用なのである。
 お客さんに納車するクルマはそこまで下げない。

 そのへんが、このビルダーさんの、ある意味でしたたかなところだ。

 カスタムカーからキャンピングカーへという移行を遂げたビルダーさんが多い中で、この会社は、そのどちらでもない未知の航路に向かって、そぉっと漕ぎ出している感じがする。


campingcar | 投稿者 町田編集長 04:14 | コメント(0)| トラックバック(0)

昔住んでいた町

 昨日、所用で東京の西郊外の町へ行ってきた。
 私鉄を乗り換え、ターミナル駅に戻ったとき、ふと、途中下車してみる気になった。
 昔、住んでいた町だったからである。

 住んでいたのは20年以上遠い昔のことだ。
 20年も経てば、町の様子も変わる。

 4~5年前か。
 一度だけ、クルマで、昔暮らしたアパートの周辺を走ってみたことがあった。
 
 それから、さらに町の様子が変っていた。

 昭和の匂いが濃厚に立ち込める古びた駅舎が、立派な駅ビルに変身していた。小じゃれた看板を掲げたカフェやケーキ屋が建ち並び、東京中心街にはどこにでもあるような風景が展開していた。

 駅前のロータリーに降り立つ。
 クリスマス・イルミネーションを施した店が連なり、人工的な照明に満たされた映画の中の町のような不思議な活気をみなぎらせている。

 ロータリーの広さは昔と変らない。

 かつて、駅を利用する通勤客も今ほど多くなかった時代。
 ヒマを持て余した若いタクシーの運転手たちが、そのロータリーでスピンターンの練習をしていたのを見たことがある。
 とんでもないほど、のどかな時代だったのだ。

 駅前から西側に進路を取る。
 空漠とした広がりを見せていた駐車場は縮小され、テナントをたくさん抱えたビルが建ち並ぶようになっていた。

 その一角に、ときどき通ったキャバレーがあったはずだが、その場所は、もう思い出せない。
 『ハワイ』 というチェーン店で、そこに勤める 「ネコ」 さんというホステスさんがお気に入りだった。
 『ゲゲゲの鬼太郎』 に出てくる猫娘のような雰囲気の人だった。 
 何度か指名し、何度か店外デートに誘ったけれど、いつも断られた。

 断られて、その後いつも寂しく通った居酒屋も、もう姿を消していた。

 駅を離れるにしたがって、次第に 「灯り」 が乏しくなった。
 繁華街ともいえず、さりとて住宅街ともいえぬ、微妙な街灯りの道が続く。
 静かな村祭りの、人気の少ない神社の前で繰り広げられる夜店の雰囲気だ。

つげ義春の1コマ

 「ここ過ぎて悲しみの町」 。
 太宰治がある小説の書き出しに使った言葉がそのまま使えそうな、奇妙な寂寥感と静寂が感じられる一角に出る。

 そこから下り坂となる。
 坂下を流れる小さな川を渡ると、私が住んでいたアパートがあるはずだった。

 坂の途中に、かつてはカウンターだけの小さな中華料理屋があった。
 それを探したが、その店があった痕跡すら認められない。

 店の名前は 『翠苑』 だったか、『翠軒』 だったか…。
 神経質そうで無口な中年のマスターが料理を作っていた店だった。

 何度か通い、何度目かにやっと口を利いた。

 「中華のスープとはものすごく栄養価が高いんだ。物が食べられないときでも、中華スープさえ飲んでいれば健康を維持できるんだよ」

 最初に口を利いたときの、そんなたわいない話を、なぜかいまだに思い出す。

 実は5~6年前にこの町を再訪したとき、この店だけには顔を出した。
 何も言わずに炒飯を注文して、黙って食べた。

 食べ終わって、
 「昔ここに通ったことがあるんですけどね」
 と切り出した。

 「覚えていますよ。お客さんの顔はそう簡単に忘れませんよ」

 しばらく世間話をした。
 「ここに通っていた人たちは、そのうちみんな遠くに行ってしまった。だけど、わたしゃ行く所がない。電車の乗ることも年に数回だけだしね。この町を出られた人々は幸せだよ」

 坂の途中にある店だったので、マスターの目には、カウンター越しに、静まり返る住宅街の広がりを捉えていたはずだ。
 ぼろアパートが並んでいたような場所が、いつのまにか小ぎれいな一戸建住宅の連なる風景に変っている。
 外食に頼る独身者たちが少なくなったことを、マスターは憂いたかどうか。

 炒飯はまずかった。
 昔、これをおいしいと思っていた自分の舌が変ったのか。
 それとも、マスターの腕が落ちたのか。
 
 でも、「相変わらず、いい味でした」
 と言って店を出た。

 その店も、今来てみれば跡形もなく消えている。

 そこから1~2分歩いて、かつてのアパートに着いた。
 
 木造の煤けた建物。
 それだけは、30年前と変らぬ姿をさらしていた。
 風呂のない1DK。
 そこで暮らした2年。ステレオは買ったが、冷蔵庫は買わずじまいだった。

 休日の夕方になると、隣に住む若い男の部屋が、いつも30分ほどギシギシと鳴った。
 最初は何の音か分からなかったが、その後に、そこの住人がカップルで出かけていくのを目撃し、ベッドのきしむ音だということが分かった。

 夕食はいつも 「酒」 だった。
 安い居酒屋を何軒か探し出し、それを順ぐりに回ったが、話し相手はできなかった。

 そして、酔って、坂道をくだり、自分のねぐらに戻った。
 住宅街の中に、ぽつりぽつりと灯りをともす小さな商店には、どの店も、いつもほとんど人影が見えなかった。
 それが “おとぎ話” の光景のように思えたものだった。

 20年以上経った今、かつて通った飲み屋はついに一軒も残っていなかったが、自分の暮らしたアパートの周辺だけは変らなかった。

 
コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 14:59 | コメント(0)| トラックバック(0)

夫婦の微妙な関係

 夫婦って、微妙だよな。
 「仲のいい夫婦」 ってよくいうけれど、そういう人たちを子細に観察すると、「どうしてあの2人の仲がいいのか、よく分からない」 っていうケースが多い。

 趣味もバラバラ。
 性格も正反対。

 それでも、けっこう和気あいあいとやっている夫婦というのがいるもんだ。

 そういう評判のご夫婦が近所にもいるのだが、私なんかが見ると、
 「ありゃ、奴隷と女王様じゃねぇか?」
 と思えるときがある。

 街を歩いているときも、手ぶらで、風切って先頭を歩くのは奥さん。
 で、旦那さんといえば、買い物の荷物をいっぱい下げて、必死に奥さんの後を追っている。
 たまに奥さんが振り返るわけだが、
 「ポチ、早く歩きなさい」
 …なんて言ってんじゃねぇか? 
 と思えるような顔つき。

 …おっと、うちのことか。

 それでも、自分を殺して奥さんを立て、にこやかに笑っている旦那さんてステキだ。 (うちのカミさん、たまにはこのブログでも読め!)
tamachan kumadesu
 ▲ オレ               ▲ カミさん

 性格も趣味も、根本的に違うのに、なぜ 「仲のいい夫婦」 というものがいるのか。
 長年の疑問であったが、それがちょっと理解できるようになった。
 長崎でキャンピングカービルダーを営むカスタムプロホワイトの池田健一さんのエッセイ (答は風の中) で、「キャラクターの異なる夫婦がうまくやっていく秘訣」 のようなものが書かれていたからだ。

 池田さんは、このエッセイのなかで、「不精でものぐさな旦那さん」 …つまりご自分のことだな。
 それと、「計画性に富んだ緻密な奥さん」 という対比で、面白い分析をされている。

 詳しいことは、そちらをお読みいただくとして、そこから解ったことを以下簡単に記す。(エッセイの後半に 「町田の解説」 として述べたことを繰り返すだけだが、ご容赦いただきたい)

 まず、「仲の良い夫婦」 というものを子細に観察すると、池田さんが書かれているように、性格的にはまったく正反対の場合が多い。

 でも、そこに秘密がある。

 つまり、夫婦仲というのは、お互いが、それぞれ自分にない特性を 「相手」 の中に探すことによって、癒されたり、励まされたり、勇気づけられたり、慰められたりするという関係になっているからだ。

 だから、お互いのキャラクターの振幅が激しければ激しいほど、夫婦の絆は逆に強まる。

 あまりにも自分に理解できない 「性格」 というのは、もうウシやカエルやシロクマの 「性格」 と同じようなもので、人は、案外寛容になるようにできている。

 目の前に、理解を拒絶するような 「未知の大陸」 が広がっていればこそ、人はそこを旅することで、面白そうな体験をいっぱい味わえそうな気分になる。
 男女の仲というのも、そんなようなもんだ。 

 ところが、なまじ相手の性格が理解できる位置にいると、そうはいかない。
 恋愛中には、「お互いに性格が似ているため何でも理解しあえる」 と喜んでいたことが、逆に、結婚すると鼻についてきたりする。

 人は、似た者同士の、ちょっとした 「違い」 にはものすごく敏感になる。
 なまじ似ているからこそ、かすかな違いが、かえって許せなくなる。
 ケンカしても相手の腹が読み合えるので、それぞれ自己嫌悪も加わって、ますます悲惨な状態になっていく。

 だから離婚の原因に多い 「性格の不一致」 というのは、性格が離れすぎているからではなくて、むしろ性格が極めて近いケースが多い。

 「そんなことはない! あいつと自分は性格が離れすぎている。だからお互いに理解できない」
 と思っている人。
 あなたのことね!
 
 よ~く、考えてごらんよ。
 「理解できない」 ということを理解しているということが、もうお互いの腹をうちを読み合っているってことなの。

 池田さんのエッセイを読んでいて分かったことは、夫婦の絆は、性格の一致がもたらすものではなくて、性格の不一致を面白がれる精神から生まれるということだった。

 世の中には、分からないものがいっぱいあった方が楽しい。
 「情報化社会」 なんて意味がない。
 何でも知ったつもりになるってことは、不幸なことだ。

 私は、なぜカミさんが、いつも私のことをバカにしたり、怒ったりするのか、いまだによく分からない。
 だから私は、幸せなんである。
 …と思うことにしよう。 

 池田健一さんのエッセイは、こちらでどうぞ。(↓)
 「答は風の中 38回目 ブショー派VSチミツ派」




コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 00:51 | コメント(8)| トラックバック(0)

ファースト横浜店

 秋の気配が濃厚に立ちこめるようになった11月17日。
 横浜市・都筑区にオープンした 「ファーストカスタム横浜ショールーム」 を訪れた。

 田園都市線の江田駅からタクシーを拾うと、高級住宅街の連なる並木道を通り過ぎること7~8分。

 「みずきが丘」 交差点に下りたって、そこから周囲を眺め回してみると、白地に青く 「FIRST CUSTOM」 を抜き出した看板が…。

ファースト横浜店

 「あ、輸入車ディーラーみたい!」
 温かい午後の日差しを浴びて輝く白亜の建物は、およそ今までのキャンピングカー展示場とはかけ離れた高級感を漂わせていた。

 ショールームのガラスの向こうには、同社の看板車種であるCGシリーズが並んでいるのだが、それがフェラーリやベントレーでも置かれているような雰囲気に見える。

ファースト横浜4 ファースト横浜3

 こんな展示場も見たことがない。
 グレード感が違う。

 中に入って、またびっくり。
 美しく磨き込まれたフローリングは、覗き込むと顔を映すぐらいにピカピカ。

ファースト横浜室内1 ファースト横浜室内3

 見学客の心を潤す観葉植物が至るところに並べられ、壁には上品な筆致で描かれた絵画が飾られている。

ファースト横浜室内4

 その間に並べられたCG-550、CG-500、ディレット、リモギンガなどが、美術館に展示されたアートのように輝く。

 ため息が出そうに美しい展示場である。

 入口近くで接客に務めていた佐藤和秋社長が、私の顔を認めて、2Fの接客コーナーに案内してくれた。

 エレベーターで2階に登ると、そこにはまた、今までのキャンピングカー展示場の雰囲気とは別種の、格調高い調度をあしらった接客スペースが広がる。

ファースト横浜室内5

 コンパートメントになった商談ルームが3部屋。
 キャンピングカーのアクセサリーパーツなどを並べた用品コーナーが1ヵ所。
 喫煙者のために設けられた喫煙コーナーが1ヵ所。

 なによりも素敵なのは、白と黒のコントラストも美しいモダンデザインのソファが並んだオーナーズラウンジ。

ファースト横浜室内6

 このコーナーはファーストのクルマを買ったお客さんと、その友人たちだけのために設けられた “憩いの場” だ。
 コーヒーが自由に飲めて、RV系の雑誌も読み放題。
 大画面の薄型モニターには、同社の商品紹介やクラブキャンプの思い出などを綴ったDVDが心地よい音楽とともに流されている。

 そのオーナーズラウンジの一隅に腰掛けて、さっそく佐藤社長に同ショールームオープンまでの経緯を、あれこれうかがうことにした。

ファースト佐藤和秋氏
 ▲ 佐藤和秋 社長

 やはり、関東圏への進出は、同社の念願だったという。
 「クルマそのものは気に入っていただいても、本社が遠い秋田ということで、購入を断念されるお客様が、今まではいっぱいいらっしゃたんです。
 だから、サービス体制も含めて、関東以西のお客様にも安心してご購入いただける店を持つことは昔からの夢でした」
 と佐藤さんは語る。

 それにしても、思い切ったハイグレードの店を展開したものだ。
 その理由は、どんなところにあるのだろう。

グランドロイヤル
 ▲ 伝説の名車 グランドロイヤル

 「キャンピングカーというのは、ある意味、高額商品なわけですよね。ベンツやBMW、レクサスよりも高い商品だって存在します。
 しかし、そのような高級商品を売る店舗であるにもかかわらず、私たちが今まで展開してきたショップも含め、店の方が商品の “格” に追いついていなかったように思うのです」

 そのため、ユーザーに充実した商品を買ったという意識を味わってもらう力が弱かったのではないかと、佐藤さんは考えていたという。
 そういう話から、この横浜ショールームの開設にはキャンピングカーのステータス性を高める意図があったことが伝わってくる。

ファーストCG550EX
 ▲ 現在のファーストカスタムの看板車種のひとつ 「CG550シリーズ (EX) 」 。ベース車は贅沢なハイエースワゴンGL。専門誌 『AUTO CAMPER』 の 「ビルダー&ショップが選んだベストキャンピングカー07」 に輝いたクルマ

 しかし、そこには、ファーストカスタムというビルダーならではの商品造りのポリシーも絡んでいそうだ。 

 佐藤社長いわく。
 「うちのクルマというのは、目に見えないところにコストのかかったクルマなんです。
 走行安定性や安全性、電気系統のトラブル防止策も含め、乗っていただいたオーナーさんでなければ分からないようなコストのかけ方をしているんです」

 つまり、その目に見えない部分のクオリティを顧客に感じてもらうためにも、クオリティ感の高いショールームという、目に見える部分で商品への信頼度を感じてもらうという意図があったわけだ。

ファーストボレロ室内
 ▲ 「CG550ボレロ」の室内

 同社が開発するキャンピングカーに込められた 「目に見えない部分のクオリティ」 とは、果たしてどんなものなのだろう。

 そのひとつが、キャブコンなどに導入されているスペースフレーム工法。

 これは、モノコックボディをカットしたときに、その剛性や強度を確保するために張りめぐらされる鉄骨フレームのことだが、このフレームがボディ全体を支えるために、同社の開発したキャブコンには絶大な信頼性が保証される。

スペースフレーム工法
 ▲ スペースフレーム工法

 「ところが、この鉄骨が溶接作業中に5mm狂っただけで、もう内外装の寸法が破綻して組み付けができなくなるんです。
 だから、ただ単に普通のパネルを張ってボディを造るのに比べ、3倍から5倍の慎重さと工数が必要となってきます。
 そういう “目に見えない部分のコスト” というものが、どうしてもうちのクルマには要求されてしまうんですね」
 と佐藤氏。

 しかし、その部分で手抜きをしないことによって、安全基準においては、ヨーロッパ車の基準値を超えるほどの安全性を確保しているという。

 キャンピングカーは、所詮は 「改造車」 に過ぎない。
 だが、たとえ改造車であっても、同社の造るキャンピングカーにはヨーロッパの高級車にも匹敵するようなクオリティが保証されている。
 そう佐藤社長は言いたいようなのだ。

 もちろんこのようなクオリティを維持するためのコストが、そのまま価格に跳ね返ってしまっては意味がない。

 「だから、コストを下げるための企業努力にはなみなみならぬ神経を注いでいます。
 部品も、ヨーロッパやアメリカのパーツメーカーに直接買い付けに行って資材コストを下げていますし、産業システムを整備して、分業体制を充実させるなど、あらゆる方法でトータルコストを下げています」

 しかし、それでも、今の価格を維持するためには収益が圧迫されるという。
 同社が代理店展開を広めるよりも、今回のような直営店運営に力を注いだのは、圧迫される収益を代理店に飲んでもらうのがしのびなかった、という事情も絡んでいたとか。

 正直、これほどの展示場を維持するのは大変なことだろうと察する。
 だが、この店舗こそ、同社にとっては自社製品のクオリティをアピールするためには必要不可欠なアイテムだったのだ。

ファースト横浜2

 ハイクオリティのクルマを売るには、それを展示するスペースにも 「クオリティ」 を与えてやらなければならない。
 フォーストカスタム横浜ショールームからは、そういう同社の意気込みがそのまま伝わってくるように思えた。


 ファーストカスタム横浜ショールーム
 神奈川県横浜市都筑区荏田南4-10-14
 電話 045-948-4211
 東名自動車道 「横浜青葉インター」 より15分
 東急田園都市線 「江田駅」 または
 市営地下鉄ブルーライン 「センター南」 よりタクシー
 「みずきが丘」 交差点が目印

ファーストパーティ
 ▲ 17日のオープン記念日に、新横浜駅近くのホテルで開かれたパーティ


campingcar | 投稿者 町田編集長 00:49 | コメント(8)| トラックバック(0)

初カノジョ

 初めて 「カノジョ」 ってのができたのは、二十歳になってからだったんだよね。
 相手は短大に通っていた女。俺よか一つ年下の十九歳。
 すげぇ美人!
 俺、有頂天だったね。自分で信じられなかったもん。

 きっかけは、ある女子短大の文化祭に行ったのよ。
 その学校では体育館をホールにして、バンド入れてディスコやってたの。

 俺、勉強はからっきしだったけれど、高校の頃から踊りは好きだったからさ。
 「ディスコなら、まかせてね」 だったのよ。
 ずっと後に、『サタデーナイト・フィーバー』 って映画がやってきたんだけど、ありゃ俺の映画だなって…思ったくらいだったからさ。

サタデーナイトフィーバー

 で、その女は黒いベッチンのミニのワンピースを着て、フロアの真ん中で踊っていたな。

 目と目が合ってさ。
 お互いに一目惚れよ。
 ステップ踏みながら、ずっと見つめ合ってさ。
 ドラマの主役になった気分よ。

 「あんた遊び人の顔ね」 …なんて、そいつもハスッパな口きいていたけれど、まぁ、後で聞いたらお嬢さんでな。親に金出してもらってピアノかなんかのレッスンに通っててさ。

 その日は 「一緒に帰ろう」 とか誘ってよ。ロック喫茶かなんか行ったんじゃないかな。
 お互いの電話番号聞いて別れたのよ。

 で、その女とのデートが始まったわけね。
 まぁ、すげぇ美人だから連れて歩くには良い気分なんだけど、ちょっと持て余したのは、喫茶店なんかでお茶飲むだろ?
 小むずかしい話をしたがるわけ。

 ヨシモト・リュウメイとかタカハシ・カズミとかさ。
 俺も聞いたことはあるけれど、詳しく知らない作家の名前を出すんだよな。

 こいつ本当に読んでんのかなぁ…と思ってさ。
 どこが面白いんだよ? って聞くと、
 「人間として創造的な人生を構築していくためには、体制側と戦う姿勢を持つ人の本を読まなければならないの」
 …っていうのよ。

 当時、ほら学生運動の真っ盛りの頃だからさ、そういう言い方って流行ってたんだよね。

 「私、労働者の側に立つ人が好き」
 なんて高らかに言うんだけどさ。
 それが、なんでベッチンのミニのワンピースで踊ってんだよ、って気分もあったけどさ。

 しょうがねぇから、俺もその手の本読んだよ。マクルーハンだったかマルクーゼだったか、「ヨーロッパ急進派の教祖」 とかいうの。

 全然解らなくてさ。
 突っ込まれると困るから、読んだとも言わなかったけどさ。

 まぁ、油断もスキもありゃしないって女でよ。
 こっちがタカハシ・カズミのことをうっかり 「巨人のピッチャー?」 なんて勘違いしようものなら、鬼の首取ったような残忍な笑いを浮かべてくるんだよ。
 当時いたんだよ、そういう名のピッチャーがホントに…。

 だけど、彼女は基本的にはマクレガーかなんかのポロシャツ着て、デッキシューズ履いてさ、フォークギター抱えてブラザースフォーなんか歌っていれば幸せって子だったからさ、俺も得意の音楽ネタでさ、「シカゴ知らないの? サンタナは? 遅れてんじゃない?」
 …なんて感じで主導権を取ろうとしてたの。


 でも、結局そいつには一年後ぐらいに、ものの見事に振られてね。
 学生運動やっていた口のうまい男にたぶらかされたみたいなんだ。

 デートの時間には大幅に遅れるようになるしさ。
 一時間以上待たせても、謝りもせず、ニコリともしないなんてことが多くなってきたの。

 で、ことあるごとに 「疲れた…」 って、家事に振り回される主婦みたいな溜息をつくようになってきたのね。

 あるとき 「どうしたんだよ?」 って尋ねてみたんだ。
 すると 「今ずっと成田にいるの。そこから戻ってきたところ」 って言うのよ。

 成田って、千葉の成田空港のことなんだけど、当時は空港建設反対運動があってね、そこに学生運動の活動家がいっぱい集まっていたわけ。

 で、その反対運動に参加しているということなんだろうね。
 見ると、ジーンズやスニーカーなんか泥だらけでさ。

 「疲れ過ぎて食欲すらないの。今日はお茶飲むだけでいい?」
 …って言うんで、約束していたピザのうまい店というのをキャンセルしてさ、地味な喫茶店に入ったの。

 で、席に座るとさ、もう彼女はたたみ込むようにしゃべり始めるわけ。

 「決断の時よ。このままでは負けるわ。日本はアジア諸国家を支配下に治める帝国主義国家として揺るぎないものになっていく。あなたは立ち上がらないの?」
 ってね。

 顔つきも違うんだよ。すっごく威圧的でさ。
 俺がもっとも恐れていたものが来たという感じだったね。

 「…いつから、そこまで思い詰めるようになったんだよ」
 そんな質問しか思い浮かばなかったな。

 「私、指導者を得たの。尊敬できる人よ。その人はたとえ独りになっても敢然と敵に立ち向かっていける人なの」

 まぁ、こういう場合はたいてい新恋人の出現を意味しているわけでね。
 そうなると前の男に勝ち目はないのよ。

 「指導者ってどんな人?」
 …なんて聞くとますます惨めになるからさ、黙って彼女の言葉を聞いていたな。

 彼女に言わせると、俺みたいなのは 「プチブル」 っていうことになるらしいのね。
 で、その言葉を彼女が舌で転がすときには、軽蔑の響きがこもるのよ。

 「プチブルであるかぎりは、あなたは労働者の革命をいつかは裏切るわ」
 とか言われてもさぁ、もともと俺、そんな言葉の意味も分かんないしさ。

 しばらく沈黙が続いて。
 「まぁ、とにかくこれで終わりということだね?」
 …って、俺、小さな声で聞いたんだ。

 すると、「戦う同志としての連帯ならあるわよ」 っていうわけ。

 今さらノコノコと彼女の後ろについて、デモ隊に加わる気もなかったからさ。 「…いいや」 っていう、その三文字の言葉を口にするのが精一杯だったな。

 彼女は哀れむような、さげすむような目で俺のことを見てさ、
 「私は自分の人生を革命に捧げる!」
 なんて言って去っていったな。

 カッコつけるんじゃねぇよ! と言ってやりたかったけれど、何いっても負け犬の遠吠えだからさ。
 シュンとしたまま見送ったの。

 今でもときどき、惨めで、吹っ切れなくて、不甲斐なくて、人の顔すらまともに見られないような自分を発見することがあるけれど、そういう気分は、たぶんあのときに生まれたものなんだろうな。

ヨタ話 | 投稿者 町田編集長 01:22 | コメント(8)| トラックバック(0)

ドリーム千葉

 ちょっとびっくりしたなぁ!
 この 「ドリームアイランド千葉」 さんの新しい展示場には。

 正面入口を入ったとたん、リゾート施設に紛れ込んだような気分になってしまった。

ドリーム千葉L

 まず、いきなり迎えてくれたのはヤシの木やシュロの木といった、南国ムード満載の植物群。
 緩やかなスロープを上がっていくと、浮かび上がってくるのは、レモンイエローに塗られたお洒落なオフィスと、広々としたウッドデッキ。

ドリーム千葉5

 いかにもレゲェなどがかかっていると似合いそうなデッキのテーブルに腰掛けていると、今にも小麦色の肌を輝かせるウェイトレスが、小粋に掲げたお盆の上にコーラとホットドッグを載せて歩いてきそうに思える。

アメグラジャケ

 星条旗がひるがえるデッキの向こう側には、堂々たる体躯を輝かせたアメリカンクラスAとクラスCが並ぶ。
 目を転じて、入口方向に顔を向ければ、ダッジやフォードのピックアップトラック群。

ドリーム千葉6

 ここはどこだ?
 思わず、そんなつぶやきが口をついて出る。

 ここのマネージャーを務める澤山淳さんに、取材のお相手を務めてもらった。

ドリーム千葉澤山氏

 「まず敷地はどのくらいなんですか?」
 「約2,500坪ですね」

 ふ~む。
 ここより広い展示場を持つショップも日本には存在するが、2,500坪の敷地を誇る展示場というのは、そう滅多やたらにあるものではない。
 日本 “最大級” の展示場であることは間違いない。

 敷地の半分はユーザーのクルマを管理する 「モータープール」 になっていて、そのキャパシティは80台弱。
 今はまだその3分の1の台数が埋まったに過ぎないというが、並んだクルマが20~30フィートクラスのアメリカン・モーターホームであるために、そのボリューム感に圧倒される。

ドリーム千葉3

 ミラダ、シーブリーズ、アレグロ。
 目立つのは、同社が昔から得意としてきたクラスA。

 中古車コーナーにも、BCヴァーノン、ボナンザなどのクラスCの名機が並ぶ。そのほかクラスBやフォールディングトレーラーの姿も。
 
 ピックアップトラックコーナーには、トレーラー用のヘッドを展示する場として設けられたものだが、もちろん単品でも販売する。
 その展示規模は常時25~30台。

 大型モーターホームが4台入る屋根付きのメンテスペースも完備。
 エンジンの積み下ろしも含めた重整備も、完全に敷地内で行う。

ドリーム千葉メンテスペース

 展示車の種類といい、展示場のスケール感といい、まったくここは日本を離れた別天地だ。

 驚いたことは、敷地内の電源付きのキャンプサイトが6サイト用意されていることだった。
 もちろんそこはこのお店でクルマを購入したユーザーさんにだけ解放されたものだが、この展示場が気に入り、週末となるとここでキャンプを繰り広げる “常連客” も何組かいるとか。

ドリーム千葉7 ドリーム千葉8  

 「日が落ちると、オフィスやツリーがイルミネーションでライトアップされるので、本当にリゾート施設の雰囲気になるんですね。そのため、夜になると飲食か宿泊を求めて近づいてくるお客さんが結構いるんです」
 と澤山さんは語る。

 お客さんの中には、結婚式の披露宴をここで開きたいという人もいるという。
 ドリームアイランドグループのカタログ撮影なども、今後はここで行なわれることになるのかもしれない。

 現在、クラブキャンプの会場としても使えるように、芝生スペースの増設とシャワー室と歓談スペースも兼ねるログハウスの建設も企画されている。

 ドリーム千葉2

 デッキのテーブルに腰掛けて話を聞いていると、きれいなお姉さんが、トロピカルドリンクならぬ煎れ立てのエスプレッソコーヒーをカップになみなみと注いで運んできてくれた。

 そのうまいこと!
 エスプレッソ専用コーヒーメーカーで煎れたというコーヒーの味もちょっと日本離れ。
 一瞬、海外旅行を楽しんだ気分になれた。

ドリーム千葉9

 詳しい問い合わせは下記へ。

 ドリームアイランド千葉 (サポートRV事業部)
 http://www.support1997.com
 千葉県四街道市大日町大作岡1101-3
 電話 043-304-7752
 定休日:毎週火曜日
 営業時間 10:00~19:00

 アクセス 東関東自動車道・千葉北インターを下りて国道16号を柏方面へ。四つの目の信号を右折。つきあたり右。ナビ検索では 「タイヤセンター千葉北」 を目標に

campingcar | 投稿者 町田編集長 01:58 | コメント(0)| トラックバック(0)

チャンス到来

 こんばんは。ディスクジョッキー町田がお相手する火曜日の 「Jポップ・クリティーク」 の時間がやってまいりました。

 今回は、「Jポップ」 という言葉の意味。
 そいつをちょっと、お話しすることにいたしましょう。

 そもそも 「Jポップ」 という言葉はいつ生まれたのか。
 …ええ、これに関してはですねぇ、明確な年が分かっています。

 鳥賀陽 弘道 (うがや・ひろみち) さんという方がお書きになった 『Jポップとは何か』 という本が岩波新書から出ていますけれども、この本にはですねぇ、はっきりとそれが1988年だと書かれております。

Jpopとは何か
 ▲ 鳥賀陽 弘道 著 『Jポップとは何か』

 この1988年という年はですねぇ、FM放送の 「J-WAVE」 というFM局が開局された年なんですね。

 で、このJ-WAVEがですねぇ、実はJポップと大きく関係してくることになります。

 このJ-WAVEの特徴は何かといいますと … その特徴は二つほどあるんですが … ひとつは、曲目や解説などを一切入れず、ただひたすら音楽だけを切れ目なく流し続けるというものだったんですね。

 まぁ、曲と曲の間には、流ちょうな英語のナレーションがチョコっとだけ入るんですが、大部分の日本人にとってはですねぇ、何をしゃべっているかほとんど分からないわけですから、まぁ、音楽と一緒に聞き流してしまう…ということになり、そういった意味でですねぇ、J-WAVEという放送は、FENか有線放送のイメージに近かったんですね。

 で、もうひとつの特徴は何かといいますと、それは徹底して洋楽しか流さないということだったんですね。

 ま、これは単純に 「洋楽の方がカッコいい」 という判断に基づいていたわけでありまして…、
 洋楽は都会的で、洗練されている。
 それに対して、邦楽は、どんなに気取っても泥臭い。
 そんなイメージが送り手側にも受けて側にも残っていた時代だったんですね。

 逆にいうとですねぇ、まだこの1980年代後半という時代には、洋楽に匹敵するような音楽性を持つ邦楽がつくられていなかったということになるわけですね。

 こうやって、洋楽オンリーでスタートしたJ-WAVEなんですが、途中から方針が変わります。

 それはどういうことかといいますと、J-WAVEの人気に注目し始めた日本のレコード会社がですね、このJ-WAVEの方針に沿った邦楽をつくり出そうと動き始めたんですね。

 そして、どのような邦楽をつくったらJ-WAVEでオンエアしてもらえるのか。
 それを意図的に練りあげながらですねぇ、J-WAVE側に一生懸命に働きかけるようになってきたというわけであります。

 で、J-WAVE側もそれを受け入れることになりまして、ある日、J-WAVEの担当者と、レコード会社の担当者たちが集まりましてですね、J-WAVEで流せるような 「邦楽」 を何と呼ぼうか。それを会議で決めることになったわけであります。

 おりしもジャパンの 「J」 を頭に掲げた名称があちこちで台頭している時代でありまして、…たとえば、国鉄が 「JR」 に変わったりとかですね、日本専売公社が 「JT」 と呼ばれるようになっていたわけで、頭に 「J」 が付くことが一種のブームになっていたわけですね。

 で、きわめつけは 「Jリーグ」 というわけなんですが、ま、そういう時代風潮を反映してですねぇ、あっさりと 「Jポップ」 という言葉が誕生したという …まぁ、こういうわけなんだそうでございます。
 それが1988年の暮れのことであったそうです。

 さて、もともと洋楽しか流さないJ-WAVEでですねぇ、はたして、洋楽に混じって流れても違和感のない邦楽となると、いったい誰が歌う、どんな曲なのか。

 このあたりはですねぇ、まったく感覚的に決められたそうでございます。

 たとえば、演歌系やアイドル系の曲はだめ。
 アリスやチャゲ&飛鳥、長渕剛も、やっぱりちょっと違うだろう…と。

 しかし、サザンオールスターズ、松任谷由美、山下達郎、大瀧詠一。このへんならOKと。

 まぁ、こんな感じの “審査” がありましてですねぇ、今のJポップの流れというものが定められていったらしいんですね。

バービーボーイズ2
 ▲ バービーボーイズ2 

 この話からですねぇ、「Jポップ」 という音楽の特徴がよくお分かりになったんではないかと思います。
 とどのつまりがですねぇ、「日本人がつくった洋楽」 。 …変な表現ですが、結局は、もうこれに尽きるというわけであります。

 では、どのようにつくれば、洋楽のように聞こえるのか。
 Jポップの制作者たちはですねぇ、ここで様々なトライを行います。

 そのひとつに、リズムパターンを似せる。
 …というやつがありますね。

 これですごく感心した曲が1曲あるのですが、それがバービーボーイズ (BARBBEE BOYS) の 『チャンス到来』 という曲なんですね。
 まさに、ポリスの名曲 『見つめていたい』 のギターワーク、ベースラインそのものが非常にうまく取り入れられています。
 粋です。
 実にカッコいい。
 
 しかし、この曲の素晴らしさというのは、そういうサウンドの妙だけにあるのではないんですね。
 歌詞も実にいい。

 「恋が始まる瞬間」
 その切迫した瞬間を捉えて、実に見事です。
 何はともあれ、まず曲を聞いてみてください。
 バービーボーイズで、『チャンス到来』 。


 ▲ YOU TUBE より

 いやぁ、まぁ見事です!
 男と女が、沈黙を守ったまま、お互いに見つめ合っているという…まぁ、それだけの状況を歌っているわけなんですが、この2人のピリピリした緊張感がものの見事に伝わってきますね。

バービーボーイズ1
 ▲ 『チャンス到来』

 歌詞が実にリアルです。

 ………… ステレオ途切れたら 言葉につまずいた
 どこかで聞こえてくる 子供の笑い声
 うかつに動けない 手も出せない
 見つめ合うだけの face to face …………
 
 と、ここまではKONTAが歌って、次に杏子にバトンタッチするわけですが、この 「どこで子供の笑い声が聞こえてくる」 というシチュエーションの設定に、生々しい臨場感があります。

 で、次に杏子のヴォーカル。

  ………… 誰かに来て欲しい この部屋二人きり
 不思議と夜遊びの誘いが今日は、まだ …………

 この “戸惑い” の雰囲気が絶妙ですね。
 このシーン、私めなんかは、すごくエッチな情感をかきたてられます。

 で、次がKONTAと杏子のユニゾン。

 ………… 灯りも消せずに 決めかねてる
 見つめ合うだけの face to face …………

 「灯りが消せない」
 というところがミソですね。

 もし、ここに登場する 「男」 が百戦錬磨のプレイボーイならば、さっさと灯りを消しているのでしょうけれど、それが 「できない」 という、この男のウブさ。
 「女」 の方も、「灯りを消してほしい」 … でも 「それが怖い」 。
 この切なさがたまりませんな。

 ここには、まるで太刀を構えて相手の出方を見守る 「武芸者同士の決闘」 を思わせる緊張感がみなぎっています。 

 で、注目していただきたいのはですねぇ、KONTAのヴォーカルパートが終わり、杏子のヴォーカルに移るところですね。
 ここのベースラニングとギターのカッティングに注目!
 これ、ポリスの 『見つめていたい』 ですよね。
 
 最初聞いたとき、「いやぁ、ニューウェーブしているなぁ!」 と、ここで感心したものでした。

 で、この曲の狙いどころも、実はここに集約されているんですね。
 この小刻みなリズムを刻むベースのピッチ。
 まさに、心臓がバクバクするときの鼓動がここに表現されているんですね。

 で、この心臓バクバクリズムに乗って、
 ………… チャンス到来 あらわになった 背中に moon light
 チャンス到来 恥ずかしがった うなじが stand-by
 チャンス到来 転がり込んで 秘密のジェスチャー ……
 
 と盛り上がりを見せていくわけですが、ここには “いやらしい” 言葉などひと言も出てこないのに、ものすごくセクシーな情感が渦巻いています。

 その理由のひとつにですねぇ、この心臓バクバクリズムを挙げてもいいかもしれませんね。
 まさに、洋楽のリズムパターンを非常にうまく取り入れたJポップの傑作が、ここにひとつ生まれているというわけであります。

 …というわけで、今日はバービーボーイズの 『チャンス到来』 を聞いていただきました。

 下にポリスの 『見つめていたい』 も貼りましたので、興味のある方は聞き比べてみてください。

 ▼ ポリス 『見つめていたい (Every Breash You Take) 』 (YOU TUBE) より
  若いスティングがきれいだ!




音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 07:28 | コメント(6)| トラックバック(0)

エコという幸せ

 最近の本屋には、「反エコロジー本」 がけっこう出回るようになった。
 手に取ってみたわけではないけれど、おそらく、
 「地球温暖化は、エネルギー消費による地球への負荷が原因ではなく、地球そのものが持っている自然のサイクルだ」
 とか、
 「廃品をリサイクルことは新商品をつくるよりもコストがかかる」
 というようなことが書かれているのではないかと、推測している。

 物事には何でも 「反動」 があるもので、ブームとなれば、その揺り戻しは必ずやってくる。
 「反エコロジー本」 というは、企業CMまでこぞってエコを謳うようになった時代風潮への反発心から生まれたという部分もあるかもしれない。

 そういう本が出てくることは、悪いことではない。
 それだけ 「エコ」 が人々の関心事になったということだから。

 実際に、多くの人々が危機を訴える地球温暖化の本当の原因など、まだ十分に解明されたわけではない。
 化石燃料が枯渇するという予測だって、その計測方法が確立されているわけではないので、本当のことは誰にも分からない。

 だけど、大切なことは、エコロジーって 「文化」 なんだってこと。

田舎風景1

 文化というのは、多くの人がそれに 「幸せ」 を感じるからこそ広まるのだ。
 そう考えると、「エコという文化」 が浸透してきたのは、それによって人々が幸せになろうとしていることを意味している。

 どういう幸せなのか。

 つまり、あるがままの地球を大事にして、自然と共生したり、自然の中でくつろいだりすることに心の充足感を求める…というような幸せだ。

 もしエコが、資源の枯渇を憂いたり、そのための節約を強制しようとするだけの思想だったら、それは長続きしないし、人々はやがてそれに疲れてうんざりする。

 でも今の人々は、「エコ」 に、人類の新しいハッピーモデルを感じている。 

 たぶん、それは地球規模でグルグル回り続けている今のグローバル経済のせわしなさに対する 「疲れ」 から来たものだ。

 グローバル経済の拡大は、世界中の企業をすべて競争相手に変えた。
 労働市場でも世界的競争が起こり、人々はそれに振り回されて、「くつろぐこと」 に恐怖心すら抱くようになった。

 エコブームの背景には、そういう状態からの脱出を模索する人々の夢が託されていると思う。

コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 07:55 | コメント(5)| トラックバック(0)

テロリスト歳三

 小説が好きな連中と酒など飲んだとき、ときどき 「自分の読んだ小説ベスト10」 のような話題になるときがある。

 自分にとってのベスト10とは何だろう…。

 腕組みなぞしながら、つらつら考えると、そのときの気分によって、ランクインする小説はころころ変る。

 しかし、必ず入るだろうと思われるのが、司馬遼太郎の 『燃えよ剣』 。
 これは、この先どんなに新しい小説を読んでも、生涯変ることはないような気がする。

燃えよ剣
 ▲ 『燃えよ剣』

 『燃えよ剣』 は、新撰組の中軸を担った土方歳三の生涯を描いた小説で、ここに登場する歳三は、あくまでもダークヒーローである。

 なのに、最近…特に若い人たちと話すと、土方歳三はむしろ爽やかなカッコいいサムライというイメージがあるらしい。

 4~5年ぐらい前か。NHKの大河ドラマで、歳三や勇を主人公にしたドラマなども放映されていたから、彼らを颯爽としたヒーローと感じる世代が育っているのかもしれない。

 だけど、私のように、嵐寛寿郎や市川雷蔵の鞍馬天狗をリアルタイムで映画館で見た世代にとっては違和感が強い。
 なにしろ新撰組というのは 「正義の味方 = 鞍馬天狗」 と敵対する悪の代名詞だったのだから。

 NHKのドラマでは、近藤勇を演じたのはSMAPの香取慎吾。
 土方歳三は山本耕史だった。
 どちらの風貌も現代的なさっぱり感を漂わせていて、時代劇アレルギーを持つ若者たちにも違和感のないキャスティングに感じられたと思う。

 さらに骨相学的な品評を加えれば、彼らは現存する写真の近藤勇や土方歳三に似ていた。

 しかし、本物と見比べると違いは明瞭である。
 写真を見るかぎり、幕末を生きた勇も歳三も、平然と人を斬ってきた人間の凄みを漂わせている。

近藤勇写真
 ▲ 近藤勇 画像

 勇の写真からは、ドーベルマンや土佐犬といった、戦う番犬の獰猛さが感じられ、歳三の写真には、優男の風貌を裏切るように、唇の端に酷薄そうな微笑みが浮かんでいる。

土方歳三写真
 ▲ 土方歳三 画像
 
 はっきりいうと、彼らの顔は怖い。
 「人ひとりの命は、地球より重い」 と教える戦後ヒューマニズムの世界で暮らしてきた我々とはまったく異質の倫理を生きていた人間たちの顔に見える。

 司馬遼太郎は、『燃えよ剣』 ではっきりと新選組がテロ組織であることを謳っている。
 彼らは、「勤王派」 の人間であればみさかいなく斬りまくり、粛正という恐怖政治で組織を鍛え上げた。

 その戦闘方法や粛正方法も、相手の油断に乗じた不意打ちや騙し討ちが多く、しかも、その計画は狡知を搾り出して周到に練られたものばかり。
 そういった意味で、今風にいえば、彼らは高度に訓練された 「テロ組織」 だった。

 このような陰湿さに、組織内の人間は長く耐えられるものではない。
 そのため、歳三は、「剣の暴力」 を神聖化して組織の団結を維持し、隊士の不満を 「恐怖の力」 で押さえつけようとした。

新撰組はっぴ
 ▲ 新撰組結党の 「精神」 を表す 「誠」 の文字

 このような歳三のメンタリティを説明するために、司馬さんは、歳三が百姓の出身であったことに着眼する。
 
 武士に生まれつかなかった “卑しい百姓” は、いかにしたら武士になれるのか。
 歳三は、「人を斬ること。闘いに勝つこと」 だけに専念できる殺人マシンと化すことに、その答を求めた。

 彼は 「武士道」 を掲げながらも、実際の戦闘においては、百姓のケンカの延長として武術を捉えていたという。

 田畑の水争いなどで互いに権利を主張しあうとき、百姓同士の争いは陰惨を極める。
 田んぼのあぜ道に隠れて、いきなり後ろから棍棒で殴りかかる。
 卑怯だろうが、ずるかろうが、勝者としてその場に立ち尽くした者が 「正義」 だ。

 歳三は、そのようにして自分流の 「武士道」 を築き上げていく。 

 本物の武士たちが行う剣術道場での立ち会いなどは、歳三にすれば典雅なスポーツにしか見えなかった。
 「人を斬るための剣を持ちながら、今の武士たちは、剣を自分たちのステータスを満足させる飾りのように思っていやがる」

 歳三にもし教養があれば、彼はそうつぶやいただろう。
 そしてさらに、
 「今の時代では、武士という言葉は単なる “階級” を意味しているに過ぎず、“戦士” であることを意味していない」
 と弁舌を奮ったに違いない。

 ただ、歳三の考える武士は 「斬り合いに強い男」 というイメージを超えるものではなかったから、「美学」 にはなっても 「哲学」 にはならない。

剣1
 ▲ 剣

 人を斬ったことによって、どんな世界が実現するのか。
 そういう哲学的かつ政治的な省察は、歳三の頭の中には生まれない。
 彼は、自分が斬った薩長浪士たちが頭に描くような 「日本国改造アイデア」 など、おそらく一度たりとも考えたことはなかったろう。

 そもそも、武士の時代が終わろうとしていた時代に、武士になろうということ自体、とてつもないアナクロニズム (時代錯誤) である。
 司馬遼太郎はそこに歳三や新撰組の悲劇を見た。

 しかし司馬さんは、同時に 「時代の流れに逆らっても、おのれの信じる道を曲げない男」 として歳三を描いた。

 彼は、歳三の冷酷さに 「意味」 を与えたのだ。

 『燃えよ剣』 の中の歳三は、自分の想う武士道を守るために、世間の悪評が重なることを恐れることなく、一番の汚れ役・嫌われ役を進んで引き受けていく。

 そして、そのことを誰にも弁明しない。
 はなっから他人の理解などを求めないのだ。
 弁舌に酔う勤王派の志士たちに対し 「黙して語らず。ただ斬るのみ」 の男を演じ続ける。

 そこには 「理屈は人をなまらせる」 という偏狭な信念に裏打ちされた、歪んだ精神がある。 
 しかしながら、その偏狭な信念がもたらせるヒリヒリするような緊張感と、その緊張感を糧として生き抜く男の 「美学」 は伝わってくる。

栗塚旭の歳三
 ▲ 栗塚旭さんがテレビドラマ 『燃えよ剣』 で演じた土方はカッコよかった。
 
 結局、私がこの 『燃えよ剣』 に感動したのは、それまでは 「悪の権化」 に思われてきた男にも、別の角度から光りを照射すれば、そこに 「美学」 があることを発見したからだ。
 この小説の魅力は、負から正へ、邪から聖へと鮮やかに転換を遂げるときのダイナミズムにある。
 だから、土方歳三を最初から 「まばゆいヒーロー」 としてイメージしている人たちには、この逆転の輝きが見えない。


 司馬遼太郎が、この 『燃えよ剣』 を書き始めたのは、司馬さんの人気を確定した小説である 『竜馬がゆく』 の連載の真っ最中だった。

 時代に対する鋭い洞察力を持ち、日本の進むべき道へのグランドデザインを描き、人に愛され、人を愛することを知る坂本龍馬。
 龍馬と歳三は、何から何まで対極にいる人間同士だ。

 司馬さんが本当に描きたかったのは、坂本龍馬の方だったろう。
 ところが、書いているうちに、正反対の道を選んだ歳三への好奇心がつのって仕方がなかったのではなかろうか。

坂本竜馬
 ▲ 坂本龍馬 画像

 日の下にさらされた物には、常に 「影」 がある。

 幕末の激動期。竜馬という人間に陽光が当たり、彼の存在感がますます輝いていくのと同じタイミングで、ダークな世界を生きた歳三の 「影」 も濃さを増していく。

 歳三の真骨頂が発揮されるのは、むしろ新撰組が崩壊してからだった。
 鳥羽伏見の戦いにも敗れた新撰組と幕軍は、北海道まで逃れ、五稜郭に立てこもる。

 しかし、官軍と幕府軍の戦いは、もう結末が見えていた。
 戦うための 「大義」 も、もう幕府軍からは奪われていた。

 にもかかわらず、歳三は、わらじと羽織を捨てて、ブーツとフランス風の軍服に着替え、武士のシンボルであった髷まで切り落として、官軍に最後の決戦に挑む。

 戦いに勝ち目のないことを悟った幕軍大将の榎本武揚などは、すでに気持ちが講和に傾いている。

 歳三は、負けの見えた戦いに 「死に場所」 を求めた。 
 彼は彼なりに、これまで斬り殺してきた無数の薩長浪士、そして粛清してきた隊士たちに、自分もまたその後を追う形で、落とし前をつけようとしていたのだろう。 

新撰組のぼり
 ▲ 新撰組 隊旗

 最後の決戦の日。
 「函館政府・陸軍奉行」 という肩書きを持つ歳三は、並みいる官軍の群に馬を乗り入れ、剣を抜き放ち、「新撰組副長、土方歳三!」と名乗りをあげる。
 そして、それを聞いた官軍は “白昼に龍の蛇行を見たごとく” 恐れおののく。

 …ことになっている。
 事実は少し違うらしいけれど、司馬さんの描く歳三の心意気は、読者の胸を打つ。
 おそらく司馬さん自身が、「意外とうまく歳三を描けたな」 とびっくりしたのではなかろうか。 

 そもそも、冷酷非情な人間を美しく描くということ自体が、矛盾をはらんだ行為である。
 作家としての力量が問われるところだ。

 『燃えよ剣』 には、そういうアクロバティックな緊張感が文体にも漂っている。
 しかし、その試みが成功して、天才の天才性を描いた 『竜馬がゆく』 とは別の意味で、密度の高い小説になった。

 司馬さんは、「世界を敵に回しても、人間にはおのれの美学を貫かねばならない時がある」 というメッセージを歳三の生き方に託した。
 それは、「優れた人間はいつしか世界に認められる」 という龍馬の持つポジティブな信念の対極にあるものだった。

 龍馬のように生きるためには、人は天才に生まれつかなければならない。
 しかし、並外れた決意さえ持てば、凡人でも歳三のように生きることはできる。

 『燃えよ剣』 が、多くの人に奮起をうながす書として読まれたというのは、この小説が、逆境を迎えた人間には誰に対しても平等に、とてつもないパワーを与えるからだと思う。

 司馬遼太郎ネタ 「斎藤道三の最期」
 司馬遼太郎ネタ 「秀吉の成金趣味」



音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 00:17 | コメント(0)| トラックバック(0)

ブランドとは何か

 商品には、消費者の憧れのアイテムとなり、特別に神格化される商品がある。
 通常、そのようなものを 「ブランド」 と表現する。

 キャンピングカーも例外ではない。
 この世界にも、購入者の熱い眼差しを集め、他の業者も一目置いて評価するような商品が確かに存在する。

 しかし、キャンピングカーの 「ブランド」 という場合、どのようなクルマがそう呼ばれるようになり、またそう呼ばれるクルマは、どのようにして生まれてきたのか。
 
 そこのところが、今ひとつ分からない。

 「キャンピングカーにおけるブランドとは何か」

 11月初旬に開かれた 「お台場くるま旅パラダイス」 の会場で、カトーモーターの加藤次巳智社長に、「ブランド」 についての考えを聞く機会があった。

カトーモーター加藤社長

 面白い話だったので、その一部を、ここにちょっとご紹介。


【町田】 金融不安とか株価の乱高下などがあって、キャンピングカー業界の業績不振を心配する声も多いけれど、カトーさんのところはどう?
【加藤】 まったくそういう影響がないといえばウソになるけれど、うちは、あまりそういうことの影響をこうむらないような商品開発と売り方をしてきたつもりなんですよ。
 反面、景気がいいからたくさん売れるというクルマではないんでしょうけどね。

【町田】 なるほど。最初から 「カトーモーターさんの造ったクルマが欲しい」 という人の気持ちは、そう簡単に萎えることがないし、どんな状況でも必ず固定ファンがいる…という意味ですね。
【加藤】 そう自信を持って言えるわけではないんですが、確かに 「高いから買わない、安いから買う」 というだけのクルマを造ってはこなかった…という気持ちはありますね。

【町田】 それは、カトーモーターのクルマが 「ブランド」 になっているということですよね。やっぱりブランドは不況にも強い。
【加藤】 そう言ってもらうとうれしいけれど、でも、そこに至る道のりはけっこう長い道のりですよ。
【町田】 それはそうですね。ブランドになるってことは、高級車を造ればいいという問題でもないから。
 やっぱり何年もかけて総合的につくり上げていくものでしょ?

【加藤】 「何年」 でも、できるかなぁ…。少なくとも10年。もっとかなぁ…。
 最低10年の歳月を経ないと、ブランドというのは成立しないと思いません?
 つまりね、「内装もいいし、いろいろな機能も付いていて、考えているよね、このクルマ」 とお客様に言ってもらえるような商品というのは、1~2年では生まれないと思うんですよ。
【町田】 では何年?

【加藤】 うちだって、家具などを製作する体制をつくろうとしたら、それに従事する人を一人育てるだけで5年はかかるんですね。
 3年ではまだうちの会社のメンバーにはなれない。
 やっぱり4~5年在籍して、やっとうちの社員としての考え方ができるようになると思っているんですよ。
 だから、まず 「人づくり」 に5年かかる。

【町田】 そうか。ブランドって、「モノをつくる人」 づくりから始まるということですね。
【加藤】 そこから先がありますね。そうやって商品が世に出てから、さらに5年。
【町田】 「ローマは1日して成らず」 か…。

カト-モーターDD
 ▲ カトモーター 「DD」

【加藤】 基本は 「人」 ですね。うちは意外と社内が厳しいんですよ。私が厳しく指導するという意味ではなく、社内の空気が厳しい。
 だから、それに付いて来れない人が出てくることもあります。
 それは、長い仕事時間を設けて拘束するということではなく、クオリティの高さを求めるという意味で、厳しいんですけどね。
【町田】 そうやって、人が育って、ようやく商品としてのブランドの萌芽が生まれると。

【加藤】 ええ。あと、やっぱりブランドって 「信用」 でしょ。その信用をどう構築していくか。
 うちは直販が主体だから、クレームがあると、日本中のほとんどのお客様のところに行っているんですよ。
 極端な話、扉ひとつの調整でも、自分たちで行く。
 ただし、ひとつのことだけで交通費かけて出向くのはもったいないですよね。
 だから、お客様にはこう言うんです。
 「ちょっと我慢してもう少し使ってみてください。それ以外に悪いところをアラ探ししておいてください。まとめて直しますから」 って。

【町田】 そうなると、サービスにかかるコストが莫大なものになりません?
【加藤】 その通りなんですね。だから、あまりにも遠隔地のお客様には、買うのを控えていただくこともあります。
 「申し訳ないですけどサービスが行き届かなくて、かえってご迷惑をかけることがあるかもしれませんから…」 って。
 でも、買っていただいたお客様には、できるだけ自分たちでサービスに向かうようには務めています。

カト-モーター室内3

【町田】 偉いですねぇ!
【加藤】 でも、それが 「ブランドの構築」 ということにつながるわけじゃないですか。
 カトーモーターのブランドを買っていただいたわけだから、それを損なうようなことは自分たちもできませんから。
【町田】 確かに、ブランドというのは築くのは大変だけれど、壊れるときは一気に壊れるといいますものね。
 ブランドの核心となるものは、確かに商品としてのクオリティだけど、もうひとつは 「誠実さ」  ですよね。その両方がブランドを支えるのであって…。

【加藤】 だから、うちはよく営業スタッフに 「モノを売るな」 と言っているんですよ。
 モノを売るのではなくて、「気持ちを売れ」 と。
 うちのクルマを 「モノ」 にしたら、必ず 「高い」 とか 「安い」 という価値観でしか見られなくなる。
 高いか安いか…だけでは、お客様にもその商品を 「愛そう」 という気持ちが生まれにくい。
【町田】 確かに、そこのところがセールスのキモですよね。

【加藤】 基本は、お客様に 「安心」 を売るところにあると思うんですよね。
 だからうちは、イベントでも、できるだけ多くのスタッフが参加するようにしているんですよ。
 というのは、ショーの会場というのは、新規のお客様にクルマを見てもらって買ってもらうという場ではあるけれど、それ以外に、すでに商品を買っていただいたお客様との交流の場であると思っているんです。
【町田】 なるほどね。

【加藤】 だから、できるだけ多くのスタッフが参加して、お客様からじかに 「今度ここを見てほしい」 とか、「こんな改造を考えている」 という声を聞くようにしているんです。そのために、担当の営業が必ず会場にいる必要があるんですね。
【町田】 なかなかできないことですよね。

【加藤】 でも、そうやって商品を買ったお客様が安心している様子を、新規のお客様に見てもらうことが、何よりも商品をアピールすることつながると考えているんですね。
 だってイベント会場で、ユーザーさんがニコニコ楽しそうにしていれば、はじめてのお客様だって安心できるじゃないですか (笑) 。
 そこが乗用車の売り方にはないキャンピングカーの展示会の良いところですよね。

【町田】 乗用車メーカーと同じことをやっていてもダメということですね。
【加藤】 完成度も違うし、商品が意図する世界がもう違いますよね。キャンピングカーと乗用車は明確に違うというところを出さないと。
 だから、うちはバンに簡易ベッドを組み込んだようなキャンピングカーは、オーダーではお造りしますが、オリジナルとしては造らないようにしているんです。
 今そういうバンコンが売れるように思われているけれど、そうやって値段を下げて造っても、乗用車メーカーが開発するワゴンやミニバンにはかなわないと思うんですけどねぇ。

【町田】 そこは勝負する 「土俵」 じゃないと。
【加藤】 ええ。うちはキャンピングカーとしての価値が明確に分かるような商品で勝負したいんですね。
【町田】 でも、それは…さっきの話じゃないけれど、カトーモーターさんが 「ブランド」 を築いているからこそ言えることであってね。
 その域まで達していないビルダーさんは、どうしても価格で勝負したくなると思いません?

カト-モーター室内2

【加藤】 もちろんそれは否定しませんけれど、でも、そういうクルマでは「個性」 を盛り込むことが難しくなるでしょ。
 「個性」 のところで乗用車との差異化があってこそ商品の魅力が生まれるのであってね、そこを失ってしまうと、…どうなんだろうなぁ…。
【町田】 分かりますよ。それは大事なことですね。これは、日本でキャンピングカーを使う環境とも密接につながる話なんだけど、クルマに個性がなければ、旅にも個性が生まれないと思うんですね。

【加藤】 あ、そうですよね。
【町田】 つまりね、たとえば定年退職をされた方がキャンピングカーを使って 「日本一周をしたい」 と旅に出ても、ほら、日本っていまどこに行っても便利すぎるじゃないですか。
 どこにもコンビニがあるし、日帰り温泉はあるし、駅前に行けば便利な駅ビルが建ち並んでいるし。
 だから高速道路でも、道の駅でも、みんな同じ風景になっている。
【加藤】 「異国」 の雰囲気があるのは北海道ぐらいですよね。

【町田】 そこが、簡単に国境を越えられるけれど、国が変われば、言葉も文化も風景も、食べ物も変わるヨーロッパなんかと違うところでね。
 アメリカだって、雪山をいただくロッキー山脈から、常夏のフロリダまでぜんぜん違う風土を楽しめる。
【加藤】 そこが日本の観光の痛いところかな。

【町田】 それは日本の観光行政も悪いんだけど、便利にすることによって、風景を均一化してきたじゃないですか。
 そういうところを旅するときに、最後の拠り所となるなるのは、クルマの個性なんですよ。
 便利なだけでなく、楽しいキャンピングカーになっていなければならない。インテリアでも何でも、空間そのものが生き生きとしていなければならない。
 そう思うと、加藤さんの造っているキャンピングカーなんか、まさにそこを満たしていると思うんだけどなぁ。

【加藤】 うれしいですね (笑) 。確かに、ただ 「便利」 というだけでは、ホテルに泊まった方がいいものね。
 やっぱり、クルマそのものがかもし出す雰囲気が、ホテルとも乗用車とも違っていなければね。
【町田】 クルマの個性って、キャンピングカーだからこそ出せるところがあるじゃないですか。
 乗用車にそれを求めるとしたら、それこそエキゾチックなイタ車とかダンディーなイギリス車とかになる。
 でも、キャンピングカーってそれとも違う、車内で食べて、くつろいで、寝泊まりするときのエキゾチシズムってあるよね。
【加藤】 うんうん。それを目指せばいいわけだよね。

【町田】 キャンピングカーの未来は広がっているなぁ。
【加藤】 そこのところをうまく実現すれば、またブランド力が付くわけか。
【町田】 はい。お後がよろしいようで (笑) 。

コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 00:04 | コメント(0)| トラックバック(0)

今の時代の笑い

 家でテレビを見る時間はあまりない。
 ないから、見るときは真剣に見たいと思う。
 ところが、真剣に見ようとすると、なかなかそれに応えてくれる番組がない。

 最近は、どこのチャンネルに合わせても同じような番組ばかり。
 まず、バラエティ。
 あるいは、クイズ。
 そして、グルメ。

 まぁ、その中でも、バラエティは一応 「バラエティに富んでいる」 わけで、いろいろなメニューがごった煮になっているから、中にはほぉっ! っと目が釘付けになる出し物もある。

バラエティ番組

 だけど、本当に面白いものに当たる確率は低い。

 今のバラエティから学べるものは、せいぜいコミュニケーションの 「間のとり方」 ぐらい。

 若い芸人たちの鋭い反射神経がもたらす瞬間芸には、確かに目を見張るものもあるけれど、瞬間芸というのは、その場において光りを放つものだから、仮にその芸を視聴者が身につけても、自分の生活の場で使うことはできない。

 そういうものを眺めていても、せいぜい時代の “空気” を呼吸するのが関の山で、自分で 「笑い」 を作り出すときの材料にはならない。

 時代の 「おかしさ」 が詰まった鉱脈は、意外と、「笑い」 とはかけ離れたシリアスな情報源の中に根を下ろしている。

 当たり前のことを真面目に論じている人たちの姿を見たり、多くの人々が常識的な行動だと信じて疑わないような様々な行動を眺めているうちに、何か変だな…、どこか違うな…と気づくところから、面白さやおかしさを発見するチャンスが生まれる。

 笑いは、笑いの中にあるのではなくて、笑いの外にある。

 かつてのビートたけしさんは、そのことをよく知っていた。
 超多忙の頃、彼はクルマで移動するときも欠かさずニュースを聞き、本を読んだ。
 「常識」 の盲点を突いた 「笑い」 を発見するためには、「常識」 を熟知していなければならないことを知っていたからだ。

 爆笑問題の太田光さんなんかも、そういう手法で 「笑い」 のネタを拾ってくる人である。

 ただこの方法は、ちょっとでも半可通の 「知性」 をひけらかしてしまうと、視聴者は一気に引く。
 シリアスな情報を 「笑い」 に発酵させるまの時間的・精神的余裕が必要なのだ。
 そのため、忙しいタレントには難しい。

 だから、多くのタレントは、反射神経の鋭さだけが頼りの瞬間芸に賭けざるを得なくなるわけだが、でも、それはタレントの賞味期限を早めるだけにしかならないような気がする。

 最近は、その賞味期限さえ最初からないようなタレントさんもいるようだ。

 とんねるずのデビュー当時は、彼らのテレビのフレームをぶち破ろうとするパワーに唖然としたし、初期のダウンタウンのコントはお腹がよじれそうにおかしかった。
 でも、もう…今はなぁ…。

 大御所たちが、時代と切り結んでいかないと、下も育たないのではないか。

 最近は、一時期民放に押されっぱなしのNHKが、じわじわと民放を押し返して、視聴率を上げているらしい。
 企画をしっかり練り込んで、しかも取材にもお金をかけている 
 『NHKスペシャル』 なんかは、世代を超えて相当評判が良いと聞く。

 新しい時代の 「笑い」 は、もしかしたら、そういう番組をしっかり観ているような人たちから生まれてくるのかもしれない。


ヨタ話 | 投稿者 町田編集長 00:27 | コメント(4)| トラックバック(0)

デルタリンク千葉

デルタリンク千葉

 オープンして1ヶ月半という 「デルタリンク千葉ポイント」 を訪ねた。
 まず、明るく清潔な感じのオフィスにびっくり。

 キャンピングカー販売店というと、昔はトレーラーハウスを事務所代わりに使っていたり、工事現場のプレハブに毛の生えたようなオフィスを使ったりしていたものも多かったが、最近はずいぶんグレードが高くなった。

デルタ千葉5

 それでも、このデルタリンク千葉店のように、ソファの色からカーペットまで美しくコーディネートされた住宅展示場のようなオフィスというのは珍しい。  

 余分なものを置かず、シンプルで機能的なたたずまいを見せる事務スペース。
 そして、訪問客の心をなごませる観葉植物などをあしらった応接スペース。
 その配分の妙に、デルタリンクのオリジナル車が漂わせるデザインセンスと共通した心配りがあるように感じた。

デルタ千葉4

 取材の相手をしてくれた小玉義明さんに、この千葉店の特徴を教えてもらった。

デルタ千葉小玉氏

 「品揃えは、全デルタリンク営業所と変わらず、同社のオリジナル車はすべて取り揃えています。
 キャブコンでいえばエレキング。バンコンでいえばスナフキン、ロシナンテ。 あとはアドリアのトレーラーですね。
 他に、アネックスさんのバンコンを中心に展示しています」

 それ以外に中古車として、輸入車、国産他社メーカーのキャブコン、バスコンなども展示され、車種、台数とも充実している。

 オフィス脇には独立したピットが完備され、倉敷本社から派遣された専属メカニックが整備を担当する。
 軽整備ならすべて敷地内で完了。駆動系を含む重整備も、近くの提携工場との連携が密接であるため何の心配もないという。

デルタ千葉3

 関東に拠点を持つことは、デルタリンクとしても昔からの夢だったというが、実際に接した関東という商圏はどんなふうに見えたのだろうか。
 関東の出身ながら、岡山の「倉敷ベースキャンプ」で3年間の “修行” を続けたこられた小玉さんに尋ねてみた。

 「まずここに来て感じたのは、トレーラーに関心を持たれるお客様が意外と多かったということですね。
 首都圏はトレーラーが売りにくいという話は聞いていたのですが、ここに来て立て続けにお話しをいただいたのは、トレーラーのお客様でした」

 確かに、ビルダーが集中している割には、トレーラー専門店というのが北関東には少ない。
 同社の人気ブランドであるアドリアの現車を見ることを楽しみしていた関東の人々が多いことは推測できる。

 そういう人々に対応する場合、同社の広い敷地は“強い味方”だ。

デルタ千葉2

 「なにしろ、オフィス前の敷地をたっぷりとっていますから、トレーラーの牽引体験が敷地内でできます。
 バックするときの感触など、ここで思う存分体験していただきたく思いますね。パイロンなども自由に使ってくださって結構ですから、車庫入れの練習もできます。
 大型キャブコンの縦列駐車などの練習もできますね」
 と、小玉さん。

 ウィンドサーフィンのメッカである幕張などにも近く、日本を代表するサーフィンポイントとしても名高い九十九里などにも、高速を使えば1時間圏内。
 サーフィンの好きな山田社長の選んだ場所ということで、遊びの前線基地という風格も漂う展示場だ。

千葉の海サーフィン

 「私も海釣りやダイビングが好きなので、海に近いこの営業所に来るのが楽しみだったんですよ」と、小玉さんも喜んでいる様子だ。

 東関東自動車道の千葉北インターから約5分。
 インターを下りて、国道16号線を柏方面へ向かう。
 左角に出光石油のある三つ目の信号を右折。
 そして、その先を左折。

 左折すると、もう白いルーフを輝かせるキャンピングカーが並んでいるのが見える。

 京成線の勝田台駅からバスも出ており、「大日町」 というバス停から歩いて5分。
 アクセスには恵まれた展示場だ。
 ナビで検索する場合は千葉県の 「特別支援学校」 でOK。
 展示場はその真ん前。
 住所を打ち込んでも、ドンピシャ展示場を指示する。

デルタ千葉6

 詳しい問い合わせは下記まで。

 千葉県千葉市花見川区大日町1414-1
 電話 043-306-2047
 定休日:毎週火曜日
 営業時間:10:00~19:00

campingcar | 投稿者 町田編集長 01:38 | コメント(0)| トラックバック(0)

矢野顕子の新作

 今、矢野顕子さんの新しいアルバム 『akiko』 を聴きながら、このブログを書いているところ。
 久しぶりに、しっくりと来る音楽を聞いてるなぁ…と、ちょっと興奮。

矢野顕子akiko

 実は、これまで私は矢野顕子のけっして良いリスナーではなかった。
 
 あのあっけらかんとした、天真爛漫な歌声。
 お茶目なのか本気なのか分からないような、捉えどころのないユーモア。
 それでいて、「原始女性は太陽であった」 風の、地母神的な呪術性。

 そいつが、ちょっと苦手でもあった。

 でも、このアルバムはすごくいい!
 好きだ。

 何がいいのか。
 サウンドが最高!

 プロデューサーにTボーン・バーネット、ギターリストにマーク・リーボゥを迎え、全曲ロサンゼルスで録音されたというこのアルバムは、自分が聞くかぎり、実に良質な正統派アメリカンロックになっている。

 土曜日、取材で千葉県を走り回っているとき、偶然カーラジオから、このアルバムの 「Evacuation Plan」 が流れてきて、一発でまいってしまった。

 すぐにコンビニの駐車場にクルマを乗り入れ、ホットココアを買って、それを口に含みながら、しばらくクルマの中で聞きほれた。

 で、そのラジオで 「The Wall」 が流れてきて、これにもノックダウン。すぐにアルバムを買うことに決めた。

 全体的に、ゆったりしたミディアム・テンポの曲が多く、そのテイストはちょっとアーシーで、ブルージー。
 ギターとピアノは、ほのかにレイドパックの香りをたたえた気持ちよいタルさを漂わせつつ、リズムはヘビーでタイト。

 全体的にとても懐かしいサウンドなのだけど、それでいてまったく昔の音ではない。今の時代の風がたっぷり吹き渡っている。 

 こういうサウンドに乗ると、矢野顕子さんのあっけらかんとした天真爛漫な歌声が、とても高度にチューニングされた最高の楽器パーツのように聞こえてくる。
 サウンドのアメリカ臭さに、矢野さんの東洋的なメロディが絡み、ちょっと無国籍的な、実に摩訶不思議なエキゾチシズムが横溢。

 こういう音、ほんとにいいなぁ…。
 特に、「The Wall」 のイントロのギターとピアノの絡みの美しさといったら。
 酒が進みそう。

 矢野さん自体も、今までの自分の持ち味とは違った部分で勝負してみようと思ったというから、きっと自分にとっても、新鮮な音楽体験だったのだろう。

 そのフレッシュな感動がストレートに聞く者にも伝わってくる。
 今、夜中の2時半。あと2~3回繰り返して聴いてから寝るつもり。
 おっと、明け方になっちゃうかな。

 

campingcar | 投稿者 町田編集長 02:47 | コメント(4)| トラックバック(0)

流れに身をまかせ

 こんばんは。町田です。
 「Jポップ・クリティーク」 の時間がやってまいりました。
 さて、今日の特集はですね、ちょっと歌謡曲でまとめてみたいと思います。

 Jポップというのは、まぁ、わりと若い人に好まれているジャンルなわけですから、恋愛がテーマとなったとしても 「私と彼」 、あるいは 「俺と彼女」 の世界なんですね。
 ところが歌謡曲になってくるとですね、親しんでいる年齢層がぐっと高くなりますから、「彼と、彼の奥さんと私」 ってなテーマが急に増えてまいります。
 ええ、「不倫」 ですね。

 カラオケなどでムード歌謡を歌われる中年の方々はお気づきだと思うんですが、多いですよね! 酒場でじっと 「あなたが訪ねてくるのを待つわ」 風の、家庭の外で 「待っている女」 の歌が…。

 まぁ、昔のムード歌謡なんかにこの手の歌が多いのは、言ってしまえば、そういう業界の営業戦略的なニーズとリンクしていたわけですから、当然といえば当然なんですが、80年代、…バブルの頃、こういう 「待つ女」 の歌が新しい衣装をまとってどっと噴き出してきたことがありました。

 これらの歌の特徴はメロディが垢抜けていて、きれい。
 アレンジも演歌風ではなく、洗練されていて、ゴージャスな雰囲気がある。

 まさに、バブルっぽいノリで、…いま聞きなおしてみると、「ああ、男たちがみな浮かれていた時代だったんだなぁ」 という感じがしみじみと伝わってまいります。

東京夜景4

 その代表的な歌として、たとえばテレサ・テンさんなんかの 『時の流れに身をまかせ』 という曲がありますが、これなんか、まさに当時、その気満々の妻子持ち男性なんかをウキウキさせた歌だったんじゃないでしょうかね。

テレサテン時の流れ

 ちょっと懐かしいところで、聞いてみましょう。
 テレサ・テン、『時の流れに身をまかせ』
 
▼ YOU TUBE より


 ええ、いかがでしたでしょうか。
 作詞は荒木とよひささんですけど、まぁ、見事ですな。
 ちょっと、歌詞をもう一度見てみましょう。


 ………… もしも、あなたと逢えずにいたら
 私は何を、してたでしょうか
 平凡だけど、誰かを愛し
 普通の暮らし、してたでしょうか

 時の流れに、身をまかせ、あなたの色に染められ
 一度の人生それさえ、捨てることもかまわない
 だから、お願い、そばに置いてね
 今は、あなたしか愛せない …………


  …ね! 家庭を持った男性に対し、「日陰の花」 として尽くす女性のけなげな気持ちを切々と歌ったという、まぁ、そういう状況に陥った男性は、「ヒッヒッヒ」 という感じの、たまらない歌ですなぁ。

 「女心はいじらしい」 。
 そう感じられた男性も多かったんではないでしょうかね。

 しかし…ですね、この歌をよ~く聞くと…、これは男性にとって怖い歌であることが分かります。

 これはですね、女性の本音を明かせば、
 「よい思いをしたいのなら、それなりにリスクを背負いなさいよ」
 と言っているわけですね。
 
 甘い言葉が、次々と吐息のように吐き出されてくるという感じがしますけれど、メッセージとしてはですね、 
 「これから一生つきまとうからね、覚悟しなさいよ」
 という意味ですね。
 男性からすれば、背後霊にガバっと取り付かれたというような歌であります。

 で、こういう歌が出てくる背景というのはですねぇ、やはり多くの不倫が短命であるという事実があるからだと思います。
 ええ、2人の関係が始まった当初というのはですね、どちらもうっとりした気分になるでしょうけれど、少し関係が進んでくると、明らかに男性の方が醒めるのが早いんですね。

 そもそも、男性はなんで不倫に走るか。

 それはですね、…まぁ、エッチしたいという欲望もあるんでしょうけれど、それ以上にですねぇ、「婚外恋愛」 というものが、自分の魅力の再発見につながるからなんですね。
 自尊心が満足させられるということなんですね。

大阪の夜景1

 ええ、男はですね、お金や地位、名誉を得るなんていうことよりも、モテるということの方がはるかに大切なときがあります。 

 地位とか、お金とか、名誉とかいうものは、いわば社会が認めた男性の価値なんですね。
 それに対して、モテるということはですね、女性から 「生物的なオス」 として価値を認められたということですから、まぁ、いわば本能的な満足が得られるということになる、…というわけだと思います。

 で、一度結婚してしまうと、普通の男性には、この 「モテる」 という経験を持つことはなかなか難しいものになります。

 だから、ちょっと 「女房以外の女性からもモテてみたい」 …。
 まぁ、そこにあるのは、自我肥大願望のようなものですな。

 しかし、こういう自己満足から始めた恋愛は、当然破綻も早いわけです。
 不倫が短命に終わるというのは、「世間が許さないから」 とかいう社会的な警戒心が男性に働いた…というよりもですね、自己満足には限界があるということなんですね。

 だから、男性が途中から逃げ出して、女性が後を追うというケースが多いんではないかと思います。

 で、まさに、そんな歌がありますね。
 石原裕次郎さんの 『ブランデーグラス』 。山口洋子さんが作詞した有名な曲ですね。

石原裕次郎ブランデーグラス

 これはですね、さっきおかけした 『時の流れに身をまかせ』 と聞き比べてみると、同じ不倫の恋の歌でも、男女では、こうも違うのか…ということが明瞭に分かるような歌です。

 まぁ、どこが違うのかということはですね、まず、曲を聞いて頂いて、その後にお話するとしましょう。
 石原裕次郎の持ち歌で 『ブランデーグラス』 。


 ▲ YOU TUBE より

 ええ、石原裕次郎さんの歌を YOU TUBE に収録されていたカラオケで聞いてみましたけれど、『ブランデーグラス』 でした。

 だいたいですね、不倫ソングというのは、歌詞が非常に微妙な表現になっています。

 何気なく聞いていると、一見普通のラブソングのように思える歌詞の中にですね、それと分かる人にだけ通じるようなシグナルをチョコチョコ小出しに出していくわけですね。
 歌詞をよく見てください。


 ……これでおよしよ、そんなに強くないのに
 酔えば酔うほど、淋しくなってしまう
 涙ぐんで、そっと時計を隠した、女心、痛いほど分かる
 指で包んだ、丸いグラスの底にも、残り少ない、夢がゆれている

 よせばよかった、よせばよかったけれど
 恋は知らずに、燃えてしまうものだよ
 白い小指、ためらいながら絡ませ、未練心、打ち明けたおまえ
 雨は降る降る、部屋の中にも胸にも、いつか来そうな、別れを告げて

 心ひとつ、傘はふたつに離れて、逢えば夜は、つかの間に過ぎる
 雨は降る降る、遠く消えてく背中と、
 いつか来そうな、別れを濡らす……


 …ってな歌詞ですが、いかがでしたか?

ブランデーグラス1

 この歌もですね、女性が
 「涙ぐんで、そっと時計を隠す」
 とかですね、
 「心ひとつ、傘はふたつに離れて…」
 などといった、非常に微妙な表現で、二人の関係をそれとなく示唆しています。

 まぁ、それは先ほどの 『時の流れに身をまかせ』 と同じなんですが、決定的に違うのはですね、男の立場から不倫を歌うと、「別れ」 が前提になっているんですね。

 この歌においてもですね、
 「雨が降る降る、いつか来そうな別れを告げて」
 …とかですね、
 「雨が、いつか来そうな別れを濡らす」
 というふうに、「別れがいつかは来る」 ということが宿命づけられているように歌われております。

 ここが 「一度の人生を捨てても構わない」 と開き直っているテレサ・テンさんの歌と決定的に違うところですね。男が逃げ腰になっている感じがよく伝わってきます。

 第一にですよ、この歌の主人公は、
 「よせばよかった。よせばよかったけれど…」
 と、恋の渦中にいるにもかかわらず、すでに後悔しているわけですね。

 「よせばよかったけれど、恋は知らずに燃えてしまうものだよ」
 …というわけですが、ええ、非常に理屈っぽく弁明しております。

 この理屈っぽいけれど弱気なところがですね、「時の流れに身をまかせ…」 という歌に示される、情緒性は濃いけれど、けっこう腰の据わった女性心理との決定的な違いとなっております。

 ま、ホントの不倫ともなると、けっこう男にも女にもシンドイものがあります。
 せいぜい、歌の世界にとどめておく方が、とりあえず懸命であるかもしれませんね。

 …というところで、今日は 「不倫ソング」 を、男と女の立場から読み解いてみました。
 それでは、また来週。
 お相手は、町田でした。


 ▼ 再放送
Jポップ・クリティーク 「セクシィ」
Jポップ・クリティーク 「タイガー&ドラゴン」
 

音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 01:12 | コメント(4)| トラックバック(0)

レッドクリフ

 『レッドクリフ (赤壁) PartⅠ』 を観てきた。
 面白かったなぁ。
 CGとワイヤワークを主体としたアクション映画って、あまり期待していなかったけれど、CG的な処理もだいぶ緻密になってきて、実写と変らない雰囲気になってきた。

レッドクリフ4

 長江を埋め尽くす艦隊。
 それと平行して陸路を進む騎馬軍団。
 馬がいっぱい出てくる映画が大好きなので、そのへんはずいぶんと楽しめた。

 歴史映画というと、登場人物が分かりづらいので敬遠する人が多い。
 しかし、この映画では、諸葛孔明、劉備、曹操、孫権、周瑜、関羽、張飛といった 「三国志」 ではおなじみの人物が画面に登場するたびに、しつこいほど字幕で説明してくれる。
 たぶん 「三国志」 を知らない人も、誰が誰だが分からないということはなかったはずだ。

レッドクリフ2

 ストーリーも明快。
 あの遠大な 「三国志」 を、赤壁の戦いだけに凝縮しながらも、話の前後関係がつながるように、うまい要約の仕方をしている。
 歴史マニアには物足りないところがいっぱいあるはずだが、逆に、歴史に興味のない人にはシンプルになった分、解りやすかったかもしれない。

レッドクリフ3

 とにかく戦闘シーンの多い映画だが、「戦闘」 というより 「ちゃんばら」 。
 関羽、張飛、趙雲といったおなじみのスーパーヒーローが、超人的な戦い振りを披露する活劇映画と割り切れば、それなりに楽しめる。

 見どころは、役者たちの 「面魂 (つらだましい) 」 。
 とにかく、男たちの面構えがいい。

 日本の役者たちが頑張っていた。
 特に、中村獅童…カッコいい。
 『硫黄島からの手紙』 でも、冷酷で狂信的な日本軍人をうまくこなしていたけれど、今回は周瑜の配下として活躍する熱血将軍 (甘興) の役柄。
 強面 (こわもて) 役が板に付いてきたように思う。

中村獅童

 金城武もいい表情をしていた。
 超然として、涼しげで、美しい孔明だったと思う。

諸葛孔明1

 で、なんといっても周瑜役のトニー・レオンの存在感がピカイチ。
 アジアを代表する役者だとあらためて思った。

tonyleung1

 周瑜が、呉国に同盟を求めにきた蜀の孔明 (金城武) の人柄を見るために、2人で琴を弾き合うシーンがある。
 この2人の琴のインプロビゼーションが見ものなのだ。

 互いに琴のワザを競いながら、相手の力量に応じて挑発しあい、理解しあい、最後は共鳴しあっていく。
 きっとアメリカに渡ったエリック・クラプトンが、デュアン・オールマンと最初にジャムセッションを行ったときがこんな感じだったのだろうな。
 
 曹操役もいい。
 チャン・フォンイー。
 写真でみるかぎり、ただの 「人の良いオッサン」 なんだけど、80万の大軍団を統率する大将軍として、全軍の指揮を取るときは、それなりのスケールの大きさを漂わせていた。

曹操

 曹操は、この映画でははっきりとした悪役として登場する。
 曹操ファンの私としては不満であったが、シンプルな悪役に徹したばかりに、かえって曹操のキャラクターがはっきり伝わったかもしれない。

 冷酷でありながら、時に配下の武将たちに見せる優しい笑顔。
 笑うと、ホント 「ただの人の良いオッサン」 。
 そこに、かえって悪役のしたたかさがにじみ出る。

 こういう役者に、絶大なる 「悪の権力」 を与えた監督ジョン・ウーも、案外したたかな監督だったのかもしれない。

 なんだか、またコーエイの 『三国志』 を遊びたくなってしまった。

音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 23:30 | コメント(0)| トラックバック(0)

便利グッズ紹介

 カトーモーターさんというビルダーは、工芸品のような美しい木工家具をあしらった高級キャンピングカーを製作する会社として知られている。

 しかし、このビルダーは、単に内装仕上げに個性を発揮するだけの会社ではない。
 さまざまな便利グッズを開発するメーカーさんでもあるのだ。

 現に、カセットガスを2連装したガス供給機 「CAMP CAR GAS」 などはキャンピングカー用のコンロに使ったり、また野外でバーナーを使うときに使われたりして、かなり普及している。

カセットガス供給機

 このたびカトーモーターさんが開発された新商品は、「マーブルコントローラー」 。
 これは、キャンピングカー内のベンチレーターの回転数をコントロールしたり、LEDランプの消費電力などを総合的に制御する画期的なコントローラーだ。

マーブルコントローラー

 ベンチレーターの場合は、回転数を落として、ゆっくり回すことによって、音も静か。消費電力も削減。
 タイマー付きなので、任意の時間に自動的にON-OFFさせることが可能。

 LEDランプとも連動していて、こちらの方は、白熱灯に比べ消費電力を10分の1ぐらいにまで落とすことが可能。
 だから常夜灯として使っても、サブバッテリーへの負担もかけることなく、実に省エネ。
 コントローラーのお値段は、税込み43,000円。 

 お次はマルチスクリーン。
 キャンピングカーで車中泊する場合、あるいは炎天下に放置する場合など、車内の断熱・防寒を維持するための必需品。
 運転席・助手席・フロントガラスを覆う3面セットから、リヤ窓までカバーする7面セットまで種類は豊富。

マルチスクリーン1

 これもカトーモーターさんのオリジナルなのだが、窓が開いているところがミソ。
 ちょっと外を見るときに、いちいち吸盤を外さなくても外が覗けるようになっている。

 ハイエース用、キャラバン用など、すでに定番になっているものもあるが、カムロードでもボンゴでも、オーダーメイドが自由自在。
 お値段は、3面セットで19,950円から。

 お次は 「ハンドル付き防振パンタジャッキ」 。
 パンタジャッキを操作するときに、いちいちハンドルをジョイントさせるのは面倒。さらにそのハンドルもかさばるので収納も億劫。

ハンドル付きジャッキ

 …というわけで、なんと最初からハンドルがセットになった便利ジャッキ。
 簡単操作で、キャンプ中の車体の揺れが解消。
 2台セット、ボックス付きで10,500円。


 これらの便利グッズを開発したカトーモーターの加藤社長いわく。

カトーモーター加藤社長

 「やっぱり、キャンピングカーって、夢のある “おもちゃ” なんですよね。
 ある程度、男の人のおもちゃという部分を持っているんですよ。
 だから、こういうものを開発して、お客様に見せると、みんな目を細めて喜んでくれるんですね。
 自分も、こういうグッズ類をあれこれ考えるのが楽しいし、お客様にも楽しんでもらえる。
 そう考えると、キャンピングカーって、究極のおもちゃかな…という気もして、奥行きが深いものだと感じますね」

 これらのカトーモーターオリジナルグッズの問い合わせは下記に。
 有限会社カトーモーター
 新潟県燕市小高6425-1
 tel:0256-62-6516
 http://www.katomotor.co.jp


campingcar | 投稿者 町田編集長 17:09 | コメント(0)| トラックバック(0)

アレン

 う~む。カッコいい!
 10月中旬の関西ショーでデビューした 「ALEN アレン」 のファースト・インプレッションは、まずそれだった。
 遠くから一目見ただけで、外形デザインワークにも力を入れている AtoZ (エートゥゼット) さんの心意気が伝わってきた。

アレン外形1

 特にアトラス 「アーデン」 あたりから始まったスリムなバンク形状が、えもいわれぬ美しいラインをたたき出している。
 引き締まった筋肉質の体躯に恵まれ、軽快にダッシュするスポーツマンの敏捷性を想像させるフォルムだ。

アレン外形リヤ

 ただ、さすがに車内に入ったとき、一瞬言葉に詰まった。
 (当然だが) 「アミティ」 より狭い!

 キャブコンとしての使い勝手を考えれば、全長こそアミティと大差ないものの、車幅、車高はアミティよりも短く、なによりもバンクベッドのあるなしの差が大きい。

 サイズ、レイアウト、価格。
 アミティシリーズは、それらのバランスが絶妙だ。
 ボディをコンパクトに絞りながらも、キャブコンとしての機能をぎりぎりのサイズの中で完璧に押さえている。

アミティLX外形
 ▲ アミティLX

 小型キャブコンというジャンルにおいて、どこを取っても死角のないアミティ軍団に比べ、アレンはキャブコンとしての機能を全うできるのかどうか。

 一瞬だが、そんな気持ちが頭をよぎった。

 だが、すぐに考え直した。
 
 「これはキャブコンとしても使える “ワゴン車” なのだ!」

 そう思うと、このクルマの明快なコンセプトがすっきりと頭に入ってきた。

 キャブコンという言葉から想像される “もったり感” は、このクルマには皆無。
 カッコよくて、取り回しに優れ、日常の足として使える。
 それでいて、キャブコンならではの断熱性、防音性、荷物の収納性を備え、単なるワゴン車にはない優位性を確保している。

 「ああ、新しい時代のキャブコンというのは、こういうものか…」
 と思った。

アレン外形関西

 自動車の小型化というのは、時代の趨勢でもある。
 必要最小限のエンジンパワーを、空力抵抗を抑えた軽量ボディで効率よく引き出す。
 それは、今の時代、どんなクルマにも求められる特性だ。

 ならば、新型ライトエースのコンパクトさを生かし、それをスタイリッシュな軽量シェルでまかなうニューアレンのようなキャブコンこそ、時代の寵児といえる。

 そう思って、もう一度車内をしげしげと眺めてみると、アミティに比べても、このこぢんまりとしたアレンの室内が、なにげに落ち着く心地よい空間に思えてくるから不思議だ。

 インテリアのカラーコーディネートも、実にこのクルマのサイズに合った小粋さを演出している。
 家具のトーンはカジュアルなライト感覚。
 公園脇にちょっとテーブルを並べたオープンカフェの気安さが漂う。

アレン内装3

 特に、グレー基調にタンがあしらわれたツートンのシート柄は、AtoZさんのアイデンティティカラー。
 これが明るい木工家具と絶妙にバランスされて、カジュアルながらもハイセンスな雰囲気をかもし出している。

アレン内装2

 レイアウトは、対面ダイネットにリヤ2段ベッドというキャブコンの王道パターン。
 もちろんセカンドシートは前向きになるので、走行中はワゴンライクな使い方ができる。

 リヤベッドは、さすがに全幅が絞られたため、長さが1800mmに届かず、大人の就寝定員は取れない。
 しかし、幅は逆にアミティより10㎝も広げられたため、小柄な女性や子どもたちには快適なベッドが確保されることになった。

アレンリヤベッド

 下段ベッドを外せば大容量のラゲッジスペースが生まれ、リヤ側に設けられた外部扉を使って外側からもアクセスできる。

 バンク部は、1600×1370mmという広さが確保されているので、子どもなら寝られないことはない。
 しかし、さすがに奥がつまった感じで、多少の窮屈感が漂う。

 もちろんそれも計算のうちで、バンク部を削ぎ落としても、フロント荷重の軽減と空力特性を確保しようという目的で設計されたバンクなのだから、このスタイルこそアレンの評価ポイントなのだ。ここは、「便利なフロント収納スペース」 と割りきった方がいいかもしれない。

 全高は2. 5m。
 アミティよりさらに20㎝低い。
 これも、それまで車庫事情でキャブコンをあきらめていた人々の視線を集めることになった。
 アミティよりさらに小型のサイズを追求したアレンは、逆に今までのキャブコン層とは違った客層を開拓することになったのかもしれない。

AtoZ渡邉常務
 ▲ 渡邉崇紀 常務

 渡邉常務の話によると、このアレンを見て、
 「これなら私でも運転できる」 と喜ぶ女性客がとても多いという。

 何気なく聞き流してしまうような話だが、この常務の発言は重要だ。
 ついに、女性が運転してみたくなるキャブコンが誕生したのだ。

 過去においても、自動車が爆発的に普及した国というのは、みな女性が運転を始めるようになった国だ。

 アレンがもたらせたものは、新しいキャブコンのスタイルであるばかりでなく、新しいモータリゼーションそのものかもしれない。



campingcar | 投稿者 町田編集長 15:30 | コメント(0)| トラックバック(0)

ポシェット

 2008年も終盤になってきて、キャンピングカー造りにも新しい流れが見えきた。
 その一つとして、バンコン開発が第2ラウンドを迎えたということが挙げられる。

 4年ほど前に新型ハイエースが投入されたことにより、日本のバンコンシーンはこれまでにない活況を呈した。
 ところが、今やレイアウト的にはほとんどのパターンが出尽くし、バンコンの発展は、一見、止まったかのように見えた。

 しかし、どっこい!
 水面下では、以前にも増して新機軸、新意匠のラッシュが続いている。

 レイアウト的に新機軸を打ち出すことが難しくなってきた各メーカーが、今や細かい部分での使い勝手の工夫、デザイン的な掘り下げなど、目を凝らして見なければ見逃してしまうようなディテールにおいて、とんでもなく緻密な造り込みを行うようになってきたからだ。

 西洋芸術の流れに例えると、ルネッサンスからマニエリスモの時代。あるいは、バロックからロココの時代になったといえるかもしれない。
 ある意味ではギミックに走ったという印象も伴うが、傾向としては、繊細さ、優美さ、緻密さの追求が大きなテーマとなり、全体的には大きな成熟期を迎えたといえる。

 しかし、そうなると、やはり老舗メーカーに1日の長があることは確か。
 はっきりいうと、これからバンコン市場への参入を企てている後発メーカーさんにとっては、厳しい時代が来ているのかもしれない。

 …というような話をマクラにして、今回はそんな 「緻密バンコン」 の代表例ともいえる レクビィ さんの 「ポシェット」 を紹介しようと思う。

ポシェット外形

 まぁ、びっくりである。
 現物を見た人ならば、「よくもまぁ、こんな細かい部分にまで凝ったようなぁ…」 とため息をついてしまうクルマだ。

 一言でいうと、これは、ハイエースのロングバン・ナローボディを使った 「ファミリーユース」 のバンコンである。
 しかし、「スーパーロングでは車庫に入らない」 という消去法の選択肢で選ぶには惜しい魅力がこのクルマにはいっぱい備わっている。

ポシェットダイネット1

 室内スペースは、当然、スーパーロングほどの余裕がない。
 にもかかわらず、広さも感じられるし、使い勝手にも余裕があるし、何よりも、乗って、使って楽しい。

 その秘密はどこにあるのだろう。 

 すべて小さな工夫の積み重ねなのだ。
 
 まず、シート。
 セカンドシート、サードシートとも通常のキャンパー用シートより座面が5㎝も低く設定されている。
 これは、ワークヴォックスが扱う 「レボシート」 をレクビィ仕様として特注したもので、座面も低ければ、足元の台座が斜めにカットされるなど、少しでも奥行きが稼げるような設計になっている。

ポシェットシート1

 座面が低いために、座ったときの安定感も向上するし、ヘッドクリアランスに余裕が生まれて、ダイネットそのものに 「広がり」 が生まれる。

 しかし、そうなれば、今まで座面下を収納スペースとして使っていたバンコンに比べると、荷物の収容能力が落ちる。

 それを補うための工夫があちらこちらに試みられている。
 まず、床下収納。
 これは8ナンバーを取るための、キッチン前のクリアランス確保の意味もあるが、FRP底にフタ付きなので、ちょっとした濡れモノなどを収納するときに便利だ。

ポシェット床下収納

 さらに、ユニークなのは、あらゆるところに設けられたポケット。
 そもそも 「ポシェット」 という車名は、フランス語の “小さなポケット” に由来するのだが、このポケットの数、位置、形状が尋常ではない。

 まず、オーバーヘッドコンソールの扉部分は、ポケットの “行列” になっている。

ポシェットOHコンソール1

 個々のポケットの収納力は小さいけれど、それが逆にいろいろな小物を仕分けして収めるにはすごく便利。
 しかも、それがデザイン的にこのクルマのアイデンティティを形成する役目を担っており、カジュアルなライト感覚を演出している。
 冷蔵庫の扉、その隣の収納部分にも、見事にポケットがあしらわれ、一目見たら忘れられない印象を残す。

ポシェット冷蔵庫

 凝った意匠はまだまだある。
 電子レンジを格納するための収納スペース。ジャバラ型のシャッター扉が採用され、しかもその中央部分にアールが設けられて、軽く外側に湾曲している。
 これが電子レンジのツマミなどの膨らんだ部分をうまく吸収し、スペース効率を高めている。
 ポータブルトイレの収納スペースにも、同様の試みがなされている。 

ポシェット電子レンジ等 ポシェット・ポータブルトイレ

 リヤゲートを開くと、左右に収納カウンターが見えるのだが、左側の外部シャワーに注目。
 普通だったら、その上にあるシンクのフォーセットを伸ばせばいいように設計されるところだが、シャワー用フォーセットが低い位置に設けられているため、子供やペットの泥足を洗うときにすごく楽だ。

ポシェット外部シャワー

 外部シャワーのフォーセットを独立させたのは、左右のカウンターにベッドマットを渡して子供用ベッドを作った状態でもシャワーが使えることを狙ったもの。
 芸が細かい。

 室内灯の位置と角度にも注目。
 左右に分かれた室内灯が、首振り動作を可能にして、リビング側とキッチン側の両方を照らせるように設定されている。

ポシェット室内灯

 それがまた、釣り鐘が首を振って涼しげな音を出すような印象をともない、なんともいえない風情をかもし出す。
 ここまで凝ったバンコンは、ちょっと類例がない。

 オプションとなるが、テレビは取り外して持ち出せるようになっている。
 それを運転席・助手席のヘッドレストに掛けてもいいし、地デジ用のクリップアンテナを付ければ、屋外でも見られる。

ポシェットテレビ

 「これほどこだわったバンコンは、レクビィの歴史の中でもかつてなかった」 と、開発を担った増田浩一社長は語る。

レクビィ増田浩一社長

 「フロアプランはすぐにできあがったんですわ。しかし、それからのやり直しにはめちゃめちゃ手間をかけたんです。
 床のクッションフロアを決めるのに張り替えた数は3回。シートは4回。天井の作り直しは3回。
 家具に関しては、もう何度作り直したことか…」

 なぜ、それほどこだわったのか。

 「奥さんに選んでもらうバンコンを造る要領なら、ある程度われわれも飲み込んでいるんです。
 しかし、今回は奥さんだけでなく、お父さんにも、子どもにも、お爺ちゃんにも、お婆ちゃんにも気に入ってもらえる内装を創り出してみたかった」

 …というわけで、社員全員の家族を巻き込んで、インテリアに関する感想、意見、要望、提案を集めた。
 ポケットのデザインひとつ取っても、そのような家族全員の意見を吟味した上で、サイズ、形状、ボタンの位置を変えたさまざまな試作品を作った。

ポシェット冷蔵庫

 そういう一連の開発過程を経たのちに、ようやくこのポシェットのデザインができあがった。

 バンコンのトップメーカーだからこそ、そこまでこだわったのか。
 そこまでこだわるからこそ、トップメーカーでいられるのか。

 いずれにせよ、こういうこだわりに、これからバンコン市場に参入しようとする後発メーカーはついて来れるのか。
 日本のバンコン開発の第2ラウンドは、業者間のきびしい技術開発合戦で幕を開けた感じだ。


campingcar | 投稿者 町田編集長 11:18 | コメント(0)| トラックバック(0)

防寒用蓄熱マット

 この11月初旬に東京で開催されたキャンピングカーショー 「お台場くるま旅パラダイス」 では、ユニークな便利グッズがあちらこちらのブースで展示されました。
 このブログでも、そのいくつかを、折をみてご紹介いたしましょう。

 まずは、蓄熱式温熱マットの 「ひだまりくん」 です。
 これは、一言でいえば “防寒グッズ” 。
 これからの季節に車中泊を試みる方の必需品です。

ひだまりくん1

 どういうものかというと、長さ1,800mm×幅500mm (厚さ45mm) の難燃性チップウレタンを保温剤に使った 「蓄熱マット」 なのですが、シガーライターソケットを使って1時間半ほど蓄熱すれば、その後7~8時間にわたってポカポカ温かい状態が保たれるという魔法のマットです。

ひだまりくん2

 これを展示していたのは、エアサス (camsus) や軽キャンパー 「オフタイム」 の開発で知られる島根県のスマイルファクトリーさん。
 その長藤社長さんが、お台場の展示ブースで置いたご自分の軽キャンパーの中で、実際に試してみたという保証済みの商品です。

 ショー会場でずっと寝泊まりした長藤さんは、こう言います。
 「シャツとパンツ1枚だけの状態で車中泊してみたのですが、この蓄熱マット、本当に温かいんですわ。
 このマットの上にバスタオルを敷いて、お腹に毛布をかけただけで十分寝られました。
 しかも、汗をかかない程度の温かさなので、タオルやシャツが濡れることなく、実に快適。これなら自信をもってお客様にお薦めできると感じました」

 キャンピングカーの車内を温める暖房機として普及しているのはFFヒーターですが、FFヒーターは、時に車内の空気をカラカラに乾燥させてしまうこともあります。
 人によっては、ヒーターを作動させながら加湿器を稼動させている人もいるようです。

 
 「その点、この蓄熱マットは空気を過度に乾燥させることがないので、身体に優しい暖房機です」
 と長藤さん。
 「さらに燃焼式の道具ではないので環境にも優しい」
 …というわけですね。

 「使い方としては、走行中に蓄熱しておけばいいんですね。目的地に着く2時間ぐらい前からシガーライターソケット差し込んでおけば、サブバッテリーへの負担もゼロ。
 蓄熱するとブザーが鳴るようになっていますので、そうしたら抜く。それで7~8時間は十分に温かい」


 なるほど便利!
 しかし、クルマを止めて同じところに連泊した場合はどうなのだろうか。
 バッテリーが弱っていたりしたら、蓄熱による負担は生じないのでしょうか。

 長藤さんいわく。
 「状況によっては多少そういうこともあるかもしれません。
 しかし、蓄熱に消費する電流はわずか5アンペアなんですよ。それも1時間半の通電で済んでしまう。
 だから、一晩ぐらいはエンジンを止めた状態でもまったく大丈夫だと思いますよ」

 …ということで、とても便利な暖房グッズに思えるのですが、蓄熱できるのは1回で1マット。
 もし、夫婦2人旅で、2枚温めたい場合はどうすればいいのでしょう?

 「シガーライターソケットは自動車には一個しか付いていませんけれど、よくホームセンターなどで売っている二つに分岐しているソケットを買ってもらえれば使えると思いますよ。
 乗用車のシガーライターというのは10アンペアなんですよ。で、蓄熱に必要なのは5アンペアなので、二ついっぺんに通電してもヒューズが飛ぶことがないとメーカーの人は言っています」

 実はこの蓄熱マット、トラックドライバーの間ではそうとう普及している商品だそうです。
 トラック協会では、暖房を取るためにアドリングしたまま仮眠を取るドライバーに対して、CO2の削減のためにアイドリングをストップするよう呼びかけています。
 そのためFFヒーターや、このような蓄熱マットを奨励しているとも。

 ということで、この 「ひだまりくん」 が多く普及している世界は、トラック業界なのですが、そこで流通する商品は24V仕様。
 乗用車用の12V仕様は、まだ十分な販売システムが整っていないようです。

 製造元は (株) 金子製作所
 標準小売価格は36,800円 + (消費税)

 キャンピングカーで使う場合の問い合わせは、スマイルファクトリーさんへどうぞ。

campingcar | 投稿者 町田編集長 12:37 | コメント(0)| トラックバック(0)

小室哲哉の時代

 朝のテレビ報道を見ていたら、どの局も 「小室哲哉が詐欺容疑で逮捕」 という話題ばかりだった。
 私は、この音楽家の熱烈なファンというわけでもないので、そういうニュースに接しても淡泊な気分でいられる。
 詐欺容疑そのものにも関心がない。

小室哲哉氏

 しかし、ひとつの時代が終わったなぁ…という感慨だけはものすごくこみ上げてきた。
 ある時代が去って、次の時代がやってくるという雰囲気を、おぼろげながらも感じる今日この頃だったけれど、このニュース報道に接したときに、明確に 「ある時代が終わった」 という気がした。

 どういう時代が終わったのか?

 「空気を読む時代」 が終わったのだ。

 誰もが、同じノリで、同じものに感動し、同じ空気を共有するという奇妙な時代。
 それが 「終わった」 ように思う。

 ここ10年ほどの間に、ものすごい勢いで 「空気を読む」 ことが日本人のマナーかモラルでもあるかのように広まった。
 だから、その場の空気に乗り切れない人間は、みんなから排除されることを恐れるあまり、必死になって同じノリを共有しようとした。
 あるいは、そういうノリに感動するように自分を訓練した。

 小室哲哉氏の音楽というのは、まさに80年代から90年代を支配したそういう 「空気」 を、音楽の場で再現したようなものだ。

 つまり、小室音楽を受け入れるか受け入れないかという空気をつくり、その空気になじめない人間に 「時代遅れ」 のレッテルを貼ることによって島流しの刑を執行したのだ。

 その象徴的な例が、カラオケボックスと、カラオケスナックの分離である。

 小室哲哉氏の音楽は日本人のカラオケ空間から “オヤジとオヤジ文化” を駆逐して、オヤジたちを、カラオケボックスには入れないカラオケスナックという離れ小島に島流しした。

 言葉を変えていえば、歌詞の情緒がメロディより大切にされた 「演歌」 を追い出し、さらに歌詞のメッセージが楽曲構成よりも優先される 「70年代フォーク的世界」 を絶滅させ、最後は、歌い手の個性が歌に意味を与えた、それまでのJポップ路線をも変えた。

 小室ミュージックにおける歌い手は、無機的なシンセサイザーの音の中で、「ヴォーカル担当マシン」 という位置づけになり、今までの歌手には真似できないほどの人工的なビート感、リズム感、高音域歌唱力などを求められた。

 そのようにしてつくり上げられたサウンドは、ある意味、洋楽とも従来のJポップ (ニューミュージック) とも異なる新しい音のバイブレーションを創造したのかもしれない。

 でも、そういう音楽からは 「歌手と歌詞」 が消えた。

 安室も聖子も篠原涼子も華原朋美も素晴らしい歌い手だけど、実は、小室哲哉氏の曲は、彼らじゃなくてもノリを会得すれば歌える。
 つまり、小室流のメロディライン、転調感、ビート感をパーツごとに把握すれば、誰が歌っても同じような効果が生まれる。

 そこに、多少難易度が高くても、小室ソングがカラオケハウスで重宝がられる秘密がある。
 楽曲を構成するパーツが一律に “個性的” だから、そのツボさえ押さえれば、誰もが安室にも、華原にも、TRFにも、globeにもなれるのだ。


 このように、彼の作る曲は、歌い手の 「個性」 を必要としないところに特徴があったが、また歌詞の 「意味」 も必要としなかった。

 キーボードを叩きながら、リズムとメロディ主体に曲を作っていく小室音楽では、歌詞はノリの良い言葉の集合体に過ぎず、言葉によるイメージ喚起力や情緒性などは置き去りにされた。

 このように、「歌手と歌詞」 を追い出したところに小室音楽の特徴があるとすれば、そういう音楽がもてはやされた時代の素顔も見えてくる。

 「歌い手の個性」 、「歌詞としての意味」 が必要とされない歌とは何だろう?

 それはもはや 「歌」 とはいわず、「空気」 と呼ぶべきものでしかないのではないか。
 小室ミュージックは 「空気の時代」 の到来を、音で表現したのだ。

 小室的な音楽の世界では、個性の異なる人間同士のぶつかり合いとか、歌詞の意味を詮索したりする行為は必要とされない。
 それよりも、人と人が 「言葉」 を介さずにつながり合える空気の波動 (バイブレーション) の方が大事とされる。

 かくして、ノリの共有だけが、人間と人間をつなぐ大事なカギになっていく。

 小室音楽は、そういう時代のニーズにぴたりとハマった。
 …というか、時代の方がそういう小室音楽に範を求めた。 

 でも、そうやって空気と化していった音楽というものは、時代の空気が変わればたちまち霧散する。

 「空気を読む」 ことがサバイバルにつながったのは、総中流意識の幻想が生き延びていた時代のことだ。
 それは、誰もが均質な空間の中で生きているという 「安心感」 と 「閉塞観」 が共存していた時代の感性に過ぎない。

 格差社会が声高に叫ばれるような今の時代になると、もう 「空気を読む」 ことだけではサバイバルできない。
 歌でも、メッセージのないものは生き残れない。
 それを誰よりもよく感じていたのは、当の小室哲哉氏だったろう。

 海外につくったスタジオ付き別荘も、フェラーリコレクションも、次々と替わった奥さんも、小室氏にとっては、風向き次第で変わってしまう空気のようなものでしかなかったと思う。
 そう思うと、彼の空虚なさびしさや飢餓感も伝わってくる。

 やがて、小室哲哉の名前は、「空気読み」 の時代を思い出すものとして、はかなさとほのかに甘い感傷を漂わしつつ、ゆっくりとフェイドアウトしていくのだろう。

 ひとつの時代に殉じた音楽家という意味では、それなりにカッコよかった人なのかもしれない。


コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 16:08 | コメント(0)| トラックバック(0)

タイガードラゴン

 こんばんは。町田がお相手を務める 「Jポップクリティーク」 です。
 今日はですねぇ、「不良の哀しみ」 …というやつをテーマに採り上げてみようかと思っています。

 不良…。

 ね、…この言葉はですねぇ、不良に成りきれなかった中途半端な青春を送ってしまった中高年にとっては 「永遠の輝き」 を秘めた言葉ですな。

 親や学校から敵視されつつ、しかし、どこか危ない魅力を秘めていて、けっこう異性から、「カッコいい」 なんて崇拝されちゃったりする…っていう、まぁ、不良になれなかったお坊っちゃんお嬢さんは 「不良」 に対して、そんなイメージを持ちがちですね。

 しかし、実際の不良の心境は、なかなか複雑です。
 けっこう不安にさいなまされていて、神経もピリピリ研ぎ澄まされ、哀しみにも彩られるという、…そう簡単に、お坊っちゃんお嬢さんには務まらない苛酷さを秘めています。

t

 そういう心境を歌にした名曲、それが、クレイジーケンバンドの歌った 『タイガー&ドラゴン』 なんですなぁ。

 なんていったって、あの、「俺の話を聞けぇ!」 という悲痛な叫び。

 ね! あれは一度脳裏に刻印されると、肌に焼きゴテを押しつけられたように、しばらく消えることがありません。
 それでいて、どこかおかしい。
 笑える。
 この繊細なニュアンスこそ、実は本物の不良が抱える 「哀しみ」 なんですね。

 それではクレージーケンバンド…横山剣さんの歌う 『タイガー&ドラゴン』 を聞いてみてください。


 ▼ 「タイガー&ドラゴン」 from You tube


 凄いですねぇ、この曲!
 アーチストに対する予備知識を持たず、いきなり曲だけ聞かされたとしたら、たいていの人は、演歌系の歌手が歌う歌謡ポップスだと思うでしょうね。
 それほどアクが強い。

 また、ある人は、お笑い系タレントによるコミカルソングだと思うかもしれませんね。
 それほどおかしい。

 歌の内容はですねぇ、横須賀で遊び回っていた男が、昔の女を呼び出す話なんですが、この男は、
 「俺の話を聞けぇ!」
 と強引に迫ったかと思えば、その次に 「5分だけでもいい」 と気弱になり、さらに2回目のサビでは、「2分だけでもいい」
 …とどんどん譲歩していく。

 哀しいけど、おかしい。
 不思議な歌ですね。

 この歌の不思議な雰囲気はですねぇ、ギャグなのかシリアスなのか分からないという、主人公の微妙な立ち位置から生まれています。

 音の作りは、グループサウンズ風の味付けがなされた70年代歌謡ポップス風です。
 それだけで分かる人には、これが 「パロディ」 だと分かるんですが、横山剣さんがですねぇ、大真面目にリキんで歌っているために、パロディの軽さが吹っ飛んでいるんですね。

クレイジーケンsoulpunch

 主人公は、元暴走族といった雰囲気の男です。
 今も、虎と龍…つまりタイガー&ドラゴンの刺繍を背中にあしらったスカジャンで決めています。

 言葉づかいから察するに、この男は不良グループでもそのリーダー格の雰囲気を漂わせています。
 ケンカなどにも自信を持っていそうな感じの男ですね。

 その彼が、電話を使って自分の女を呼び出しているところから始まります。

 「三笠公園でお前待ってるから、今すぐ来いよ」

 …と、男は命令するわけですが、その声やしゃべり方はけっして楽しそうではありません。
 きっと女がグズっているからなんでしょうね。

 どうやら、2人の間にはブランクがあるらしいことが分かってきます。

 「あの頃みたいに、ダサいスカジャン着ているから」
というところですね。

 いちいち目印となる自分の衣装を説明しなければならないほど、2人はしばらく会っていないということが分かります。

 この表現から、もうひとつ、この男の心境が伝わってきます。

 もしもですよ、今もバリバリの不良でしたら、彼は自分の衣装を 「ダサい」 とは決して言わないはずですよね。
 自分の衣装を醒めた目で見ているところに、この男がいま転機に立っている様子がしのばれます。

 さて、「俺の話を聞けぇ!」 と男は叫ぶわけですが、では女がやってきたら、いったい何を話すつもりだったのでしょう?

 歌詞では、「お前だけに本当のことを話すから」 としか表現されていません。

 では、本当のこととは何か?

 「お前が好きだ」 という告白かもしれませんね。
 あるいは、「不良から足を洗うつもりだ」
 …とでも言うのかもしれない。

 もしかしたら、「俺は日本人じゃないんだ」 などというヘビーなカミングアウトかもしれませんね。
 場合によっては、覚醒剤の密輸情報なんかに関するシビアな話かもしれません。

 しかしですねぇ、いずれにせよ、男が重みを感じているほどには、女が男の話に興味をもっていない気配が、この歌から伝わってきます。

 そのため、男はますます強く 「俺の話を聞けぇ!」 と叫ばざるを得なくなります。
 2回目のサビでは、なんと 「俺の、俺の、俺の…」 と、「俺」 が3連呼されるんですね。
 つまり、3連呼しなければならないほど、男が自信を保ち得なくなっていく状況がそこに描かれています。

ケンバンドジャケ1

 この自信の喪失は、どこからやってきたのでしょう。

 彼は、はじめて 「相手に通じないかもしれない言葉」 というものを持ってしまったんですね。

 人間が、誰かに何かを告げようとしたとき、たいていの言葉はすでに用意されています。
 テレビドラマのセリフや、バラエティ番組の会話の中には、相手に伝えたい言葉のサンプルが山と積まれています。
 ちょっと高尚な言葉を取り出したいときには、新聞や本を読めばよろしい。

 しかし、彼はですねぇ、この時初めて、そういう様々なメディアで使われている言葉では表現できない何かを、自分の心の中に見出しちゃったわけですね。

 そういう、自分の 「固有の言葉」 が通じないかもしれない…そんな不安といらだちに、彼はいま直面しているわけですね。
 
 こいつは辛いことですねぇ。
 
 だけど、この歌には、「辛い」 、「淋しい」 、「哀しい」 などという言葉は一言も出てきません。
 それなのに、やるせない感情がいっぱい漂っています。
 
 そういう気分を表現している歌詞が至るところに散りばめられているが、この歌の特徴です。

 たとえば、「貸した金のことなど、どうでもいいから…」 。

 エグい表現ですが、「カネがすべての世の中でも、俺とお前の関係はカネの価値などでは測れないんだ」
 という、かなり切実な響きが伝わってきて、そこが泣かせます。

t

 この曲を聞いていて、うまいな…と思わせるところは、リスナーの様々な思い入れを取り込める “すき間” を、わざといっぱい設けているところなんですね。
 人によって、様々な解釈ができるようになっています。

 たとえば、歌詞をよく聞いてみるとですねぇ、実、は恋愛の歌なのかどうかもはっきりしないんですよね。
 「お前」 と呼ばれる相手が、はたして 「女性」 なのかどうなのか。それも定かではありません。
 男女の歌ではなく、男同士の歌として捉える人もいるかもしれませんね。

 あるいは、不良の親が、同じ道をたどりそうな息子を説教する歌だと説明されれば、そんな風にも聞こえてきます。
 「奥行き」 が深い歌詞ですね。

 しかし、いかなる状況をリスナーが想像しようが、この歌から伝わってくるヒリヒリするような別れの予感や、焼けるような痛みの感覚が薄れることはありません。

 主人公は、
 「お前が愛した横須賀の海に優しく抱かれて、泣けばいいだろう」
 と、海を一緒に眺めることで、相手と心が通い合うことに一縷 (いちる) の望みを託すわけですが、しかし、その海は、人を優しく抱くような海ではありません。

 「電気クラゲが浮かぶ、どす黒く澱んだ海」 なんですね。
 それを覗き込んだ人間は、心を開くどころか、ますます閉ざしていくだろうということが目に浮かぶような情景です。

 そういう海を冷静に観察している主人公というのはですね、自分の希望が断ち切られるという、その結末まで読み切っているわけですね。

 絶望的な状況を暗示しておきながら、主人公を破局の寸前で凍らせたまま 「エンド・タイトル」 を流すという、まぁ、昔のフランス映画のような終わり方ですね!

 これは紛れもない 「文学」 です。
 これだけの仕掛けを盛り込むことができる横山剣さんという人は、相当に才人だという気がいたします。

 …という感じで 『タイガー&ドラゴン』 を聞いてみましたけれど、いかがでしたでしょうか。
 それでは皆様また来週。
 お相手は町田でした。


▼ 再放送
Jポップ・クリティーク 「そんなヒロシに騙されて」
Jポップ・クリティーク 「わかれうた」
Jポップ・クリティーク 「恋の予感」
Jポップ・クリティーク 「白いページの中に」
Jポップ・クリティーク 「千の夜と千の昼」
Jポップ・クリティーク 「セクシィ」


音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 02:03 | コメント(0)| トラックバック(0)

お台場くるま旅

 3日間開催された 「お台場くるま旅パラダイス2008」 が幕を閉じて、会社に戻ってきました。
 撮り終わった画像にファイル名を付けて整理し、カメラ機材のバッテリーや電池を充電して、いまやっと一息ついたところです。

 この3日間、初日だけは風が強かったものの、おおむね天候にも恵まれ、来場者も気持ちよいショーを楽しんだようです。
 主催者の発表によれば、なんでもこのショー始まって以来の来場者の数だったとか。

お台場ショーゲート 
 ▲ 初日の開場前からゲートの前は行列

 3連休ともあって、行楽に出かけた人も多かったでしょうが、ショーの方もなかなか盛況でした。

会場風景1 会場風景2
 ▲ 会場風景

ゲンさんのアウトドア料理教室
 ▲ おなじみのゲンさんのアウトドア料理教室

バンテックベガ1 エアストリーム1
 ▲ 人気車も勢ぞろい

ナッツマッシュ1
 ▲ 話題となったナッツRVさんの新型キャブコン 「マッシュ」

レクビィポシェット
 ▲ レクビィさんの新型バンコン 「ポシェット」 も人気

 駐車場に止めた愛車の中で2泊。
 夜は連日酒びたり。

 日産ピーズフィールドクラフトのパーティに2夜連続でご招待を受け、極上スペアリブ、新鮮なホタテなどをたっぷり堪能させていただいた上、そこに合流したマックレー渡辺社長、スマイルファクトリーの長藤社長、キャンピングカー評論家の渡部竜生さんらとも歓談の機会を得ることができました。

 お声をかけてくださった日産ピーズの田村社長、畑中常務、ほかスタッフの皆様、そしてユーザーの皆様、ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

 さらに、酔いの勢いをかって、レクビィさんのパーティ、エアストリームさんのパーティ、フィールドライフさんのパーティなどにも厚かましく参加。
 ユーザーの方々やスタッフの方々から楽しいお話をたくさん聞かせてもらいました。

 すべての皆様に感謝。
 楽しい思い出がまた増えました。

旅&キャンプ | 投稿者 町田編集長 22:08 | コメント(2)| トラックバック(0)

お台場ショー

 今日から3日間、今年最後の東京でのキャンピングカービッグイベントが開かれます。
 「東京お台場くるま旅パラダイス2008」 。

お台場くるま旅1

 昨日は搬入日。
 搬入日というのは、取材・撮影するには格好の日なんですね。
 なにしろ、まだお客さんがいらっしゃる前なので、スタッフの方々も気軽に取材の時間を取ってくれます。

 で、昨日は昼から現地に詰めて、搬入してくるクルマを撮りながら、その開発コンセプトや苦労話や裏話をたっぷり聞いてきました。

 みんな気合が入っていましたね。
 やはり東京のショーは、いい意味で緊張するとか。
 目の肥えたお客さんが多く、新車の出来ばえなどに関しても反応が早い。
 ある意味、容赦ない。

 だから、このショーで誉められれば、すごく自信もつくのだとか。

 キャンピングカーの業界というのは、クルマを開発した人がエンドユーザーと直にコミュニケーションが取れる世界なんですね。
 狭いといえば狭い世界かもしれないけれど、モノを創る人間にとっては幸せなことかもしれません。

 私も、自分のクルマを持ち込んで、今日から3日間現地に泊まりです。
 たぶん夜は、お声をかけてくださる業者さんのブースに寄って、いろいろな話を伺うことになるでしょう。
 楽しみです。

 東京お台場くるま旅パラダイス2008
 11月1日 (土) ~11月3日 (月・祝)
 9:30~17:00 (最終日16:00)
 東京都江東区青海1丁目

コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 01:23 | コメント(2)| トラックバック(0)
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