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RV購入日記 04

(前回 からの続き)

 ○月○日

 ギャラクシーの納車が7月の19日に決まった。
 自動車保険の契約を結ぶために、日頃つき合いのある保険会社の担当者と連絡を取る。

 納車当日に、すぐに運転したいんだけど…と話すと、
 「それでは、私がショップに同行して、その場で登録が終わったばかりの車検証を見ながら保険契約をしましょう」
 ということになった。

 ○月○日

 いよいよギャラクシー納車の日。

 10時に保険会社の人が自宅に来訪。
 納車日にさっそくギャラクシーを撮影するため、撮影用の椅子テーブル、パラソル、ツーバーナー、ランタン、外部電源のための延長コードなどを彼の乗用車に積んで、国立グローバルに向かう。

 納車したてのギャラクシーをさっそく田代氏の知っている秋川の川原に持ち込んで、説明を受けながら撮影しようというわけだ。

 約束の11時にグローバル国立営業所に着くと、田代さんはちょうど立川の陸事に登録に行っていて、留守だった。

グローバル国立展示場
▲ 旧国立営業所

 田代氏を待ちながら、保険会社の人と雑談していると、やがて、ドロドロドロというディーゼルエンジンの音を立てながら、田代氏の運転するまっ白のギャラクシーⅢが登場。
 ご対面である。
 ナンバーが付いた私のギャラクシー。

 ナンバーがいい。
 多摩88の177。
 ラッキーセブンが二つ。

 「いいナンバーでしょ」
 登録を終えてきた田代さんもホッとした表情。
 4とか9が続く縁起の悪いナンバーで、お客さんが機嫌を損ねたりすることも多いのかもしれない。

 保険会社の担当者も興味をもって近づいてきて、二人で来たばかりのギャラクシーをじっくり眺める。
 キャンパーの中では抜群にフィニッシュがきれいだと思った車種だったが、なんとなくドアや窓の立て付けが荒く、フィニッシュが雑な印象を受ける。
 やはり乗用車とは違った乗り物だということが分かる。

 トレーラーハウスの中で、しばらく3人で歓談する。今日は私の納車だけだが、明日は三つも集中しているという。
 明日は大安なのだそうだ。

 「縁起を担ぐ人はけっこういるんですか?」 と聞くと、
 「かなり多いですよ」 という話。
 日を選ぶだけでなく、時間や方位まで指定してくる客もいるとか。

 「午前中に納車しろと言われて、あせって12時10分前に大汗で飛び込んだこともありました」 という。
 けっこう苦労しているみたいだ。私などは楽な客だっただろう。

 ちなみに 「今日は何の日ですか?」 と聞くと、
 「今日はいい日です。あまり気にしない方がいいです」
 と、田代さんがいう。

 縁起の悪い日ですと言っているようなものだ。
 後で調べると仏滅だった。
 どうりで田代氏が、 「今日は忙しくないので、ゆっくり撮影につき合えますよ」 と言ったわけだ。

 保険の担当者が帰って、ギャラクシーの使い方の説明を田代氏から受ける。
 鍵だけでスペアと合わせると19個! 
 常時使うキーだけでも七つだ。

 イグニッションキー、エントランスドアのキー、LPボンベの蓋のキー、カセットトイレの取り出し口のキー、外部シャワーキー、ジェネレーターのキー、ルーフボックスのキー、シティウォーター、ボイラー……
 わぁ、もう気が狂いそうだ。

 「後は川原に行って、使い方を説明しましょう」 ということになり、ギャラクシーに乗り込む。
 メリメリメリというディーゼルのエンジン音より、心臓の鼓動の方が激しくなる。

 なんでも初体験というのは緊張するものだが、近年これほど緊張した一瞬もなかった。

 ボディはデカい。
 後ろは見えない。
 横は張り出している。
 屋根は高い。

 今まで乗ったことのない乗り物である。
 スペースシャトルを操縦しろと言われた方がまだましだった。 「冗談だろ」 の一言ですむからだ。

 とにかく自分のクルマを持ってうれしいという実感よりも、怖いという実感の方が強く、早くも逃げ出したかった。

 「その緊張感が新鮮でいいんですよ」
 隣で田代氏がニヤニヤ。

 えいままよ! …で、甲州街道に乗り出す。
 グラっとカーブを曲がり、ユラユラっと走り出す感じ。
 シューンと走り出す乗用車と違って、自分の操作で動いているという実感がない。

 が、不思議なものだ。
 100mぐらい走っただけで慣れてしまった。

 意外だったのは、最大の懸念だった横幅の恐怖。
 これが乗用車に乗っているときより希薄なことであった。

 ベース車のハイラックスのボンネットが、意外にも狭いということもあるかもしれない。
 あるいは、車高が高いので視界がいいということもあるのかも。
 前に進む分には、2m10という横幅がほとんどプレッシャーにならない。

 結局、道を狭く感じるかどうかというのは、クルマの横幅の問題ではなく、前方視界の問題なのだ。
 前に伸びるボンネットがはっきり視野に収まっている限り、左右の見極めは楽なのである。

 「サイドミラーがぶつからないかぎり、ボディがぶつかることはありません。サイドミラーを猫のヒゲと思ってください」
 と、田代さん。
 大型トラックのように前後二段に別れた大型サイドミラーが実に頼もしい。(今はこんなミラーないけどね)

ギャラクシー2段ミラー

 このサイドミラーは、上が凸面鏡で、下が平面鏡になっている。
 慣れないとどう使っていいか分からないが、後方から来るクルマの確認は上のミラー。下のミラーは幅寄せのときに使う…と割り切れば、実に便利だ。

 「やはり、重いとか走らないとかいう実感はあります?」
 田代さんが尋ねる。
 「いえ、よく走りますよ」
 本当である。

 乾燥重量2700キログラム。ジェネレーターを積んで水タンクなどを満タンにすれば3トンになるという代物だ。
 それを引っ張るエンジンはわずか、91馬力。
 にもかかわらず、乗用車と同じ速度で甲州街道を走っていく乗り物を 「遅い」 というわけにはいかない。

 トラックのギヤ比なので、とにかくロー、セカンドのトルクが太い。一速で引っ張っても、メリメリメリと気持ち良く伸びていく。

 問題の後方視界。
 やっぱりバックアイモニターというのは大したものだ。
 本来はリバースに入れると作動する性質のものらしいが、切り換えスイッチで 「手動」 を選んでおけば常時後方が見える。ルームミラーの代用になる。

 正確な距離感はつかめないが、とにかく、後ろにクルマがいるかいないかが見えることで安心感が違う。

 総じて、予想していたほどには運転が難しいということはなかった。

 ただ、最後までどう処理していいのか分からなかったのが、リヤのオーバーハングの扱い。
 田代氏によると、左にぎりぎりに寄せた状態から急にハンドルを右に切って発進すると、必ず左のリヤを擦るという。

 「僕なんか、自転車を10台ぐらいバラバラとなぎ倒したことがありましたよ」
 田代氏が “自慢話” のように語る。
 人間を10人なぎ倒したらどうする気だろう。

 …とか話しているうちに秋川の川原についた。
 メインストリートからチョコっと脇に入っただけなのに、不思議、渓谷のムードがある。なかなか雰囲気がいい。
 ウィークデイだというのに、テントを張ったりしているグループもいる。

 二筋の川がある。
 「手前の川を渡って、その先の中州にいきましょう」
と、田代氏。
 ギャラクシーの4駆の醍醐味を味わってください…という趣向らしい。

ギャラクシー001

 車外にいったん降り、前輪のフリーホイールハブをロックにして、再び運転席に乗り込んで4駆にシフトする。

 ドドドドドっと川渡り。
 「この川は浅いことが分かっているから大丈夫ですが、川を渡る場合は一応事前に深さを確かめてください」
 と、田代氏がアドバイスをくれる。

 中州に行き着くと、さすがに普通の乗用車はいない。止まっているのはみな4駆。
 この時代、世間では大4WDブームだったのだ。
 そういうクルマが、都心を少し離れた川原などにたくさん集まっていた。

 いま思うと、そんな時代があったのか…とすら思う。
 このようなクルマが入れる川原というものが、現在の東京郊外にはもうない。
 この川原も、私がギャラクシーを手に入れて2年か3年後には立ち入り禁止となる。
 しかし、このときは、川原に乗り入れた4WD車を堂々と撮影することができたのだ。

 撮影の背景を考えながら、ギャラクシーをセットする。
 まず全景。
 次に真横、真後ろと角度を変えて、外装写真をおさえる。
 これがちゃっかり、当時出していた 『RVニュース』 の記事になるわけだ。

 それからオーニングを出して、テーブル、ランタンなどをセットしてイメージフォトも撮る。
 そして、いよいよ田代さんの説明を聞きながら、各機能の具体的な扱い方の撮影に入る。

 この日の田代氏は、黒のTシャツに白いパンツ。洒落たキャップ。モデルを意識したスタイルだ。

オーニングを持ち上げる田代氏
 ▲ 当時の田代氏

 LPガスタンクの脱着と使い方。
 ボイラーの点火方法。
 ガスコンロの着火法。
 3ウェイ冷蔵庫の扱い方。
 ヒーターの使い方。
 トイレの処理方法。
 ジェネレーター…エアコン…排水…オーニングの収納…

 やれやれ。とてもじゃないが覚えきれない。

 駄目だ…と、ため息をつきたくなったときに、私の会社から応援部隊 (野次馬) が到着した。
 当時 『キャンパーニュース』 の編集部に在籍していた堺君だった。今日が納車と聞いて、見物かたがた撮影の手伝いに来てくれたわけだ。

 中央高速を飛ばして遠路はるばる東京を横断してきたというのだから、よっぽど会社を脱出したかったのかもしれない。

田代氏&堺氏
▲ 田代氏 (左) と堺氏 (右)

 堺氏が来たときにちょうど雨。
 降り止むまで、給油ついでにお茶を飲みに出る。
 ファミレス 「スカイラーク」 の駐車場になんとかクルマを収めて、3人でお茶を飲みながら雑談。

 窓の向こうに城のようなギャラクシーがそそり立っている。
 自分ながら、よく駐車場に入れたと思う。

 「ギャラクシーにオプション設定されているエアバックってのは、どんな機能なんですかね」
 「バンコンとコーチビルド (キャブコン) は、どちらが人気なんでしょう?」
 「これぐらいのクルマをポンとキャッシュで買っちゃうお客さんもいるんですかね」

 そんなことを、堺君と2人して田代さんに尋ねていると、いつまでたっても自分のクルマという実感がわかない。
 グローバルのデモカーを取材で試乗しているという気分だ。

 雨が止んだので、川原に戻って撮影の続きをする。
 撮影が一段落したとき、淡い夕陽が顔を出して川原の向こうに沈もうとしているのが見えた。
 周囲がかすかにガスって、ギャラクシーを柔らかな光に包む。
 ようやく、自分のクルマを眺めている気分に浸る。

川原のギャラクシー&オーニング

 撮影を終え、会社の上司に電話を入れると、
 「おーい、会社まで乗ってこんか? みんなが見たいと待っとるぞ」 という。

 電話なのだから 「おーい」 などと呼ばなくても十分聞こえるのだが、上司にとっては立川・国立はとんでもない僻地なのか、おーいと声かけたくなるような気分だったのかもしれない。

 「分かりました。会社まで戻ります」
 そのまま家に帰ろうと思ったが、結局家を通りこして、わざわざ会社まで行くことになってしまった。

 国立インターから首都高に乗る。
 もちろん初めての高速道路だ。路面は雨。
 夜になってバックアイも効かない。

 80kmになると、もう怖い。
 しかも、ワダチが深くエグられているような所に乗ると、ハンドルがフラフラと左右に取られる。

 「わぁ、キャンピングカーって怖いもんだ!」
 と実感する。
 田代さんが 「前後のタイヤでトレッドが違うので、ワダチにハマると左右に振られます」 と言っていたのを思い出す。

 首都高の “新宿タイトコーナー” が迫る。
 ワワワ…怖い!

 思わずコーナーの真ん中でブレーキを踏む。
 20年前、免許取ったばかりのとき、やはりこのコーナーで青ざめたことを思い出す。
 制限速度が60km。そこを40㎞ぐらいでやっとこさクリア。

 このクルマに比べると、いま乗っているキャンピングカーは別の乗物のように楽。

 まあ、 “慣れ” というものも大きいだろうと思う。
 なにしろ、この時は、生まれてはじめてのキャンピングカー。
 横幅2mを超える乗物で、あの狭い首都高を走ったのもはじめて。
 あお息吐息で会社までたどり着く。

 雨も止んで、社長をはじめ、キャンパーニュースの編集部の面々がぞろぞろ見物に出てくる。

 「すごいなぁ」
 「でっかいなぁ」
 口々に言うことは同じ。

 しばらくして、トヨタ自動車のPR誌を編集しているグループまで降りてきて見物。

 「すごいなぁ」
 「でっかいなぁ」

 もともと “モノ” を自慢するという性格ではないので、あまり 「すごいなぁ」 を連発されると、かえって気が引けてしまう。

 お披露目を終えて、帰途につく。
 帰りは、環六から20号、井の頭通りというコース。
 少しずつ運転の恐怖感は衰え、なんとか車体の大きさにも慣れてくる。

 が、家が近づくにつれ、突然言いようのない恐怖感がつきあげてきた。
 あの狭い “大黒寿司クランク” を曲がれるだろうか?
 駐車場の角に禍々しく張り出しているブロック塀に当てることなく、バックでスロープを登りきれるだろうか? 

 そう思うと、本当に、脂汗が額からにじみ出してきた。

 速度を落として、まず慎重に大黒寿司クランクを曲がる。
 オタオタしているところを、あまり近所の人に見られたくないという心理があるから、よけい気ばかり焦るのだが、そういうときに限って、ディーゼルエンジンはメリメリと元気よく吼えまくる。

 大黒クランクは曲がった。
 駐車場はすぐそこだ。
 静かに静かに…。自分にそう言い聞かす。

 メリメリメリ。
 しかし、エンジンの唸りが実際の10倍ぐらいに感じられる。

 さぁ、ここで止まって、ギヤをリバースに入れ、いよいよバックで急坂を登らなければならない…。
 メリメリメリ。

 あぁ、やっぱり後ろがまったく見えない。
 降りる。
 後ろを自分の目で確かめる。

 クルマがとんでもない角度になっている。運転席に戻って修正する。
 メリメリメリ。

 ぎゃ! まったく違う方向に尻が向いてしまった。
 また降りる。
 どういう角度がいいのか分からない。

 メリメリメリ。
 これじゃ駄目だ。また修正…。
 いや、今度はノーズが桜井さんの家の壁に当たる。どうしよう…。額には文字どおりの冷や汗。

 メリメリメリ。
 泣きたくなってしまう。

 「町田さん、ダメダメダメ。もっと左の壁に寄せて!」
 突然、聞き慣れたダミ声。
 見ると、隣りに住んでいる森田の旦那さんがタンクトップ…じゃなくランニングという表現が適切なシャツ一枚に、ステテコ姿で家から飛び出して来た。

 「もっと思い切って左に寄せて、そこで切る。
 はいオーライ。
 おっと右のフロントが危ないぞ。ハンドル小さく。ほらそこだ。
 おっとこっちだ、ほら向こう…」

 お祭のようなにぎやかさだ。
 森田さんの誘導で、やっと事なきを得る。

 「ありがとうございます」
 冷や汗をぬぐう。
 本当にこの誘導がなければ、あと1~2時間は 「メリメリメリ…」 が近所に轟いていただろう。

 「いやぁ、ついに来ましたな」
 森田さんの目が輝いている。
 その隣には、いつの間にか森田さんの奥さん。

 奥さんが言う。
 「うちの主人ったら、まだキャンピングカーは来ないのか? まだキャンピングカーは来ないのか?…と毎晩そればっかり言っているのよ。自分のクルマでもないくせして」

 「ちょっと中を見せてください」
 さっそく旦那がリヤドアから上がり込んでくる。

 「おぉ、これはすごい!」
 森田旦那の目がぐるぐると車内のあちこちを飛び回る。 

 その間に、森田さんの奥さんがウチのカミさんを呼びにいって、さっそく2家族合同の試乗会となった。

 といっても、近所をグルっと回っただけ。
 「キッチン、冷蔵庫、トイレ、シャワー、それにベッドもついて500万円ですか? こりゃ安いわ」
 と、商売に明るい森田夫妻はすばやく計算する。

 「よし、これで今度いっしょにキャンプに行きましょう」
 と、お互いに誘い合って、その夜は解散。

 その後、嫌がるカミさんを無理やり近所の寿司屋まで誘い出し、3時まで飲む。
 酒でも飲まなければ寝られないくらい、運転に疲れた夜だった。

(続く)

 (第一回)
campingcar | 投稿者 町田編集長 02:54 | コメント(2) | トラックバック(0)
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