町田の独り言 キャンピングカーのガイド本を編集する町田が語るよもやま話

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転換期に立つRV

関西キャンピングカーショー

 「関西キャンピングカーショー2009」 に行ってきました。
 そこで気づいたことは、ミニチュアダックスフンドの多いこと。

 隣りの館でペットショーが開催されていため、そちらから流れてきたお客さんも多いせいか、会場には犬連れ来場者の姿がいっぱい。
 よく見ると、犬種としてダックスフンドが多いのです。
 「大阪はダックスの町だな」
 …と、妙に感心してしまったのです。

 帰って来て、カミさんにそう言ったら、
 「あなた、去年も同じことを言っていたわよ」
 と指摘されちゃいました。

 ま、うちで飼っている犬がミニダックスなので、ついつい同じ犬種に目がいってしまうのでしょうね。

クッキー幼少期01

 同じ犬種でも、犬はよく見るとみな違った風貌をしています。
 それぞれの飼い主にはみな見分けがつくのですが、あれだけ同じ種類がいっぱいいると、中には似た顔同士のワンコも出てくるんですね。 

 そんなとき、飼い主たちが、リードをベンチの脚かなんかにつないで買い物したりしたときに、ふと、隣りの犬を間違って連れて行ったりしないかしら。

 会場にあれだけ人間が多いと、犬だって、飼い主の顔とか匂いをはっきり区別するとは限りません。

 犬は犬で、 「あれ、うちのご主人…こんな顔だったっけ? こんな匂いだっけ?」
 と、半信半疑に別の飼い主の家まで帰り、
 「なんか家の様子が違うな…。引越しでもしたのかな…」
 などと思いながら、まぁ、それでもお互いに平和に、つつがなく新しい生活を始める……。

 そんなことって、あり得ないでしょうかね。

 ……さて、少し文体を変えて、ちょっとショー会場で感じたことをレポート。

大転換期を迎えたRV業界

 キャンピングカー (RV) 業界は、今、奇妙な戸惑いの中にいる。
 とてつもない 「鉱脈」 にぶち当たったのに、それを、どう掘り進めればいいのか。
 その手前で、焦燥とも、興奮ともつかぬ胸騒ぎの中で、途方に暮れているような気がする。
 今回のキャンピングカーショーで、いろいろなビルダー・販社の方々と話しているうちに、そう思った。

 日本RV協会 (JRVA) が発表した08年度の販売状況を見ると、あの原油価格の高騰、世界的金融危機という逆風の中で、国産キャンピングカーに限っていえば、昨年度の販売台数は、その前年よりも上回ったのだ。
 乗用車販売が4年連続の前年比割れを起こしていたことを考えると、これは驚異であるかもしれない。

 しかし、その内実を見ると、不思議な現象が起きている。

 「8ナンバー以外のクルマが売れている」

 つまり、法的に 「キャンピングカー」 として登録しなくてもよいクルマが、昨年は飛躍的な台数を伸ばし、それがキャンピングカー登録のできる従来の “8ナンバー車” の販売的な落ち込みをカバーしたのだ。

 具体的にいうと、シンク (流し) の存在やベッド寸法などの規定において、キャンピングカーの “定義 = 構造用件” にとらわれないクルマが、昨年から今年にかけて、大きな売れ筋として浮上してきたのである。
 それも、その主力は小型車。

 これは、4ナンバー登録の軽自動車キャンパーが増えたことで顕著になった傾向でもあるが、それ以外のベース車でも、ダウンサイジング傾向は見られる。 
 ハイエースでいえばスーパーロングではなく、ロングワイドやナローボディのクルマだ。

 今、比較的コンスタントに売れているこれらのクルマは、ワゴンライクなシートレイアウトを持ち、簡単な操作で荷室スペースも広くなり、トイレ、冷蔵庫、流し、コンロなどにこだわらない小型のキャンピングカーなのである。

乗用車ベースキャンパー室内01
▲ 乗用車ベース (バン) の簡易キャンパーの室内

 この “説明” は、ある意味で、簡単である。

 つまり、通勤、買い物、ドライブ、キャンプなどマルチにこなすファースカー・コンセプトのクルマが求められる時代になった…というもの。
 裏を返せば、キャンプ専用のキャンピングカーと、日常的に使う乗用車という 「2台保有」 を前提としていた所有形態が、この経済不安が長く続く時代において難しくなってきたということを意味する。

 さらに、もうひとつ考えられることは、ここに来て、裾野が一気に拡大したことだ。
 従来ならば、 “高額商品” というイメージが先行していたために、その購入をハナから考えてもいなかった人々が、軽自動車キャンピングカーや低価格キャンピングカーの存在に気づき、にわかに興味を持ち始めたという事情もある。

軽自動車キャンピングカー
▲ 軽自動車キャンピングカー

 その底辺の広がりが、売価の高い高規格キャンピングカーを求めない人たちの層も厚くした。
 多くの人々の分析は、そこに集約される。

 しかし、そのような説明ではすべてを解明できない、何か新しい変化が起きているように思えるのだ。

 まさに地殻変動のような大きなうねりが起こり始めているのかもしれない。
 そうも思うのだ。

 あるビルダーの社長は、こう言った。

 「今年のゴールデンウィークにテレビを見ていたら、レポーターが高速道路のサービスエリアで、行楽のために車内で寝泊りしていた人々を取材していた。
 そのとき驚いたのは、レポーターが 『車中泊』 という言葉を、何のためらいもなく使っていたことだ。
 『車中泊』 という言葉は、日常用語の中に浸透してきたとはいえ、まだまだそれを “趣味” としていた人々の間に定着した言葉だと思っていた。
 しかし、すでにマスコミは、 『車中泊』 という “ライフスタイル” が存在することに気づいたのだ」

 この社長の驚きはよく理解できた。
 確かに、ワンボックスワゴン、ミニバン、ステーションワゴンあるいは普通のセダンを利用して、高速道路のSAや 「道の駅」 で寝泊りする人たちが激増していることは、相当前からキャンピングカー業界では話題になっていた。

 事実、書店に行くと、 「車中泊」 のノウハウを解説した雑誌、ムック、単行本はすでに新しいコーナーを形成しているし、ネットで 「車中泊」 関連のワードを検索すると、ヤフーで約300万件。
 すでに、 「クルマの中で寝泊りしながら旅をする」 という旅行スタイルが、日本ではしっかり定着してきたことが分かる。

 彼らは “キャンピングカー予備軍” なのか。
 それとも、キャンピングカーユーザーとは永遠に交わらない人々なのか。

 ビルダーの首脳陣が集まる会議などでは、そんな議論もなされてきた。

 たいていの場合、キャンピングカーを購入できるお金が貯まれば、その人たちはキャンピングカーのマーケットに参入してくるという意見が大半を占めるのだが、一方では、 「いや、あれはキャンピングカー的な使い方とはまったく別のライフスタイルを目指す人々だ」 と語る業者さんもいる。

 今のところ、キャンピングカーの構造用件を満たす必要のない小型バンコンの出足が目立つところを見ると、前者の意見の方がマトを射ているように思える。
 一概にはいえないが、それらのクルマは装備品目もレイアウトもシンプルで、その分コストを下げて、売価を抑えている。
 つまりは、現在 「車中泊」 を楽しんでいる人たちのニーズにかなった仕様が実現されたもので、キャブコン、バンコンともに、そういう車種をリリースするビルダーが増えている。

キャブコン01
▲ キャブコン

バンコン01
▲ バンコン

 しかし、あるビルダーの開発者はいう。

 「それで本当にいいのだろうか…。市場が求めるものを造っていくのはビルダーの責務で、そうしなければ食べていけないのも事実だが、これまで積み上げてきたキャンピングカービルダーとしてのスキル、技術的成果といったものが、ほとんど試されない時代になってしまったようにも思う」

 日本のキャンピングカー業界は、ここ10年ぐらいのうちに、欧米先進国とは違ったスタイルの高度な 「RV文化」 を創造してきた。
 そこで造られてきたクルマは、みないかにも日本的な細かい配慮に裏打ちされた、洗練された 「日本様式」 のようなものを確立しつつある。

 だから、ビルダーたちの本音は、 「車内で寝るため」 に特化した “骨組みだけ” のクルマではなく、自分たちの秘術を十分に発揮した “肉付けのある” クルマを正当に評価してほしい、というところにある。

バルミィメイン01
▲ 高規格型バンコン

 ところが、 「車中泊」 というライフスタイルが大きくせり出してきたことによって、従来のキャンピングカー・コンセプトも、大きな修正を迫られそうな空気も生まれた。

 その傾向が、今後のトレンドとしてそのまま定着していくのか。
 それとも、さらに、そこからもっと進化したキャンピングカースタイルというものが発展していくのか。

 多くのビルダーは、確実に売れていく簡易キャンピングカーと、自分たちの技術成果をはっきり謳える高規格キャンピングカーとの狭間 (はざま) に立って、奇妙な戸惑いを感じている。

 私は、こう思う。
 どちらも、アリなのだ。

 戸惑っているのは、実は、ビルダーだけでなく、一般乗用車で 「車中泊」 を楽しんでいる人たちも、また同様に戸惑っているのだ。
 つまり、業界もまたユーザーも、新しく生まれてきた 「車中泊」 という旅行スタイルをどう確立していくのかということに対し、その明確な答を持っていないことにはおいては変りがない。

 そのようなライフスタイルが、この先どういう 「旅行像」 を形成するのか。
 それによって、日本のレジャー産業がどう変るのか。
 また、公共の駐車スペースを利用した場合のマナーとかゴミ問題はどう処理されるのか。

 すべては未知数である。

 だから、このまま手をこまねいていれば、それは既成の観光産業を破壊することにもなりかねないし、旅行のモラルやマナーを低下させることも起こりうる。
 しかし、逆にいえば、新しい観光産業の育成に多大な貢献を果たし、新しい旅行ルールを確立することにもつながる。

 そのような大きなテーマが、やがてマスコミでも採りあげられる時代が来るだろうが、そこでキャンピングカー業界が果たす役割は大きい。

 つまり、 「車中泊」 を “文化” として高めることができるかどうかは、キャンピングカー業界が、今後どのようなクルマを造っていくかにかかっている。
 
 確実にいえることは、 「旅とは何だ?」 というテーマにしっかり答を出したキャンピングカーだけが生き残る。

 構造用件を満たしていない簡易キャンパーだろうが、高い技術水準に満たされた高規格キャンピングカーだろうが、 「旅とは何だ?」 、 「旅することによって何が実現できるのだ?」 という問をいったん深く沈ませ、そこから力強く浮上する哲学を持ったクルマだけが生き残る。

 「何か新しい変化が起きている」
 といった意味は、そのような哲学が必要となる時代が訪れたという意味だ。

 では、その 「哲学」 とは何か。

 ある簡易キャンパーを開発したスタッフは、こう言った。

 「このクルマは、2人しか寝られない。 “2名就寝” といえば、今までは夫婦という単位で考えられることが圧倒的に多かった。
 しかし、このクルマは、男親と息子で乗ってほしい。
 男親が、息子に何かを伝えるという精神風土が日本から消えている。
 古い道徳律を持ち出してベタな説教をしても、もう子供たちはそれを聞く耳を持たない。
 だから、父親が無言で運転してもいい。
 そして、たとえば、釣りのポイント近くで車中泊をして、朝には、黙って息子にも釣竿を渡し、自分が釣り糸を垂れる姿を見せるだけでいい。
 その無言のやりとりこそが、実はしっかりした 『会話』 であることを伝えるのが、このクルマだ。
 だから、ある意味で、お母さんも入れた三角形構造の “家族” を拒否するクルマでもあるのだ」

 挑発的で、大胆な発想である。
 しかし、これもまた、ひとつの 「旅の哲学」 に違いない。
 そして、そのような説明を聞けば、確かに目指すべきコンセプトがそのクルマからにじみ出ていることが分かる。

 また、別のビルダーの開発者は、こう言った。
 こちらは、かなり造り込んだクルマである。

 「運転席とリビングは、ウォークスルーできないように仕切ってある。
 リヤゲートを開けても、そこから車内には簡単に入れないように、わざと後ろ側にも壁を作っている。
 つまり、 “便利さ” を追求することとはまったく逆行したクルマである。
 これが常識に反していることは、自分でも自覚している。
 しかし、そのことによって、自動車の “匂い” から完全に解放された一種の 『リゾート空間』 が生まれた。
 旅が日常性からの解放であるならば、キャンピングカーもまた、自動車から解放されなければならない」

 これも 「哲学」 である。
 
 このビルダーは、そのようなコンセプトが常識とかけ離れていることも自覚して、前後の壁を取り払った普通のレイアウトもレスオプションで用意した。
 しかし、それは杞憂(きゆう) に終わった。
 購入したほとんどのユーザーは、ビルダーの 「哲学」 を支持したのである。

リコルソ2

 「車中泊派」 が、キャンピングカーユーザーの予備軍になるのか、ならないのか。
 そんなことを審議していても何も始まらない。

 「このクルマに乗ったら、何が実現できるのか」
 それを明確にコンセプトメイクできたクルマが、結果的に、 「車中泊」 という新しい旅行スタイルを求める人たちの大鉱脈を掘り始めることができる。
 

campingcar | 投稿者 町田編集長 23:55 | コメント(10) | トラックバック(0)
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