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ファラオの思い出

 もう30年以上も前のことだ。
 アメリカのロサンゼルスに行ったついでに、カナダのバンクーバーまで飛んだことがある。

 黒人音楽を追い求めるために行ったような旅だったから、ロサンゼルスのグリークシアターではボビー・ウーマックとオージェイズのジョイント・コンサートを聞き、ダウンタウンでは当時日本に入って来なかったスモーキー・ロンビンソンの 『ピュア・スモーキー』 のアルバムなどを手に入れて有頂天の旅を続けていた。

 ツイているというのは、こういうことを言うのだろう。
 バンクーバーに向かう飛行機の中で、乗り合わせた客の中に、ファラオ・サンダースがいたのである。

ファラオ・サンダース02

 100人前後の乗客を乗せる中型のジェット機だったと思うが、ロスからバンクーバーの向かうその便は、4分の1ほどの空席を残したまま、静かに夜のアメリカ大陸を北に向かっていた。

 左右に分かれた3人掛けの席の真ん中に、機長室と乗務員室をつなぐ一本の通路があり、最後尾にあるトイレに向かう客は、その通路を通るために、一度は後ろを振り向かねばならなかった。

 離陸してから1時間ぐらい経った頃だろうか。
 右側席の前から2番目に座っていた精悍な黒人男が席を立ち、ギョロッとした目で後ろを振り向いた。

ファラオ・サンダース01

 その特徴のあるギョロ目は、見間違おうにも見間違うことができないほど、私にとっては見知った顔だった
 ジャズ界の巨人といわれたジョン・コルトレーンのグループに参加し、晩年のコルトレーンの厚い信頼を得ていたファラオ・サンダースだったのだ。

 コルトレーンが最もスピリチュアルなジャズに傾いていた頃、ファラオはサックス奏者としてそのサイドマンを務め、『クル・セ・ママ』 、 『エクスプレッション』 などの名アルバムで、フリージャズに邁進していたコルトレーンを支え続けていた。

 しかし、実は、私はファラオ・サンダースのことをちょっと甘く見ていた。
 コルトレーンの死後、彼は自分自身のリーダーアルバムとして 『Karma (カルマ) 』 という作品を発表していたが、それをジャズ喫茶でリクエストして聞いたとき、私は 「こりゃあかんわ」 と思ってしまったのだ。

ファラオ・サンダース「カルマ」

 民族音楽 (今語でいえばエスニック・ミュージック) 風の泥くさいパーカッションに、おどろおどろしいヴォーカルとエキセントリックなサックスが絡み合ったそのアルバムは、私にはジャズというより、ハリウッド製冒険映画の主題歌のように聴こえてしまったからだ。

 コルトレーンの 『アフリカ』 や 『クル・セ・ママ』 の崇高性を信じていた私は、はっきりと、このコルトレーンの愛弟子を “格下” と断じてしまった。

 しかし、そのファラオ・サンダースが同じ機内にいるとなると、これは話が違ってくる。
 やっぱり、直に声を聞いて、話をしてみて、できれば彼の音楽観などを聞いてみたい。
 そう思うと、いても立ってもいられなくなった。

 ファンを装って、ミーハー風に 「Give me your autograph (サイン) 」 とか迫っていけば、邪険に断られることもあるまい。
 …とタカをくくって、私はトイレから自分の席に戻ったファラオ・サンダースの肩越しに、大胆にも 「Are You Mr.Pharoah Sanders?」 と、声をかけた。

 ファラオは、一瞬 「何者?」 と不思議そうな顔つきで、私を見上げたが、私が東洋人特有の無邪気な笑顔をつくって 「I'm А Fan、Your Fan、エヘヘヘ…」 とか繰り返すと、それなりに納得してくれたのか、自分の隣りの空いていた席に座らせてくれた。

 英語も満足にしゃべれないというのに、よくもまぁ、そんな大胆な、しかも失礼きわまりない態度が取れたもんだと自分でも思うのだが、昔の方が今よりはるかに鉄面皮だったのかもしれない。

 とにかく、私は、彼に対するインフォメーションをたくさん持っているように見せかけるために、彼の名がクレジットされているコルトレーンのアルバム名を片っ端から並べ、「ジャズ知ってるよぉ!」 というポーズを必死に採り続けた。
 
 ファラオは、自分のリーダーアルバムでもないコルトレーンのアルバム名が上がるたびに、静かに深くうなずき、ときおり 「グレイト」 とか 「ファンタスティック」 などというオマージュを口から発した。

 そんな彼の優しさに接して調子に乗った私は、なんと、失礼なことに、
 「あたなはコルトレーンのエピゴーネン (模倣者) だとかよく言われるが、それに対してどう思うか?」
 などという質問までしてしまったのだ。

 正常な神経の持ち主だったら、怒るまでとはいかなくても、少しは不機嫌になったかもしれない。
 しかし、ファラオは優しく笑って、「自分もそう思っている一人だ」 というようなジョークで返した。

 さらに、この東洋の小僧は面白いと思ってくれたのか、今晩バンクーバーのジャズクラブで、オールナイトのコンサートがあるが来るか? とまで誘ってくれたのだ。

 こんなにうれしいことはなかった。

 バンクーバーに予約したホテルでチェックインを澄ませた私は、部屋に入って荷物を解くのももどかしく、ファラオの教えてくれたアドレスを頼りに、そのジャズクラブに向かった。

ジャズクラブネオン

 小さな蛍光管の店名が光るだけの、地味な看板を掲げたクラブにたどり着くと、入口に立っていた案内人が、「チケットを見せろ」 と素気なくいう。
 私は得意になって、「ファラオが楽屋に来いと言ったんだ」 と胸を張って主張したと思う。

 案内人は、もしかしたら、あらかじめその話を聞いていたのかもしれない。あっけないほど素直に楽屋まで案内してくれた。

 楽屋…というより、単なる更衣室に過ぎなかったが、そこでファラオは色鮮やかなアフリカ系の民族衣装に身を包み、テナーサックスを首から下げて出番を待っていた。
 サイドマンたちとの打ち合わせがあるらしく、もう多くを話すことはできなかったけれど、ファラオは 「小僧よく来たな」 という優しい笑顔を浮かべ、たくましい腕と肉厚の手のひらを差し出し、握手を求めてきた。

 そのときから、「コルトレーンより格下だ」 などと生意気に思っていた私は、彼の本当のファンになった。
 
 第1回目のステージが始まったのは、日本では信じられないような深夜の12時頃だったと思う。

 編成は5人ぐらいだったろうか。
 『カルマ』 でおなじみの 「ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスタープラン」 で幕を開けた。
 アルバムに入っていたヴォーカルはなし。
 複雑なリズム隊で編成された大仰なバンドとは違い、少人数で演奏される曲はまったく違った印象に聞こえた。

 ドラムスと、ベースと、パーカッションだけのシンプルなポリリズムが場内に響きわたり、それがいつしか狭いクラブの中を、夜の海に寄せる波のように満たしていく。

 あっと思った。
 彼はこれをやりたかったのか!

 アルバムでは、アジア・アフリカのバザールの喧噪を思わせる中近東風リズムに聞こえたリズム隊の音が、小編成のセッションでは、日本の竹薮を吹き抜ける風の音のように聞こえてきたのだ。

 それが逆に、果てしなく広がる大宇宙の心臓の鼓動のように響いてくる。

 宇宙の鼓動と、観客の心臓の鼓動が波長を合わせたタイミングを見計らい、ファラオがおもむろに野太いサックスを響かせ、夜空を横切る流星のきらめきで場内を満たした。

 ライブハウス全体がひらりと浮き上がり、空を飛翔していくような感覚が体を貫いた。

ファラオ・サンダース03

 何事も、本物に接してみないと解らないものがある。
 レコードやCDではつかめない音楽というものがあるのだ。
 それがジャズだ。
 と、そのときファラオは教えてくれたような気がする。


 日本に帰ってきて、私はさっそくレコード屋に飛び込み、以前バカにしていた 『カルマ』 を買った。

 不思議なもので、生身のファラオの演奏を聞いてからこのアルバムを聞くと、また違った印象が湧いてくる。
 大編成のリズム隊が奏でる重工な音の隙間に、かすかに、竹薮を吹き抜ける風の音が聞こえてくるように想える。

 それを聞きながら、私は、自分の手のひら包んだ、ファラオの厚く温かい手の感触をいつも思い出す。


 ▼ 最近のYOU TUBE で拾ったファラオ・サンダース。おっちゃん元気やったかぁ!



 ▼ 曲は別物だけど、より当日のコンサートの音に近いのはこっち。8分の演奏のうち、ファラオが登場するのは、ようやく5分を過ぎてから。だけど、早朝の冷気を思わせるサックスの音が美しい。


   
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音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 00:07 | コメント(6) | トラックバック(0)
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