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町田さんご無事で何よ…
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町田さん。ご無事でし…
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エメラルド色の海

 塩野七生さんが、 『ローマ人の物語』 全15巻を完成された。昨日のNHKの番組で、五木寛之氏と対談されているのを見て、それを知った。

 私は、塩野さんの大ファンだが、この作品集だけは、まだ初期の2巻ぐらいしか読んでいない。後は老後のお楽しみなのである。

 老後の楽しみとしてとっておける本など、そう簡単に思い浮かぶものではないが、これだけは確実に (全部読んでいないのに) 、断言できる。
 なぜなら、今まで彼女が書いたもので、裏切られたものがないからだ。

塩野七生ローマ人物語 塩野七生海の都

 塩野さんの作品は、緻密な資料研究を積み重ねて描かれた 『海の都の物語』 のような歴史研究書から、粋な男の生き様を説く 『男たちへ』 のようなエッセイ集に至るまで、すべて洒落ている。

 ため息が出るような文体である。
 レトリックの美しさという意味では、これ以上のお手本となるような文章はないというくらいの名文で、それを吸飲するだけで、私はどんな美酒におぼれる以上に酔ってしまう。

 特に好きな 『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』 などは、もう4回も読み返しているし、それ以外に気に入った著作は、最低2回読み直している。
 もちろん、全作品を読破している。

塩野七生0071
▲ チェーザレ・ボルジアを書いた当時の塩野氏

塩野七生チェーザレ・ボルジア

 昔、自動車メーカーの広報誌を編集していた頃、
 「高級車とは何か?」
 というテーマで、特集を組んだことあった。
 
 原稿をいただく一人の作家は決まっていた。
 当時、私が編集を担当して2冊ほど世に出した 『ダンディー・トーク』 というシリーズの著者である徳大寺有恒さんだった。
 これは、私が担当編集者であったことも幸いし、快諾を得ることができた。

徳大寺有恒ダンディー・トーク

 もう一人の執筆者がなかなか決まらなかった。
 できれば、自動車の世界とは無関係な人、それも超ビックな人の原稿が欲しかった。

 高級車というものを、自動車の領域で書いてもらうのは専門家の徳大寺さんに任せ、「高級」 というものの概念そのものを、しっかり説明できる人がほしかった。

 私は、塩野七生さんに的を絞り、彼女の作品を出していた出版社に連絡を取ってフィレンツェの連絡先を聞き出し、国際電話をかけた。

 断られて元々と開き直った気分だったが、電話口に出た塩野さんは、原稿はダメだといいながらも、対談ならOKだと、あっさりと引き受けてくださった。

 しかも、同じ企画の中で原稿をもらうことになっていた徳大寺さんを対談相手に指名してきたのは、偶然とはいえ、びっくりした。

 これはラッキーだった。

 たまたま息子さんが自動車免許を取られたばかりで、親としてどんなクルマを薦めればよいのか、 『間違いだらけの車選び』 を書いていた徳大寺さんに尋ねてみたいという意向があったということが、幸いしたのかもしれない。

 対談の打ち合わせをするために、東京の帝国ホテルのロビーで塩野さんと待ち合わせをしたとき、むしろ電話をかけたとき以上に、私は緊張していた。

 突然、ふわっと登場した塩野さんは、とても美しかった。
 若さからくる美貌とはまた違った、知性の輝きがまぶしい光となるような美しさで、それが体全体から、オーラのように滲み出ていた。

 打ち合わせの場所として、ロビー横のカフェテリアを予定していた私の思惑をあっさりとかわし、彼女は、
 「私の部屋にこない?」
 と誘った。

 ドキドキした。
 お互いに初対面なのである。

 氏素性もよく分からないはずの私を、いくらホテルの部屋だとはいえ、密閉されたプライベート空間に招き入れるとは。
 彼女の度量の大きさに感服した。

 しかし、それでもまだ戸惑っていた私の胸のうちを察したのか、
 「あら、フォーカスなんかに撮られないから大丈夫よ」
 と、大人の女の笑顔を見せた。

 「フォーカス」 というのは、当時発行されていたゴシップネタを得意とする写真週刊誌で、有名人がよく盗撮されて、物議をかもしていた雑誌のことである。

 打ち合わせを終えて、私は、1冊だけカバンの中に忍ばせていた彼女の著作を差し出し、サインを所望した。
 『愛の年代記』 という短編集だった。

 そのなかに収録されていた 「エメラルド色の海」 という短編を、私はこよなく愛していたのである。

塩野七生愛の年代記 塩野七生黄金のローマ

 オスマン・トルコと、キリスト教国家が対立していた地中海世界を舞台とした短い話で、極悪非道な振る舞いを続けるトルコ海賊の首領に、イタリアの小国の伯爵夫人が恋をしてしまうという話である。
 
 たった1回だけ、それも、その小国の女王になりすますという不自然な会見ながら、ウルグ・アリと名乗るトルコ海賊の挨拶を受けた伯爵夫人は、深い衝撃に打たれた。

 野蛮で下品な男を想像していた伯爵夫人は、目の前にいる男が、流ちょうな南イタリア語をしゃべり (彼は元はイタリア人だから) 、紳士としての気品を身につけ、貴族のような優雅さと、大胆不敵な男らしさを漂わせる、魅力的な人物であることを悟った。

 海賊の夫人に対する礼儀作法は、どのキリスト教徒の男よりも洗練され、会話は機知に富み、浅黒い肌に光る瞳は、海に生死を賭けている男特有の官能美に溢れていた。

 海賊の持っていた美質は、自分の夫も含め、夫人の周りにいるキリスト教徒の男たちが、すべて失ってしまったものばかりだった。

 会見を終え、夫人に見事なエメラルドをプレゼントしたウルグ・アリは、夫人の胸に熱い炎をともしたまま、優雅に立ち去る。

 海賊船隊が港を出て行くときの描写が美しい。

ガレー船04

 船の左右に並んだオールの先が、水鳥が飛び立つときのように、いっせいに宙に浮き上がったかと思うと、次の瞬間、ふわりと海面に落ちる。

 黄金色に染まる海を、船足を速めて、外洋に漕ぎ出て行くトルコ船隊。

 「その先には、エメラルド色に輝くという、南の海があるのだろうか…」

 夫人は、生まれてはじめて、かけがえのないものを失うときの瞬間というものを自覚する。

 伯爵夫人は、そのたった1回の出会いを大切な思い出として胸の奥深くしまい込んだまま、孤独な宮廷生活を送る。
 敵対する異教徒の、しかも “卑しい” 海賊に恋をしたなどと打ち明ける相手が、宮廷の中にいるはずもない。

 誰もが、 “無知で野蛮な” 海賊をだまし通した夫人の胆力を賞賛するが、そのことで、夫人はいっそう傷ついていく。

 一方、海賊の首領ウルグ・アリは、やがてトルコ正規海軍の提督として、全キリスト教徒の軍隊から憎まれる存在となって、地中海世界に君臨する。

 しかし、彼もまた、二度と会うことのなかった伯爵夫人に、キリスト教徒の騎士が胸に秘めるような尊敬の念を、生涯抱きつづける。

 一度だけ、イタリア商人を介して、海賊から秘密の贈り物がそっと届く。
 ヨーロッパ社会では手に入らないような、見事な刺繍に彩られたエメラルド色の布地だった。

 伯爵夫人は、周りの侍女たちをみな引き下がらせ、床に広げた布地に体を投げ出して、少女のように号泣した。

 南イタリアに残る伝説をベースに、塩野さんが華麗なタッチで描ききった珠玉の物語である。

 この話を最初に読んだとき、もう 「ロマンチック」 という言葉は、この話のためにあるような言葉だと、私には思えたものだった。

 私は、その後、自分が海賊ウルグ・アリであるような思いでいる。
 たった一度だけの機会であったが、あのとき、自分の部屋に招き入れて楽しい話を聞かせてくれた塩野七生さんは、私にとって、 「エメラルド色の海」 に登場する伯爵夫人のように、生涯まぶしく輝き続ける人だからだ。

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音楽&映画&本 | 投稿者 町田編集長 18:43 | コメント(8) | トラックバック(0)
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