町田の独り言 キャンピングカーのガイド本を編集する町田が語るよもやま話

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JキャビンFC

 軽トラックにキャンパーシェルを載せるという、MYSミスティックの 「Jキャビンミニ」 が登場したとき、多くの人は、デフレ時代の低価格路線を狙った商品設定だと思ったかもしれない。

JキャビンミニFC外形001
▲ JキャビンミニFC

 地方の軽トラ普及率は高い。
 その軽トラをベース車として、遊びに行くときだけキャビンを積載しようというニーズは確かにあるだろう。
 そうすれば、キャンピングカーとして架装されたクルマを新たに購入する必要がない。
 買うのはキャンパーシェルの部分だけ。
 コストパフォーマンスは無類によい。
 …ならば、ひとつ買ってみようか。

 Jキャビンミニとは、そう計算した人々を狙った商品なのだろう…と分析した人は、
 「いい狙いどころだな」
 と感心したかもしれない。

JキャビンミニFCシェル003

 しかし、Jキャビンミニを構想したMYSの佐藤正社長の思惑は、もう少し別のところにあった。

MYS佐藤さん001

 彼は、まず最近の軽トラックの上級グレードの驚くほどの走行性能の改善に注目した。
 
 「食わず嫌いでした。乗ってみてはじめて分かった。
 こんなに走りに余裕があり、かつ刺激的な走行フィールを持った乗り物だとは思わなかったんです。
  軽トラというのは、もしかしたら、今までの自動車のカテゴリーを大きく揺るがすものなのかもしれない」

 佐藤さんは、そう感じたという。

JキャビンミニFCリヤ002

 低コストで乗れる。
 小回りが利く。
 駐車スペースを取らない。

 そのようなエコロジカルな特性には収まりきらない、とてつもない魅力が軽トラにはある…と、佐藤さんは読んだのだ。

 その魅力を一言でいうと、 「走りのビート感」 。

 「たとえばスバルなんかの軽トラに、このJキャビンミニを積載しますよね。
 すると、カツン、カツン、カツンと乾いたビートを刻んで、感性を刺激する走りが生まれるんですよ。まさにフォービートかエイトビートという感じ…」

 それは、ハーレーの、タンタンタンという3拍子のリズムにも拮抗するような、胸を騒がす 「生命の鼓動」 なのだとか。

 だから、この軽トラをベースにしたJキャビンミニシリーズは、走る楽しみにおいても、従来のキャンピングカーとは一線を画する 「次世代RV」 なのだと佐藤さんは位置づける。 
 
 ならば、その肝心のシェルの部分にも、 「次世代RV」 を語るにふさわしい “意匠” を考案しなければならない。  
 単なる 「コストパフォーマンスに優れたキャンピングカー」 と見なされるのではなく、持つこと自体を誇れるような、究極のデザインを試みなければならない。

 そういう思いが 「形」 となって結実したのが、この 「JキャビンミニFC」 である。

JキャビンミニFC外形001

 「FC」 とは、ファクトリーカスタムのこと。
 佐藤さんの念頭にあったのは、ハーレーのカスタムだった。

 ノーマルでさえ強烈な存在感を持つハーレーが、一つひとつクロームメッキパーツを身に付けて輝いていくときに生まれる “際だつ個性” 。
 その燦然と輝く 「個性」 を、ファクトリーとして鍛え上げられた自分たちの職人芸で、最高の仕上がりにまで持っていく。

 それが 「JキャビンミニFC」 の思想である。

 このシェルの扉を開け、中に入っただけで、その 「思想」 に感染しない人はいないはずだ。
 ここまで手の込んだ作りを誇るピックアップキャビンというものは、かつて存在したことがなかったのではないか。

JキャビンミニFC室内003

 まず、丹念に仕上げられた木工家具のグレード感に、人はびっくりするはず。
 深い渋みを湛えた美しい塗装。
 それが室内に差し込む光の角度によって、微妙な陰影を室内に投げかける。

JキャビンミニFC002

 それとバランスを取るように、対照的な明るさを際だたせるシートの柔和感。
 「書斎」 の重厚感と、 「リビング」 の軽快感の絶妙なマッチングが、ここでは試みられている。

 ちなみに、シートは、中にチップを入れた3層構造。
 座り心地も万全ならば、ベッドメイクしたときの感触も秀逸だ。

 壁紙にも、繊細なデザインセンスが発揮されている。
 竹を組んだように見えるアジアンテイスト・デザイン。
 ヨーロッパのリゾートとはひと味違う、アジア風高級リゾートの涼しげな感触が、この壁紙素材から伝わってくる。

JキャビンミニFC006

 インバーターで回すエアコン (オプション) には、省電力タイプのものが採用されているので、少ない電力でも相当な涼風が約束されるという。

 そこから流れ出る風が、アジアデザインの壁紙をかすめるとき、中でくつろぐ人は、窓の外に、ヤシの木陰の向こうに広がるインド洋か東シナ海を夢想するかもしれない。

 照明は、あえて流行のLEDを使わず、蛍光灯も避けて、昔ながらの電球を使った。
 そこにも “こだわり” があり、ランプのような光がもたらす自然な温かみを狙ったのだという。

JキャビンミニFC005

 小物入れも豊富。
 趣味にこだわる人は、自分にとって大切な “秘密のアイテム” をそっと貯め込んでおきたくなるもの。
 大人の風格を備えながらも、男が 「少年に還る」 ときの楽しさを、このクルマは失っていない。

JキャビンFC004

 「コストを度外視しても、凝りに凝ったものをつくってみたかった」 という佐藤さん。

 そこに実現されたものは何だったのだろう。

 私は、 「男が自分の “精神” に出会う場」 だと思った。

 自分がどこから来たのか
 自分はどこへ行こうとしているのか
 自分とは何か

 忙しい日常生活の中で、忘れてしまった 「自分を問う心」 。
 そのような 「問い」 は、日常性を超える異次元空間でなければ生まれない。
 自分が、キャンピングカーの中にいることすら忘れるような、至上の愉楽を約束する空間があってこそ、生まれる 「問い」 なのだ。

JキャビンミニFC001

 もちろん、そのような 「問い」 に、本当の答などない。
 それでも、答を求めながら、この贅沢な空間で、ゆっくり自分の好きな酒を飲み、好きな音楽を聞く。
(佐藤さんなら、そこでフジコ・ヘミングのピアノ曲を聞くことだろう)

 そして、答を求め続け、けっきょく分からないままに、快適なベッドの上に、酔った身体を横たえる。
 ほのかなランプの光が、火照った頬を優しく撫でていくのを感じながら、いつしか眠りの底に落ちていく。

 「幸せ」 ってのは、そういうものだ。

 JキャビンミニFCは、その 「幸せ」 を約束してくれるクルマだ。


campingcar | 投稿者 町田編集長 11:19 | コメント(0)| トラックバック(0)

ホワイトカントリ-

 『答は風の中』 というWEBエッセイを連載されている九州の 「カスタムプロホワイト」 の池田さんから、最新キャンピングカー情報が送られてきた。

 長年、ハイエースやキャラバンをベースに 「フィールドキング」 シリーズを作成してきた池田さん。
 今回は思い切って、軽キャンピングカーに挑戦したという。
 その名は 「ホワイトカントリー」 。
 30年ほど前、はじめてキャンピングカーを造り始めた頃に考えていた名前なのだそうだ。

ホワイトカントリー外形(松林)

 ベース車両はホンダ・アクティ。
 鮮やかにペイントされたツートンのボディが、なんとも可愛く、なんとも斬新。
 リヤパネルが、ボディ同色のプラスチックパネルで窓埋めされており、なかなか凝った仕上がりぶりだ。

ホワイトカントリープラスチックパネル

 エクステリアにも力が入っているが、内装を見ると、さらにびっくり。
 ハイセンスに仕上げられた木工家具が架装され、4ナンバー登録の軽キャンパーとは思えない充実ぶりだ。

ホワイトカントリー内装002

 リヤゲートを開けると、右側には、フィールドキングゆずりのムク材を使ったミニキッチン。軽には少し贅沢と思える中型のホーローシンクに、本格的なフォーセット。
 シンク下には、13リットルの給水タンクが標準装備。
 シンクの左側には、小型のカセットコンロがこぢんまりと収まっている。 
 排水タンクの設置も可。

ホワイトカントリー内装003

 ボディ左側は、収納棚とフライングテーブル。
 (本棚には、しっかりと 『キャンピングカースーパーガイド』 を収めてくれてますねぇ。ありがとうございます!)

ホワイトカントリー内装003の2

 ルーフ内側にはキルト素材のフルトリム (厚さ10mm) が施され、断熱・防寒対策と、美観の演出を引き受けている。
 よく見ると、リヤ扉の内側にも、しっかりウッドが張られている。
 こりゃもう 「部屋」 ですな。

ホワイトカントリー内装004

 運転席の頭上には、たっぷりとした容量が確保されているルーフ収納が設定されている。
 その容量、約180リットル。
 これは、フロント部の傾斜が比較的ゆるく、かつルーフ高がたっぷり取られたホンダ・アクティの特徴を生かしたところから生まれた。

 ここには、コンロ、寝袋 (2~3人分) 、やかん、フライパン、ナベなどがすんなりと収納できるという。

ホワイトカントリー内装005

 ベッドマットはなし。
 じゃ、どこで寝るの? …となるのだが、代わりにモンベルの登山用エアマット (1800×500mm) が二つ用意されている。

 寝るときに膨らませることになるが、たたんでしまえば、1人分が牛乳瓶くらいなので、無類に空間効率が高まる。
 ベッドマットがないため、このクルマがトランスポーターとしての役目を負わされるときは、荷物の積み込みも楽になり、かつ積載容量も確保される。
 ちなみに、室内高は最大1200mm。くつろぐには何の不満もないゆったりスペースが実現されている。

 オシャレなのは、車両ドアパネルの加工。
 トリム生地と同系統の色調に仕上げられ、ちょっと 「軽」 とは思えない質感が生まれている。
 インパネもすごい!
 ここもドアパネルと同色に塗装され、室内のカラーコーディネイトは万全だ。

ホワイトカントリー内装006

 気になるお値段は、なんと80万円 !?
 ただし、これは架装費だけの価格。
 ベース車両は別で、持ち込み架装も可。
 でも、リアルウッドの手の込んだ家具を多用したハイグレードな室内架装が80万円というのは、なんともリーズナブルな設定ではなかろうか。

 4ナンバーの 「アクティ」 と、5ナンバーの 「バモス」 の価格差が約70万円ほどであることを考えると、その価格差を架装費で吸収しようという 「ホワイトカントリー」 の戦略は、うまいところを突いているようにも思う。

 この80万円の架装費に、シートカバー、ツートン塗装、プラスチックパネル、4スピーカー、カーテンなどをプラスして、だいたい115万円程度だとか。


 この写真を送ってくださった池田さんに電話取材を試みた。

カスタムプロホワイト池田氏

 池田さんは、お客様に選んでもらうときに、 「軽しか買えない」 という選択ではなく、 「この軽が欲しい!」 というものを目指したのだという。
 
 また、 「大きなクルマに乗って見栄を張ることに少し飽きて、軽自動車の利便性と、軽自動車の経済性を合理的に判断できるクレバーな人たちに見てもらいたい」 とも。

 年間5~6台しか生産しない同社の営業方針は、大量生産・大量販売の正反対をゆくものだ。
 だからこそ、少量生産の意味をしっかり訴えていきたいという。

 それは、内装クロス張りから木工家具製作、さらにボディ改造から塗装まで、1人でコツコツ仕上げるところから生まれる 「職人の味」 を “売る” こと。

 「たぶん、全国のビルダーの中で、現場に関わる時間でいえば、私は一、二を争う働き者だと思いますよ」
 と池田さん。

 毎日8時間。
 それを1年300日、休むことなく自分の手を使い、働き続けた。
 その歴史が30年あるということは、これまでの累積労働時間数が7万2,000時間。

 「それだけの経験を積めば、職人としての腕を売り物にしたって、少しは許されるでしょう」
 と池田さんは笑う。

 彼はその “職人の腕” に、さらにカヌー、ダイビング、キャンプ、焚き火 (?) などのアウトドア体験をプラスして、自分のクルマを練り上げてきた。

 もともと、バックパックに荷物を詰め込んで、山登りやヒッチハイクの旅を楽しんできた人である。
 今回の 「ホワイトカントリー」 も、そんな自分の生き方の原点に戻った “作品” なのだそうだ。
 モンベルのエアマットを使うというのも、荷物をコンパクトにたたんで収納するバックパッカーの習慣をそのまま反映したもの…だとか。

 今度の 「ホワイトカントリー」 は、そのようなライフスタイルを貫いてきた池田さんの原点でもあり、同時にその集大成だという。
 「サイズ」 は軽でも、 「志」 は巨大モーターホーム。
 そんなクルマだと言いたげに、電話の向こうの声が、明るく笑った。



campingcar | 投稿者 町田編集長 21:20 | コメント(0)| トラックバック(0)

日本のRVの歴史

 ようやくである。
 『日本のキャンピングカーの歴史』 という書籍の発行に漕ぎつけた。
 昨日、その表紙の校正が上がった。

日本のキャンピングカーの歴史

 見本が上がるのが、2月5日。
 約90ページの書籍になった。

 もちろん、これが日本のキャンピングカーの歴史を完璧に網羅したものだと言い張るつもりはない。
 むしろ、取材しきれなかった部分の方が多い。

 しかし、人から人へ、つてをたどって、古い時代のキャンピングカーをご存知の方々には、かなりお会いできたように思う。
 かなり高齢な方もいらっしゃったが、お元気なうちに取材できたのはうれしいことだった。

 日本のキャンピングカー1号車は、今のところ、画家の桐野江節雄さんが東京マツダに造らせたオート3輪の 「エスカルゴ号」 ということになっている。

 しかし、本資料を作成しているうちに、どうやら演歌歌手の田端義夫さんがいすゞ自動車に造らせたバスを改良したキャンピングカーの方が年代的に古いということが分かった。
 田端さんの “バスコン” は、昭和30年 (1955年) に造られたということになっている。

 今回、その確証を得るために、当時いすゞ自動車にいらっしゃった方にお会いすることができたが、漠然と昭和30年代の初期…というところまでしか分からなかった。
 その方が、当時のいすゞのバスを担当されていたスタッフと連絡を取ろうと努力を重ねてくださったが、すでに連絡が取れない人が多かったという。

 エスカルゴ号の方は、昭和33年 (1958年) に製作されたことがはっきりしている。
 それを確実に裏付ける資料もあるし、その製作に立ち会った人からも話を聞いている。
 したがって本書では、暫定的に、このエスカルゴ号をもって 「日本のキャンピングカーの草分け的存在」 という位置づけにした。

 その後、現在のようなキャンピングカーのスタイルが生まれるまでには、10年ほど変化の乏しい歳月が流れる。
 しかし、その間、ワーゲンベースの輸入キャンパーなども導入されるようになり、それを参考にして、徐々に今のスタイルの車両が姿を見せるようになる。
 その大半は、ユーザーが自作したハンドメイドキャンピングカーだった。

 70年代に入ると、国産キャンピングカーは、ハンドメイドキャンピングカーの百花繚乱期を迎える。
 ワンボックスカーの室内を架装したものから始まり、今のピックアップキャビンの原型ともいえるトラックの荷台にシェルを積載したものまで、様々なスタイルが追及されていった。

 それと並行して、アメリカのバニングに影響を受けたカスタムカーのブームがスタートする。
 日本のキャンピングカーは、このハンドメイドとバニングの二つの流れにけん引される形で、次第に現在のスタイルを生み出すようになっていく。

 そこには、いろいろな人々のドラマがあった。
 本書は、 「キャンピングカーの歴史」 と称しながら、人物列伝のおもむきを呈しているようにも思える。

 すでに現役を引退された方々から取材するときは、古い写真や資料を見ていただきながら、時間をかけて、少しずつ思い出してもらうような形を取ることも多かった。

 しかし、その方の記憶がゆっくりと形を整え、ご本人も忘れていたような過去が蘇えってきたとき、そこには思いがけない感動的な青春ドラマが再現され、しばしば陶然と聞きほれたことも一度や二度ではなかった。

 惜しむらくは、この資料を制作中に、 「日本のオートキャンプの父」 ともいわれる日本オート・キャンプ協会の岡本昌光初代専務理事が亡くなられたことだ。

 岡本氏は、日本にキャンプ文化を根づかせた最大の功労者だが、また数々のイベントを通じて日本にキャンピングカーを紹介した功績においても、並ぶ者のいない偉業を成し遂げた人である。
 
 岡本氏は、この小冊子の完成を待たずにして亡くなられたが、原稿チェックの段階ではさんざん目を通してもらい、電話を通じて、ほぼ毎日こと細かなアドバイスをいただいた。

 氏は、本当にこの資料ができあがるのを楽しみにされていた。
 旧友と連絡をとるときも、ことあるごとに、この小冊子が現在制作進行中であることを話題にし、その感想を述べ、できばえを誉めたたえてくれたというから、完成本を直にお渡しできなかったことが本当に残念でならない。
 逝去されたのは、昨年の10月11日。享年78歳であった。

 また、現在キャンピングカービルダーとして名声を誇る会社の創業者たちの中においても、アム・クラフトの水鳥元社長、セキソーボディの中山元社長らのように、若くして永眠された方々がいる。
 本資料は、その方々にも見ていただきたかった本である。
 
 ともあれ、不完全な形かもしれないが、日本のキャンピングカーの流れをたどる原資料のようなものはできあがった。
 今後は、取材に漏れた方々の証言もさらに取り入れ、また、これを読まれた未知の読者からの正確な情報もつけ加え、より精度の高い資料集として再構築していくことも念頭に置いている。


campingcar | 投稿者 町田編集長 04:20 | コメント(8)| トラックバック(0)

リコルソSS

 2月の幕張ショーに出展予定の新車、アネックスさんの 「リコルソSS」 をご紹介。

リコルソSS 

 「リコルソSS」 は、今注目の日産NV200をベースにしたライトキャンパー。
 本格的なキャンピング装備を組み込んだものというよりも、日帰りドライブだけでも十分に楽しめる “手軽な旅行車” という位置づけの車両である。
 だから、 「キャンピングカー」 という仰々しい呼び方をせずに、アネックスでは 「ミニマムRV」 と呼ぶ。

 今回、送っていただいた資料は、なんと社内で討議された 「コンセプトメイク」 のメモ。

 本来なら、それを翻訳する形でこちらが記事化するのだけれど、今回は、ビルダー内部でどのように新車開発の議論が進められるのか、その様子が伝わってくるものなので、原案に近い状態のものを掲載させてもらうことにした。

リコルソSSテント

《 トレンド分析 》

【現状】
・ 大型車から小型車への流れが世界的に見られる。
・ ハイブリット車の販売が好調。
・ PLAZA 大阪において、小型車の引き合いが多くなっている。
・ 二酸化炭素削減のニュースが頻繁に流れる。

【今後の読み】
小型のキャンピングカー。しかも低燃費。

《 キーワード設定 》

【スマート】
大きなエンジン、大きな車体、いかにも燃費の悪そうな車は賢い選択といえないのではないかと疑問を感じ、低燃費車がこれからのスマートな車だとお考えの方にアピール。

【スモール】
バブルなんてとっくの昔に過去のもの。 “いつかは○ラ○ン” というフレーズも過去のもの。背伸びするのではなく身の丈 (たけ) にあった暮らしを楽しみたい。

【ちゃんと】
チープな作りは好まない。
センス良く、しっかりした品質のもの。

リコルソSS室内1

【エコ】
地球に対してローインパクトな車。

《 コンセプトのABC 》

【A、顧客】
・ 50代以上のご夫婦。
・ 旅行は好きだけれど、キャンピングカーを買うほど入れ込んではいない。
・ 自宅の駐車スペースはごく普通の乗用車でちょうどの大きさ。
・ ミニバンと同程度の予算。
・ 軽四では満足しきれない。

【B、提供する便益】
お二人で使うにはちょうど良い大きさ。普段の足にも十分抵抗感なく使える。

【C、確たる理由】
・ 全長4400mm×全高1800mm程度。
・ 車両本体価格 270万円未満 (税込み)
・ エンジンは1600cc、コンパクトカーと同じレベル。
・ 乗車姿勢も自然。 (ハイエースは座席位置が高すぎる)

リコルソSS室内2

《 ストーリー 》

【起】 異常気象などが頻発し、二酸化炭素による地球温暖化の影響が心配されています。   
【承】 そして、二酸化炭素の排出量の中でも大きな比率を占めるのが自動車です。
【転】 私たちキャンピングカーに関わるものとして、何かできることはあるのでしょうか?
【結】 ANNEXが、21世紀の地球を考えて提案するミニマムRV……RICORSO-SS。

リコルソSSテント

 ……なるほど。スタッフ会議などでは、新車のイメージをこういうふうに練り上げていくのだな…と分かる。
 基本的には、雑誌などを制作する編集会議と変わらない。

 まず、時代の流れを分析。
 次に近未来社会 (のマーケット) を予想。
 そして、キーワードを固め、ターゲットユーザー (雑誌なら読者層) を定める。

 商品開発というのは、みなそのように進んでいくのだけど、この 「リコルソSS」 の場合は、比較的、開発陣の “思想的練り上げ” の部分に比重がかけられていると感じた。
 つまり、商品にまつわる “物語” をつくろうとしていることが伝わってくる。

 それが、たとえば、 「キーワード設定」 に表れた次のようなフレーズ。

 「バブルなんてとっくの昔に過去のもの。 “いつかは○ラ○ン” というフレーズも過去のもの。背伸びするのではなく身の丈 (たけ) にあった暮らしを楽しみたい」

 ここで行われようとしているのは、ハイグレードなライフスタイルを盲目的に極めようとする上昇志向からの 《決別》 である。

 高度成長からバブルの時代にかけて、 「豊かな生活」 とは、常に 「まだ実現されていないもの」 だった。
 だからこそ、それが人々の勤労意欲をドライブするエネルギーとなり、日本の経済発展の駆動力となった。

 しかし、 「今はそのような時代なのか?」 という問いかけが、この 「キーワード設定」 には含まれている。

 すでに、先進国では、モノがあり余っていたのではないか?
 にもかかわらず、先進国の大企業は、消費者に一種の “精神的飢餓” のようなものを与え、 「足りていても満たされない」 という擬似的な欲望のループに消費者をハマらせていたのではないか?

 そして、そのような近代社会の資本主義的な前進運動が、逆に人と自然を疲弊させ、「本当の豊かさ」 を見失わせていたのではないか? 

 そういう眼差しが、このアネックスさんの新車開発メモからは感じられる。

リコルソSSリヤ収納

 「身の丈にあった暮らしを楽しみたい」 というこのキャンピングカーの思想は、ことなかれ主義とか、縮み志向などといった発想とはまったく無縁である。
 逆に、 「今の生活の中から、新しい豊かさを探そうよ」 という、発想の転換を示唆するインパクトが秘められている。

 キャンピングカーが新しいライフスタイルを創るという信念がなければ、こういう発想は生まれない。

 幕張ショーでは、まずアネックスさんに座布団一枚!


campingcar | 投稿者 町田編集長 21:27 | コメント(0)| トラックバック(0)

不況に強いRV

 (社) 日本オート・キャンプ協会さんが発行される月刊紙 『オートキャンプ』 には、RVランドの阿部和麿さんが執筆される 「Campingcar Critique」 という連載エッセイが掲載されている。

JACオートキャンプ0910

 今日それが送られてきたので読んでみたら、なかなか面白いことが書かれていた。
 その一部を要約してちょっとご紹介してみたい。


 『キャンピングカー・クリティーク第38回』
 「キャンピングカーは不況に強いか?」 by 阿部和麿

阿部和麿氏

 「100年に1度」 といわれるほどの構造的不況が続く中、米国ビックスリーが凋落したり、トヨタ自動車が赤字経営を計上するなど、キャンピングカーと関連が深い自動車産業が、みな荒波にもまれたごとく苦しい航海を続けている様子が伝わってきた。

 「自動車が売れない」 という嘆きを耳にしない日がないほど乗用車の営業不振の続く時代に、キャンピングカーとて例外ではないと思われる方は多いはずだ。
 もちろんこの業界も苦しいことには変わりない。

 ただあくまでも “感触” に過ぎないのだが、どうも乗用車を求めるお客様と、キャンピングカーを求めるお客様では 「客層」 が違うのではないかと思うときがある。

 ご来店いただくお客様からは、不思議なことに、 「不況」 や 「デフレ」 に絡むような会話というのがほとんど出ない。
 それよりも、 「この閉塞的で、うるおいのない時代に、せめてキャンピングカーで元気を取り戻そう」 という期待のようなものを、お客様のお話から感じることが多い。

 考えてみれば、バブルが崩壊してすでに20年。
 この間、いっとき景気が回復したように見えた時期もあったが、総じて、もう高度成長時代のような右肩上がりの上昇カーブを描いて経済が繁栄することのない時代を日本人はずっと生きてきた。

 きっと、この間に人々の考え方が変わったのだ。
 長引く不況を立て直そうと、政治面や経済面での試行錯誤がドタバタと繰り返されているうちに、誰もが気づいたのだ。
 「立て直す前の暮らし方というのが、ひょっとしたら無理な暮らし方だったのではないか?」 と。

 バブルの時代には、本来、商品の品質を表現するはずだった 「ブランド」 が、いつの間にか、所有者の見栄や虚栄を満足させるための 「記号」 として機能し、持っている人が、持っていない人に見せびらかすだけで、 「金持ち」 と 「ビンボー人」 の差がつくような風潮が生まれた。

 そして、その風潮は不況の時代に入ってからも 「勝ち組」 「負け組」 と形を変えて、ますます猖獗を極めた。

 そのことに、誰もが嫌気を感じてきたのがいまの時代なのだ。
 いま人々が求めている生活は、人に見せびらかすために背伸びする生活ではなく、自分や自分の家族の満足が得られる生活である。
 不況の20年を経験して、人々は、ようやく背伸びをしないことの心地よさに気づいたのだ。

 そのことは、近年 「売れなくなったモノ」 を見てみれば分かりやすい。
 たとえば、乗用車でいえば、かつては若者の憧れのマトであったスポーツカーのようなクルマに人気が集まらないという。

 それは、そのクルマのスポーツカーの部分の人気が衰えたからではない。 「カッコいいだろ!」 と所有者に背伸びさせた部分の人気が落ちているのである。

 キャンピングカーは、 「贅沢なお金持ちのクルマ」 のように思われることが多いが、実際に購入される方々で、そんな意識を持っている人たちはほとんどいない。
 むしろ安い経費で、家族と満足を共有できる道具。人に見せびらかすクルマの対極の位置にあるものという認識を持っている。

 だから、ステータスとして成功してきたような乗用車がそっぽを向かれるような時代になっても、ステータスで勝負してきたわけではないキャンピングカーは、比較的、人々の目線に 「好意の情」 がこもるように見えるときがある。

JAC(日本オート・キャンプ協会)発行 『Auto Camp』 第167号より
「キャンピングカー・クリティーク 第38回」


campingcar | 投稿者 町田編集長 22:36 | コメント(2)| トラックバック(0)

マックレー新型車

 東京の幕張で開かれる 「キャンピング&RVショー」 が近づくにつれ、キャンピングカーメーカーの新車情報がいろいろともたらされてきた。
 すでに、いくつかの最新情報を入手しているので、逐次公開していきたい。

 今回は、マックレーさんが展示する新型フルコン (クラスА) のイラストをご紹介。

 Wow カッコいい!

 全長は約7m。
 ベース車は公表されていないが、エンジン出力、走行安定性、架装性のどれをとっても、間違いなく一級品とのこと。
 漏れ聞くところによると、エンジンは3リッター、150馬力のディーゼルターボとの情報も。

 ただ、幕張ショーに間に合うのは、外形のみなのだそうだ。
 もちろん塗装、カラーリングは完了する予定なので、 「国産最強フルコン」 といわれるこの新型車の偉容をたっぷり眺めることはできる。

マックレー新フルコンサイド

 まずサイドビュー。
 風の流れを考えたルーフ曲面のラインが素晴らしい。
 図にはデュアルルーフエアコンが設定されているが、実際に要望があれば、デュアルエアコンの装着も可能らしい。
 これは、室内が相当広くなるので、夏場は、エアコン1台では冷房効果が十分には得られないだろうという判断から来るものだろう。

 ちなみに、このデュアルエアコン駆動を想定したサイン波5.5kWの専用発電機も開発中だという。

 バンクの張り出しを持たないクラスАとはいえ、運転席の頭上にはたっぷりと容積が取られているのが特徴。
 当初はプルダウンベッドの設定が考えられていたらしいが、運転席上にある程度のヘッドクリアランスが取れているため、バンクベッドの設定も考慮されているという。

マックレー新フルコンフロント

 「クラスАは顔が命!」
 フロント部分も大迫力。
 いかにも、クラスАらしい風格がにじみ出ている。
 この図から、ベース車を推測できた人はいるかな?

 リヤ部。
 テールランプ回りの意匠が斬新。
 リヤパネルの処理がどんな形になっていくのか楽しみだ。

マックレー新フルコンリヤ

 室内がどのようなレイアウトになるのか分からないのだが、開発者に教えていただいたのは、
 「軽くて重厚な雰囲気が醸し出せる、付板仕様の最上級家具を使用する」
 というところまで。

 どうやら、サンプルとしてのレイアウトは組むけれど、基本的にはレイアウトフリーという形で、顧客の希望を取り入れたスタイルを実現していく意向のようだ。

 特筆すべきことは、4輪ともスマイルファクトリーがこのクルマ専用に開発したハイスペックバージョンの 「キャンサス」 を装着するというもの。
 4輪独立制御となり、減衰力は8段階調整。ストローク調整も可能というマニアックなものだという。

 とっても期待できる1台。
 もう少し詳しい情報が入り次第、逐一ご紹介します。


campingcar | 投稿者 町田編集長 18:29 | コメント(6)| トラックバック(0)

RVの広報とは

 昨日、あるキャンピングカーメーカーの広告デザインと広報を担当をされている方と、昼食をともにする機会があった。
 話題が、キャンピングカー業界の広報のあり方というテーマになった。

 仕事でヨーロッパを訪れる機会の多い方なので、向こうでは、キャンピングカーがいかに人々の生活と密着しているかという話を教えていただくことができた。

 休暇制度の問題、都市開発の問題、教育の問題。
 切り口は多様な方向に広がったが、話の中で見えてきたのは、日本にはまだキャンピングカーを 「文化」 として捉える視点が確立されていないということだった。

 キャンピングカーが 「文化」 として根づくということは、キャンピングカーが人間の暮らし方に与える影響とか、社会の中で果たす役割などといったものが、ことさら宣伝したり、啓蒙したりしなくても、自然に浸透している状態を指す。

 つまり、メーカーやメディアが、 「キャンピングカーっていいよぉ!」 と強調しなくても、 「そんなこと分かってらぁ」 と、みんなが思っている社会が自然にできあがっていることを意味する。

 歴史の違い、といってしまえば、それまでかもしれない。
 欧米では、キャンピングカーの歴史が乗用車の歴史とほぼ同時にスタートしたのに比べ、日本のキャンピングカーの歴史は、その半分程度でしかない。

 人々の生活を潤す道具というのは、時間が経過すればするほど社会の中にも浸透し、その意義やら効能が、 「文化」 として人々の暮らしの中に定着する。

 そういう社会では、ことさら “キャンピングカーの意義” などを強調しなくても、各部品の機能部分の優劣だけを論じるようなクールなジャーナリズムが成立する余地がある。

 しかし、日本のキャンピングカーは、まだ 「文化」 として成熟していないから、今は 「みんなみんな! こっち見てぇ!」 というホットな 「広報」 が必要なんだ…という方向に話が進んだ。

 ただ、キャンピングカー業界やメディアが、キャンピングカーの意義や効能を宣伝していれば、それだけで普及していくのか? というと、それだけでは足りない…というふうに、話の方向が新しい角度に向けて舵を切った。

 やはり、それはインフラ整備や都市計画などとも無関係ではない。
 キャンピングカーに乗っている人たちが、 「これはいい道具だよ」 と納得しても、その “いい道具” を活用し切れるほど、今の日本のインフラ整備が進んでいるかというと、とてもじゃないが、満足できるレベルに達していない。

 「ヨーロッパはそこが違う」 と、その人は言う。

 ひとつは、都市型キャンプ場の整備という発想が日本にはない。
 パリ郊外には、地方からキャンピングカーでロングバケーションを楽しむために集まってくるキャンプ場などがしっかり整備されていて、キャンプ場の前にある駅から地下鉄に乗れば、2駅か3駅ほどでオペラ座に着く。

 ドイツなどでは、古城めぐりを楽しむ地方からのキャンピングカーユーザーを想定して、無料で、長時間クルマを止めておける広い駐車場が確保されている。

 もちろん、キャンピングカーユーザーの便宜を図るインフラが整備されるかどうかは、キャンピングカーの普及度がモノをいう。絶対数が少なければ、一部の利用者がどのように声を張り上げても、それは 「ニーズ」 として認められない。

 しかし、欧米では、行政が率先してキャンピングカーユーザーの便宜を先取りするような形で、インフラ整備を進めてきたことも事実なのだ。
 それは、 「観光産業の育成」 という、しっかりした国家的目標が確立されていたからだ。

 だから、日本のキャンピングカー業界の広報のあり方として、これからは、ユーザー層にターゲットを当てるだけではなく、行政にも認めてもらえるような、一段進化したものでなければならない、という話になった。

 つまり、今後は、新しい都市開発の基本計画に、キャンピングカーユーザーのニーズを取り込んでもらえるような資料やらデータを揃えて、行政にしっかり提出できるかどうか。
 そして、そのようなインフラを実現することが、地域の観光産業や地場産業を活性化させることにつながることを、どう実証できるか。

 そのようなことを行政に理解してもらえるだけの実態調査と理論構築が必要。
 キャンピングカー業界も、そろそろそういう研究やデータ取りを始めなければならない時期に差し掛かっている。
 昼食の後のコーヒータイムでは、そんな話になった。

 雑談になったとき、ヨーロッパの町造りの話になり、やはり、ここでも塩野七生さんの著書に話が飛んだ。
 ちょっと驚いた。

 実は、昨年の暮れ、やはりあるキャンピングカー販売店の社長さんと話していて、塩野七生さんの話になったことがあったからだ。
 つまり、ヨーロッパの都市開発や交通社会のモデルプランというのは、 「古代ローマからの贈り物」 だと年末にお会いした社長さんは語られたのである。

ローマ人の物語0015

 もちろん、それは塩野七生さんの 『ローマ人の物語』 (全15冊) を読まれた感想からきたものであった。

 古代ローマが、地中海をぐるりと囲む大帝国を建設したときに、まず一番最初に手をつけたのはインフラ整備だった。
 それが道路であり、公共の建築物だった。

 彼らが征服地の異民族に教えたものは、 「都市計画」 だったのだ。

 古代ローマ帝国が各民族に伝えた理念は、宗教でもなく、政治哲学でもなく、町と道路の造り方であったということは、要するに、彼らの統合理念には、物質的な裏付けがあったということである。

 ヨーロッパ人たちが、自分たちの文化に自信を持っているのは、キリスト教の絶対性とか、近代合理主義の普遍性に対する信仰があるからだけではない。

 「自分たちの暮らし方こそ、万人の幸せにつながる」
 という現実的な手応えを、都市計画の成功から信じられたからである。
 それこそ、ローマ帝国の遺産である。

 ……というような話を、昨年の暮れ、あるキャンピングカー販売店の社長さんと交わしたことがあった。

 昨日、昼食をともにした方も、似たような視点で、ヨーロッパの都市計画と交通事情を語られた。
 聞くと、その方も塩野七生の大ファンであると言う。

 キャンピングカー業界で 「塩野七生を好きだ」 という方に、この短い期間の中で、2人もお会いしたことになる。 


campingcar | 投稿者 町田編集長 14:44 | コメント(2)| トラックバック(0)

バニングとは何か

 「キャンピングカーの歴史」 を詳しく述べる資料というものがわが国には少ないのだが、もっと少ないのは 「バニングの歴史」 を語る資料だ。

 キャンピングカーは、今や日本でも一大産業として成長を遂げつつあるが、バニングの方は専門業者の数も少なくなり、どちらかというと、 “過去の遺物” のように見られがちである。

 しかし、日本のキャンピングカーがここまで成長してこれたのは、バニングのおかげといえなくもないのだ。
 なぜなら、国産キャンピングカーは、途中までバニングと同じ進化の系をたどってきたのであり、現在の国産ビルダーの中には、バニングメーカーとしてスタートを切った業者も少なくない。

 初期のバニングを愛した人たちとは、いったいどのような人たちだったのか。
 また、キャンピングカーに比べ、バニングはなぜ途中で成長を止めてしまったのか。

 そのようなバニングの生きた歴史を語れる貴重な人間の一人に、井上章英 (いのうえ・あきひで) さんがいる。

井上章英氏画像
▲ 井上章英さん

 知る人ぞ知る 『キャンプカーマガジン』 の編集長さんである。

キャンプカーマガジン
▲ 「キャンプカーマガジン」 最新号

 井上さんは、実は現在のお仕事に就かれる前に、あの有名なバニング雑誌である 『カスタムCAR』 の編集長を勤めていた時期がある。
 この夏のことであったが、バニングに関して、井上さんから当時の貴重な思い出話を聞く機会があった。

 ここで、その一部をご紹介する。

「カスタムCAR」 の創刊と発展

【町田】 井上さんが 『カスタムCAR』 を手掛けられていた時期は、いつ頃だったのですか?

【井上】 『カスタムCAR』 の編集部に入ったのは1988年でしたね。36歳でした。それから2000年の3月まで。12年間その仕事を続けました。
 雑誌自体は、1978年 (昭和53) に創刊されていました。最初は 『ピットイン』 の増刊という形で出したのですが、けっこう評判がよくて、すぐに定期刊行になりましたね。

カスタムカー表紙
▲ 「カスタムカー」 最新号

【町田】 カスタムカーの編集部に入られたときは、どんなお気持ちだったのですか?

【井上】 当時僕は、 『ピットイン』 のような普通の乗用車雑誌の編集を担当していたんですよ。
 だから、 『カスタムCAR』 に入ったときは、ちょっとカルチャーショックでしたね。

【町田】 どういう意味で?

【井上】 普通の自動車雑誌というのは、自動車メーカーなどが発信する情報を、僕らがまとめて、それを読者に提供するわけですから、編集部と読者との距離が離れているわけです。極端な話、情報はこちらからの一方通行で、読者の顔が見えにくい状況なんですね。

 ところが、 『カスタムCAR』 という雑誌が伝える情報は、ある意味、読者が発信する情報なんです。
 ということは読者 = 取材対象者ということで、編集部と読者の間には双方向の情報の流れが出来ていたんですね。

 つまり、バニングは原則的にワンオフ製作ですから、 “造り手 (メーカー) ” は “お客さん” そのものであり、同時にそれが雑誌の読者でもあるわけです。

【町田】 となると、誌面構成にも読者の意向がかなり反映されてくるわけですね?

【井上】 そうです。 『カスタムCAR』 というのは、いわゆる 「読者が作る雑誌」 の典型だったんですよね。読者と編集部の連絡がものすごく密な雑誌だったんですよ。
 「あの企画が面白かった」 、 「次はこれを取り上げたら?」 というような読者からの感想やら提案がダイレクトに編集部に伝えられてくるんですね。

 土日になると、必ずどこかでバニングクラブのイベントやツーリングがありましたから、その取材のために、前日から会場に入り、酒など飲みながら交流を持つわけです。
 そこで次の号の企画が決まるとかね。

 そんなふうにユーザーが熱心に支持してくれたおかげで、編集部とユーザーのつながりの強い雑誌に成長していったわけです。
 その代わり、編集にタッチした12年間は、ほとんど休みがなしでしたけどね。

【町田】 でも、そういう体験は貴重ですね。読者の注目度の高い雑誌をつくれるなんて幸せですね。

【井上】 ええ。みんな雑誌の隅から隅まで、しっかり目を通してくれるわけですよ。
 たとえば、イベントなどの記事で、写真で紹介しているクルマとはまったく関係ない、その背景に小さく写った別のクルマのアルミホイールのメーカーがどこなのか? そんな問い合わせまでよくもらいました。

バニングカー外装001

バニングユーザーの実像

【町田】 バニングに情熱を傾けていた人たちというのは、どういう人たちだったんですか?

【井上】 基本的には求人雑誌の 『ガテン』 で求人しているような職業の人たちがメインでしたね。よく “ガテン系” なんていっていましたけれど、バブルの建設ラッシュで、金回りのよくなった若い職人さんが多かったですね。年齢的には20代の前半ぐらいでしょうか。

【町田】 ベース車でいうと、どういう車種に乗っている人が多かったんですか?

【井上】 僕がやっていた頃は、6割方ぐらいがハイエース、キャラバンといったワンボックスカーでした。

【町田】 ベース車は、持ち込み架装だったんですか?

【井上】 持ち込み架装もあったけれど、基本は中古車のバンがベース。
 80年代の後半まではハイエース・スーパーロングの72系か、60系のロング。キャラバンのE23、E24もけっこう流行っていました。
 しかし、その後100系のハイエースが出て、流れがガラッと100系ハイエース中心になりましたね。

 僕が辞めてからは、そういうワンボックス系のバニングが4割ぐらいに減って、アメリカのトラッキンやホットロッド、ローライダーのような車種を掲載する比率が増えたように思います。

 面白いもんでね、同じ 『カスタムCAR』 の読者といっても、バニングに乗っている読者はアメリカン・カスタムとかホットロッド、トラッキンなどの記事を読むけれど、アメリカン・カスタムやホットロッドに興味のある人たちは、バニングの記事をあまり読まないんですね。

 アメリカン・カスタムが好きな人たちは、バニングが持つ独特な、日本的なテイストが嫌いだったんでしょうね。逆に言いえば、バニングのユーザーたちは、クルマをカスタムするということに、とても貪欲だったのではないでしょうか。

バニングカー内装001

バニングカーの特徴

【町田】 国産ワンボックス系のバニングの場合、どういう架装例が多かったんですか?

【井上】 まず最初は、基本的なエアロパーツを組み込んで、ホイールを替え、車高を下げる。
 次に、座席を取り外して、シャギー絨毯やチンチラの壁紙で内部を貼りめぐらし、シャンデリアとかソファベッドを組み込むわけですね。

 外装では、車体にエアブラシ・ペイントを施すのが流行りました。
 ペイントのテーマは、ディズニーやドラゴンボールなどのアニメ・キャラか、あとはラッセンの描くイルカが飛び跳ねているようなイラストですね。
 人物だと矢沢永吉、工藤静香、中森明菜……。

【町田】 どのようなビルダーのクルマに人気がありましたか?

【井上】 関西では、やっぱり 「オートボディショップたなか」 さん。…今のアネックスさんですね。
 田中さんのところは、エアブラシも含めていろいろなアイデアが豊富だったんです。FRP製のハート型の窓をリヤゲートのところに付けたりね。

【町田】 エアブラシの絵は、それぞれの架装メーカーさんが描くわけでしょ? それだけ業界には絵心のある人が多かったわけですか?

【井上】 まぁ、絵心のある人を集めたのでしょうけれど、でもやっぱりその中でもうまい人は限られてくるわけで、田中さんのところは上手でしたね。

 ラッセンの、夜の海にイルカが飛び跳ねているような絵柄がアメリカで流行っていた時期に、それを一番最初に日本に持ってきたのは 「ブルーオート」 の青木さんですね。

 「ビークル」 さんとか 「АtoZ」 さんなども、今ではキャンピングカーの大御所ですけれど、昔はきれいなバニングをいっぱい造っていましたね。
 そのほか、秋田の 「ファーストカスタム」 さんとか、川崎の 「荒木自動車」 さん、埼玉の 「プロット」 さんも有名でした。
 後半になってからは、 「ナッツ」 さんのバニングも人気を集めていましたね。

【町田】 井上さんが12年間バニングを見てこられて、最初の方と後半とでは、内装の変化があったのですか?

【井上】 内装素材でいえば、モケットは一貫して人気がありましたけれど、80年代の後半になると、チンチラとか金華山は影を潜めて、代わりに平織りのような、今のキャンピングカーでも使われている素材が出てくるようになりました。
 チンチラとか金華山はデコトラの方にいったようです。

 レイアウトでいうと、ニの字とかコの字ソファが圧倒的に多かったのですが、後半になると、キャンピングカーのような対面対座も出てくるようになりましたね。
 床もシャギージュウタンではなくて、市松模様のクッションフロアとか…。今のキャンピングカーと変わらないようなデザインのものも見るようになりました。

その後のバニング

【町田】 バニングがいちばん盛んだったのは、いつ頃なんですか?

【井上】 1990年代初めから急激に伸び出して、93、94年ごろがピークかな。90年代終盤からだんだん下火になっていったわけです。

【町田】 下火になった理由は何ですか?

【井上】 いくつかあるんでしょうけれど、架装に高額なお金をかける人たちが出てくるようになったんですね。

 最後の方になると、架装費だけで1千万とか1千5百万円などというクルマも出てくるようになったんです。
 そうなると、それについてこれなくなった若者が、次第に距離を置くようになったんです。

 それと、ほんの一部ですけど、暴走族系の連中がときどき幅を利かせるようになったんですね。
 数からいえばほんの一握りなんですけど、やはりそういう連中は目立つわけですよ。
 そのために、ただクルマが好きで、仲間とキャンプしたり、海に行くことだけを楽しんでいた若者たちが引いちゃったんですね。

 だから可哀想でしたよ。
 取材しているとよく分かるんですが、本来のバニング愛好者って、一見やんちゃ風に見えるけれど、みんな良い人間なんですよ。礼儀正しいし、話すと面白い。
 だから、世間の一部で誤解されてしまうことは残念でしたね。

【町田】 バニングユーザー同士のクラブキャンプというのは、どういうものだったんですか?

【井上】 基本的には、みんなで集まって、 「お前のいいね」 「俺のはこういうんだよ」 というようなミニ品評会とか情報交換の場でした。
 仲のよいメンバーが集まると、みんなで和気あいあいと海に行ったり、キャンプをしたりね。

 そのうち結婚して、子供ができたりすると、今のキャンピングカーユーザーの例会と変わらないミーティングになったんじゃないかな。

 ただ、室内で調理をするというようなことはなかったですね。それにトイレを付けているクルマも少なかったと思います。

【町田】 それにしても、バニングの初期の頃からその最盛期まで、その流れをメディアの目を通して眺めて来られた証言は貴重なものだと思います。
 そういうお仕事、楽しかったでしょ?

【井上】 もちろん。編集者としても、自分でいちばん脂が乗っていた時期でしたから、 『カスタムCAR』 という雑誌は、想い出もやりがいも一番あったし、取材などで深くかかわったバニングという世界には思い入れが強いですね。

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campingcar | 投稿者 町田編集長 21:29 | コメント(0)| トラックバック(0)

奥様はまず反対

 ときどき顔を出している地元の飲み屋さんの忘年会があった。
 常連客とその家族も交えたような、気さくで、気楽な会だった。

 奥座敷には、1歳ぐらいの赤ちゃんを伴った若夫婦がいた。
 常連客である私と同じ年の男性の “娘夫婦” だという。

 「こちらね、キャンピングカーの本つくっている人なの」
 …と、その彼が、私のことを娘夫婦に紹介した。

 「え? キャンピングカー!」

 赤ちゃんを抱いていた婿さんの顔が輝いた。

 「僕、すごく興味あるんです。欲しいんですよ」
 と、婿さんはいう。

 「だめだめ、そんな高いもの。それに、私が運転できなくなっちゃう」
 と、すかさず奥さんが反対する。

 奥さんの口元にはにこやかな笑みが漂っていたが、目には “断固許さない” という気迫がみなぎっている。
 きっと、婿さんとの間には、何度も議論があったのだろう。

 「いや、高くないって。ハイエースぐらいなら、安いキャンピングカーがナンボだってあるって」
 と、婿さんは説得するのだけれど、その 「ハイエース」 という言葉自体が、どうも奥さんにはピンと来ないらしく、
 「…んな無理やわ」
 と、主張を変えない。

 「キャンピングカーが高いって、いくらぐらいだと思っていらっしゃいます?」
 と、私はその奥さんに尋ねてみた。

 「1,000万円以上でしょ? うちには無理やわ。それに、そんな大きなクルマが入る車庫なんてないし…」

 う~む。……なるほど。

 この奥さんの反応は、一般的なファミリーが、キャンピングカーというものを考えるときのひとつの典型的なパターンであるかのように思えた。

 キャンピングカーにさほど関心を持たない人たちの、 「キャンピングカー」 という言葉から連想されるものは、 「1,000万円を超えたバカでかいクルマ」 というイメージなのである。

 だから、 「普通の小型ワンボックスカーのようなキャンピングカーもあるし、軽自動車のものもあるし、200万円代から買えるものだってあります」
 とか説明すると、たいていの人は、 「えっ?」 っと不思議そうな顔をする。

 どうやら、巷で普及している 「キャンピングカー」 という言葉と、業界の人たちが使う 「キャンピングカー」 という言葉の間には、けっこうな開きがあるようだ。


 私はキャンピングカーに乗っているユーザーさんたちにも、よく取材をする。

 彼らは、キャンピングカー販売店の人たち以上に商品知識を持っていたりして、話を聞いていると、私などもたじたじとなってしまうことがあるのだけれど、そういうユーザーさんたちとばかりと話をしていると、一般の人々にも相当キャンピングカーというものは認知されているのだろう…と、ついつい錯覚してしまう。

 しかし、実際には、 「キャンピングカーにはどんな種類のものがあるのか」 、それすらも知らない人たちの方が圧倒的に多い。

 この夏、キャンピングカーショーの会場で、キャンピングカーをまだ購入していない人たちを対象に、何を目的にそのショーに来たのかを調査をしたことがある。

 あるファミリーの奥さんはこういう。
 「今日はキャンピングカーを見に来たんじゃないんですよ。ハイエースを見に来たの」

 ハイエース……?

 彼女が指差す “ハイエース” を見てみると、それはハイエースをベースに架装されたバンコンのことだった。
 もちろん、それは立派な 「キャンピングカー」 なのだが、彼女の意識では、それは 「キャンピングカー」 ではなく、 「ハイエース」 なのだ。

ハイエースベースのバンコン 
 ▲ ハイエースベースのバンコン

 で、彼女が 「キャンピングカー」 というものに対して、どういうイメージを抱いているかというと、

 「ほら、ああいうの…」
 
 彼女の指差す方向を見てみると、そこにはバンクを張り出したキャブコンがあった。

キャブコン01
 ▲ キャブコン

 バンコンとかキャブコンなどという、われわれが、ごく日常的に使っているジャンル分けの 「言葉」 自体が、キャンピングカーショーにはじめて来たような人には十分に浸透していないことを痛切に感じた。

 われわれの仕事は、すでに、キャンピングカーに関心を持って、多少なりとも研究している人たちを相手にして、機構解説やら、装備の使い方などを論じているに過ぎない。
 そこに至るまでの人々に対しては、少しも親切な解説をしてこなかったのかもしれない。

 キャンピングカージャーナリズムは、まだまだやるべきことがいっぱい残っているんだなぁ…と改めて思った。

 で、飲み屋の忘年会。
 私のキャンピングカーの話を聞いているうちに、奥さんの目が輝きだした。
 
 「……ああ、そういうことだったら、1台あってもいいのかもしれない」
 と、奥さんの気持ちがかなり軟化してきた。

 喜んだのは、婿さん。
 「今度、どんなキャンピングカーがお薦めなのか、ぜひ教えてください」
 婿さんとは、そういう会話をして、別れた。



campingcar | 投稿者 町田編集長 22:47 | コメント(2)| トラックバック(0)

RVは生き残る

 先週のことだ。
 あるキャンピングカー販売店の社長さんに取材して、一通りの話が終わってから、雑談になった。
 この雑談がとても面白かったので、その中で社長さんがおっしゃったことを、ランダムに記す。

 まず、この世界的な景気後退をどう見るか、という話。

 「モノが売れない」 時代が長く続き、マスコミは既にデフレに突入していることを宣言しているが、そういう時代では、やはりキャンピングカーの販売も難しい状態に陥っている。

 ところが、 「そういう時代だからこそ、キャンピングカーは生き残る」 と、その社長さんは力強く宣言する。

 バブルの頃は、確かにキャンピングカーも売れた。
 しかし、キャンピングカーに限らず、何でも売れた。
 何でも売れる時代というのは、逆にいえば、品物の価値は問われない時代だということでもある。
 
 モノが売れない時代になれば、消費者は買うべきものと、買うべきでないものをシビアにより分けるようになる。
 そして、その商品が、自分のライフスタイルに合うほどの価値を持っているかどうかを、誰もが厳しい視線で見定めるようになる…というわけだ。

 「キャンピングカーは、比較的その価値をアピールしやすい商品だ」
 というのが、その社長さんの意見なのだ。

湖のコマンダー002

 サブプライムローンの破綻、リーマンショック、ドバイバブルの崩壊など、ここのところ立て続けに起こった金融危機によって、人類はようやく、金銭的な豊かさが必ずしも人間の幸せを実現できるものではないということに気づき始めた。
 そして、 「幸せとは何だろう」 という問いかけを内面的に掘り下げる習慣が見についてきた。

 …と、社長さんはいう。

 そのとき、キャンピングカーが内在的に持っている 「家族の交流」、 「夫婦の絆の確認」 、 「自然との調和」 などという文化的メンタリティーが、じわじわと多くの人の意識を捉えていくだろう…と、その人は見る。

 もちろん、ただ漫然とそれを待っているだけでは、物事は進展しない。
 キャンピングカーには、そのような 「価値」 があるということを、地道に広報活動していく結果において、それが達成されるだろうという。

 そのとおりだと思った。

 キャンピングカー旅行というのは、あまたあるレジャーの中でも珍しいくらい同乗者同士が濃密な関係を結び合うレジャーといえる。

 なにしろ、一種の個室状態の “生活空間” が、住人を乗せたまま移動していくわけだから、否が応でも、 “住人同士” の会話を生み、団らんを育み、他者への気づかいを促進する。

 もし、それが固定された家ならば、やがては 「息がつまる」 という事態を招きかねない。
 しかし、旅先で接する新しい景色、食生活の変化、観光による刺激が、常に家族間に新鮮な空気をもたらすため、濃密な家族関係が生まれても、それが煮つまらない。

 その 「集中と発散」 のダイナミズムは、他の旅行形態にないものだ。
 そして、 「それが新しい家族関係の構築につながる」 と、そのキャンピングカー販売店の社長さんは語る。

 人間は 「ときめき」 がないと、相手に心を開かない。
 たとえ家族であろうと、いや家族であるがゆえに、 「ときめき」 を失ってしまえば、他人以上に冷淡な関係に陥ってしまうことがある。

 「キャンピングカー旅行は、その “ときめき” を家族にもたらす旅行形態である」
 …というのが、私とその社長さんの結論となった。

 その人は、また 「旅行の豊かさ」 についても、独自の見解を披露した。
 
 「日本人は旅行に行くと、まず写真を撮る。そして景色を見ない。
 では景色はいつ見るのかというと、旅先から帰ってきて、写真を焼き増ししたときか、もしくはパソコンに画像を取り込んだときに、はじめて確認する」
 
 それでは本当の旅の豊かさは手に入らないだろうと、その人はいう。

 むしろ、カメラを取り出す前に、 「もしかしたら、二度とこの景色を見るチャンスはないかもしれない」 と念じ、心行くまでその景色を “記憶の印画紙” に焼き付けることが大事。

 結果的に、その方が風景を鮮明に思い出すものだ、という。
 そのようなことが、塩野七生氏のエッセイに書かれていたらしい。

 これも、その通りだと思った。

山の景色001

 われわれは、旅に出ると、すぐに写真に撮ったり、土産物を買い込んだりする。

 そのような 「物として残す習慣」 が、もしかしたら、旅の記憶をかえって不鮮明なものにしているのかもしれない。

 旅のだいご味は、もしかしたら 「一回性」 にあるのではなかろうか。 
 二度とこの地を訪れることがないかもしれない…という “切ない” 感慨が、その旅をかけがえのないものにするようにも思う。


 その社長さんは、また、キャンピングカーを使ったヨーロッパ旅行も経験している。 
 そのとき感じたのは、ヨーロッパの都市と道路の見事な整備状況。

 標識が瞬時に読めない日本人でも、定められた規則どおりに走っていけば、まず迷うことはないし、町に入れば、見事に多種間交通の住み分けがきちんとなされていて、安全性が脅かされることがない。

 それを 「交通社会」 という言葉で表現するなら、 「日本には交通社会がない」 と感じたという。

 そこに、社長さんは、古代ローマ帝国の遺産を見るという。

古代ローマの遺跡

 古代ローマは、地中海をぐるりと囲む大帝国を建設したときに、まず一番最初にインフラ整備に手をつけた。
 それが道路であり、公共の建築物だった。

 彼らが征服地の異民族に教えたものは、 「都市計画」 だったのだ。

 古代ローマ帝国が各民族に伝えた理念は、宗教でもなく、政治哲学でもなく、町と道路の造り方であったということは、要するに、彼らの統治理念には、物質的な裏づけがあったということなのだ。

 ヨーロッパ人たちが、自分たちの文化に自信を持っているのは、キリスト教の絶対性とか、近代合理主義の普遍性に対する信仰があるからだけではない。

 「自分たちの暮し方こそ、万人の幸せにつながる」
 という現実的な手応えを、都市計画の成功から信じられたからである。
 それこそ、ローマ帝国の遺産である。

 …とかいう話に興じて、その日は、ついつい取材時間を大幅にオーバーしてしまった。

 キャンピングカーを販売している人々も、さまざまな視点からキャンピングカーを論じるようになったものだ。

 そういう手応えをしっかり胸に秘めて、その会社を後にした。


campingcar | 投稿者 町田編集長 04:25 | コメント(0)| トラックバック(0)

女性ユーザーの声

 日本RV協会 (JRVA) から、ちょっと面白いデータが公表された。
 「女性から見たキャンピングカー」 というもの。

 このアンケート調査は、 「くるま旅クラブ」 に所属するキャンピングカーユーザーのうちから主婦層および女性オーナーを対象として実施されたもので、女性とキャンピングカーのつながりを調べるための24項目が設定され、1,388件の回答が寄せられたという。

 このようなキャンピングカーをテーマにした本格的な女性アンケートは初めての試みであり、業界にとっても貴重なデータだと紹介されている。

 それによると、キャンピングカーに興味を持ったきっかけは、 「ご主人が話題にするようになったから」 という回答が圧倒的に多く、全体の58.4パーセントを占めたのだそうだ。

 昨今、キャンピングカーの購入には奥様の意見がけっこう反映されるらしく、旦那さんが興味を持ったキャンピングカーに対しても、奥さんが 「NO」 というと契約が成立しないという話をよく聞くのだが、奥様の意向が強まったように見えても、購入のきっかけとなる材料は、旦那さんが提供しているという図は変わらないようだ。

サイトのシニアカップル

 面白かったのは、自由回答の中で、
 「私が知らない間に、主人が勝手に購入していた」
 「主人がこっそり準備し、いつの間にか (旅に) 連れ出された」
 という “巻き込まれ型” の購入であったことを告白した女性がいたらしいこと。

 たいていの旦那さん方が、奥さんの承諾を得るために四苦八苦しているらしい昨今、うらやましい殿方たちもいたもんだと思う。

 キャンピングカーを持ってから家族 (夫婦) の話題に変化が生じるようになったか? ということを尋ねたところ、
 「ご主人や家族との間に 『旅』 や 『趣味』 の話題が増えた」
 と答えた女性は57.9パーセントに達し、続いて、
 「キャンプや旅行で知り合った人々との交流が話題になった」
 と答えた人が、21.3パーセントもいたという。

 買ってしまうと、今度は女性の方が楽しくなってしまうという話はよく聞く。
 また、夫婦の間の話題が広がるようになったということは、 『キャンピングカー白書』 のデータをも裏づける形となった。

 この調査では、
 「キャンピングカー旅行中に、自分たち夫婦は相性が悪いと思ったことがあるか?」
 などという質問もなされている。

 それに対する答は、
 「まったくない」 という回答が55.3パーセント。
 「ときどきある」 という回答が39.5パーセント。
 「よくある」 という回答が4.1パーセントだったそうだ。

 どのような場合に、夫婦の相性が悪いと感じたかを尋ねると、
 「旅行中に、見物したり買い物したりする興味の対象が合わない」 (40.0パーセント) 、
 「時間のテンポが合わず、立ち寄り湯の待ち時間などをめぐってイライラする」 (24.3パーセント)
 …だとか。

 夫婦といえども、そこは生きた人間同士。 「男女間のデリケートな課題も内包していることに気付かされる」 と、調査をまとめた感想もコメントされている。

 ほかにも、女性がキャンピングカーを選ぶ基準や、キャンピングカーに欲しい機能や設備などが浮き彫りになったという。

 さらに女性のひとり旅や、女性同士のキャンピングカー旅行に憧れている潜在ユーザーの存在も明らかになったそうだ。

 この調査結果の報告は、次のリリースでも続きが紹介されるようだ。
 どんなデータが出てくるのか楽しみ。

 詳しくは、JRVAのホームページ (↓) を。

 http://www.jrva.com/jrvanews/release/20091214.html

campingcar | 投稿者 町田編集長 01:18 | コメント(6)| トラックバック(0)

お台場ショー告知

 今週の土曜日 (7日) から日曜日 (8日) にかけて、東京のお台場にて 「東京お台場くるま旅パラダイス2009」 が開催される。

09お台場ショーイラスト

 今回出展されるキャンピングカーは、162台 (うち新車138台、中古車24台) 。屋外で開かれるキャンピングカーとしては、国内最大規模となる。
 もちろん、日本RV協会主催のビッグイベントとしては今年のフィナーレを飾るにふさわしい盛大なショーといっていい。

 これは、私も例年楽しみにしているもので、本年度のキャンピングカー業界の成果を示す集大成であると同時に、来年度の動向を占うにも貴重なショーであり、キャンピングカーに興味のある人間には見逃せない。

 今年は、会場がちょこっとだけ変る。
 いつもの場所より、2ブロックほど離れた 「青海K区画」 と呼ばれる場所となる。
 昨年までの会場からは徒歩5分ほど離れるが、 「ヴィーナスフォート」 の斜向いとなるので、分かりやすいかもしれない。

09お台場ショーマップ

 会場の住所は、東京都江東区青海2丁目。

 ゆりかもめ 「青海駅」 または 「船の科学館前」 からも徒歩5分。
 りんかい線 「東京テレポート駅」 からも徒歩7分。

 入場料は前売一般700円 (当日900円) 、中学生以下は無料。

 ホームページに詳細あり。
 http://www.kurumatabi-paradise.com/

 ここには、密度の濃い情報が “てんこ盛り” !
 出展車両の詳細から、周辺のプレイスポットまで。イベントに関わる知りたい情報のすべてが網羅されている。
 HPを見ているだけで楽しい。


 
campingcar | 投稿者 町田編集長 23:23 | コメント(0)| トラックバック(0)

車中泊の魅力とは

車中泊画像001

 最近なにかとよく話題になる 「車中泊」 。

 ヤフーでこの言葉を検索すると、331万件。
 グーグルだと53万9千件。

 しかも、 「車中泊」 と3文字入力するだけで、
 「車中泊 グッズ」
 「車中泊 改造」
 「車中泊 ポイント」
 「車中泊 ガイド」
 …などという関連用語がズラリと表示される。
 
 「車中泊」 に付随する言葉がこれだけ細分化されているということからも、それが、ひとつのライフスタイルとして深く浸透している様子が伝わってくる。

 実際、東京モーターショー取材の帰り、東京駅の八重洲ブックセンターに行って驚いた。

 アウトドア関連書籍のコーナーに行くと、キャンプやウォーキング関連の書籍の中に 「車中泊」 と銘打った書籍・ムック類がところ狭しと並べられているではないか!
 本来は 「旅」 か 「自動車」 関連の棚に置かれてしかるべき 「車中泊本」 が、いつの間に堂々と “アウトドア・レジャー” になっていたとは…。

 要するに、 “緊急時の仮眠” とかいう認識を離れて、 《車内で寝ること》 自体が、ひとつのレジャーになったんだな…と、遅まきながら理解した。

 この手の書籍は、知人に借りて読んだり、書店でパラパラと立ち読みしたことはあったが、詳細まで検討したことはなかった。
 1冊取り上げて、拾い読みしてみたら、なかなか面白い。

 ノウハウ本の場合でも、やはりライターのセンスがものをいう。
 たまたま取り上げた本は、その著者ならではの 「車中泊哲学」 のようなものがあって、そこに惹かれて、つい1冊買ってしまった。

 その本の著者は、車中泊旅行を基本的に 「放浪の旅」 と位置づける。
 つまり、予定を決めず、目的も決めず、心の中をかすめていく 「風の言葉」 だけを頼りに、とりあえずエンジンキーを捻る。

 当然、無計画な旅につきもののハプニングが生じる。

 それが 「名物の海鮮どんぶりの売り切れ」 であったり、 「祭りで道路の通行止め」 であったり、 「予約が必要だった渡し船」 であったりするのだが、そのときの 「ヤラレた!」 感こそが、旅のだいご味であり、平板な旅程にピリっとしたスパイスをきかせてくれる…というのだ。

 私なんかが書くと、 「日常から非日常へ」 などという味気ない抽象語を使ってしまうところを、著者は 「海鮮どんぶりの売り切れ」 という具体例で語りかける。
 たぶん著者の頭の中にひらめいた架空例だと思うけれど、イメージが鮮明で分かりやすい。

 ローカル線のわびしい風景写真に添えられたそんなキャプションには、次のような一文が添えられていた。

 「ひなびた風景を気の済むまで眺め続ける。これは最高のぜいたく」

 何気ない一言だけど、都市の景観に慣れてしまった旅人の気持ちを巧みに表現していると思う。

 「 “何もしない旅” がテーマとして成立するのが車中泊」
 …というようなレトリックも、一連の文の流れの中で拾ってみると、説得力がある。

 著者はさらに、こう語りかける。
 「ローカルフードがブームだが、ガイドブックに載っているような店に行っても、観光客が多くて、味も量も都会向けになっている。
 その土地のホンモノの味は、地元の人しか行けないような場所にある」
 
 そんな場所を探す旅も、いざとなったら車中泊できるマイカーでいけば安心…というわけだ。
 …だけど、読んでいてハッと思った。

 なんのことはない。
 このような旅の楽しみ方は、昔からキャンピングカー販売店やメディアがいい続けてきた 「キャンピングカーの旅」 そのものではないか。

 ところが、私がその本を買ったアウトドアコーナーには、車中泊本は10冊以上あったというのに、キャンピングカーの旅を紹介するノウハウ本というのは、ひとつもなかったのだ。

 これでは、 「キャンピングカーの旅」 と 「車中泊しながらの乗用車の旅」 というものの連続性・共通性を意識しない読者がどんどん増えていくのかな…という気もした。

 もちろん、両者はまったく同じようには語れない。

 キャンピングカーショップの中には、マナーやモラルの観点から、 「道の駅」 や 「サービスエリア」 のような公共の駐車スペースを宿泊場所として使うことを全面的に推奨していない店もある。

 というよりも、キャンピングカーというのは、 「道の駅」 や 「サービスエリア」 だけで使うのはもったいないクルマなのだ。

 キャンピングカーは、もちろんミニバンやセダンとは比べモノにならないくらい、しっかりと寝られる本格的ベッドを完備したクルマだが、 “寝るため” だけに造られたクルマではない。
 緑に恵まれたキャンプ場などで、野外に椅子やテーブルを引っぱり出し、大自然の息吹をしっかり呼吸できるようにも造られている。

 さらに、車内で調理もできる車種もあるし、個室トイレを備えた車種もある。
 中には温水シャワー機能を備えたものもある。
 旅先で豪雨の中に閉じこめられても、1日中、車外に出ることなく楽しめるクルマがキャンピングカーだ。

 そういう部分があるために、われわれキャンピングカーの周辺で生きている人間は、ついつい 「車中泊族」 を、 「キャンピングカー予備軍」 のように考えてしまうクセが抜けないのだが、今回 「車中泊本」 を読んでいて、ちょっと考えを改めた。

 「これはこれで、新しい楽しみ方なんだな…」 と思ったのだ。
 …というのは、車中泊ではことごとくスキルアップを要求されるということに気がついたからだ。

 たとえば、 「クルマの中で寝ることを甘く考えてはいけない」 と書かれている。

 乗用車のシートは、凹凸があるために、リクライニングさせてもフルフラットにはならない。
 そのため、その凹凸部分に余分な衣類やクッションを詰め込んで水平出しをしなければならないが、さらにフルフラットなベッドを作りたかったらホームセンターで売っているエアベッドを買って…うんぬん…と書いてある。

 「ああ、コツとワザがいる世界なんだ」 と改めて思った。

 趣味の世界というのは、コツとワザ…つまりスキルが要求されて、それがアップしていくときの達成感があってこそ成り立つ世界である。

 乗用車による 「車中泊」 では、ベッドメイクひとつがもう趣味の領域に入り込んでいるとも考えられる。
 これはこれで、凄いことなんではなかろうか。
 ふと、そう思った。

 キャンピングカーは、ベッド展開をすればたいていフルフラットベッドになるので、 “シートの凹凸に衣類を詰め込む” という発想を必要としない。
 つまり、そういう部分の 「スキルアップ」 は要求されない。

 だから、完璧なベッドを最初から持つキャンピングカーは、 「ベッドができあがった!」 という喜びとは無縁の乗り物であったかもしれないのだ。

 さらに 「車中泊本」 には、 「荷物の積み込みにもテクニックが要る」 と書かれている。
 どのような荷物を、どういう順番でパッキングするか。
 その手順をしっかり把握しておかないと、狭くて暗い車内で、いざ寝ようと思ったときにとっちらかる。
 だから、智恵と工夫を凝らし、事前にしっかりとイメージトレーニングしろという。

 逆にいうと、そこには、上手なパッキングのワザを会得するときの喜びというものがある。

 小型のバンコンや軽ベースのキャンピングカーなら荷物の収納に小ワザを要求されることもあるが、居住性が豊かなキャンピングカーの場合は収納スペースがあらかじめ豊富に用意されているので、荷物の積み込みにさほど神経を使う必要がない。
 その分、荷物をうまく積めたときの達成感というのは、車中泊の人たちよりも薄いかもしれない。

 乗用車の中で寝る場合、当然、夏の暑さや冬の寒さも問題となる。
 ボディに断熱材が入り、ある程度、暑さや寒さをやわらげることのできるキャンピングカーボディに比べ、普通のミニバンやセダンは、車内と車外を仕切るのは、熱伝導率の高い鉄板とガラスだけ。

 その中で寝るというのは、キャンピングカーの快適さを知っている人たちからすれば、 「ご苦労様…」 と、つい一言出てしまうぐらい大変に思えるのだが、 「車中泊本」 には、しっかりと暑さ・寒さ対策も書かれている。
 
 それは、たかだか暑さしのぎの 「熱冷ましシート」 だったり、寒さしのぎの 「保温マット」 や 「シュラフ」 であったりするのだが、状況において使い分けるコツなどもしっかり指導されているので、組み合わせを試しながら、少しずつ自分なりのノウハウを身に付けられるようになっている。

 この点も、特に、断熱効果の高いキャブコンなどのユーザーにとっては、あまり縁のない世界だ。
 ましてやFFヒーターなどを付けた車種ならば、一般的なキャンプ場で冬季キャンプをしていても、まず寒くて寝られないような夜を知らないだろう。

 私はもうキャンピングカーの快適さに身体も心も慣らされてしまったので、真夏や真冬に、乗用車の中で寝ようとは思わない。

 しかし、乗用車で 「車中泊」 する人たちにとっては、ホームセンターやカーショップで売っている身近なグッズを組み合わせて暑さ・寒さをこらえるノウハウを身につけることも、ひとつの喜びになるのかもしれない。

 同時にそれは、モノを選んで買うという楽しみにもつながる。
 それも、ホームセンターや100円ショップで間に合うものが大半を占める。
 キャンピングカーに付加するオプションパーツは、高機能だが高価なものが多い。旅の途中にホームセンターに寄って、簡単に買えるようなものでもない。

 ところが、乗用車の 「車中泊」 の場合は、さまざまな “便利グッズ” を素人の目で選んで、手軽に買えて、失敗しても買い直せるという気楽さがある。

 そう考えると、それはそれで完結した “遊び” なのだ。

 キャンピングカー業者の人たちは、ともすれば、車中泊派がキャンピングカーへ移行していくときの “ハードル” のひとつとして、車両本体の価格差を挙げる。

 もちろん、その部分はそうとう大きいだろう。
 しかし、それだけではなく、一見 “不便な” な乗用車を使い、工夫を凝らして寝る場所を作るということ自体が、もう立派な 「遊び」 になっているとしたら、キャンピングカーの 「快適さ」 ばかり強調しても、それを魅力的に思ってもらえるかどうか…。

 だとしたら、 「車中泊」 の安価で手軽な 「遊び」 に対し、キャンピングカー業者さんたちが、どれだけキャンピングカーならではの 「遊び方」 をプレゼンできるかどうかが、販売を伸ばすカギになるだろう。

 こいつは、ひょっとして大変な仕事かもしれない。
 しかし、それはきっと、やりがいのある仕事に違いない。


campingcar | 投稿者 町田編集長 00:55 | コメント(8)| トラックバック(0)

RVの将来的展望

 秋の 「名古屋キャンピングカーフェア」 を取材してきた。
 この時期のショーというのは、来年2月の幕張ショーの前哨戦という感じだ。
 目を見張るような新機軸を打ち出した 「新車」 というものはない代わりに、次の時代のマーケットをリサーチする意味を込めた “前衛” 的な役割を持ったクルマが多い。

 構想はまだ開発陣の頭の中にとどめているものの、その “匂い” のようなものを漂わせて、来場者の反応を確認する。
 そこから良い感触が得られれば、構想段階にある新車開発にも励みがつく。
 逆に、反応が鈍ければ、そこから練り直しの機会を得る。
 そういう実験的な提案を潜ませているような車両開発の段階なので、メディア受けするネタとしてはインパクトに欠けるかも知れないけれど、ある意味、そこからは、そのビルダーの思想の原型のようなものを感じ取ることができる。

 そのうちのいくつかは、このブログで紹介していきたいと思うのだけれど、「まだオフレコで…」 と念を押されたものもかなりある。
 ネタはいっぱい仕入れたけれど、そのうちの核心に部分は、もう少し時間をズラして公開してみたい。

 で、今日はまだ名古屋ショーの画像を整理していないので、キャンピングカーの実車の話とは関係ない話ね。
 ゴメンネ。

 しかし、キャンピングカーの未来像というものに関して、実はしっかりした手応えを感じたことは事実だ。

 今、自動車産業全体が大きな構造的転換を遂げようとしていることは、さまざまな情報源からひしひしと伝わってくるが、キャンピングカービルダーたちの中にも、そのような流れを敏感に感じてアクションを起こしている人たちもいる。

 「まだ構想段階なので…」
 ということなので、具体的なことは書けないが、あるビルダーの開発者は、ガソリンエンジン車からEV (電気自動車) などに転換を遂げようとしている自動車産業の将来を見据え、すでにパワーユニットが転換した後のキャンピングカー構想に着手しているということを語った。

NHKスペシャル自動車革命

 折りしも、今日のNHKスペシャルを観ていたら、 『自動車革命』 というタイトルで、 「スモール・ハンドレッド 新たな挑戦たち」 というシリーズの2回目を放映していた。
 それによると、今アメリカや中国、インドなどで電気自動車を開発・生産している小メーカー (スモール・ハンドレッド) がものすごい勢いで伸びているという。
 
 中国進出を狙っている日産自動車の幹部が、そのような中国の町工場で造られた電気自動車に試乗してみたところ、 「自動車としての完成度はけっして高いものではないが、EVならではのトルクとか加速感においては目を見張るものがあり、あなどれない存在だ」 と驚いたとか。

 何よりも、航続距離が300㎞という数値がすごいという。
 もちろんそのためには大量のバッテリーを搭載することが前提となり、そうなれば車重は2トンを超える。
 そのようなEVが、そのまま実用化される見通しが立つのかどうか分からないが、なにしろ中国はEV開発には欠かせないリチウム電池の元になるリチウムの資源が豊富。

 資源大国という地理的条件を背景に、中国のEVが世界マーケットに進出してくる可能性はきわめて高い。
 このようなEVは、パーツ点数もガソリンエンジン車の10分の1ですむから、今までの車両開発のノウハウをさほど必要としない。

 番組では、それを 「既存の大手メーカーが自動車開発に携わる時代の終焉」 と捉えていた。
 
 内燃機関からバッテリーへという自動車のパワーユニットの転換は、私たちが考えている以上に、ひょっとして早いのかもしれない。
 なぜなら、アメリカの投資家筋が、すでにそこに新たなビジネスチャンスを見出して、早くもEV開発に関わる利権の網の目を張り巡らせようとしているようなのだ。

 問題は、自動車のパワーユニットが転換するというだけにすまないことだ。
 グーグルでは、電気自動車が各家庭の動力源となる時代を見据えているという。

 これは 「スマートグリッド (賢い電力網) 」 という考え方で、たとえば太陽光発電などでつくられた電力が余ったときはEVにため込み、逆に電力が必要なときはEVから住宅に送り込むというもの。
 EVが住宅の蓄電池となって、電力の自給自足に大きな役割を果たすというものらしい。

 要するに、自動車が単なる移動手段以上の役割を負わされる時代が構想されているのだ。
 NHKスペシャルのナレーションは、それを 「産業革命以上の人類史における大革命」 と表現する。

 そのような時代に、キャンピングカー業界も、否が応でも巻き込まれる時代が来ているのかもしれない。

 あるビルダーの開発者の一人は、 「EVならば、何もメーカーの供給するベース車に頼ることなく、自分たちでも造れないことはない」 と言い切った。

 中国で、わずか創業6年の歴史しかない町工場の電気自動車が、日産自動車の開発する電気自動車と張り合う時代だ。
 けっして無謀な構想ではないのかもしれない。

 実際に、EVが収益の柱に育つのは2020年頃だといわれている。
 あと10年はかかりそうだが、自動車ジャーナリストの多くは、この流れは確定的だといっている。

 自動車が大きく変ろうとしている時代。
 その動きに、キャンピングカー業界もけっして遅れをとっていない。

 関連記事 「EVの現在と未来」



campingcar | 投稿者 町田編集長 22:53 | コメント(4)| トラックバック(0)

トイファクトリーがグッドデザイン賞を獲得

《 同社のソーラーシステムに社会が注目 》

 民主党政権が誕生してから鳩山首相が唱えた 「温室効果ガス排出量の25%削減」 が話題を呼んでいる。
 今のところ、産業界からの反発も一部あるようだが、海外の政治指導者やメディアはこれを高く評価しているようだ。
 いよいよ世界的な規模で、地球の温暖化を防止する声が高まる時代が来たといえよう。

 すでに乗用車メーカーは、ハイブリッドカーや電気自動車などの量産化を進めており、大きなストライプで環境保全へのステップを踏み出している。

 キャンピングカー業界でもその方向性をいち早く先取りし、開発車両に二酸化炭素 (CO) の排出量低減を目指したエコシステムを積極的に採り入れてきたメーカーがある。
 日本のトイファクトリーは、世界的な規模でみても、その問題に最も真摯に取り組んできたメーカーの一つに違いない。

 同社は、これまでも自動車のエンジンから排出されるCOの低減を意図して、ヒーター/エアコンの使用を抑えるための 「断熱対策」 を心がけてきたが、今年になってからは、独自のソーラーシステムを開発することで、クリーンエネルギーの確保を追求してきた。
 それにより、アイドリングストップ、燃費向上、COの排出量低減が実現され、同社のキャンピングカーは、業界でもひときわ先進的な試みが追求されたクルマであるという認知を受けてきた。

トイファクトリーソーラーシステム01

 その同社が開発したソーラーシステムが、このたび財団法人日本産業デザイン振興会による 「グッドデザイン賞」 を獲得。同社が進めてきた環境対策技術に、より一層社会的な注目が集まることになった。

グッドデザイン賞マーク09

《 フォルムと一体となった新デザイン 》

トイファクトリーソーラー車02

 キャンピングカーには電気が不可欠だ。
 各種照明、電子レンジ、テレビ、冷蔵庫、冷暖房などの恩恵に授かりたいときは、いずれも電気の力を借りることになる。
 ところが、その電気は、バッテリーに蓄電されたものしか使用できない。
 再度蓄電して使用するとなると、エンジンを作動させてベース車のオルタネーターから発せられた電力をサブバッテリーに蓄電するか、もしくは発電機などに頼るという方法しかなかった。

 ところが、それらは、基本的には車両のアイドリングに頼るか、発電機のエンジンを駆動することによって電力を得る方法なので、騒音と環境汚染がつきまとってしまう。
 キャンプ場でAC電源を引くといっても、それも基本的には重油を焚いて得られる電力なので、大きな目でみれば、化石燃料を燃やすことによって得られる電気であることには変わりがない。

 トイファクトリーが開発した 「ハイエース用ソーラーパネルアタッチメント&システム」 というのは、太陽エネルギーを採り入れることによって、化石燃料を燃やすことなく、クリーンでかつ継続的な燃料供給を実現した発電システムのことをいう。

トイファクトリーソーラー車02

 キャンピングカーにソーラーパネルを取り付ける発電システムは、これまでも採用例があるが、従来のものは四角いソーラーパネルをそのままルーフに載せただけのもので、空力特性も悪く、無骨感の漂うものでしかなかった。

トイファクトリーデザイナー01
 ▲ トイファクトリーのデザイナーたち

 同社のソーラーシステムは、このソーラーパネルの搭載を前提としたエアロフォルムを企画段階からデザインしたところが違っている。

 これにより、ソーラーパネルを積んでいるのかいないのか分からないほど自然なフォルムが実現されたばかりでなく、キャンピング車としての構造要件や機能を効率よく満たすためのトータルデザインが完成している。同社のハイエースが 「グッドデザイン賞」 の対象となったのも、そこのところが評価されたからにほかならない。

トイファクトリーデザイナーたち

 このソーラーシステムは、ベース車両のオルタネーターとソーラーパネルの両方から充電ができる 「ハイブリット充電システム」 になっているところに特徴があり、エンジン停止中も、ソーラー発電によってキャンプ装備用のサブバッテリーと、車両のメインバッテリーの両方に充電できるようになっている。

 日中太陽が出ていればどこでも発電し、絶えずバッテリーに充電しているので、夜間に電気を使用しても、それが枯渇する不安から解放される。

トイファクトリーソーラーシステム03

 トイファクトリーでは、このソーラー発電システム一式を自社で活用するにとどまらず、他社のキャンピングカーにも標準装備できるようにして、キャンピングカー全体の 「無公害電力供給」 を目指している。

《 キャンピングカーも地球との調和が必要 》

 同社の藤井昭文社長は、こう述べる。

 「地球温暖化による異常気象が頻発する中で、社会は今、豊かさを保ちながら地球と調和する新しいライフスタイルを考える時期に来ています。
 キャンピングカー製作も例外ではありません。
 地球環境保全のために行動が求められる今、トイファクトリーは、暮らしの豊かさを満たしながら自然環境にも配慮することをテーマとしてソーラーシステムを開発してきました。
 そして、開発のスタート時点から私たちスタッフにあったのは、製品に結実させたデザイン性と機能性を、業界の枠を超えたステージで発表し、アピールしてみたいという思いでした。
 その絶好の機会として選択したのが今回のグッドデザイン賞へのチャレンジです。
 幸いにも、われわれのルーフソーラーシステムは1次審査、最終審査をクリアし、グッドデザインエキスポでの一般公開を経て、グッドデザイン賞授賞の栄誉をつかむことができました。
 ここに至るまでに、私たちは、明日の開発につながる多くのことを学ぶことができました。
 チャレンジすることで、スタッフの士気も大いに上がりました。
 そしてそれこそが、今回のグッドデザインチャレンジで得た最高の成果だったと考えています」

 このエコシステムの開発により、車両のアイドリングストップやCOの排出量低減が実現されたばかりでなく、ユーザーにとっては燃費向上、消費電力の節約など、数々の経済効果を得ることになる。

 京都議定書に掲げられた目標年の2012年に向けて、全ての企業に温室効果ガス削減努力が求められる時代になった。
 キャンピングカー業界でも、それに向けた車両が開発され、さらに、それがグッドデザイン賞を獲得した意義はきわめて大きい。


campingcar | 投稿者 町田編集長 15:17 | コメント(2)| トラックバック(0)

転換期に立つRV

関西キャンピングカーショー

 「関西キャンピングカーショー2009」 に行ってきました。
 そこで気づいたことは、ミニチュアダックスフンドの多いこと。

 隣りの館でペットショーが開催されていため、そちらから流れてきたお客さんも多いせいか、会場には犬連れ来場者の姿がいっぱい。
 よく見ると、犬種としてダックスフンドが多いのです。
 「大阪はダックスの町だな」
 …と、妙に感心してしまったのです。

 帰って来て、カミさんにそう言ったら、
 「あなた、去年も同じことを言っていたわよ」
 と指摘されちゃいました。

 ま、うちで飼っている犬がミニダックスなので、ついつい同じ犬種に目がいってしまうのでしょうね。

クッキー幼少期01

 同じ犬種でも、犬はよく見るとみな違った風貌をしています。
 それぞれの飼い主にはみな見分けがつくのですが、あれだけ同じ種類がいっぱいいると、中には似た顔同士のワンコも出てくるんですね。 

 そんなとき、飼い主たちが、リードをベンチの脚かなんかにつないで買い物したりしたときに、ふと、隣りの犬を間違って連れて行ったりしないかしら。

 会場にあれだけ人間が多いと、犬だって、飼い主の顔とか匂いをはっきり区別するとは限りません。

 犬は犬で、 「あれ、うちのご主人…こんな顔だったっけ? こんな匂いだっけ?」
 と、半信半疑に別の飼い主の家まで帰り、
 「なんか家の様子が違うな…。引越しでもしたのかな…」
 などと思いながら、まぁ、それでもお互いに平和に、つつがなく新しい生活を始める……。

 そんなことって、あり得ないでしょうかね。

 ……さて、少し文体を変えて、ちょっとショー会場で感じたことをレポート。

大転換期を迎えたRV業界

 キャンピングカー (RV) 業界は、今、奇妙な戸惑いの中にいる。
 とてつもない 「鉱脈」 にぶち当たったのに、それを、どう掘り進めればいいのか。
 その手前で、焦燥とも、興奮ともつかぬ胸騒ぎの中で、途方に暮れているような気がする。
 今回のキャンピングカーショーで、いろいろなビルダー・販社の方々と話しているうちに、そう思った。

 日本RV協会 (JRVA) が発表した08年度の販売状況を見ると、あの原油価格の高騰、世界的金融危機という逆風の中で、国産キャンピングカーに限っていえば、昨年度の販売台数は、その前年よりも上回ったのだ。
 乗用車販売が4年連続の前年比割れを起こしていたことを考えると、これは驚異であるかもしれない。

 しかし、その内実を見ると、不思議な現象が起きている。

 「8ナンバー以外のクルマが売れている」

 つまり、法的に 「キャンピングカー」 として登録しなくてもよいクルマが、昨年は飛躍的な台数を伸ばし、それがキャンピングカー登録のできる従来の “8ナンバー車” の販売的な落ち込みをカバーしたのだ。

 具体的にいうと、シンク (流し) の存在やベッド寸法などの規定において、キャンピングカーの “定義 = 構造用件” にとらわれないクルマが、昨年から今年にかけて、大きな売れ筋として浮上してきたのである。
 それも、その主力は小型車。

 これは、4ナンバー登録の軽自動車キャンパーが増えたことで顕著になった傾向でもあるが、それ以外のベース車でも、ダウンサイジング傾向は見られる。 
 ハイエースでいえばスーパーロングではなく、ロングワイドやナローボディのクルマだ。

 今、比較的コンスタントに売れているこれらのクルマは、ワゴンライクなシートレイアウトを持ち、簡単な操作で荷室スペースも広くなり、トイレ、冷蔵庫、流し、コンロなどにこだわらない小型のキャンピングカーなのである。

乗用車ベースキャンパー室内01
▲ 乗用車ベース (バン) の簡易キャンパーの室内

 この “説明” は、ある意味で、簡単である。

 つまり、通勤、買い物、ドライブ、キャンプなどマルチにこなすファースカー・コンセプトのクルマが求められる時代になった…というもの。
 裏を返せば、キャンプ専用のキャンピングカーと、日常的に使う乗用車という 「2台保有」 を前提としていた所有形態が、この経済不安が長く続く時代において難しくなってきたということを意味する。

 さらに、もうひとつ考えられることは、ここに来て、裾野が一気に拡大したことだ。
 従来ならば、 “高額商品” というイメージが先行していたために、その購入をハナから考えてもいなかった人々が、軽自動車キャンピングカーや低価格キャンピングカーの存在に気づき、にわかに興味を持ち始めたという事情もある。

軽自動車キャンピングカー
▲ 軽自動車キャンピングカー

 その底辺の広がりが、売価の高い高規格キャンピングカーを求めない人たちの層も厚くした。
 多くの人々の分析は、そこに集約される。

 しかし、そのような説明ではすべてを解明できない、何か新しい変化が起きているように思えるのだ。

 まさに地殻変動のような大きなうねりが起こり始めているのかもしれない。
 そうも思うのだ。

 あるビルダーの社長は、こう言った。

 「今年のゴールデンウィークにテレビを見ていたら、レポーターが高速道路のサービスエリアで、行楽のために車内で寝泊りしていた人々を取材していた。
 そのとき驚いたのは、レポーターが 『車中泊』 という言葉を、何のためらいもなく使っていたことだ。
 『車中泊』 という言葉は、日常用語の中に浸透してきたとはいえ、まだまだそれを “趣味” としていた人々の間に定着した言葉だと思っていた。
 しかし、すでにマスコミは、 『車中泊』 という “ライフスタイル” が存在することに気づいたのだ」

 この社長の驚きはよく理解できた。
 確かに、ワンボックスワゴン、ミニバン、ステーションワゴンあるいは普通のセダンを利用して、高速道路のSAや 「道の駅」 で寝泊りする人たちが激増していることは、相当前からキャンピングカー業界では話題になっていた。

 事実、書店に行くと、 「車中泊」 のノウハウを解説した雑誌、ムック、単行本はすでに新しいコーナーを形成しているし、ネットで 「車中泊」 関連のワードを検索すると、ヤフーで約300万件。
 すでに、 「クルマの中で寝泊りしながら旅をする」 という旅行スタイルが、日本ではしっかり定着してきたことが分かる。

 彼らは “キャンピングカー予備軍” なのか。
 それとも、キャンピングカーユーザーとは永遠に交わらない人々なのか。

 ビルダーの首脳陣が集まる会議などでは、そんな議論もなされてきた。

 たいていの場合、キャンピングカーを購入できるお金が貯まれば、その人たちはキャンピングカーのマーケットに参入してくるという意見が大半を占めるのだが、一方では、 「いや、あれはキャンピングカー的な使い方とはまったく別のライフスタイルを目指す人々だ」 と語る業者さんもいる。

 今のところ、キャンピングカーの構造用件を満たす必要のない小型バンコンの出足が目立つところを見ると、前者の意見の方がマトを射ているように思える。
 一概にはいえないが、それらのクルマは装備品目もレイアウトもシンプルで、その分コストを下げて、売価を抑えている。
 つまりは、現在 「車中泊」 を楽しんでいる人たちのニーズにかなった仕様が実現されたもので、キャブコン、バンコンともに、そういう車種をリリースするビルダーが増えている。

キャブコン01
▲ キャブコン

バンコン01
▲ バンコン

 しかし、あるビルダーの開発者はいう。

 「それで本当にいいのだろうか…。市場が求めるものを造っていくのはビルダーの責務で、そうしなければ食べていけないのも事実だが、これまで積み上げてきたキャンピングカービルダーとしてのスキル、技術的成果といったものが、ほとんど試されない時代になってしまったようにも思う」

 日本のキャンピングカー業界は、ここ10年ぐらいのうちに、欧米先進国とは違ったスタイルの高度な 「RV文化」 を創造してきた。
 そこで造られてきたクルマは、みないかにも日本的な細かい配慮に裏打ちされた、洗練された 「日本様式」 のようなものを確立しつつある。

 だから、ビルダーたちの本音は、 「車内で寝るため」 に特化した “骨組みだけ” のクルマではなく、自分たちの秘術を十分に発揮した “肉付けのある” クルマを正当に評価してほしい、というところにある。

バルミィメイン01
▲ 高規格型バンコン

 ところが、 「車中泊」 というライフスタイルが大きくせり出してきたことによって、従来のキャンピングカー・コンセプトも、大きな修正を迫られそうな空気も生まれた。

 その傾向が、今後のトレンドとしてそのまま定着していくのか。
 それとも、さらに、そこからもっと進化したキャンピングカースタイルというものが発展していくのか。

 多くのビルダーは、確実に売れていく簡易キャンピングカーと、自分たちの技術成果をはっきり謳える高規格キャンピングカーとの狭間 (はざま) に立って、奇妙な戸惑いを感じている。

 私は、こう思う。
 どちらも、アリなのだ。

 戸惑っているのは、実は、ビルダーだけでなく、一般乗用車で 「車中泊」 を楽しんでいる人たちも、また同様に戸惑っているのだ。
 つまり、業界もまたユーザーも、新しく生まれてきた 「車中泊」 という旅行スタイルをどう確立していくのかということに対し、その明確な答を持っていないことにはおいては変りがない。

 そのようなライフスタイルが、この先どういう 「旅行像」 を形成するのか。
 それによって、日本のレジャー産業がどう変るのか。
 また、公共の駐車スペースを利用した場合のマナーとかゴミ問題はどう処理されるのか。

 すべては未知数である。

 だから、このまま手をこまねいていれば、それは既成の観光産業を破壊することにもなりかねないし、旅行のモラルやマナーを低下させることも起こりうる。
 しかし、逆にいえば、新しい観光産業の育成に多大な貢献を果たし、新しい旅行ルールを確立することにもつながる。

 そのような大きなテーマが、やがてマスコミでも採りあげられる時代が来るだろうが、そこでキャンピングカー業界が果たす役割は大きい。

 つまり、 「車中泊」 を “文化” として高めることができるかどうかは、キャンピングカー業界が、今後どのようなクルマを造っていくかにかかっている。
 
 確実にいえることは、 「旅とは何だ?」 というテーマにしっかり答を出したキャンピングカーだけが生き残る。

 構造用件を満たしていない簡易キャンパーだろうが、高い技術水準に満たされた高規格キャンピングカーだろうが、 「旅とは何だ?」 、 「旅することによって何が実現できるのだ?」 という問をいったん深く沈ませ、そこから力強く浮上する哲学を持ったクルマだけが生き残る。

 「何か新しい変化が起きている」
 といった意味は、そのような哲学が必要となる時代が訪れたという意味だ。

 では、その 「哲学」 とは何か。

 ある簡易キャンパーを開発したスタッフは、こう言った。

 「このクルマは、2人しか寝られない。 “2名就寝” といえば、今までは夫婦という単位で考えられることが圧倒的に多かった。
 しかし、このクルマは、男親と息子で乗ってほしい。
 男親が、息子に何かを伝えるという精神風土が日本から消えている。
 古い道徳律を持ち出してベタな説教をしても、もう子供たちはそれを聞く耳を持たない。
 だから、父親が無言で運転してもいい。
 そして、たとえば、釣りのポイント近くで車中泊をして、朝には、黙って息子にも釣竿を渡し、自分が釣り糸を垂れる姿を見せるだけでいい。
 その無言のやりとりこそが、実はしっかりした 『会話』 であることを伝えるのが、このクルマだ。
 だから、ある意味で、お母さんも入れた三角形構造の “家族” を拒否するクルマでもあるのだ」

 挑発的で、大胆な発想である。
 しかし、これもまた、ひとつの 「旅の哲学」 に違いない。
 そして、そのような説明を聞けば、確かに目指すべきコンセプトがそのクルマからにじみ出ていることが分かる。

 また、別のビルダーの開発者は、こう言った。
 こちらは、かなり造り込んだクルマである。

 「運転席とリビングは、ウォークスルーできないように仕切ってある。
 リヤゲートを開けても、そこから車内には簡単に入れないように、わざと後ろ側にも壁を作っている。
 つまり、 “便利さ” を追求することとはまったく逆行したクルマである。
 これが常識に反していることは、自分でも自覚している。
 しかし、そのことによって、自動車の “匂い” から完全に解放された一種の 『リゾート空間』 が生まれた。
 旅が日常性からの解放であるならば、キャンピングカーもまた、自動車から解放されなければならない」

 これも 「哲学」 である。
 
 このビルダーは、そのようなコンセプトが常識とかけ離れていることも自覚して、前後の壁を取り払った普通のレイアウトもレスオプションで用意した。
 しかし、それは杞憂(きゆう) に終わった。
 購入したほとんどのユーザーは、ビルダーの 「哲学」 を支持したのである。

リコルソ2

 「車中泊派」 が、キャンピングカーユーザーの予備軍になるのか、ならないのか。
 そんなことを審議していても何も始まらない。

 「このクルマに乗ったら、何が実現できるのか」
 それを明確にコンセプトメイクできたクルマが、結果的に、 「車中泊」 という新しい旅行スタイルを求める人たちの大鉱脈を掘り始めることができる。
 

campingcar | 投稿者 町田編集長 23:55 | コメント(10)| トラックバック(0)

日本のRVの歴史

 日本に、いつ 「キャンピングカー (RV) 」 なる乗り物が登場し、それがどのように発展していったか。
 それをまとめる仕事を始めて、2年が経過してしまった。

 決してのんびり構えていたわけではないのだが、いろいろな人に取材をして、それを原稿にまとめ、その内容が正しいかどうか再度チェックしてもらうという手順を踏まえていると、ついつい時間がかかってしまう。

 この間、取材させていただいた人々は20人以上に及ぶ。
 今も現役のビルダーの社長さんとして活躍されている人もいれば、すでにリタイヤされて、のんびりと余生を楽しんでおられる方もいる。
 ハンドメイドのキャンピングカーを造り続け、業界とは関係ないところでキャンピングカーの発展に寄与された方もいる。

 「当時のことはおぼろげながら覚えているものの、詳しいことは忘れてしまった」
 という人も多い。
 そういう場合は、年表や資料にも目を通してもらい、じっくりと時間をかけて思い出してもらう。

 なにしろ、国産初のキャンピングカーというものが生まれたのは、1950年代 (昭和30年代) のことだから、今から60年も前のことになる。
 その国産初のキャンピングカーに乗られた方は、すでに亡くなられており、その周辺で活躍され、そのデータを保存されている方々ももう60代~70代という歳になる。

エスカルゴ号001
▲ 国産初のキャンピングカーといわれる 「エスカルゴ号」

 「町田さんがこの資料をまとめておかなければ、貴重な証言が保存されないまま終わるところでしたね」
 取材させていただいた人の中には、そう励ましてくれる人もいた。

 乗用車の歴史をまとめるなら、各メーカーに資料が残っており、データを保存する公的機関もある。
 しかし、個人が手作りでキャンピングカーを造ってきた歴史の長い日本では、それを統括してまとめようとした機関もなく、当然、資料も少ない。
 実作に携わった人たちの証言だけが、唯一の貴重なデータとなる。
 最初は雲をつかむような状態だった。

 それでも、いろいろな証言が蓄積して、縦糸に横糸が絡まるように、徐々に立体化されてくると、おぼろげながらも 「日本のキャンピングカー史」 が浮かび上がるようになった。

 面白い発見がいくつもあった。
 日本のキャンピングカーは、60年代の後半から70年代のはじめに、ひとつの大きな盛り上がりを見せたにもかかわらず、石油ショックのせいで一気にしぼんでしまい、再び興隆するには10年のラグがあったことも分かった。

 その “空白の10年” を支えたものは、ひとつは、個人が自分の乗りたいものを好きなように造ったハンドメイドキャンピングカー。
 そしてもうひとつは、内装・外装をにぎやかにドレスアップしたバニングだった。

 日本のキャンピングカーは、この両者が絡み合い、刺激しあいながら発展してきたのである。
 そして、それらのクルマに、ひとつの理想像を与え、完成度を高めさせたのが輸入キャンピングカーだった。
 
 本書では、それらに携わるヒーローたちが登場する。
 たぶんその人たちが、日本のキャンピングカーを発展させた伝説の人物として記録されることになるのだろうし、そうあってほしいと思いつつ原稿を進めた。

 だから、堅苦しい表現はできるだけ避けて、そういう人たちの熱い思いがそのまま伝わるように、会話形式を重視した。

 「あれは、はっきりとは思い出せないんだけど、たぶん…」
 というような話し方になったときは、その言葉をそのまま使って臨場感を出すように工夫した。
 スタジオ録音ではなく、ライブの感覚。
 そのナマっぽい空気を読みとって、
 「面白かったから一気に読んでしまった」 と言ってくれた人もいた。
 
 すでに9割方のテキストを書き終え、今はその手直しと写真や資料の整理に取りかかったところだ。
 これが発表されるのは秋になると思うが、いまだに上手いタイトルが浮かばない。

 読んでくださった方の中には、 「物語」 という言葉を入れた方がいいという人もいれば、 「キャンピングカーというより、広い意味でのRVの歴史」 と謳った方がいいという人もいる。
 誰もが、 「自分の歩いてきた道のりが、ひとつの資料として後世に残ることを楽しみにしている」 という気持ちを抱いていることだけは伝わってきた。

 しかし、自分はこれを “プロトタイプ” だと思っている。
 この資料が刊行されることによって、ここに登場しない方々からも、さらなる証言や新事実が寄せられることになるだろう。
 そのような声をもう一度収録し、より完成度の高い資料としてまとめあげたときに、ようやく、どこに出しても恥ずかしくない “量産型” の資料が生まれるように思う。

 資料が完成して公開されたあとは、このブログにおいても、少しずつ連載するような形を取りたい。



campingcar | 投稿者 町田編集長 21:36 | コメント(2)| トラックバック(0)

金持ちの贅沢品?

アルファ室内01

 前回のブログで、 「キャンピングカー」 という言葉に代わる言葉として、 「RV」 というのはどうよ?
 …という話を書いた。

 それについて、これまたキャンピングカー業者さんの話なんだけど、 「賛成!」 という人に会った。

 この業者さんは、 「女性の感性に訴えるキャンピングカー」 という路線を戦略的に追求されている業者さんだったが、やはり 「キャンピングカー」 という言葉を使うと、 「誤解される場合が多い」 というのだ。

 どういう誤解かというと、 「キャンピングカー」 という言葉自体に 「高額商品」 というイメージがつきまとってしまい、なかなかその先入観が払拭されないという。

 だから、たとえば主婦たちの集まりで、ある奥さんが 「うちはキャンピングカーを買ったの」 などといえば、
 「ええ!? リッチねぇ」
 「贅沢ねぇ!」
 …という、賛辞とも嫉妬とも取れる過剰な反応を呼び起こし、そのあと、影でこそこそっと 「あそこのうちは、お金持ちよねぇ」 とか言われてしまうことが目に見えているので、うっかり 「キャンピングカー」 という言葉は使えない…という主婦がけっこういるんだそうだ。

 まぁ、人気のプリウスが190万円、200万円などと話題になっている昨今、キャンピングカーはその2倍ぐらいの価格帯のところに集中しているクルマが多いので、確かに “高額” という印象を伴うのは事実。

 しかし、車種によっては200万円台、300万円台のものもあるし、就寝機能、荷物の収納機能、炊事機能、断熱性など、トータルに 「快適な旅」 を実現するためのクルマとみれば、決してベラボーに高額なクルマではないのだ。

 ところが、一般的に 「キャンピングカー」 というと、それだけで1千万円越えの高級車として受け取られることが多く、平均的な価格帯はそれよりはるかに安いのに、なかなかその事実が浸透しない。

 この不況下においては、 「贅沢者はねたまれる」 という風潮が横行しているため、誰もが 「お金持ちである」 という誤解を受けたくないという心理を募らせている。
 たとえお金を持っていても、 「人に見られる生活レベルはひたすら質素に」 というのが今の庶民感覚だと、その人は語る。

 つまりは、主婦たちの集まりで、うかつに 「キャンピングカー」 という言葉を出せないところに、今のキャンピングカーが口コミとして広がっていかない理由のひとつがある、という話になった。

 「キャンピングカー」 という言葉自体が 「お金持ちの贅沢品」 と取られるのは、キャンピングカーの利便性やそれによって得られるライフスタイルの変化を考えると、はっきり言って誤解である。

 その誤解を解くためには、いろいろなキャンペーンを展開して、キャンピングカーの金額というのは本当はリーズナブルなものであると広報していくやり方もひとつあるだろう。
 しかし、 「キャンピングカー」 というイメージが、一般的に 「お金持ちの贅沢品」 と思われる風潮が根強いならば、言葉そのものを見直す必要も出てくるかもしれない。

 「RV」 と言い換えることは、個人的には無難かな…と思っているけれど、皆さんはどうですか?


campingcar | 投稿者 町田編集長 22:32 | コメント(4)| トラックバック(0)

RVってどうよ?

アメリカのRVリゾート01

 最近、キャンピングカーを販売している業者さんたちと話すときに、ときどき出てくるテーマのひとつに、
 「キャンピングカーって言葉に代わるものはないか?」
 というのがある。

 つまり 「キャンピングカー」 というと、 「ああ、キャンプするためのクルマね」 と短絡的に受け取られてしまい、キャンプそのものに興味のない人にそっぽを向かれるというのだ。

 ある販売店の人が、キャンピングカーとは関係ないイベント会場で、無差別に 「キャンピングカーに興味ありますか?」 と来場者に尋ねたところ、5人に2人が、 「俺、キャンプファイアーやバーベキューなんかしないもん」 と答えたという。

 要するに、 「キャンピングカー」 という響きから、キャンプファイアーやバーベキューしか連想しない人はいまだに多く、そういう人に限って、 「キャンプ」 というと、山に入ってタキギを集めたり、テントの周りに穴を掘るものだと思い込んでいるという。 

 確かに、キャンピングカーには、キャンプをするために適した装備を持つものが多い。
 しかし、今キャンピングカー業者さんたちが扱っているキャンピングカーというのは、キャンプだけでなく、普通のドライブも十分こなせるし、広い意味で  「旅をするクルマ」 になっている。

 そこのところをキャンプに関心のないお客さんにどう理解してもらえるか。
 それが、一部の業者さんたちの悩みのタネになっているらしい。
 彼らの話を聞いていると、 「キャンピングカー」 という言葉に、自分たちの扱うクルマのカテゴリーを十分に表現していないという “もどかしさ” を感じているという思いが伝わってくる。

 考えてみると、 「キャンピングカー」 という言葉を使うのは、世界の中でも日本だけである。英語文化圏でも 「キャンピングカー」 という言葉が通じるという人もいるが、用語としては、普及も定着もしていない。
 北米文化圏で、日本のキャンピングカーに相当するものを表現するときは 「レクリエーショナル・ビークル (RV) 」 を使うし、ヨーロッパではトレーラーを 「キャラバン」 、自走式を 「モーターキャラバン」 と呼び、いずれも 「キャンプ」 という概念に縛られてはいない。

 クルマに生活設備を積んで、野山で遊ぶことを先に覚えた欧米人に比べ、日本ではオートキャンプ場が整備されてからキャンピングカーが市販されるようになった。
 日本のキャンプ文化の礎が築かれようとしていた時代は、オートキャンプの発展に貢献した人たちと、キャンピングカーに関心を持つ人たちが重なっていたので、キャンプをより便利に楽しく経験するためのツールとして、キャンピングカーという存在はごく自然に認知されていった。

 しかし、欧米においては、キャンピングカーは必ずしも 「キャンプ」 だけを目的としたクルマではない。それは広い意味で、 「旅行のためのクルマ」 である。
 彼らも旅の宿泊場所としてはキャンプ場を使うのだが、キャンプ場そのものが、日本のキャンプ場とはひと味違っていて、キャンプそのものを目的とした場所というよりも、 「自動車旅行のための宿泊施設のひとつ」 という位置づけがなされており、建設される場所も、場内整備も、自動車旅行を前提とした造りになっている。

 私は、最近の日本のキャンプ場というのは、欧米並みの 「宿泊施設」 という条件を立派に満たすものが増えてきたと感じる。場内にお風呂や食堂を備えたところも多くなり、ひと昔前のキャンプ場が持っていた 「汗くさい」 「泥だらけになる」 というイメージとはかけ離れたスマートなキャンプ場が増えたと思う。
 しかし、ある人に言わせると、
 「それは町田さんがキャンプ場を知っているからですよ」
 ということになる。

 「キャンプ場を知らない人からすると、キャンプというのは虫やヘビが寄ってきても気にしない、タフな精神を持つ野人趣味の遊びに過ぎず、難行苦行をいとわない人たちのレジャーと思われてしまうんですよ」
 と、その人は語った。
 そして、結論として 「キャンピングカーという言葉は、野人趣味を持つタフな人たちの “暑苦しいクルマ” と思われがちだ」 という話になった。
 
 だからといって、キャンピングカーを別の言葉に置き換えようとしたとき、果たして何がいちばん適切なのか。
 その有効な答はない。

 「レジャーカー」
 「ピクニックカー」
 「プレジャーカー」
 などという言葉を唱える人もいるが、これほどまでに定着した 「キャンピングカー」 という言葉に、今すぐ取って代わるようにも思えない。

 そのことに気が付いた日本RV協会さんは、もう10年くらい前から 「旅ぐるま」 という言葉を考案して、それを普及させようとした。
 しかし、10年経った今も、キャンピングカーを 「旅ぐるま」 と言い換えている人は少ない。

 だったら、いっそのこと、北米風に 「RV」 といってしまうのはどうか。
 「RV」 という言葉は、レクリエーショナル・ビークル (recretional vehicle) の略で、 「休暇・楽しみのための自動車」 という意味を含み、バンコン、キャブコン、トレーラー、モーターホームすべてを包含する。
 まさにキャンピングカー業者さんの求める概念にぴたりとハマり、この言葉なら、欧米のみならず、世界に通用する。

 実は、キャンピングカーを欧米流に 「RV」 という言葉で表現しようという考え方は前からあった。
 しかし、それが定着しなかったのは、日本では、 「RV」 という言葉がランクル、パジェロなどのSUVやステーションワゴン、ミニバンを表現する言葉として定着し、本来の 「RV」 という概念からズレてしまっていたからだ。

 しかし、1990年代に流行ったような “RVブーム” も一段落し、 「RV」 という言葉から、クロカンタイプのSUVを連想する人たちも、だいぶ高齢化した。今やファミリーレジャーに使う乗用車としては、 「ミニバン」 という言葉の方が主流になり、今ちょうど 「RV」 という言葉が宙に浮き始めている。

 「RV」 という言葉の本来の意味を取り戻すのは、今がチャンスのような気がする。
 そう思いませんか?
 日本 “RV” 協会さん。

 関連記事 「RVって何のこと?」

campingcar | 投稿者 町田編集長 11:09 | コメント(6)| トラックバック(0)

RV千差万別時代

東京CCショー01

 東京・江東区のビッグサイトで開かれている 「東京キャンピングカーショー」 を取材してきた。
 といっても、今回は、あまりクルマを取材していない。
 1日中ぐるぐると会場を回ったが、ほとんど来場者にインタビューしただけだった。

 「何を目的にこのショー来たのか?」
 「キャンピングカーを買うなら、何を優先順位のトップに掲げるか?」
 「今乗っているキャンピングカーを選んだ理由は何か?」
……等々、来場者が “キャンピングカー” というものに何を求め、何を期待して、何を実現できたのか。それを尋ねて回った。

 実に面白かった。
 いやいや、答は千差万別。
 それぞれ、微妙に 「キャンピングカーに求めるもの」 が違う。

 これでは、キャンピングカーのトレンド調査というものが、うまく成り立たないわけである。

 キャンピングカーでいちばん大事な要素として、ある人は 「サイズ」 だという。車庫事情や取り回しを考えると、コンパクトで小回りの利くクルマでないと、購買の対象にならないという。

 別の人がいうのは、 「車内の居住性」 。
 いかに広く、いかに快適に過ごせるか。それが大事。

 旦那さんが、 (カムロード系の) トラックベースの四角い感じがカッコいいといえば、隣りにいた奥さんは 「トラック顔はいや」 という。

 キャンピングカーを買ってから、キャンプ場に行かなくなったという人もいあれば、逆にキャンピングカーを買ってキャンプに興味を持ち、少しずつキャンプ用品を買い揃えるようになった、という人も。

 トレーラーに乗っている人は、 「トレーラーが最高!」 というし、バンコンユーザーは、それを選んだメリットを得々と話す。
 しかし、輸入モーターホームを買っている人は、それでなければ楽しめない遊び方をいろいろと話してくれる。

 話を聞いていると、それぞれみな理屈がしっかり通っており、どんな意見もいちいちうなずける。

 なのに、統計的な答を出そうとすると、ばーんらばら。
 
 これはどう考えればいいのか?
 キャンピングカー文化が熟成期に入ったのだな…と思う。
 
 「こういうクルマを買ったら、こう遊べ」 という押しつけが、もう通用しない時代が始まっているのだ。
 キャンピングカーを持っている人もまだ持っていない人も、それぞれ自分なりの 「使い方のイメージ」 というものをしっかり確保していると感じた。

 ある意味で、今までのトレンド分析などが意味をなさない、新しい文化が生まれてきているように思う。 

campingcar | 投稿者 町田編集長 23:47 | コメント(0)| トラックバック(0)

東京ショー迫る

 今週末の25日 (土) ~26日 (日) 、東京ビッグサイト (東京都・江東区) で 『第5回 東京キャンピングカーショー』 が開かれる。

09東京キャンピングカーショー告知ポスター

 第5回といっても、このビッグサイトにおける開催は今回がはじめて。前回までは味の素スタジアム (東京都・調布市) で行われていたからだ。
 東京で開かれる夏のキャンピングカーショーとして始められた同イベントも、年々知名度が上がり、出展台数も増えて、来場者数も多くなってきた。会場が味の素スタジアムからビッグサイトに変更になったのは、ショーの規模が拡大してきた状況を反映したもの。

 ここしばらく厳しい状況下に置かれてきた自動車業界も、ハイブリッドカー人気にけん引されて息を吹き返してきた感じだが、キャンピングカー業界も、小型キャンピングカーを中心に好調な販売を持続している。

 今回のショーに出展されるキャンピングカーの台数は昨年を上回る106台。元気のよい国産キャンピングカーのほか、最近は出展台数が減少傾向にあった輸入車も、アメリカ、ドイツ、フランス、オーストラリアといった幅広い国々の名品がそろう。

 詳しくは、同イベントのホームページを。

 http://www.campingcarshow.com/

 今回のHPは実に緻密な構成になっていて、会場マップ、アクセス、出展者のデータ等がことこまかく明記されている。たとえば 「出展者一覧」 に関しては、すべて各出展者のHPまでリンクが張られ、展示車両の概要が一目で分かるというほどの徹底ぶり。

 この緻密な運営ぶりを見ていると、今後同ショーは幕張ショーと並ぶビッグイベントのひとつになっていく気もしてくる。


campingcar | 投稿者 町田編集長 20:58 | コメント(0)| トラックバック(0)

キューブ2発表会

キューブ2ルームHPより

 先だって、このブログでも紹介した 「キューブ2ルーム」 。
 その記者発表会が日産プリンス東京販売 (東京都・品川区) で開かれたので、行ってきた。
 キャンピングカー専門誌の記者たちも含め、一般誌の報道陣もつめかけた充実した発表会だった。

 このクルマのコンセプトはこのブログでも紹介したし、日産プリンス東京販売のHPにも掲載されているので、ここでは省くけれど、招待されたメディアの反応は上々。
 「ひょっとしたらボンゴフレンディのオートフリートップが出たときのような反響を呼ぶのではないか」 と予測する人もいた。

 今の時代、コテコテのキャンピングカーとはまた違った、このようなライト感覚の “寝られるクルマ” を求める層がすごく増えている。
 その層が、どれだけこの 「キューブ2ルーム」 に反応するのか。
 また、日産プリンス販売とピーズフィールドクラフトが、そういう層にどのような広報活動を行っていくのか。
 非常に興味のあるところである。

 訴求力の高い商品というのは、やはり開発・設計に携わったスタッフの熱い思いがどれだけ投入されるかにかかっている。
 言葉でいうと当たり前のように聞こえるけれど、少し突っ込んでいうと、開発者が、
 「このクルマを造ることによって、どういう世界が生まれるのか」
 というイマジネーションの広がりをどれだけ持てたかどうかで、その商品の “夢” の部分が決定される。

 キューブ2ルームのポップアップ部を製作している 「キャンカーサービス」 の星野社長に、話を聞くことができた。

 星野さんは、日産ピーズフィールドクラフトからの依頼を受けて、ルーフやテント部を実作しているときに、
 「これに乗ったとき、携帯電話の電波の届かないところに行く気になるかどうかがカギだと感じた」
 という。

 面白いことをいう人だと思った。

 現在のわれわれの日常生活では、携帯電話という文明の利器が欠かせない存在になっている。
 それが手元にないと、不安に駆られる人の方が多いだろう。
 しかし、それは逆にいうと、携帯電話が、現代人の生活のリズムをがちがちに縛ってしまったということを意味している。

 しかし、人間には、仕事や規則的な日常生活からちょっとだけ離れ、流れる雲や波のうねりを、ただひたすら虚心に見つめていたいと思うことがある。

 「そういうときに、このクルマで出かけ、ポップアップしたルーフ部に上がって自由な時間を満喫してもらえれば、造った方もうれしい」
 と、星野さんはいう。

 携帯電話から離れたいときは、電源をオフにすればいいのだけの話だけど、それでも電波が届く範囲にいれば、やはり落ち着かない。

 やはり、すべての事柄から完全に 「魂」 をオフさせるには、電波の届かない場所を探すということ自体に意味があるのだとか。

 「このポップアップが開いた空間というのは、本来 (のオリジナルキューブに) はなかった空間なんですね。
 しかし、今度そこにまったく新しい空間が生まれたわけです。
 そこを、どう活用するか。
 たぶん、うまく活用できた人がいれば、そこに新しい自分が生まれていることも実感できるのでは…」
 と星野さんはいう。

 確かに、ポップアップしたルーフに登れば、目線が変わる。
 目線が変わるということは、意識も変わるということだ。

 文筆家の堺屋太一さんは、かつてモンゴル高原を旅したとき、馬に乗って大平原を移動した。
 そして、徒歩や自動車で移動するときの低い目線から離れ、乗馬という高い目線を獲得することで、世界が驚くほど変わって見えることを実感する。
 そのとき、モンゴル人が 「世界征服」 をイメージできた秘密もまた理解できたとか。

 星野さんが、 「新しい世界が生まれる」 と語った意味は、たぶんそれに近いことなのだろう。

 キューブ2ルームのテントは3方向に広い開口部を持っている。
 そこから見た海や山の景色は、きっと体験した人に新しいイマジネーションを与えてくれることだろう。

campingcar | 投稿者 町田編集長 20:16 | コメント(0)| トラックバック(0)

タコスの4B登場

 2009年度も、いつのまにか後半戦。
 夏のキャンピングカーを使った行楽シーズンを控え、各社の新車開発も活発になってきた。
 7月中旬に開かれた 『アウトドアフェスティバル in 信州』 では、タコスさんのブースから初のオリジナルバンコン 「4B」 がデビューした。

4B外装01

 キャッチは 「ウッディ&ブラック」 。

 落ち着いた茶系の木工家具と、一部に本革を用いたブラックシートが、このクルマのインテリアを彩るメインコンセプトだ。

4Bセカンドシート02 4Bコンソール03

 開発者の田代社長によると、追求したかったイメージは、
 「太くて、黒くて、柔らかい」 。
 まさに鉛筆の4Bのイメージ。それがそのまま 「4B」 という車名になっている。
 さらに、「B」 という名称には、ボーイズ、ブラック、ビューティフル、ビーチなど、日に焼けた男の子が元気にアウトドアを楽しむ情景が重ねられている。

4Bリヤビュー04

 そのコンセプトを見事に裏付けるように、リヤゲートを開けると、自転車、小型バイクなどを積めるラゲージスペースが登場。
 遊びのギアを搭載した状態でも寝られるように、2段ベッドもしっかり装備されている。

4B2段ベッド05

 室内は簡単な操作でコの字ラウンジを組むこともできるので、大人数でテーブルを囲んだパーティも可能。ベッド展開すると、長さ3450mm、幅1750mmのフルフラットベッドが誕生する。

 ターゲットユーザーは、ずばり熟年になってもハーレー・ダビッドソンを愛するような 「フォーエーバーヤング」 な人々。

 遊びのギアを積んで、アウトドアを楽しむのもよし。
 小粋に街乗りに使ってもよし。
 気の合う仲間とパーティを開くのもよし。
 マルチに使える万能キャンパー。

 大人になった今も、BOY'Sだった頃の夢を持ち続ける人たちへのメッセージが込められたクルマだ。

4Bダイネット06

 ベース車はハイエース・スーパーロング。
 お値段は、ガソリン特装車 (2WD・4АT) で、3,937,500円 (税込み) から。


campingcar | 投稿者 町田編集長 20:47 | コメント(0)| トラックバック(0)

キューブ2ルーム

 日産キューブって、面白いクルマである。
 カタログでは 「やんちゃで、愛らしい」 と謳っているけれど、トヨタbBのような “悪にいちゃん” の感じはしないし、若者志向のデザインを強調するわりには、不思議とレトロな味があって、近未来っぽい造形とクラシカルなテイストが同居している。

 そんな複雑系デザインのキューブの味わいをさらに先鋭化させた新型バージョンが追加された。
 オリジナルキューブにポップアップルーフを設けた 「キューブ2ルーム」 である。

キューブ2ルームpop外装01 

 …といっても、これをリリースしたのは 「日産ピーズフィールドクラフト」 。
 日産車をベースに数々のキャンピングカーを開発してきた架装メーカーだが、今回の 「キューブ2ルーム」 のコンセプトメイクの徹底ぶりと仕上げの緻密さをみると、日産自動車のラインから流れてきたメーカーメイドの追加バージョンといってもおかしくはない。

 なんといっても、こだわりが凄いのだ。
 オリジナルキューブには、「自然のなかで憩う」 というイメージを追求するために、室内の天井トリムに波紋状の模様が採り入れられている。
 このキューブのアイデンティティともいうべき “波紋デザイン” が、なんと架装したポップアップルーフの天井にも再現されているのだ。

キューブ2ルームpop天井

 「何もそこまで…」 と思ってしまうのだが、「キューブ2ルーム」 の開発スタッフに言わせると、
 「とにかくノーマルキューブのコンセプトをまったく損なうことなく、その機能部分を高めるというのが、このクルマのテーマ。キューブを気に入っているお客さんが、ちょっとでも違和感を感じたら、もう失敗だと思っていた」
 …という。
 そのために、ルーフ高もオリジナルより8㎝だけ高いサイズ内に収め、ルーフ形状においても、ノーマルキューブのルーフをそのままダウンサイジングしたような自然な感じを大切にしたという。

キューブ2ルーム外装02

 このポップアップルーフを持ったキューブの狙いは何なのか?
 開発を担当した日産ピーズフィールドクラフトの畑中一夫常務に聞いてみた。

ピーズ畑中氏01

 「これは、日本で初の “寝られるコンパクトカー” なんです」
 と畑中さんは言う。

 「ポップアップルーフを持つ軽自動車ベースのキャンピングカーは、確かに、しっかり市民権を得て活躍しています。
 しかし、軽自動車より少し大きなものとなると、とたんにワンボックスカーになってしまうんですね。今までは、その中間を埋めるものがなかったんです。
 しかし、このキューブ2ルームは、ワンボックスカーよりは取り回しの良いコンパクトカーのジャンルに収まり、かつ軽自動車よりは1ランク上の走行性能を発揮する “寝られるクルマ” なんです」

 エンジンは、直列4気筒DOHC1,498cc。
 最高出力80kW (109ps) /6000rpm。
 最大トルク148N・m (15.1kg-m) /4400rpm。

 軽自動車に比べると、その動力性能の差は歴然とする。

 「だから、乗っていてストレスがない。足回りも、前のキューブに比べるとより熟成してきて、路面の食いつき感が増した。
 走っていて楽しいというのが、このクルマの大きな特徴のひとつですね」
 と、畑中さんはいう。

 肝心のポップアップルーフの構造はどうなっているのか。

 「開き方は、前ヒンジの後ろ開き。ベッドスペースは縦2m。横1m15㎝。大人2人が余裕で寝られる寸法です。
 テント素材はネオプレイン。この素材だと加工が難しいのですが、3方に大きな開口部を設け、風通しの良さと視界の確保に全力を注ぎました」

キューブ2ルームpopリヤ外装01 キューブ2ルーム上段ベッド01

 テント柄は水色基調の迷彩デザイン。
 この柄も、今までのポップアップルーフでは見なかったもの。キューブの斬新なフォルムに合った柄を選んでいるうちに浮かんできたデザインだという。

 どういう人たちが、この 「キューブ2ルーム」 を必要とするのだろうか。 
 それについて、畑中さんはこういう。

 「寝られるのはあくまでも2人。だから、カップルを対象としたクルマなのですが、普通のキャンピングカーのように、必ずしも“夫婦ふたり”を意識したものではないんです。
 僕のイメージとしては、親父と息子なんてのもアリですね。
 親父が、小学生くらいの子供を連れて、趣味の釣りを教えるクルマとかね。
 最小回転半径は4.6mで、無類に取り回しがいい。
 だから、どんな狭い道も苦にしない。
 リヤにアイスボックスや釣り道具なんか積んで、前の晩から仮眠し、早朝から親父と息子で釣りを楽しむなんて最高じゃないですか。
 もちろん、シニア夫婦の2人旅というコンセプトは十分満たしているし、逆に若い恋人同士でもいい。
 要は、キャンピングカーは大きすぎて、取り回しに負担を感じる。
 …かといって、軽自動車ではエンジン性能にちょっと不満がある。
 そう思っている人たちにはピッタリのクルマではないかと…」

キューブ2ルームFF&サブB キューブ2ルーム運転席

 基本設定は、あくまでも “ノーマルキューブ + ポップアップルーフ” だが、オプションとして、サブバッテリー、FFヒーターなども用意されている。
 セカンドシートを倒せば、かなり広いラゲッジスペースが生まれるので、遊びのための荷物を車内にしっかり収納したまま (上で) 寝られるというのが、このクルマの最大の魅力となっている。

キューブ2ルームリヤゲート

 お値段は、ベースグレードの15Sで、198万円 (税別) 。

 ゆったりくつろげるイメージを追求して、そのデザインコンセプトを 「ジャグジー」 に求めたというノーマルキューブ。
 それのポップアップ版は、ジャグジーの上に 「展望デッキとベッドスペース」 を追加したという感じか。 

キューブ2ルームpop内側 

 関連記事 「キューブ2発表会」   


campingcar | 投稿者 町田編集長 12:08 | コメント(3)| トラックバック(0)

09ガイドの評判

 新しく出た 『キャンピングカースーパーガイド2009 』 。
 なかなか評判がいいようだ。

09CSguide表紙

 …といっても、「贈呈」 という形で送った関係者からの感想なので、悪く言うはずはないのだが、その人たちから送られたメール、電話、ファックスなどでは、
 「いい本になったね」
 と、すべての方から一応の評価をいただいた。

 お世辞だな…と分かっていても、やっぱりうれしい。

09CSガイド見開き01
 
 なお、全国の書店で、10冊規模で置いて下さる書店さんは、下記の通りです。
 もちろん、これ以外の書店さんでも、1冊から3~4冊という規模で扱ってくれています。

【東京】
中央区/八重洲ブックセンター
千代田区/有隣堂秋葉原
千代田区/三省堂有楽町店
お茶の水/丸善お茶の水
豊島区/リブロ池仕入
渋谷区/紀伊國屋南店
渋谷区/紀伊國屋渋谷店
渋谷区/有隣堂恵比寿
玉川/紀伊國屋玉川店
新宿区/紀伊國屋本店
江東区/紀伊國屋豊洲店
品川区/未来屋品川店
品川区/有隣堂目黒店
町田市/有隣堂町田
立川市/オリオンルミネ
立川市/オリオンノルテ

【北海道】
札幌市/CF美しが丘店
札幌市/CFミュンヘン
札幌市/CF新川通り店
札幌市/Rなにわ


【東北】
仙台市青葉区/丸善アエル店

【関東】
千葉市/三省堂SOGO
千葉市/未来屋マリンピ
高崎市/未来屋高崎店
前橋市/紀伊國屋前橋店
越谷市/未来屋レイク店
流山市/紀伊國屋流山店
越谷市/未来屋レイク店
さいたま市/紀伊國屋埼玉店
横浜市/有隣戸塚モデ
横浜市/東口有隣堂
横浜市/有隣堂本店
横浜市上大岡/八重洲ブックセンター京急
横浜市/西口有隣堂
藤沢市/藤沢有隣堂

【中部】
浜松市/未来イオン市野
名古屋市西区/フタバTワンダ
西春日井郡/紀伊名古空港店
岡崎市/未来イオン岡崎

【関西】
木津川市/未来屋高の原
摂津市/西日本DC
大阪市/旭屋なんばCI
都島区/紀伊國屋京橋店
北区/旭屋本店ビル

【中国・四国】
福山市/啓文社PP店

【九州】
福岡市/紀ゆめ博多店
福山市/フタバA福山本
佐賀市/紀伊國屋佐賀店
熊本市/蔦屋書店三年坂
鹿児島市/ミスミオプシア
那覇市/宮脇沖縄本店

 アマゾンでも紹介されています(↓)。
 下記をどうぞ。

 『 キャンピングカースーパーガイド2009 』

 足を運んだ書店さんで見つからなかった場合は、アマゾンからもご購入になれます。

 よろしくお願い申しあげます。

campingcar | 投稿者 町田編集長 12:33 | コメント(2)| トラックバック(0)

09ガイドの発送

09CSguide表紙

 朝、会社に 「キャンピングカー スーパーガイド2009」 の発送用分がトラックで納品されました。
 広告を出稿いただいたり、原稿の校正もお手伝いしていただいたりと、いろいろお世話になったキャンピングカー業者さんに、掲載見本として発送する分です。

 約140冊。
 昼過ぎから、それを封筒に詰め、宅配便のシールを貼って、梱包作業にとりかかり、今ようやく宅配便業者さんに引き取ってもらったところ。

 インスタントコーヒーのカップを下げて、デスクに戻り、
 「ふぅ…」
 と一息入れて、ようやくブログを開いています。

 毎年、この作業が終わると、
 「ようやく手を離れた…」
 という心境になります。

 それにしても、最後の校正を終えて、印刷・製本にかかる日数が3週間。
 今年はゴールデンウィークが中に入ったとはいえ、だいぶ時間がかかってしまいました。
 でも、電話やメールで、
 「新しいガイドが発売されるのはいつですか?」
 と、読者の方々から聞かれるたびに、
 「ああ、待って下さる方がいらっしゃるのだな」
 と、うれしくなります。

 重い本の束をあちこち運びながらの作業で、腰に疲労が溜まってしまい、今はちょっと虚脱状態なんですが、明日から、また新しいスタートです。


campingcar | 投稿者 町田編集長 20:10 | コメント(5)| トラックバック(0)

5月15日に発売

 皆様、お待たせしました。
 今週5月15日 (金曜日) は 『キャンピングカースーパーガイド 2009』 の発売日です。
 ただし、15日というのは配本日…すなわち書籍が書店さんに届けられる日ということなので、早ければその日のうちに書棚に並びますが、確実なのは16日 (土) 以降かもしれません。

09CSguide表紙

 編集部特選の “お薦めキャンピングカー” だけは、見開き2ページを使って、詳細に報告していますが、それ以外のキャンピングカーも、 「1車種をきっちり1ページで紹介していく」 という基本コンセプトは例年と同じです。

09CSガイド単ページ01 09CSガイド単ページ02

 ただ、今回は本のサイズを変えて、横幅をА4ワイド版に広げたので、見開き2ページでは写真スペースも拡大されて、より迫力が増しました。

09CSガイド見開き01

 また、 「文字が小さくて読みづらい」 というお声を頂戴したこともありましたので、今年は文字の大きさを拡大。老眼鏡を必要としている方々にも、目に優しい誌面構成を考えました。

 基本的にどのキャンピングカーも、開発担当者から直にコンセプトを聞き、その開発の狙いや自信のほどを記録した詳細なメモを基に記事構成されています。
 また、編集部が重きをおく特徴的なポイントは、 「編集部はココを見た!」 というコーナーで採り上げています。

 画像に関しても、編集部で撮った画像だけでなく各ビルダーさんが用意している画像も同時にチェックさせてもらい、同じ角度のものでも、情報が正確に伝わるような方をチョイスしています。

 さらに、装備品目やオプション品目に関しては、キャンピングカーを扱うショップさんにPDFファイルをお送りして確認を取ってありますので、完璧な情報精度を誇るデータになっています。 

 また、巻頭特集のページでは、
 「自社のキャンピングカーを通じて何を実現したいのか」
 というテーマで、取材中に印象に残った話をされた方々のインタビュー集をまとめました。
 大げさにいうと、“開発哲学” ですね。

09CSガイド巻頭特集人々01

 今やキャンピングカーは、 「便利で楽しいビークル」 という概念を超えて、利用者の美意識や人生設計にまで影響を与える重要なアイテムにまで成長するようになりました。

 この特集では、そういうテーマに自覚的になって開発に臨んだ方々の談話を、なるべく “話の勢い” が通じるように、生きた会話のスタイルで収録してみました。

 また、もう一つの巻頭特集では、昨年レンタルモーターホームでアメリカ西南部を回ったときの印象記をまとめてみました。

09CSガイド巻頭特集2
 
 乗用車でモーテルや都市部のホテルで泊まるのとは違った、キャンピングカーを使った旅行で感じたアメリカ西南部の “素顔” 。
 そこに現れた大地と空だけで構成される 「むき出しの自然」 を眺めていただき、キャンピングカー旅行の原点を感じてもらえれば幸いです。

 巻末特集では、日本RV協会さんからのご依頼をいただいて広報誌を制作させていただいている関係上、今年もその内容を転載しています。

 テーマは 「RV世界会議」 。

 日本のRV (キャンピングカー) が、現在世界のRV業界からはどのような評価を得ているのか。
 また、日本人のRVライフは、世界の人々のRVライフと比べてどのような特徴があるのか。
 そのような詳細データは今まで日本になかっただけに、まだRV協会さんの広報誌を読まれていない方には興味深い読み物になっているのではないかと思います。

 価格は、なんと1890円 (消費税込み) 。
 “大幅” とはいえませんが、昨年の2,100円より若干下げて、お求めやすい定価設定になるよう企業努力いたしました。

 今週末は、ぜひ書店さんを訪ねてみてください。
 本書を置いてある有力書店さんのリストは入手でき次第、ここでも公表したいと思っています。


campingcar | 投稿者 町田編集長 19:14 | コメント(2)| トラックバック(0)

5月15日発売!

 『キャンピングカースーパーガイド 2009』。
 5月15日発売となりました。

09-guide
 
 当初のもくろみよりは、ちょっと発行が伸びてしまった理由は4月19日のブログにも書きましたが、伸びたから安穏としていられると思ったら、やっぱり結構きつかった。

 というのは、 「どうせ伸びるなら…」 と、けっこう欲張って掲載件数なども増やしてしまったんですね。

 そうしたら、…なんのことはない。
 やっぱり締め切りギリギリじゃありませんか。

 でも、まぁ、いい本になったかな…。
 画像がみんなきれいなんですね。

 ちょっと秘密があります。

 うちにはレタッチ&画像加工の名人がいて、昼間の明るさを、間接照明の映える夜の室内に。
 逆に、窓の外の暗さは、陽光あふれるアウトドアの世界に…なんてことが朝飯前のスタッフがいるんですね。
 
 だから、写真を選んでから、
 「窓の外を公園にする」
 なんてメモしておくと、
 ……ひゃあ! 窓の外には人混みばかり溢れるショー会場の写真などが、そよ風吹き抜ける芝生広場に変わっていたりするわけで。

 全部の写真にそのような加工しているわけではないのですが、イベント会場で撮った写真で、窓から車内を覗き込んでいるお父さんの顔が消えて、緑の植え込みが広がる公園になっていたりする写真はけっこうあります。

画像修正前001 画像修正後002 
▲ Before              ▲ After

 それにしても、デジタル時代の画像加工はすごいところまで来ましたね。
 「あの写真がこんなになっちゃうのかぁ…」

 校正刷りを見ているだけで、けっこうこっちも楽しめます。



campingcar | 投稿者 町田編集長 10:30 | コメント(0)| トラックバック(0)

新ショップ速報

 昨日の18日から今日の19日にかけて、日本各地でキャンピングカーを販売する新店舗が続々オープンしました。
 これだけ集中的に、新しい店舗が開店するというのも、近年はなかったこと。
 この業界、なかなか元気なようです。

 もちろん、今回発行する 『キャンピングカースーパーガイド 2009』 には、どの情報もしっかり載っています。

 今日は大サービス!
 発行される前ですけど、出し惜しみせずに、その収録記事の一部を抜粋して紹介してしまいましょう。
 
 昨日オープンしたばかりだというのに、記事では、
 「早くも地元のキャンピングカーファンの間では憩いの場となっている」
 なんて書いてあるお店もあります。
 「明るく、爽やかな展示場の室内には…」
 とかね。
 実際に、現場取材もしていないのに、さも “見てきたかのような” な記事を書くわけですから、編集者って、ウソつきですね!


 ええ、では、…この18日ではないのですが、4月4日にオープンした 「AtoZ鈴鹿店」 の記事から。

AtoZ (エートゥゼット) 鈴鹿店

三重県鈴鹿市磯山3-10-3
TEL.059-367-7373 / http://www.atozcamp.com/
定休日:毎週水曜日 / 営業時間:10:00~18:00

AtoZ鈴鹿店01

《 中部、近畿、阪神方面からもアクセス良好 》

 新名神高速道路の草津田上IC~亀山JCTが開通したために、京都、神戸、大阪北方面からのアクセスが一挙に便利になった鈴鹿地方。
 この地方の発展性を見込んだかのようなタイミングでオープンしたのが、AtoZのこの鈴鹿営業所だ。
 電車の便にも恵まれた場所で、近鉄名古屋線の磯山駅から徒歩で5分。国道23号線に面していて分かりやすい。
 品揃えはアミティ、アーデン、アレンなどといったオリジナルの人気商品が中心となるが、バンテック新潟やオートショップアズマ、ビークルの車種も展示される。

《 アクセス 》

 東名阪自動車道の鈴鹿IC、もしくは亀山ICを出て、鈴鹿サーキット方向へ。近鉄名古屋線の磯山駅が近く、駅から徒歩5分。鈴鹿・亀山ICからは車で40~50分。国道23号線沿い。

《 主な取り扱い車種 》

 アーデン、アーデンショート、アルファ、アレン、アミティ、アミティLX、アミティRRなど。バンコンではアンナ、アメリアの他、バンテック新潟のVR470、オートショップアズマ、ビークルの人気車も。


Camping Car Station (アールブィビックフット社) 函館店 & 北斗店

北海道北斗市七重浜4-40-1(函館店)/北海道北斗市七重浜5-3-1(北斗店)
TEL. 0138-49-5558 (函館店) / 0138-48-0151 (北斗店)
http://www.ccs-rv.com/
定休日: 毎週火曜日 (祝祭日の場合は営業)
/営業時間:10:00~20:00

CCS北斗店
▲ CCS北斗店

《 新しくレンタカーのショップも開店 》

 一面ガラス窓に囲まれた明るいショールームの中には、RVビックフット社のオリジナル製品がずらりと勢ぞろい。
 屋内展示場なので、冬でも快適にクルマを見学することができる。
 地方の展示場ではなかなか見ることができないバスコンが揃っていることもこの店の特長のひとつ。
 ショップ内にサービス工場が併設されているので、メンテナンスやパーツ取り付けなどを気軽に頼むことができる。
 この春からはレンタカー業務を中心に行うショップ (北斗店) もオープンしたので、北海道観光の時に利用したい。

《 アクセス 》

 函館江差自動車道・函館ICを出て、国道5号線を函館市内方向へ。函館ICから5分。フェリーターミナルからも5分。函館空港からクルマで約20分

《 主な取り扱い車種 》

 RVビックフットのオリジナル=シエル、シェリト、ザナドゥー、パラドール、グランディーネ、エポックμの2ルームやtypeXなどのバスコンを中心に、バンコンのオルベット、B&B、ビックフットμほかトレーラーのニワドーなど。


キャンピングカープラザ東京

埼玉県入間市二本木1281-2
TEL.04-2936-6635 / http://www.campingcar-rv.com
定休日: 毎週火曜日 / 営業時間:10:00~19:00

キャンピングカープラザ東京店001

《 アネックスの全商品を扱う関東の拠点 》

 アネックスの特約店である 「キャンピングカープラザ東京」 が、この春埼玉県の入間市にオープンした。
 国道16号線、青梅街道、圏央道、中央道さらには関越道と、多方面からのアクセスが良好で、気楽に見学に行くには理想的な場所といえる。
 関西を中心に活躍するアネックスの新車が関東地区でもゆっくり見られる貴重なショップとあって、早くも東京首都圏のアネックスファンの憩いの場としての評判を獲得している。
 オフィスも、アネックスの都会的なデザインセンスのキャンピングカーによく似合う洒落たもの。
 キャンピングカーにおいてはこの道20年のベテラン木村店長が、クルマ選びの相談からアウトドアライフの妙味まで、何でも楽しく応対してくれる。
 木村氏は、知る人とぞ知る野外料理の達人。特に 「スープの神様」 の異名を採る人だけに、野外料理のレクチャーを受けてみるのもまた一興。キャンピングカーの買取にも力を入れているので、優良中古を探すのにもいい。

《 アクセス 》


 圏央道の入間ICから国道16号線を八王子方面へ3.4km走ると左側に展示場。空色の 「キャンピングカープラザ」 の看板が目印

《 主な扱い車種 》

 主な取り扱い車種は、アネックスの特約店としてキャブコンのリバティLE58・LE52・FS58、FS52、ネビュラ、クラウドのほか、バンコンのリコルソ、ウィズ、ファミリーワゴン、ファミリーワゴンSタイプ、ストリート、ストリートデュオ、ウロボロス、ポケットなど。
 ほかに優良中古車の品揃えも充実している。
 またキャンピングカーの買取も行なっており、「オーナーの愛車へのこだわりをプラス査定する」 という方針で、良心的な査定を行っている。


 そのほか、この18日オープンしたショップでは、仮店舗ながら、ファーストカスタムの 「札幌ショールーム」 があります。
 こちらは屋内展示場なので、雨が降った日や、暑い日、寒い日など気候の悪い状態でも、安心してクルマを見学できるのが特徴。
 札幌市中央区南30条西11-1-13 / TEL.011-522-5215

 他に、この25日にオープンするのが、ナッツRV 「太宰府インター店」 。
 福岡県太宰府市水城2-10-1 / TEL.092-918-7272

 もちろん、この2店舗も、本誌にはばっちり収録。

 キャンピングカー業界は、この春空前の新店舗ラッシュ。
 マーケットの広がりが背景にあるということでしょうね。
 個々の店舗に関しては、実際に取材したときに、また詳しく紹介します。


campingcar | 投稿者 町田編集長 13:13 | コメント(0)| トラックバック(0)

欧州車の深い快楽

 キャンピングカーの世界では、国産ビルダーの間で、日本市場を意識した日本的なデザインを追求しようという傾向が強くなってきた。
 ようやく、日本においても、欧米的なキャンピングカー文化とは異なる日本独自のキャンピングカー文化というものが育ちつつある…という感慨を持つ。

 しかし、その一方で、輸入車の 「ディープな快楽」 というものを理解する日本人が少しずつ減っていくような寂しさも感じる。

 乗用車もそうだが、キャンピングカーも、それを造った民族の美意識、哲学、価値観などが反映されている。
 それは、ボディや家具を構成する素材や形状を分析しただけでは、見えてこないものだ。
 特にヨーロッパ車のように、長い歴史を通じて形成されてきたものは、文字どおり 「歴史」 を知らないと、本当のことが見えない。

 たとえば、本場ヨーロッパの高級キャンピングカーが持つ、あの恐ろしいような 「快楽」 というものを、まだ日本人は知らない。

 …というか、目の前に提示されても、それを理解することができない。 

 私たちのような、キャンピングカージャーナリズムで生きている人間も、ヨーロッパの高級車を見ると、いとも簡単に 「豪華」 とか 「優美」 とか 「贅沢」 などと形容してしまうが、ふと 「本当の豪華ってものを分かってんの?」 と、自分自身で問うことがある。

ホビー内装01

 たぶん、自分も十分に理解していないかもしれないが、ヨーロッパ車のゴージャス感というものは、商人資本主義以来の500年の蓄積によってもたらされたものだということぐらいは分かる。
 その場合の 「資本主義」 とは、アフリカの希望峰を超えて東洋の富をあさりに行ったり、大西洋を超えて新大陸から金銀を持ち出すという、ヨーロッパ人たちの 「略奪」 を合法化した重商主義経済のことをいう。

 ヨーロッパ先進国というのは、そのような植民地支配を通して、世界の富を強奪するようにかき集め、それによって壮麗な文化を切り開いた。
 それは、けっして誉められたものではないだろう。
 むしろ、被征服者たちの犠牲の上に花開いた “悪の文化” ともいえる。

 しかし、そのような文化には、 「血を吸った文化」 の猛々しさと眩さ (まばゆさ) があり、触れた者をトロリと誘惑する、熟れた果実のような芳香がある。
 そして、自分を大人と思える……すなわち 「偽善者」 であることを自覚した人間だけが味わえる、背徳的な悦びが隠されている。

ヴェルサイユ宮殿01

 このような華麗な資本主義文化を成立させる原動力となったものは、いったい何だったのだろう。

 マックス・ウェーバーの主張した、プロテスタント的な倫理が資本主義の精神を形成したという洞察に異を唱えた学者として、ヴェルナー・ゾンバルトがいるが、彼は、資本主義を発展させた推進力は、 「恋愛」 だと唱えた。

 つまり、18世紀になって花開いたフランス宮廷文化における華麗な 「恋愛ごっこ」 が、資本主義の勃興をうながしたというのである。

 この時代、パリのヴェルサイユ宮殿を中心に繰り広げられた貴族たちの宴では、貴婦人たちや女官たちの歓心を買うために、男たちはあらんかぎりの豪華な文物を手に入れて、女たちにプレゼントした。

 プレンゼントの品々には、全欧州の金銀細工や宝石のたぐいは言うに及ばず、東洋や新大陸の珍奇で貴重な工芸品など、ありとあらゆる世界の富がかき集められた。

 それらの金銀細工や宝石を加工する産業が各地に勃興し、ヨーロッパの製造業は著しく成長した。
 中国や日本の陶器が上流階級の家庭でコレクションされるようになると、それをヒントに、マイセンをはじめ、ヨーロッパ中に磁器工場がつくられるようになった。

マイセンの食器02

 また、貴族のファッションを構成する素材として、レース製品が欠かせないものとなり、フランドル地方のレース編みは、その緻密さと美しさを評価されて、上流階級の間で飛ぶように売れた。

 そのような文物が溢れかえった時代の 「恋愛」 とは、どんなものであったか。

 ヴェルサイユ宮殿で、歴代の王族や貴族の “恋人” として名を馳せた貴婦人たちの呼称を見れば、彼らの恋愛模様というものがよく見えてくる。

 「シャトルー公爵夫人」
 「ポンパドゥール侯爵夫人」
 「デュバリー伯爵夫人」

 みな、それぞれ夫を持つ立派な主婦たちである。

ポンパドゥール夫人肖像01
 ▲ ポンパドゥール夫人 肖像

 彼女たちは、夫を持つ身でありながら、時の権力者たちに取り入るための魅力を存分に発揮して愛人に収まり、夜毎のパーティやサロンを切り盛りして、華麗なる宮廷文化の華を咲かせた。

 貴族たちが群集うの宮廷では、 「結婚」 というものは何も意味しなかった。
 夫人たちは、それぞれ夫とは別の王侯貴族の愛人となることを当たり前のように求め、男たちは、妻とは別の貴婦人たちを当たり前のように恋人とした。
 「不倫」 という言葉すら、何の意味も持たなかった。

 人々が求めたのは、一瞬のきらめきに、すべてを託す忘我の快楽。
 あでやかな官能。
 ゲームとしての恋。

ヴーシェ絵画01

 平民の娘でも、美貌と才覚に恵まれれば、時の最高権力者の愛妾にもなれる。
 そういう筋道を、ポンパドゥール夫人がつけてからは、男女の関係は一気にアナーキーになった。

 性愛、富、権力。
 人間が快楽と感じるもののすべてが、この時代に合体した。
 フランスを中心とするヨーロッパの恋愛文化には、基本的にこのような精神が息づいている。

 かつて作家の五木寛之は、ヨーロッパ社会の中で 「F1」 というスポーツがどのようなものであるかを、こう書いた。

 「F1は、お子様連れで家族ぐるみで楽しみにゆく場ではない。あのエンジン音は、柔らかい幼児の鼓膜には良い影響を与えないはずだ。
 そこは、不倫だの、危険な情事だのと世間から雑音が入ることをものともしない人々が、愛人を連れてゆくような場所なのである」

 アンモラルな表現だが、まちがいなく五木寛之は、ヨーロッパ社会の伝統的な恋愛文化を念頭において、これを書いている。

 ヨーロッパのキャンピングカーというのも、こうした流れの中で造り上げられたものだという。

 元日本オート・キャンプ協会の専務理事を務められた岡本昌光氏は、著書 『キャンプ夜話』 の中で、イギリス国立自動車博物館に保管されているキャンピングトレーラーの第1号といわれる車両を目にして、こう語る。

 「その最古のトレーラーの室内には、貴族の応接間のような格調高い家具が置かれ、窓飾りや、カーテン、壁紙、ジュータンまでもが 『オリエント急行』 のレストランのような豪華な雰囲気を漂わせていた。
 貴族たちは、動く別荘としてキャンピングカーを使い、自分の領地の景色の良い所に置いた。
 彼らはたくさんの召使いや、給仕、料理人を使い、大テーブルには山海の珍味を並べ、美女たちを招待し、最高の酒を味わった」

 この記述を読むと、最古のトレーラーといわれるものが、フランスで華開いたロココの精神の延長線上にあることは明らかだ。
 
 その流れは今も続く。
 たとえば、ホビーのエクセルシオールの天井カーブを見ていると、まるでヴェルサイユ宮殿の天井をそのまま縮小したのではないかとすら思えてくる。

ヴェルサイユ宮殿01 ホビー内装01
 ▲ ヴェルサイユ宮殿 /ホビー・エクセルシオール

 欧州車デザインのキータームは、 「エレガンス」 である。
 これも、貴族文化の流れをくむ言葉だ。
 「優美」 「気品」 「優雅」 …などと訳されるけれど、本来は差別意識の強い言葉だ。

 恋をゲームのように遊んだロココの貴族たちは、何よりも野暮ったさを嫌った。

 「まじめな恋や、一途 (いちず) な恋というのは野暮ったい」

 だから、“まじめにならない浮気” こそがエレガントなゲームとなる。
 彼らが使う 「エレガンス」 という言葉には、そういう響きがある。

 そのような恋を楽しむ場所として、彼らは、自分たちの暮らすスペースを精いっぱいエレガントな意匠で飾った。

 その 「快楽空間」 というものが、どのようなものであったか。

 映画を例に取れば、ルキノ・ヴィスコンティの描く数々の映画に登場する人物像、その背景となる舞台、扱われる文物などに余すところなく描かれている。
 『イノセント』 や 『ルードヴィヒ』 、『山猫』 などという映画には、ヨーロッパ貴族たちが呼吸していた濃密な生活空間の空気が、見事に映像化されている。

ヴィスコンティ「イノセント」
 ▲ ヴィスコンティの 『イノセント』

ヴィスコンティ「ルードヴィヒ」
 ▲ ヴィスコンティの 『ルードヴィヒ』

 現在のヨーロッパ高級キャンピングカーを見ると、さすがにヴィスコンティの映画に出てきそうなバロック、ロココ的なケバケバしさというものは影を潜めている。

ハイマーSクラス02

 内装デザインはモダンになり、中にはSF映画の舞台ともなりそうな未来志向の室内空間を形成しているものもある。
 そして、時代のテーマを忠実に反映したエコロジーコンシャスの装備類や素材などをふんだんに投入し、爽やかで健康に満ちあふれたクルマ造りを志向しているように見える。

ハイマーSクラス04

 想定されるユーザー層は、あくまでも健全な家族であり、幸せな老夫婦。
 そこには、遊戯的な愛を交わし合ったロココの愛人たちの姿は見えない。

ハイマー03

 しかしドッコイである。
 彼らは、そう簡単に 「恋愛空間」 としてのキャンピングカーを手放してはいない。

 ときめき。
 誘惑の蜜の味。
 吐息の熱さ。

 そいつを、目立たないように、こっそりと、しかし確実に、キャンピングカーに忍び込ませている。

ハイマー06

 それは、時には、女体のくびれを連想させるコンソールボックスのアールかもしれないし、セクシーなデザインを与えられたハイネックのフォーセットかもしれない。

ハイネックフォーセット

 それらの形が、見た者をムズムズ…とさせるのは、それを考えたデザイナーにも、営業マンにも、使うユーザーにも、恋愛文化の伝統がもたらす “ムズムズ感” が分かっているからである。
 欧州高級車の 「色気」 というものは、すべてそこから放たれてくるものといえる。


campingcar | 投稿者 町田編集長 01:58 | コメント(6)| トラックバック(0)

クエスト雅

 昨年開かれた 「RV世界会議」 で、日本を代表するバンコンとして写真で紹介され、世界のRV関係者の注目を集めたクエスト。
 障子と畳という伝統的な日本文化のエッセンスを採り入れた室内造形に、欧米風のRVがスタンダードだと信じていた人たちは大いに好奇心を刺激されたという。

 そのクエストのベース車をスーパーロングからコンパクトな標準ボディに替えたのが、この 「クエスト雅 (みやび) 」  (バンテック新潟)

クエスト雅外装01

 全長・全幅が短くなった分、狭い市街地や温泉街を走り抜けるときもストレスが溜まらなくなった。
 にもかかわらず、和室空間の雰囲気はスーパーロングモデルとまったく変わらず。優雅な温泉旅館に泊まってのんびりする時の、あの落ち着き感が踏襲されている。

クエスト雅内装01大

 そのような、日本旅館でくつろぐ時の快適性を実現するために、FFヒーターから電子レンジ、インバーター、クローゼット、大型換気扇、傘立てに至るまで、すべてが標準装備されている。装備面でも手抜かりのないクルマだ。

クエスト雅内装04

 スーパーロングモデルと違うところは、セカンドシートが廃されて、代わりに機能的なキッチンスペースが設けられたこと。それによって、和室との一体感も強まり、コンセプトもより明瞭になった。
 和室部分からもアクセスできるミラー付きクローゼットがあるため、室内で着替えることも可能。掘りごたつが使える床下収納空間も広々している。

クエスト雅02

 畳と障子で構成される和室風キャンピングカーというのは、過去にも何度か試されたことがあったが、そのほとんどは実験の域を出なかった。
 しかしクエストシリーズは、まれにみる完成度を高め、見事に商品としての自立性を発揮している。
 その理由は、緻密な縦横比の計算に基づいたバランス感覚の良さと、作り込みの緻密さがものをいっているからだ。
 世界に誇れる日本のキャンピングカーが誕生したと思う。

クエスト雅照明

 お値段は。4,935,000円から

※ 『 キャンピングカー スーパーガイド 2009 』 より一部を抜粋。

 
campingcar | 投稿者 町田編集長 10:48 | コメント(2)| トラックバック(0)

手作り用キット

 ハンドメイドキャンピングカーに取り組む人が、また増えているという。
 今のように、キャンピングカービルダーがこれほど多くなかった時代。すなわち1970年代頃は、日本のキャンピングカーは、ほとんどが手作りキャンピングカーだった。

 その後、80年代から90年代にかけて、日本のビルダー数が増えていくに従って、質の高い量産キャンピングカーが安く出回るようになり、ハンドメイドキャンピングカーは一時の勢いを失っていく。

 しかし、ここのところ長引く不況の影響を受けてか、キャンピングカーを安く手に入れるために、再び自分でキャンピングカーを作ろうという人が増える傾向にあるのだそうだ。

 そんなタイミングを見計らってか、大手キャンピングカービルダーのバンテックから、200系ハイエース・スーパーロング用の手作りキャンピングカーキット 「D-BOX」  が発売された。

バンテックキット001

 なにしろ、国産ビルダーとしては、生産規模においても商品クオリティにおいても日本でトップと謳われるバンテック。
 そこが開発したキットには、どういう特徴があるのだろう。
 また、その狙いは何なのか?
 バンテックの開発部に所属する中島宇一郎さんに、話を聞いてみた。

バンテック中島氏01
 ▲ 中島宇一郎さん

【町田】  キットを手掛けるようになったのは、どういう理由からですか?
【中島】  ひとつには、キャンピングカーの普及を目指して…ということが大きいですね。
 いろいろなお客様の話を聞いていると、
 「キャンピングカーが欲しいけれど、まだお金の余裕がないから買えない」
 とか、
 「もう少しお金が貯まってから…」
 と話される方が実に多いんですね。
 そういう方々の要望に応えて、少しでも買いやすい価格帯のクルマを提供したいという気持ちは当然あるのですが、価格を抑えるにも限度があるんですね。
 特に、工賃の部分はこれが目一杯。
 …だったら、お客様に工賃をご負担いただいて、こちらは材料だけを提供するような形をとれば、お安く提供できるのかなと…」

バンテックキット002

【町田】  バンテックさんは、こういうキットの販売は初めて?
【中島】  いえいえ、日本にキャンピングカーが普及し始めた頃、うちでは2000キット以上のキットを販売しているんですよ。
 今回も、そのときの経験を生かして商品開発していますね。

【町田】  実際に、完成車を買うのと、このキットを買って自分で組み立てるのでは、どのくらいの差が出るのですか?

【中島】  たとえば、最近私たちが出した新車で 「フレア」 というバンコンがありますが、その車両本体価格が378万円。
 それを実際に取得するとなると、登録費が別にかかるので、約400万円ぐらいになります。
 ところが、このキットを買っていただいて、ご自分でキャンピングカーを組み立てられる場合は、ざっというと、80万円くらい安く仕上げることができます。
 内訳で言いますと、まずベース車 (ハイエースバン) の料金が値引きを入れて、だいたい200~210万円。
 そして、キットの料金が59万8,000円。
 それに梱包料、送料が多少それに加わります。
 それでも、完成車に比べて、大雑把に80万円程度の差はつきますね。
 少し贅沢したいということで、バッテリー、ヒーターといった充実装備を加味していっても、お客様が負担する額は300万円ぐらい…といったところでしょうか。
 もしベース車を新車で買った場合は、それに取得税や重量税がかかりますから、登録費用が20万円ぐらい加算されますけれど、それでもおよそ320万円。
 登録費用も入れて目一杯高くなった状態でも、300万円台の前半で堂々たるキャンピングカーを所有できます。

バンテックキット003

【町田】 しかし、価格が安いのはいいけれど、作るのが面倒くさいというお客さんもいるでしょうね。
【中島】 そういう方には、弊社で組み立て済みの完成車を販売することもできます。
 しかし、補償に関しては、あくまでもキットとしての補償しかできませんけれど…。
 でも、せっかくですから、“作る喜び” というのも味わってみることをお勧めします。
 というのは、このキットはもうプラモデルの感覚で組み立てられるんですよ。
 工具も、基本的にはマイナスのドライバーが一本あれば十分。
 家具がすべて 「組み立て済み」 になっているんですね。
 天井の吊り棚から、ベッド兼用のシート、テーブル、サイドカウンター、ベッド用マットなど、すべて完成されたユニットになっているんです。

バンテックキット005

【町田】  吊り棚なんかは、どうやって付けるのですか?
【中島】  吊り棚などにもブラケットが付いているので、窓枠のところとルーフのフランジのところに引っかけるだけなんです。
 だから、ハンドメイドとはいいつつも、お客様はただ 「設置するだけ」 でいいんですね。
 しかも、全工程が写真付きの組み立て説明書によって、つぶさに分かるようになっていますし、8ナンバー登録するための改造申請書も付いています。
【町田】  至れり尽くせりですね。

【中島】  床には、すべて家具を固定するためのマーキングがなされていて、それに応じて穴も空いていますから、家具位置を決めるも簡単です。
 その穴に専用のナットを埋めてもらって、それに対して家具側のピンを差し込む。
 そして、家具を固定してピンを差し込んだら、マイナスドライバーでキュッと締めてあげれば、めでたく完了。
 それだけで、すべての家具がしっかり固定ができるようになっています。

バンテックキット004

【町田】  実に簡単ですね。
【中島】  ええ。ただシートベルトの取り付けだけは、やはり保安基準と安全上の問題から床に止めるというわけにはいかないものですから、ボディを貫通する穴を空けていただく必要がありますね。
 その作業だけには、電動ドリルが必要となりますが、それ以外はマイナスドライバーが一本あれば問題ありません。

【町田】  そんなに簡単に組み立てられるのに、家具にはバンテックさん自慢の家具がそっくり使えるというのが魅力ですね。
【中島】  ええ。組み立てるのはお客様であっても、できあがったクルマのクオリティはバンテックの工場から出てくる完成品と変わらないということを訴えていきたいですね。

バンテックキット006

【町田】  バンテックさんには充実した品数を誇るパーツセンターさんもあるわけですから、ユーザーは手作りを楽しみながら、自分のクルマに合ったパーツ探しも楽しめるということになりますね。
 団塊の世代には手先の器用な人が多いから、彼らがリタイヤした後の趣味として、「キャンピングカー作り」 っていうのが流行るかもしれないですね。
【中島】  そうですね。自分好みのクルマに仕上げていくというのは、ハンドメイドでしか味わえませんものね。



campingcar | 投稿者 町田編集長 00:22 | コメント(0)| トラックバック(0)

バルミィ

 大森自動車のバルミィというバンコンは、日本のバンコンデザインのひとつの到達点を示すようなクルマだと思う。

バルミィ外形01

 そのインテリア造形は、一見キャンピングカーには見えない。
 どこかクルーザーか、高級ホテルの室内のような雰囲気が漂っている。

バルミィ内装01大

 特に、09年の春に発表された新型モデルは、基本レイアウトは前モデルのものをほぼ踏襲していたが、シート素材にざっくりした感触を生かした平織りを採用し、未来的なデザインの室内に、少しレトロな味わいを導入していた。
 それがちょうど、このモデルから投入されたLED照明の間接照明的な光の中で、50年代から60年代頃に作られた映画に出てくる“超モダン住宅”のインテリアのように見えた。

バルミィメイン1

 その時代の人々が考えていた近未来というのは、今の人々が心の中に描くような終末論的な彩りに染められた未来像とは異なり、明るく希望に満ちたものだった。

 当時の人々が、思い描いていた奇抜でカッコいい 「未来」 。
 それが、時間の波のくぐり抜けて、眼前に現れているのを見ると、私などの世代は若い頃に見た光景を思い出し、鼻孔いっぱいに甘酸っぱい香りが広がっていくのを感じる。

 この 「レトロ感覚」 と 「未来感覚」 が不思議に融合した不思議な味わい。
 そこに、このバルミィの独自性があると思う。

大森太朗氏01
 ▲ 大森自動車 大森太朗さん

 設計・開発を担当した宮永さんは、特にそういうことを意識したわけではないと語っていたが、 「他のバンコンにはない意匠を創案して、ブランド化を図りたい」 という思いはあったという。
 その意図はうまく実現され、バルミィというクルマをひときわ個性的な輝きで彩ることになった。

宮永氏01
 ▲ 大森自動車 宮永京介さん

 デザインの遊びが先行したバンコンのような書き方になったが、実は、かなり使い勝手を考慮した、実用性の高いクルマであることにも触れなければならない。

 このクルマの特長は、リヤシートの展開が自在なこと。
 通常は横向き3人掛けシートになっているが、上下2段の大型ベッドにもなり、すべて跳ね上げると、キッチンスペースや荷室が広がるという妙味を見せる。

バルミィ08

 マルチルームの扉などにも二つ折り扉が採用されており、開閉する時も場所を取らない。
 また、扉を二つ折りの状態で使うと、 「リビング部」 と 「寝室&キッチン」 を分ける間仕切りとしても機能するために、プライバシーの部分をさらすことなく、ゲストをリビングに招き入れることができる。

バルミィ05

 もうひとつのポイントは、運転席・助手席のシートバックを利用したリクライニングソファ。
 そのままの状態でも対面ダイネットを構成するが、マットを埋め込むだけで変形コの字ラウンジにもなり、フロアベッドにもなるという自在な組合せが可能で、リビングスペースの使い勝手を無類に向上させている。

バルミィ3

 キッチンも楕円型シンクを組み込んだ素敵なデザインでまとめられ、蓋をするとカウンターとして使える。

 このクルマにおいては、デザインの斬新さは、すべて使い勝手の合理性を追求した結果から生まれている。
 そういうバンコンが出てきたことを思うと、日本のキャンピングカーもようやく成熟期に入ってきたのかもしれないという気がする。

バルミィメイン01


 お値段は4,442,000円から。
 
campingcar | 投稿者 町田編集長 05:38 | コメント(0)| トラックバック(0)

ダブスターの物語

 キャンピングカーの商品開発や広告展開の 「ブランド化」 、つまり 「物語性」 の付与が始まっていると前回書いたが、そのひとつの例として、デルタリンクさんの手掛けた 「ダブスター」 というキャンピングカーがある。

dabster外形001

 ハイエースのロングバン・ワイドボディを使い、お洒落なシートやアーバンデザインの家具を投入した “遊び心” に満ちたバンコンである。
 
 ちょっと車高を落としたローダウン仕様。
 デイトナのアルミホイール。
 その風情には、どこかストリート系のファッションにも通じるカスタムカーのテイストがにじみ出る。

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 運転席周りにも、凝ったデザインが施されている。
 シートは、スポーティな印象をかもし出すレザーとパンチングレザーを組み合わせたダブルステッチ&ハードシングルステッチ仕上げ。

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 さらには、 「DVDヘッド」 という見た目のデザイン性と実用性を追求したオリジナルヘッドレストが装着され、ノーマル車との違いを歴然と主張する。

 DVDとは、 「DELTA VAN DESIGN = デルタバンデザイン」 の意味。
 デルタリンクのオリジナル性を主張する新しい 「バンデザイン」 を謳ったものだ。

DVDロゴ01

 このバンコンが、なぜ 「物語性」 を秘めた 「ブランド」 として機能するのか。

 そこには、このクルマの企画を練った山田秀明社長の、ブランド構築に対する並々ならぬ決意と情熱が注ぎ込まれているからだ。

デルタリンク山田氏02

 山田さんは、商品がブランドとして立ち上がるためには、もちろんイメージ戦略が重要であることもしっかり認識している。
 しかし、それだけでなく、ブランドとして機能するためには、商品そのものがしっかりした目的を持ち、その目的に応じた実用性、堅牢性、信頼性を確保することが先決であることも知っている。

 ダブスターが秘めた実用性、堅牢性、信頼性とは何なのか。

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 一見、このクルマはカスタムの流れを汲んだ、ストリートユースを目的としたシティカーのように見える。 
 そういうクルマが、今の若者の嗜好を満たし、キャンピングカーとは違った分野で支持を集めているということも、山田さんはマーケティング調査によって把握している。

 しかし、キャンピングカービルダー&ディーラーとして、商品開発に取り組んできた山田さんにとって、外せないものがあった。

 それは、 「遊ぶ」 「泊まる」 「積む」 というキャンピングカーとしての基本的な機能。
 それがなければ、どんなに若者が憧れるカッコいいバンをリリースしても、自分にとっては意味がないという決意がある。

 つまり、ダブスターというクルマは、山田社長自身がそのクルマを使うことで獲得される、大きな 「夢」 を盛り込んだバンコンなのだ。

dabster_in_02

 夢とは何か。

 「僕が学生時代からヨットが好きで、それが縁となってこのキャンピングカーの世界に入ってことは、知っている人も多いかもしれません。
 でもね、本当にやりたかったのはサーフィンなの。
 若い頃、湘南の海に通って、ずっと波乗りをやっていたんですよ。
 しかし、当時はサーフィンブームで人口も多かったし、良い波が来たら、パドルのうまい人がみな先に行って、その波を取ってしまう。
 僕のような駆け出しの若者は、なかなか波が取れないわけ。
 そんな悔しい思いが、ヨットの方に向かわせたけれど、今でもやりたいのはサーフィン」
 と語る山田さん。

千葉の海サーフィン

 ずばり、ダブスターというクルマは、彼がやりたかったサーフィンを実現するときのイメージをベースに造られたバンコンなのだ。

 「このクルマができる前には、それをサーフィンの基地とするために、新しいサーフボードも作っていたんですよ。
 千葉に新しいデルタとしての拠点を作ったのも、あそこならサーフィンのメッカである九十九里に近いという計算もあった」

 山田さんの趣味は、サーフィンだけとは限らない。
 スノーボード。
 そして、バイク。
 そういう遊びのギアを搭載して、 「アウトドアライフを自由に楽しむ」 というイメージが、開発の最初の段階から存在した。

 だから、一見シティ派風に見えるダブスターのインテリアには、実はハードな使用に耐えられるさまざまな工夫が凝らされている。

 フロアには、サーフボード、ジェットスキー、バイクなどを搭載することを前提に、耐候性・耐磨耗性を備えた重歩行用のクッションフロアが使用され、カーペットには、防水効果が高く保温性、断熱性にも優れたアルセポリを裏地に使ったものが採用されている。

dabster_in_03

 家具は、傷に強いメラミンを全面的に採用し、モールは、衝撃に強いエボキシ樹脂の削り出し。
 しかし、その出来映えは、新たに塗装したかように自然な仕上がりを見せて、得もいわれぬ高級感を漂わせている。

 目に見えないところに、そっと隠された実用性と堅牢性。

 この都会派的な装いに満ちたお洒落なバンは、ハードなアウトドアユースに耐えられる実力を内側に秘めているのである。

デルタリンク山田氏01

 「スポーツギアを搭載することを前提としたトランポは、みな機能をむき出しにした “素朴さ” を売りにしているようなところがありますよね。
 でも、僕はそれがいやだったんですよ。
 街を走るときは、やはりそれなりにソフィストケイトされた華やかさを発揮したいし、彼女とデートするときの “恋愛空間” としての夢は維持しておきたい」

 そういうデザインコンセプトを持ったバンコンが、すなわち 「デルタバンデザイン」 。 

dabster_in_01

 40歳代の後半を迎えようとしている山田さん。
 しかし、若者たちに混じってサーフィンやスノボーを楽しむことに、彼はまったくためらいを持たない。
 そのためにキャンピングカーの世界に接しているという自負もある。

 開発者の夢を存分に託された商品というのは、放っておいても艶 (つや) がこぼれ出る。
 そこにオーラが生まれ、見る人や使う人に感動を与えることも、山田さんは見抜いている。
 そして、それが、ブランド化には不可欠の 「物語」 によって生まれることを、誰よりも、山田さん自身がよく知っている。

 「ダブスター」 とは、華やかな街の夜景を堪能し、そして海や山のナチュラルな素顔にも接したいという、山田秀明さんの欲張った “生きざま” を投影したひとつの 「物語」 なのだ。

ダブスター看板01

campingcar | 投稿者 町田編集長 01:21 | コメント(0)| トラックバック(0)

レガード伝説

 もしかしたら、ロデオ以来の “伝説の名車” になるのではないか。
 そんな予感さえ抱かせるすごいクルマの登場である。

 カムロードをベースにしたキャブコンは、レイアウトも装備内容もあらかたのアイデアが出尽くした感があったが、ヨコハマモーターセールスの開発したレガードを見ると、工夫によっては、このシャシーにもまだ豊かな可能性が残されていたのだな…という気がする。

レガード外装01大
 ▲ レガード

 レガードは、居住空間の充実、収納能力の向上、走行安定性の確保などという、それぞれ対処方法の異なる課題を、すべて根底から解決してしまうという途方もないもくろみを持ったキャブコンである。

 まず、そういう発想を持つということ自体が並みのビルダーにはできない。
 ロデオなどの開発で国産キャンピングカー製作の先陣を切り、さらに官公庁や各種企業からさまざまな特装車を受注してきたヨコハマモーターセールスだからこそ、その領域に敢然と足を踏み込んでいくことができたのかもしれない。

 経験は力なり。
 老舗の底力というものを、そこから感じることができる。

レガードリビング01 
 ▲ レガードのリビング

レガードプルダウンベッド01
 ▲ プルダウンベッド

レガード・リヤ2段ベッド01
 ▲ リヤ2段ベッド

 では、居住空間の充実と、荷物などの収納容積の拡大といった相反するベクトルを、このレガードではどう調和させようとしたのか。

 室内面積を単純に追求するだけだったら、リヤオーバーハングを伸ばせばいいということになる。
 しかし、それでは後軸に荷重が集中し過ぎて、走行安定性の確保もままならず、安全性も保てない。

 そこで、ヨコハマモーターセールスの開発陣が考えたのは、ホイールベースそのもののストレッチ (延長) だった。
 そうすれば、後軸に集中する荷重を前軸に分散させることが可能となり、理想に近い重量配分が実現する。もちろん、直進安定性も格段に向上していく。

レガードシャシー02
 ▲ 治具を用いたホイールベースの延長

 ところが、問題も出てくる。
 当然、フレームやドライブシャフトなども延長されることになるので、重量増という問題を抱えることになる。

レガードシャシー01

 そこで、彼らは次の手を考えた。

 もともと、ヨコハマモーターセールスには、地面から上がってくる湿気や水はねを遮断するために、木製床面をFRP製フロアユニットでサンドイッチするという技術がある。
 このフロアユニット機構をさらに緻密化させ、あらかじめ床下収納、タイヤハウス、ステップ、シャワーパン、シートの台座まで一体成形で型取ってしまえば、起伏が多くなった分…つまりリブ構造を採った分、フロア剛性も上がり、サブフレームのコンパクト化が図れるのではないか。
 つまりは、その分、軽量化を詰めていくことが可能となるはずだ。

 …ということで、レガードでは、このフロアユニットを有効活用することによって、スチールフレームなどを削減し、軽量化を押し進めるという手法が採られることになった。

レガードフロアユニット模型01 
 ▲ FRP製フロアユニット

 しかし、レガードの凄みが光るのは、ここから先だ。
 それが、低重心設計。

 キャブコンの走行性を不安定にさせる要因のひとつに、重心高が上がりすぎるというのがある。
 居住空間を水平方向に広げるには、どうしても限度があるために、キャブコンの場合は、バンクベッド、縦長収納庫、さらにはルーフにトランクを積むなど、装備や荷物が垂直方向に積み重なっていく傾向がある。
 当然、重心高が高くなり過ぎた場合は安定性を欠き、走行中のふらつきやコーナリング時の横転なども考えられるようになる。

 ここで、PRP製フロアユニットがレガードに投入されたもうひとつの意味が浮かび上がる。
 このユニットは、低重心設計を追求するためのものでもあったのだ。
 なにしろ、これを設定することによって、室内の一般床面が、フレームの上面から63mmも低位置に設計されたというから、そのもくろみの徹底性をうかがい知ることができる。

レガード外部収納01
 ▲ 低重心設計された各収納庫

 特に収納庫は、のきなみ低重心設計の “洗礼” を受けた。
 2重底となったリヤ大型収納庫の底面などは、ダウンフレーム化することによって一般床面よりも400mm下げられ、リヤ側荷室部分の床面は250mm。ボディ左右の外部収納庫は、一般床面から375mm下げられたという。
 これらの収納スペースの低重心化は、同時に荷物の収納容積の拡大を果たすことになった。

 低重心対策は、それだけではない。
 燃料タンクやスペアタイヤの位置も下方に移設された。
 燃料タンクは標準の高さから50mm。
 スペアタイヤの搭載位置は60mm下げられたというから、ベース車そのものの改良もハンパじゃない。

 バンクを削ぎ落としたのも、軽量化と低重心化を考慮したものであるが、それ以上に、これには風の抵抗をやわらげるという狙いがある。
 ルーフの各コーナーには、R100以上の形状を持たせて、空力特性の向上を図ったというから、何から何まで徹底している。

レガード外装01
 ▲ 空力特性を追求したエアロフォルム

 このような画期的な試みが、何のために行われたのか。
 ヨコハマモーターセールス営業部の平野一幸さんは、それについて、こう語ってくれた。

ヨコハマモーターセールス平野氏01
 ▲ 平野一幸さん

 「レガードは、人間が快適に旅をするには何が必要かという原点に立ち返って開発したクルマなんです。
 たぶん、このクルマが誕生したことによって、キャンピングカーの快適さと安全に対する基準が変わると信じています。
 大きなことをいうと、これから先の社会は、 “モノ” から “ココロ” の時代へと移っていくでしょう。
 そうなると、旅というものが、今以上に人間の心を解放し、人間に豊かな人生を約束するものだという認識が高まっていくでしょう。
 その旅を、いかに快適に、安全に楽しむか。
 レガードはそれへの提言なのです」

レガード外装01

 観光庁も 「ニューツーリズム」 という、地域資源を活用して観光産業を活性化させようという新しい旅のスタイルを国民に呼びかける時代になった。
 レガードというクルマは、そういう社会が実り多きものになることを願った、ヨコハマモーターセールスとしての提案なのだという。

 平野さんは、続けて言う。

 「20世紀までは、道具を進化させれば、人間の幸せも着いてくると信じられた時代でした。
 つまり、道具そのものを複雑にして、その数を増やしていけば、それで人間も安心していられたんですね。
 しかし、その結果、人間は環境に負荷をかけ、有限な資源を無駄に使うことも覚えてしまった。
 もう、そういうプラスにプラスを重ねる思考方法そのものの限界も見えてきたように思うんですよ。
 これからの社会に大切なのは、 “引き算” の思想。
 このレガードは、ベース車のキャパシティを理解した上で、本当に大切な要素を抽出するためには“何を取り除くのか”ということを、引き算で組み立てたクルマなんです。
 …こういう装備を増やせば、さらに便利になるだろうという発想を捨てたんです。
 レガードに投入された技術は、すべてが、大切な要素を抽出するための引き算から導き出された技術です。
 重量を減らす。
 風の抵抗を減らす。
 消費エネルギーを減らす。
 不安定材料を減らす。
 事故を減らす。
 引き算によって、逆に得られる幸せというものがあるはずです。
 それを形に現したものが、このレガードです」

 キャンピングカーは人間の幸せにどう関わっていくのか。
 そういうことについての哲学を持とうとするビルダーが、少しずつだが現れてきたように思う。


campingcar | 投稿者 町田編集長 16:05 | コメント(5)| トラックバック(0)

タコスのWith

 キャンピングカー業界で、女性の店長がいる店となると、まずは増 (ます) ひろ子さんがいる 「TACOS (タコス) 」 が有名。

タコス展示場1 タコス展示場2
▲ タコス展示場

 昨年、新しい展示場を東京・武蔵村山市に構え、社長の田代民雄さんが近くの工場で車両のメンテナンスなどにいそしんでいる間、接客やマスコミへの応対、経理事務などに励んでいる。

 実は、この私もまたタコスクラブのメンバーである関係上、彼女とのつき合いは長い。
 しかし、店長となってからの取材ははじめて。
 同社の新しいオリジナル車 「With (ウィズ) 」 の取材も兼ねて、武蔵村山の展示場を訪ねてみた。

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 ▲ 増ひろ子さん

【町田】  「店長&営業部長」 という重責ですね。大変でしょうけれど、まずはおめでとうございます。
【 増 】  重責だなんて… (笑) 。やっている仕事は昔から同じですよ。
 でも、もう12年もこの仕事を続けているので、キャンピングカーの面白さ、素晴らしさをお客様に伝えること力はつきましたね。

【町田】  ご自分でキャンピングカーを使って旅に行かれることは?
【 増 】  今は残念ながら、本格的なキャンピングカーというものを持っていないんです。
 ステップワゴンに、オーニングとテーブルを取り付けて、旦那さんと一緒にクラブキャンプに行くぐらいで。
 でも、昔は 「チャンプ」 に乗っていましたから、キャンピングカーの旅の面白さというのはよく分かっているんです。
 その頃は、ゴールデンウィークを利用して、10日ほど岐阜、富山、兵庫、広島、小倉あたりまで旅して…。
 本当に楽しかったんですよ。

【町田】  そのクルマをどうして手放しちゃったんですか。
【 増 】  ほら、排ガス規制に引っかかって。
【町田】  それは残念。
【 増 】  だから、下取りのクルマが入ってくると、いつも自分が買う視線で眺めてしまうんですね。
 「あ、このクルマ、絶対自分が乗る!」 …とか (笑) 。
 でも、お客様が欲しがると、やっぱり商品ですから、潔く売らざるを得ない。
 いつもそのジレンマですね。

【町田】  どんなキャンピングカーが好みですか?
【 増 】  私、特にうるさい注文ってないんです。基本的に5mサイズのキャブコンで、個室のトイレがあればいい…という感じなんです。
 そのほかのことは、レイアウトの方に自分の身体を合わせてしまうようなところがあります。
 それよりも、クルマを気に入るということが大事で、気に入ったクルマならば、そんなに使いづらいレイアウトでない限り、私なんかは楽しく使ってしまいますね。

tacosウィズ外形01
 ▲ With (ウィズ)

【町田】  ところで、 「With (ウィズ) 」 という久々のオリジナル車が誕生しましたね。リヤに大きな開口部を持つ大型トランク付き。
 昔から有名だった 「タコス仕様」 の復活ですね。

ウィズバゲッジドア開口部

【 増 】  これはお薦めです! このサイズのキャブコンで、これだけ使い勝手のいい “マルチスペース” を持ったクルマは、そうないと思うんですよね。
 なにしろ、奥行きが1900mm、幅1100mm、高さが1900mm。
 125ccクラスのバイクなら問題なく入りますし、自転車も大丈夫。
 キャンプ道具だって、これぐらいの容量があれば、まず積めないものはない!
【町田】  だいぶトークがお上手になりましたね。

【 増 】  いえいえ… (笑) 。ただ、自分でも欲しいと思うクルマなんですよ。
 自分は個室トイレが欲しい人間なんですけど、これ、リヤのカーゴスペースが引き戸で閉まるので、ポータブルなど置けば、立派なトイレルームになるんですね。
 もちろんベッドにすれば、幅1100mm、長さ1900mmの2段ベッド。
 大柄な私でも、ゆったりと寝られますし、遊びのギアを搭載しなければ、リヤ2段ベッドのクルマともなり、トイレルーム仕様のクルマにもなる…という、まぁ、魔法のクルマ (笑) 。

ウィズリヤ収納スペース01

【町田】  「マルチに使える」 というところが、昔から評判だった 「タコス仕様」 の特徴ですものね。
【 増 】  やっぱり社長の田代の発想がすごいんですよ。特に重量物を載せるときのことを考えて、ウィンチを付けるという発想。
 そのへんは、やっぱり私などには考えつかないことですね。
【町田】  ウィンチはいくらで付くんですか?
【 増 】  オプションで、4万5,000円くらいですね。
 でも、これがあると、いろいろなスポーツギヤを載せたい人とか、ちょっと体力に自信がない女性などは、本当に助かるのではないかしら。

ウィズ外部収納電動車椅子

【町田】  価格的にも魅力的なプライスですよね。
【 増 】  やはり、500万円の前半でナンバーが付いてしまうというのは、お客様にはお買い得感があるのではないかと思うんです。
いっぱい売れるといいな (笑) 。

ウィズ・ダイネット01
 ▲ ウィズ ダイネット

【町田】  ところで、従業員から見た田代社長って、どうですか?
 いつも夜になると飲んだくれている…という印象があるんだけど。

タコス田代社長01
▲ タコス 田代民雄 社長

【 増 】  すごいタフな人ですね。実は、私もよく一緒に飲みにいくんですよ。時には旦那も交えて3人で。
 田代社長は、やっぱり若い頃からバイクやアウトドアでさんざん鍛えてきた人ですから、クルマ造りなども、いつもそれが原点になっているんですね。
 遊んできた人間は、こういうクルマの開発には強みを発揮するということが、そばで見ているとよく分かるんですよ。

【町田】  ああ…。また一緒にキャンプに行きたくなったな。
【 増 】  ええ、ぜひ!

タコス増ひろ子さんVサイン
campingcar | 投稿者 町田編集長 13:20 | コメント(0)| トラックバック(0)

フィールドライフ

 群馬県を拠点とするキャンピングカービルダーの 「フィールドライフ」 さんが、昨年の暮れに新しい工場を設立し、展示場をリニューアルした。
 同社の福島雅邦社長に、その新工場と、装いを新たにした展示場を案内してもらうことができた。

 どの企業も、生産調整を行い、設備投資も控えようとするご時世。
 フィールドライフさんの事業展開は、大胆すぎると思われるところもなきにしもあらず。

 しかし、福島社長は、 「うちが発展することを狙うというよりも、お客様に信頼できる商品とサービスを提供するための当たり前の責務」 と、こともなげに言う。
 そこに、この不況の時代ともいわれる今の情勢下で、それを乗り切ろうとする日本のキャンピングカー業界の力強くも確実な足取りを見ることができた。

 新しい事業展開に着手した福島社長に、その狙いどころと、決意のほどをうかがってみた。

フィールド福島社長01
 ▲ 福島雅邦社長

ルーツ室内=大
 ▲ フィールドライフの看板車種ルーツ・トリップ (室内)

《 充実した工場機能 》

【町田】  新しく工場を建てられた意図はどういうところにあったのでしょう。
【福島】  ひとつは、工場ともなると、やはりFRPなどを削ったりするときの粉塵をお客様に吸わせてしまったりするということも出てくるわけですね。
 社員は、集塵機の前でマスクをするなど防備をするわけですけれど、お客さんはそうでもない。
 だから、あくまでもお客様に迷惑をかけたくなかったということが一つ。
 それと、社内的にいえば、計画生産をする意味においては、工場と展示場を別にすると、工場と販売との収支をしっかり比べたりできるようになるので、目標設定などをやりやすくなるというメリットが生まれますね。

フィールドライフ工場全景01

【町田】  これだけの規模の工場ともなると、日本でも有数なものになると思うのですが、その機能と特徴などを、ちょっとご説明いただけますか?
【福島】  敷地は600坪ぐらいですが、木工家具づくりのブースから、パネルをつくるブース、さらに塗装ブース、組み立てブースなど、基本的にキャンピングカー造りの全行程をまかなえるようになっています。

フィールドライフ工場組み立てブース
 ▲ 組み立てブース。軽キャンパー用で3台収納可能
 
フィールドライフ工場木工ブース
 ▲ 木工ブース。コンピューターでデータ入力して、部材を切り取るNC旋盤が活躍

【町田】  ここで車両のメンテナンスなどもやるのですか?
【福島】  軽整備は展示場の方で行いますが、重整備の場合はこちらに持ち込むことが多いですね。
【町田】  フィールドさんの場合は、単に内装のリフォームや搭載機器のメンテだけでなく、エンジンの積み下ろしまで含む駆動部分の整備もなさいますよね。
 自社工場内でそれだけの整備を行えるキャンピングカーファクトリーというのは、まだ少ないだけに、ユーザーにとっては頼もしいショップだと思えるのですが。

【福島】  レッカー車もあるので、旅の途中に故障してしまった車両に対しても、引き取って面倒を見ることができます。
 さらに、パーツの取り付け、車検、リフォーム…。
 展示場のメンテスペースと、工場の整備機能をフル稼動させれば、まぁ、キャンピングカーに関わるお客様のご要望には、すべて対応できるはずです。

【町田】  工場の新設と同時に、展示場の方もリニューアルされましたね。
【福島】  ええ。これを機に、会社を二つに分けました。
 工場の方は、 「フィールドライフ本社工場」 。展示場は 「キャンピングカーパーク」 という名前で、会社名を 「フィールドライフ販売」 にしました。

フィールドライフ展示場01

《 ユーザーが楽しめる展示場 》

【町田】  展示規模も素晴らしいものですね。ヨーロッパとアメリカの代表的なメーカーのものを揃え、さらに各ビルダーさんの国産車の品揃えも豊富。それにオリジナルが加わって、鉄壁の布陣ですね。

フィールドライフ展示場HPより

【福島】  お客様のご要望も多様化していますからね。ヨーロッパ車としては最高峰のハイマー。アメリカ車では、ニートRVさんが扱うウィネべーゴ。
 世界の一級品を揃えたつもりなんですよ。
 これは、 「常に最高級のモーターホームに触れて刺激を受けてほしい」 という、社員の勉強も兼ねての展示という意味もあります。
 それに、国産車としては、アム・クラフト、インディアナRV、キャンピングカー広島、キャンピングワークス、セキソーボディ、バンテック、ファーストカスタム、レクビィ、ロータスRV販売…。そして当社のオリジナル。
 まぁ、日本でも人気のあるメーカーさんのものは、ほぼ揃えていると思いますね。

フィールドライフ展示場03

【町田】  これだけバラエティに富んだ車種を用意した展示場というのは、最近ではちょっと珍しいくらいですね。
 また、キャンピングカーだけでなく、移動販売車の展示がこれほど多い店というのも、他にはありません。
 それにパーツやアクセサリー関係も充実していますね。
 このような、「キャンピングカーのデパート」 みたいなショップを目指された理由はどんなところにあるのですか?

フィールドライフ展示場02

【福島】  クルマの修理やパーツの取り付けに寄られる方に、とにかく安心したいただきたいということが一つ。
 もう一つは、ここを 「くつろぎの空間」 として楽しんでいただきたいといのがあるんですよ。
 旅の途中にダンプや給水に寄ってもらう。つまり 「旅の中継ステーション」 ですね。
 それだけでなく、ここでキャンプもしてもらう。
 歩いて10分のところに温泉もありますし、食堂やコインランドリーもすぐ近くにあります。
 こういう宿泊システムというものをお客様に提供していくことも、これからはディーラーの責務になっていくのではないかと思っています。

《 団塊世代の参入はこれから 》

【町田】  来店を想定されている 「お客様像」 とはどんなものでしょう。
【福島】  やっぱり目立って増えているのは、団塊の世代あたりに位置する熟年層ですね。
 ただ、彼らが本格的にこの世界に参入してくるのは、もう少し後になるだろうと読んでいるんです。
 というのは、一昨年ぐらいに 「2007年問題」 などといわれて、団塊世代を中心としたマーケットが急激に広がるだろうという観測があったのですが、実際は、それほど力強い動きにはならなかったんですね。
 それには理由があるんです。
 彼らの定年が延長されたり、年金を支給される年齢が65歳なったりして、まだまだ 「現役」 にとどまらざるを得なくなってしまったんですね。
 彼らがこのマーケットに関わるようになるのは、来年、再来年くらいからだろうと思っています。

【町田】  最近のショーでは、新規のファミリー層などの来場も目立ってきていますし、それに団塊世代が加わるようになれば、業界としての展望も開けてきそうですね。
【福島】  逆にいうと、われわれの正念場でしょうね。
 確かに、パイは広がっているように感じますが、今度は、車両を提供しているわれわれの方が、それに合った車両開発をしてきたのか…というと、まだまだ業界としての課題はたくさん残っているように感じます。

《 重量表示はメーカーとしての責務 》

【町田】  どういうことでしょう?
【福島】  ひとつは、 「安全なクルマの提供」 ですね。
 国産車においては、今や各ビルダーさんの安全意識がものすごく高揚してきて、安心して提供できる車両が増えているのですが、まだまだ完全なものとはいえない。
 というのは、 「便利な装備」 「豊かな居住性」 を志向するばっかりに、許容荷重を見たときには、安心できないような車両もぽちぽち散見される傾向もあるからです。
 そういう車両に、もしお客様が許容荷重を超えるような装備をたくさん求められたり、また重量のかさばる荷物をたくさん収納されたりしたら、どうなるか。
 まず、タイヤに負担がかかるでしょうから、バーストなどの問題が出てくる。
 さらに、安定性が損なわれて、転倒などの危険も生じるかもしれない。

【町田】  それは、ビルダーさん方の大きな課題になりますね。
【福島】  ええ。だからうちで開発したクルマには、昨年から 「重量表示」 を明記することにしました。
 「現在このクルマの車両重量はいくらで、あとどのくらいの重量的な余裕があるか」
 そういうことを一目で分かるような表示を心がけました。
 お客様が追加装備を求められたり、たくさんの荷物を収納しようと思った場合、それがあると、自分のクルマの “限界” というものが見えてくるわけですね。
 ビルダーとしては、そういう配慮を示すことがぜひとも必要で、それが事故をなくして、安全なドライブを約束することにつながると思うのです。

【町田】  現状では、まだそれが徹底されていないと?
【福島】  それが業界としての今後の課題ですね。…本来ならば、キャンピングカーのベース車にはそれぞれ許容荷重というものが定められているわけですから、その範囲で架装していれば、足の強化なども特別に必要ないんですね。
 ところが、軸重オーバーを補正するために、強化サスを入れたりしてカバーしようとするところもあります。
 考え方はそれぞれでしょうけれど、走行安定性を増すための強化はいいとして、軸重オーバーを是正するための足回りの補強は、どこか本末転倒ではないか…と、私などは思ってしまうんですけどね。

《 ルーツに見る軽量化の技術 》

【町田】 やはり 「軽量化」 というのは、キャンピングカー開発の大きなテーマですね。フィールドさんのオリジナル車では、どのような対応をなされているんですか?

ルーツ外装01 
 ▲ ルーツ外装

【福島】  ルーツなどの場合は、…あれはマイクロバスのボディをカットして、一応 「セミ・フルコンバージョン」 ともいえる独自のスタイルを追求したクルマですが、バスボディの鉄板を切って、代わりにハイドロバックパネルに架装しただけで、相当の軽量化を達成しているんですね。
 バスとしての総重量は6トンぐらいで、軸の許容は6トンと800kgぐらいあるんですが、ルーツの場合はハイドロバックのおかげで、フル装備で燃料を満タンにしても、4トンぐらいにしかならないんです。
 つまり、約3トンの余裕がある。
 だから目一杯に装備を施しても、走りも快適だし、安定性も高い。

ルーツハイドロバック

【町田】  そのほかの軽量化には、どのような技術を投入されていますか?
【福島】  あとは…当然のことですが、家具なども、中をハニカム構造にして重量を減らしています。
 芯材も、今はアルミに替えて松材を使うようにしました。これも軽量化を狙ってのことですが、もうひとつは水に強いんですよ。
 アルミも確かに軽量化には貢献するのですが、熱伝導率も高いので、芯材として使っていると、グラスファイバーに接しているアルミ部分に結露が生じることがあるんですね。
 そういうことを解消するために、松材を使うようにしたのですが、これは本当に水に強い。
 当社では、もう3ヶ月ぐらい、松材を水に浸けて変化の様子を観察しているのですが、ほとんど水を吸っていないんです。
 そういうように、軽量化と同時に耐久性を維持するための研究も当社は重ねています。
 まぁ、ルーツの軽量化に関しては、すでにハイドロバックパネルを使用することで、相当な軽量化を達成しているわけですから、家具にはそれほど神経質にならなくてもすんでいます。

ルーツ内装01
 ▲ ルーツ内装

【町田】  なるほど。軽量化に関して、フィールドさんが相当の神経を払っていることはよく分かりました。
 タイヤの空気圧チェックなどは、ユーザーの管理する範囲でしょうけれど、許容荷重の問題は、やはりビルダーさんが取り組むべき領域でしょうから、業界としても、より安全なクルマとしての完成度を高める道を歩んでほしいですね。
【福島】  ええ。この度 「日本RV協会」 の会長にも選ばれたことだし、そのへんの課題に対しても、鋭意取り組んでいきたいと思っています。


campingcar | 投稿者 町田編集長 11:17 | コメント(0)| トラックバック(0)

大阪ショー速報

 インテックス大阪で開かれた 「大阪アウトドアフェスティバル2009」 に行ってきました。
 キャンピングカーショーとしては、幕張、名古屋と続く大都市圏の3番目のビッグイベントになったわけですが、ここでも驚いたのは入場者の多さ。
 業者さんたちは、 「こりゃ本当にキャンピングカーブームが到来したのか?」 と驚いているようです。

 しかし、 「見に来られたお客さんは多くても、買いに来られたわけではない」 と、慎重に構える業者さんもいて、思ったほど商談が進んでいるわけでもないことから、やはり長引く不況を深刻に受けとめている方もいらっしゃいました。

 それでも、会場のにぎわいに応えるように、このショーでも見学者の注目を集めるような新型車が多数デビューしました。

《 スナフキンGJ 》

スナフキンGJ01

 まずは、デルタリンクさんオリジナル車 「スナフキンGJ」 。
 GJは 「グレートジャーニー」 の略。
 基本レイアウトは、スナフキンシリーズのSWをベースとしているのですが、ボディ右側に大きく張り出した “出窓” が特徴となっています。

スナフキンGJ02

 この出窓のおかげで、1m88㎝×1m20㎝の横方向のベッドを確保することができたので、大人用の就寝スペースが増えています。
 しかも、窓側にはしっかりしたアクリル窓が装備され、断熱、結露防止が図られています。
 発売記念セールということで、FFヒーター、インバーター、バックアイカメラ、ナビゲーションが標準で、498万円というプライスが掲げられていました。

スナフキンGJ04 スナフキンGJ03

《 チッタ 》

 ロータスRVさんは、新型バンコン 「チッタ」 の投入です。
 こちらも出窓付き。
 ロータスさんは、この出窓に 「ウィンドボックス」 という名称を与えています。

チッタ03

 基本コンセプトは、 「街乗り気楽にワゴンキャンパー」 …というわけで、8人が前向きに座れるワゴン感覚を重視したレイアウトになっています。
 もちろん、対面対座にすれば、足元の広々感も十分なゆったりしたリビングが生まれます。

チッタ01
 
 フロアにはスライドレールが付いていて、セカンド&サードシートを前側に寄せて畳んでしまえば、リヤには広大なラゲージスペースが誕生。
 もちろん、付属のベッドマットを使えば、リヤ部分がハイマウントベッドに早変わり。
 ウィンドボックスのおかげで、リヤサイドにも大人が横に寝られるスペースが確保されています。

 大きな特徴としては、リヤ部の床下を加工して作られたグラスファイバー製の床下収納。スペアタイヤをその中に入れることができますが、タイヤの上にボードを被せても、まだ収納スペースが残ります。

チッタ02

《 プレシャスβ 》

 キャンピングカー広島さんのブースからは、ポップアップルーフを持ったバンコン 「プレシャス」 のニューモデルが登場しました。
 車名は 「プレシャスβ(ベータ) 」 。

プレシャスベータ01

 前モデルに対してレイアウトが大幅に変更され、リヤにはゆったりしたコの字ラウンジが設けられました。
 ここで夫婦2人がのんびりとくつろぐのもよし。
 大勢でワイワイやるのもよし。
 ベッドにすれば、1m85㎝×1m70㎝の広々ベッドが展開します。

 特徴的なのは、室内照明にはすべてLEDが採用されたこと。
 電子レンジとインバーター (1500W) が標準装備されたため、消費電力を抑えようとする意味があるのですが、間接照明としても、このLEDがいい雰囲気をかもし出しています。

プレシャスベータ03 プレシャスベータ02

《 アスカ 》

 キャンピングカーフジワラさんからは、新型ライトエースをベースにしたオリジナルキャブコンの 「アスカ」 がリリースされました。

アスカ01

 バンクを小さく絞ったすらりとしたスタイルが優美です。
 キャブコンでありながら、ファーストカーとしても使えるというのが、このライトエースをベースとしたキャブコンの特徴で、軽自動車キャンピングカーにはない居住性を確保しながら、ボンゴクラスのキャブコンよりも、さらに取り回しが良いという絶妙のポジショニングを獲得しています。

アスカ02 アスカ03

《 バルミィ 》

 地元の 「キャンピングカーフィールドオオモリ (大森自動車) 」 さんが発表したのは、同社の人気バンコン 「バルミィ」 の最新モデル。
 大胆なほどに美しいレイアウトは、もうおなじみのものですが、LED照明などを多用して、電気消費量の削減を図るとともに、照明効果の豊かさを同時に追求しています。

バルミィ01

 このモデルでは、ざっくりした天然素材の味を持つシートと木目調家具を採用して、今までの近未来的なインテリアに 「レトロ」 の味を加味しています。
 インテリアのテイストは、60年代頃の映画に出てくる “超モダン建築” 。懐かしさを伴う未来感覚が横溢していて、なかなか味があります。
 そういうところが、逆に、若い人たちから見ると、ものすごく新鮮な内装に見えるのではないでしょうか。

バルミィ02 バルミィ03

《 かるキャン 》

 参考出品として登場したのが、コイズミさんの 「かるキャン」 という軽自動車キャンパー。

かるキャン02

 軽トラックの上に、FRP製のユニットを取り付けたものですが、ボディ右サイドにスライドアウト機構を持ち、しかもルーフをはね上げると、三角屋屋根を持ったバンガロー風の居住空間が生まれるという面白い試みです。

かるキャン02 

 窓などは、まだ付いていませんでしたが、今後はよりキャンピングカーらしく仕上げていくとか。
 今後の熟成が楽しみです。

かるキャン01

campingcar | 投稿者 町田編集長 18:24 | コメント(6)| トラックバック(0)

アムクラフト新車

 今ちょうど 『キャンピングカーsuperガイド2009』 の原稿を書いている最中なので思うのだけれど、一連の作業を通じて感じるのは、日本のバンコンビルダーが新車開発に対して並々ならぬ戦略を立てているということ。

 マーケティングの手法も緻密ならば、ブランド力の高め方も計算しつくしている。
 今、固定客をしっかりつかんで確実にシェアを広げているビルダーというのは、みな市場分析、企画力、デザイン力で、数年前とは比べものにならないくらい緻密な作業を進めている。

 そんなビルダーのひとつに、アム・クラフトさんがいる。

アム・クラフト山口社長01
 ▲ アム・クラフト 山口寿子 社長
 
 同社は、幕張、名古屋と続く春のショーで、 「アウラ」 、 「オーロラ」 という新型車を立て続けにリリースした。
 アウラは、レジアスエースのロングバン・標準ボディのハイルーフ。
 オーロラは、ハイエーススーパーGLワイドボディをポップアップルーフ化 (op.) しているが、どちらもボディサイズとしては、全長5m未満のコンパクトボディを使っている。

 ともに、コンセプトは 「街乗りプラス α」 。
 キャンプにも使えるが、通勤、買い物、子供の送迎、ドライブ、ピクニックという日常の足を意識したものだ。

 そうなると、ベース車はスーパーロングであるよりも、それより短いショートボディである方が説得力を増す。

 狙いは、 「ミニバンイーター」 。
 価格、サイズもできるだけ乗用車メーカーの造るミニバンに近づくような設定にして、ミニバンからの買い替えを狙う。

 もちろん、そういうクルマは、昔からバンコンには多かった。
 ただ、その手のクルマは、価格を下げることと、 「何にでも使える」 という便宜性を優先させようとしたばっかりに、華がなかった。

 では、 「華」 とは何か?
 というと、これは 「機能」 に還元できない領域なので、一言では説明がつかない。
 しかし、アム・クラフトさんの新型車は、その 「華」 の領域に踏み込んで、それを理論化し、計量的に分析し、的確にプレゼンしている。
 プロのワザを感じるのだ。

アウラ外装01
 ▲ アウラ

 アウラというクルマは、ずばり 「女性のハート」 を狙ったものだ。
 同社はこのクルマを開発するにあたり、ユーザーや社員の家族関係から約200人の女性の声を拾い集めたという。

 すごいのは、そこで上がってきた声をストレートに車両開発に採り入れるのではなく、デザイナーを中心に企画会議で討議し、その声を、見栄えのある形に 「翻訳」 したことだ。
 つまり、ユーザーから上がってきた声を 「華」 に置き換えるために、デザインの濾過を試みているのだ。

アウラ内装01
 
 このクルマで “見所” となるところは、リヤゲートを上げたときに、冷蔵庫を格納したキッチンユニットの後ろ側に張り付けられたショッピングカート。

アウラ・ショッピングカート01

 つまり、行楽の帰りにスーパーなどに寄ったとき、このカートを引っぱり出して、翌日に使う食材などを買い込めるようにしている。

 これぞ 「女性の視点」!
 なのに、このカートのデザインが実にヨーロッパ風で、車両のデザインセンスと絶妙にマッチングしている。
 市販のものから探してきたというが、こういうものを選び抜くセンスがすでに他社より一歩先んじている。


オーロラ外装
 ▲ オーロラ

 「オーロラ」 というクルマも、綿密な市場調査から生まれてきていることが分かる。
 これは、ある意味で 「トランポ」 だ。
 ただし、もちろんただのトランポを狙っているわけではない。

 トランポというと、一般的にはバイクやジェットスキーを載せるというスポーツギアのイメージが強い。
 造る方も使う方も、その固定観念からなかなか抜けられない。 
 
 しかし、オーロラはそのようなトランポの発想から飛び出したクルマである。
 むしろ、トランポとして使えるほどの空間を、 「癒し」 「やすらぎ」 「広々感」 に翻訳しようとしたクルマなのだ。

オーロラ内装04

 家具なども、少し濃いめの家具を使い、今までのファンシーでフェミニンなアム・クラフト路線とは一線を画したモダンテイストを貫いている。

 この狙いはどこにあったのか?

 ポップアップルーフを開口すると、それがよく分かる。
 ルーフの内側に埋め込まれたLED照明が、微妙に色を変えて、ルーフの内側をまさに 「オーロラ」 の輝きに変える。
 同社はこれを 「オーロラシステム」 (op.) と呼ぶ。
 もちろん、これは単なる遊び。
 
 しかし、この天井に広がる “大宇宙のパノラマ” を堪能しようしたとき、濃いめにしつらえたモダン調家具類が、夜空を支える地球の大地として浮かび上がるのだ。
 よく計算していると思う。

オーロラ内装01 オーロラ内装02

 こういう仕掛けを 「ギミック」 というのは簡単だ。
 だけど、私などは、ルーフ内の色が変わっていく瞬間を写真で捉えながら、小さなプラネタリュームの中にいるような気分になった。 

 このような遊びは、ガチガチなアウトドア派からは、キャンピングカーの機能とは関係ないと嫌われるかもしれない。
 しかし、こういう部分に 「華」 を感じ、キャンピングカーの面白さを感じる新しい顧客層は確実に育っている。

 アム・クラフトというビルダーは、すでにその新しい顧客層のひしめく大海に、堂々と漕ぎ出していこうとしている。


campingcar | 投稿者 町田編集長 22:44 | コメント(0)| トラックバック(0)

コンクエスト23

 09年に入って、キャンピングカー業界では国産車の勢いが目立つようになってきたが、輸入車の方にもユニークなクルマが登場してきている。
 たとえばボナンザさんが、この春に導入したコンクエスト23。

コンクエスト外装01

 これ、アメ車かな?
 ヨーロッパ車かな?

 ベースシャシーはフィアット。
 シェルの形状は、まさに典型的なヨーロッパ車風アルコーブン。
 だけど、デカールのデザインなどはアメ車っぽいし、それによく見ると、バンク部とボディ側面にアメリカのモーターホームメーカー 「Jayco」 社のマーク。

ジェイコ社マーク

 ついに、ジェイコ社がフィアットを導入?
 仕入れが高いだろうに……。
 だけど、不思議。
 左エントランスに右ハンドル。
 なんだ? これは…。

 と、いろいろ考えてしまったのだが、ボナンザの比留間社長にうかがうと疑問は氷解。
 このモーターホームは、オーストラリア製なのだ。

ボナンザ比留間社長01

 オーストラリアが、近年にわかにRV大国になっているということは、 「RV世界会議」 のレポートなどからも分かっていたが、このような堂々たるモーターホームが造られるようになっていたとは、ちょっと知らなかった。

 その中でも、このコンクエストを造った 「オーストラリア・ジェイコ社」 というのは、全オーストラリアのRV車両の中でも48パーセントのシェアを持つ大メーカーなのだとか。
 アメリカのジェイコ社とは交流はあるものの、独立した資本によって運営されている地元のビッグメーカーであるという。

コンクエスト外装03

 このコンクエストを導入するために、オーストラリアで同車を試乗していた比留間社長は、現地のモーターホームの普及ぶりに目を見張ると同時に、そのベース車にフィアットが浸透していることにも驚いたという。

 で、このコンクエスト23。
 われわれ日本人にとってうれしいのは、まずオーストラリアがイギリス連邦の一国であるために、右ハンドルであるということ。
 しかもオートマ。
 右ハンドルでATというのは、実に商品価値が高い。

コンクエスト右ハンドル01

 シャシーとして使われているフィアットは、リヤワイドトレッドを持つスペシャルバージョン。
 スタンダードのトレッドが1790mmであるのに比べ、このワイドトレッド仕様は1980mm。
 リヤタイヤがボディ枠いっぱいにまで広がっているので、 「踏ん張り」 の良さが、見ただけでも伝わってくる。

コンクエスト外装02

 内装はちょっと不思議なムード。
 レイアウトや家具の作り方は、もろヨーロッパ車なのだが、どことなく微妙にアメリカンな匂いが漂ってくる。
 アメリカのジェイコ社との交流もあるから、アメリカンモーターホームの情報も頻繁に流れてくるからだという。

コンクエスト内装05 コンクエスト内装06

 家具色や内装色はアメ車っぽいし、コンロの辺りの形状もアメリカンだ。
 コンロは4口。
 そのうちの三つはLPGを熱源に使うガスコンロだが、一つだけがIHクッカーになっている。
 時代の波を感じる。

コンクエスト内装08

 ベッドは、ヨーロッパ車風のリヤハイマウントベッド。
 もちろん、その下は大型外部収納。
 ベッドはウッドスプリングが入っているので、通気性もよく、寝心地も十分。

コンクエストリヤベッド コンクエストベッド下収納

 もちろん、オーストラリアだけの創意工夫もある。
 たとえば、エントランスドア。
 表扉の裏側に、格子上の補強が入った網戸が設けられ、さらに、子供が触って開いたりしないように、チャイルドロック機構が備わっている。

コンクエストエントランスドア

 パーツもほとんど自国内で生産されるようになったらしいから、オーストラリア独自のアイデアを盛り込んだパーツもどんどん開発されているらしい。
 
 オーストラリアといえば、おなじみのカンガルーバー。
 だけど、野性のカンガルーが飛び込んで来る心配のない日本で使う限り、現地の大げさなカンガルーバーは必要ないという判断で、小型のものが付けられている。

コンクエストコアラバー

 ボナンザさんでは、これをちょっと可愛く 「コアラバー」 と呼ぶそうだ。
 フロントバンパーの役目をするので、付いていると便利だ。

 オーストラリアのキャンピングカーが正規に日本に導入されたのは、これがはじめて。
 日本のキャンピングカーシーンは、輸入車の方でもバラエティに富んだ品揃えが目立ってきた。

 お値段は、車両本体価格8,980,000円 (税込み9,429,000円) 。


campingcar | 投稿者 町田編集長 20:31 | コメント(4)| トラックバック(0)

断熱と遮熱

 キャンピングカーの冷暖房を考えるとき、ボディを断熱加工することの重要性が、最近とみに認知されるようになってきたが、それと同時に、「遮熱」 という考え方も進めていかなければならない、というビルダーの社長さんがいる。
 RVランドの阿部和麿氏である。

 阿部さんがいうには、人間が体感する 「暑さ、寒さ」 の感覚は、 「遮熱」 によって左右されることが多いのだそうだ。

 「遮熱」 とは、文字通り 「熱を遮る」 ことをいい、正確には 「熱をはね返す」 ことを意味する。
 「断熱」 と違うのは、 「断熱」 が熱を受け止めて、その熱の伝導を遅らせるということを意味するならば、 「遮熱」 は、熱そのものをはね返してしまうことをいう。

 その 「遮熱」 が、なぜキャンピングカーの 「断熱」 と同時に重要になるかというと、それが、熱の移動量の一番多い 「輻射 (ふくしゃ) 」 を遮ることになるからだそうだ。

 理科に強い人ならば、この 「輻射」 という言葉で、すでにピンと来るかもしれない。 
 理系の勉強をサボってきた私には、以下の阿部社長の講義は、はじめて聞くものばかりだった。
 
阿部和麿代表 
 ▲ 阿部和麿氏

【阿部】 人間が 「暑い」 「寒い」 「冷たい」 と感じる温度や熱の伝わり方には、3種類あるんですね。
 その一つは、 「伝導」 です。
 氷などに触れると冷たく感じるのは、氷の温度が指先に伝導されるからです。火にかけたヤカンが熱くなるのも、伝導ですね。

 二つ目は 「対流」 です。
 部屋の中の温まった空気は比重が軽くなって上昇し、冷たい空気は下に回って、部屋全体がかき回されながら温かくなるというのは、この対流の効果が現れるからなんです。

 そして三つ目が、 「輻射」 です。
 これは赤外線などに代表される電磁波による熱のことで、太陽の熱の伝わり方を思い浮かべてもらえれば分りやすいと思うのですが、例えば、天気の良い冬の日など、太陽に当たった身体がポカポカと温かくなりますよね。

 それって、不思議だと思いませんか?
 なぜなら、別に空気そのものが熱くなっているわけではないからです。

 では、なぜ、外気温が人間の体温より低い冬の日でも、人間は太陽に当たると温かく感じるのか。

 それは、太陽の赤外線が、物体と衝突するときに熱を発生するという性質を持っているからなんですね。
 このような熱の伝わり方を 「輻射」 といいます。

 で、この 「伝導」 、 「対流」 、 「輻射」 という熱の伝わり方の中で、私たちが熱量の多寡を一番強く感じるのが、実は最後の 「輻射」 なんですね。
 人間の生活空間の中で、熱の移動量全体を100とすると、 「輻射」 がそのうちの75を占め、 「対流」 が20、 「伝導」 はわずか5だと言われています。

 キャンピングカーの冷暖房を考えるとき、 「遮熱」 という考え方が大事だと言ったのは、 「遮熱」 による対策が、熱の移動量の一番多い 「輻射」 を遮ることになるからです。

 では、具体的に、この 「遮熱」 という考え方は、キャンピングカーにどのように取り入れられているのかというと、……残念ながら、この世界ではまだ大きな成果としては実っていないんですね。

 というのは、この業界では 「遮熱」 に効果のある素材を導入するための研究もまだ途上であるし、またそのような素材があったとしても、コスト高が予想されるからなんです。

 では、その素材とは何か。

 研究によると、 「輻射」 による熱反射率の最も高いものは金属の銀 (シルバー) だといいます。
 その反射率を数値で表すと、99パーセントに及びます。
 2番目は金 (ゴールド) で、その熱反射率は98パーセントになります。

 ですから、金銀で外皮を構成したキャンピングカーがあったなら、さぞや夏は涼しく、冬は暖かいキャンピングカーになることでしょう。

 しかし、これは現実的ではありませんね。
 そのようなキャンピングカーは、一部の大金持ちでも敬遠してしまうでしょう。
 なぜなら、そのような 「走る宝石」 で旅行していれば、盗難や強奪の恐怖にいつも怯えていなければならなくなるからですね。

 幸いなことに、それほど高価でない素材として、私たちは 「アルミ」 という素材を持っています。
 アルミの熱反射率は91パーセントだと言われますから、金銀に及ばないまでも、現実性はぐっと近づいてきます。

 では、キャンピングカーの外装をアルミで被えばいいかというと、そう簡単ではないんですね。
 まず、そのようなボディ技術があまり普及していないため、耐久性への配慮を含めてデータが不足していて、素材そのものも、現状ではコスト高になってしまいます。

 しかし、建築の世界において、遮熱材としてアルミ素材を上手に使う工法が普及しているといいますから、そのように住宅への浸透が進んだ段階で、キャンピングカーに適した使い方の研究も進んでくるでしょう。

 すでに、キャンピングカー以外の自動車においては、観光バスやトラックの一部で、屋根にアルミ的な効果をもたらす銀色の蒸着フィルムを貼ったり、銀色の塗装を施す試みも行われるようになってきました。

 また食品関係においても、このアルミ素材の遮熱性を利用した包装システムが普及してきました。
 コンビニなどで売られているスナック菓子の袋などを見ますと、その大半が、内側にアルミ箔を蒸着した素材を使用して、赤外線などをカットし、品物の劣化を防ぐようになっています。

 このような応用技術がキャンピングカーに採り入れられるようになるには、まだもう少し時間がかかるでしょうけれど、実は、すでにユーザーさんたちは実行しているんですね。

 たとえば、キャンピングカーでは、室内を外気温の変化や結露から守るために、フロントガラスや側面の窓ガラスを “銀マット” などで覆うマルチシェードのようなものが開発されていますが、これを使う方々がどんどん増えています。
 これなど、断熱と遮熱を効果的に行なったものといえるでしょう。

 今後は、各ビルダーさんが 「断熱」 と同時に、 「遮熱」 技術を研究・開拓することになっていくでしょう。
 そうなれば、エアコンやヒーターなどを無制限に使用することを避けることも可能となり、エネルギー資源の確保や、温室効果ガスの削減に寄与するようになるでしょう。

 ……以上、阿部社長の講義、終わり!
 勉強になりました。


campingcar | 投稿者 町田編集長 22:58 | コメント(4)| トラックバック(0)

ヴォーノ

 日本の風土、日本の使用環境に適したキャンピングカーというものを、かなり意識的にデザインしようという流れが、今年ほど顕著に現れてきた年はないように思う。

 そして、そういう新しい流れに乗ったキャンピングカーを見ていると、そこには各ビルダーの、何か吹っ切れたような 「明るさ」 、自信からくる 「華やかさ」 のようなものが、とても強く匂ってくるように思えるのだ。

 この春に開かれた幕張と名古屋のキャンピングカーショーを見ていても、国産メーカーがリリースしてきた新車には、どれもみな 「テーマ」 がはっきりと見えた。

 もちろん、それ以前だって、新車開発というものはテーマをしっかり据えてから進められてきたわけだが、ただ、昔は 「定年退職をするシニア夫婦が増えるから、2人仕様のレイアウトを考えよう」 とか、 「スポーツギアを積む若者が増えてきたからトランポを1台持とう」 といったマーケット動向をにらんだテーマ設定が主流だった。

 しかし、現在リリースされている新車を見ると、単純にマーケットの流れを追っただけの、今までの新車開発とはひと味違う “新味” がどのクルマにも溢れている。
 おそらく、各ビルダーの開発陣の頭の中に、 「キャンピングカー市場の急速な広がり」 というものがイメージされてきたのだと思う。

 だから、そういうクルマには、キャンピングカーを知らない人たちに対しても、 「夢、希望、期待感」 を抱かせるような発想が渦巻いている。

 おそらく、開発者たちが、キャンピングカー製作のプロであるという自意識をいったん捨てて、 「自分がキャンピングカーを知らない人間だとしたら、キャンピングカーに何を期待するのか」 …そういう原点に立ち返って車両開発に臨んだからだと思う。

 その例のひとつを見てみよう。
 ここに、レクビィさんがこの春投入した 「ヴォーノ」 という新車がある。
 まず、下の写真を見ていただきたい。

ヴォーノ室内011

 ちょっとした大型バスコンか、輸入車でしか見られないような、優雅でのびのびとしたL字ソファのラウンジが広がっている。
 景色の良い場所にクルマを止め、このラウンジにゆったりと腰掛けて、煎れ立てのコーヒーなど飲んだりしたら、さぞやリッチな時間を楽しむことができるだろう。
 きっと、誰もがそう思うだろう。

 だけど、こういうリビングを実現しているキャンピングカーというのは、さぞや高価で、車体もどっしりした大きさを誇るようなクルマなんだろうな…。
 次に訪れるのは、そういう感慨かもしれない。

 で、下の写真を見ていただきたい。

ヴォーノ外装01
 
 ハイエースでも一番小さくて取り回しのいい、ナローボディの標準ルーフなのだ。
 このインパクトはすごい。
 狭い住宅街をスルスルと通り抜けることを得意とするようなコンパクトボディの中に、大型輸入車でしか実現できないような、 「ゆとり」 「贅沢感」 「くつろぎ感」 を盛り込んでしまったのだ。

 こういう発想はどこから生まれてきたのか。
 このバンコンを開発したレクビィの増田浩一社長に、その狙ったところを尋ねてみた。

《 キャンピングカーのジャパン・クール 》

【町田】  ハイエースのロングバン・ロールーフを使って、このような “ゆったりラウンジ” を実現しようと思ったヒントは、どんなところから得たのですか?

レクビィ増田浩一社長01
 ▲ レクビィ 増田浩一社長

【増田】  これは、僕たちの考えた 「ジャパン・クール」 なんですわ。
 もちろん本当の意味でのジャパン・クールというのは、マンガやアニメ、ゲームの世界における “日本ブーム” を意味しているのでしょうけれど、ああいう映像文化の中で、日本が発信してきたものが世界に受け入れられたというのは、あれって、あの制作者たちが、別に海外マーケットを意識してそういうものを創りあげたのではなくてね、あくまでも等身大の自分たちのライフスタイルを無邪気に表現したものだったと思うんですよ。

【町田】  確かに、世界のマーケットに媚びた結果ではないですよね。
【増田】  そうでしょ? …そうなるとね、キャンピングカーの開発においても、もっと自分たちのライフスタイルを素直に見つめた上での楽しみ方、遊び方を追求してもいいのかな…と思ったんですね。
 じゃぁ、日本人の日本的なライフスタイルって何? …といったら、それは、小さな空間であったとしても、その空間を限りなく、豊かに、リッチに使いきろうという、様々な工夫によって生まれてきたものだという気がするんですね。

【町田】  国土が狭いわりには人口密度が高い国ですからね。

【増田】  そうそう。…ただ、それだけじゃなくてね、日本人って、むしろそういう限られた空間を好むような形で、美意識を育てたり、文化をはぐくんできたような民族じゃないですか。
 例えば、茶室。
 JRVAの広報誌にも書かれていたけれど、ああいう 「スモールスペースの中に、宇宙の広大さを封じ込める建物」 ってのは、日本人独特の感性から生まれてきたものらしいんですね。
 で、これ、大きさ的にいえば、茶室ぐらいのスペースなんですわ。

【町田】  なるほど。テイストは洋風だけど、精神は 「和の文化」 の茶室であると…。
【増田】  ま、大げさにいうとね (笑) 。で、茶室のような空間が、なんで 「くつろぎ」 とか 「ゆとり」 を感じさせるのかというと、あれねぇ、自然と一体となっているんですね。
 窓を開けると、すぐ日本庭園が見えたり、障子で仕切っても、そこに木の影が揺れて映ったり…。
 で、このクルマでも、エントランスのスライドドアを開けて、外の空気を直に味わえるような場所に、でーんとこのラウンジがあると。

【町田】  まさに、極小の室内空間が、そのまま広大な “宇宙” に直結しているというわけですね。
【増田】  そう “うまい言葉” を思い浮かべながら造ったわけではないんですけれど、まぁ、そういうことなんですわ (笑) 。

ヴォーノ04

《 スモールボディのメリット 》

【町田】  実用面においても、取り回しの良いサイズに収めたということは使い勝手の向上につながりますね。
【増田】  ええ。旅を続けていれば、時には、市内の地下駐車場に入ることもあるだろうし、古い温泉街などに入っていけば、狭い道も多い。
 そういうときに、運転手がストレスを感じない車両サイズを維持しておくというのは、日本型の “旅ぐるま” を開発するときには欠かせない配慮だと思うんですね。

【町田】  こういう感じの旅ぐるまが受け入れられるというマーケット的な読みはあったのですか?

【増田】  はい。やっぱりね、お客さんの志向が10年前くらいとは明らかに違ってきているんですね。
 昔はね、キャンピングカーといえば、 「キャンプ」 そして 「アウトドア」 。
 僕らがマスコミの取材を受けたときも、写真を撮る段になると、カメラマンから出るリクエストは、必ず 「外にテーブルを出して、バーベキューでもやっている演出をしてもらえませんか」 というものばかりだったんですわ。
 ところが、今は違うんですよ。
 「桜前線を追いかけて、日本一周を楽しんでいるようなユーザーさんを紹介してくれませんか?」
 …というように、明らかに 「旅のツール」 という意識で捉えられるようになってきたんですね。

【町田】  キャンピングカーの使い方に広がりが出てきたわけですね。
【増田】  ええ。そうなると、キャンプ道具をいっぱい搭載することができて、何もないところで快適に過ごせるような装備を満載するというクルマだけではなく、旅先でくつろぐことに主眼を置いたレイアウトだって必要になるだろうと判断したんですね。
【町田】  そういうときに、このゆったりしたL型ラウンジは、旅の疲れをいやしてくれる極上の空間を約束してくれますね。

ヴォーノ内装01

【増田】  もちろん、ご夫婦2人で使われる場合は、このラウンジをベッドにしたままの状態で、気楽な旅を楽しんでもいいわけです。
 横座りシートの座面を前にスライドさせて、シートの背もたれを載せるだけで、簡単にベッドが作れますから。

《 造っている人間も楽しめるクルマ 》

【町田】  価格的にも、買いやすい価格帯に収まっていますね。消費税込みで、370万…。 
【増田】  でも、けっこう手の込んだクルマなんですよ。普通の作り方をしていると、ちょっとこの価格では厳しいんですね。
 しかし、手を抜いてはいない。
 僕は、このクルマを現場で造っているスタッフには、 「手を抜くのではなく、造り方に慣れることによって生産性を上げろ」 と言っているんです。

ヴォーノ内装03

【町田】  慣れる…?
【増田】  つまりね、こういうクルマというのは、造っている人間たちも楽しいんでしょうね。
 黙って見ているとね、どんどん凝ったことをやり始めるんですよ。
 昔の僕だったら、
 「そんな凝ったことをやって、コストを上げてはいかん」
 と叱っていたのでしょうけれど、今はね、職人たちが楽しんで造っている方が良いクルマになると思っているんです。
 だから、
 「凝ってもいいから、早くその造り方に慣れろ!」
 …ってハッパをかけているんですけどね (笑) 。

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campingcar | 投稿者 町田編集長 22:23 | コメント(0)| トラックバック(0)

ANNEXスタイル

 「日本の文化を反映したキャンピングカー」 。
 言葉でそういうのは簡単だが、では、それはどんなキャンピングカーなのか。
 改めてそう問い直してみると、RV業界の人にも、ユーザーにも、キャンピングカーメディアに携わる人たちにも、にわかに答え切ることができない。

 しかし、それを目指して、着々と 「形」 として造り上げていくキャンピングカーメーカーの社長さんがいる。
 アネックスの田中昭市さんだ。

アネックス田中社長01
▲ アネックス 田中社長

 カムロードベースのキャブコン 「ネビュラ」 を発表して以来、アネックスのキャンピングカーはひとつの方向性を確立してきた。
 それは、欧米先進国にもない、日本独自のオリジナリティを備えたデザインを追求したものだった。
 それを、言葉で示すと 「アネックススタイル」 。

 同社は、幕張や名古屋のキャンピングカーショーでも、その展示ブースの中央に、その言葉をくっきりと掲げたディスプレイを展示した。
 ショーの会期中の忙しいさなか、田中昭市社長に 「アネックススタイルに表現されるキャンピングカーとはどんなものか」 を尋ねたみた。

アネックススタイル看板02

《 アネックススタイル 》

【町田】  ずばり 「アネックススタイル」 って何のことですか?
【田中】  「うちのオリジナル」 という意味なんです。まぁ、デザイン的なオリジナル性ということですね。
 そういうオリジナリティを備えたキャンピングカーを製作して、ひとつのライフスタイルを提案してみたい…と思って考えたキャッチなんですけどね。

【町田】  それは、どういうオリジナリティということなんでしょう?
【田中】  つい4~5年くらい前までは、日本のキャンピングカーは、ヨーロッパデザインを目指すか、アメリカンなデザインを目指すか、…そんなことを何の疑問もなく繰り返していたんですよ。
 うちも 「エディ」 というクルマを造っていたときがあるんですけど、その内装テイストはアメリカンだったんですね。
 すると、販売店の方から、
 「最近はヨーロッパ調がブームだから、エディもヨーロッパ調の内装に変えた方がいいよ」
 などと、よく言われたんですよ。
 こちらも、 「そういうもんか…」 って、何の疑問もなく、その提案に耳を傾けていたりね (笑) 。

《 本当の 「和」 の文化って何か? 》

【町田】  確かに、少し前はそういう時代でしたね。V社はライモ家具のヨーロッパ調、Y社の内装はアーリーアメリカン調とか、僕らも何の疑問もなく、そういう言葉を使って紹介記事を書いていましたものね。
【田中】  でも、それってよく考えてみると、何か変でしょ? 建築の世界とかアートの世界って、別に 「アメリカ調」 とか 「ヨーロッパ調」 などという表現を使わなくても、一流の日本人デザイナーやアーチストたちが、世界に通用するオリジナルデザインを創り出しているじゃないですか。
 なんでキャンピングカーはそうならへんのやろ…と思ってね。

【町田】  で、いろいろチャレンジされたわけですね?
【田中】  ええ。日本人なんだから 「和」 の様式を採り入れたキャンピングカーを造ってみようと考えたこともありました。
 それで、畳仕様のキャブコンを製作してみたことがあるんですよ。
 で、仕上げてみると、やっぱり自分でも、ちょっとしっくり来なかったんですね。
 今から思うと、畳とか障子を使う世界というのは、部屋全体の縦横比とか、目線の位置とか、しっかり計算された空間造形を貫かないと、サマにならないんです。
 それを、欧米家具を使うことでまとまっていたキャンピングカーの空間にそのまま投入しても、整合感が出ないのは当たり前なんですね。

【町田】  でも、そういうチャレンジも大切だったわけでしょ?
【田中】  はい。チャレンジしてみてから、そういうことに気づくわけですからね。
 それで、一からやり直そうと思いましてね。 「ネビュラ」 を設計するときには、思い切って、デザインの専門家に相談してみたんですよ。
 「アート&クラフト」 社というところの中谷さんという方ですけれど、その方から教えてもらったものは大きかったですね。

《 都会の夜景も楽しめるRV 》

【町田】  どういうことでしょう?
【田中】  結局ねぇ、その方とコンセプトメイクしていると、もう今までとは違ったアプローチが次々と出てくるので、目からウロコが落ちたというような気分になったのですよ。
 まず、キャンピングカーの内装色をどう決めるかなどという前に、どういうシチュエーションで使うと、そのクルマが輝いて見えるのか…とか、そのクルマを使っていると、周りの風景がどう違って見えてくるか…とか、もうライフスタイルから入っていくんですね。

【町田】  まず人間の生活があって、その次にキャンピングカーがあると…。
【田中】  そういうことなんですけど、ほら、キャンピングカーってどうしてもアウトドアだとか、自然の中で…というイメージがあるじゃないですか。
 しかし、自然の中で使うにせよ日本だったら、そういう場所に至るまでは都会の中を通ることもあるだろうし、場合によっては、都会の夜景を見ながら、ちょっとキャンピングカーの中でくつろぐ…というシチュエーションだって考えられるわけですよね。
 そう考えるとね、 「日本的なるもの」 っていうのは、山から1時間も走ってくれば都会に戻ってしまうという、そういう日本の生活空間を正直に見つめ直すところから生まれてくるのではないだろうか…と考えることができたんですよ。

【町田】  イメージの中の 「日本」 とか、理念の中の 「日本」 ではなくて、現代社会で生きている日本人が、自分の足で歩いて感じる 「日本」 という意味ですね。
【田中】  そう。そういうライブ感覚を持った日本文化というものを考えないと、なんか新しい提案にはならないだろうと思ったんですよ。

【町田】  ネビュラのコンセプトは 「走るモダンリビング」 でしたものね。
【田中】  ええ。今の日本人の住宅構造を見ても、必ずしも畳みと障子を使わなくても、欧米とも違う日本独自の住宅様式というのが生まれているわけじゃないですか。
 その感覚を大事にした方が、本当の意味での 「日本的なるもの」 に近づくとちゃうんかな? …って思ったわけですね。

《 リコルソに秘めた想い 》

【町田】  そのような 「生きている日本文化」 というものを、実際の車両開発では、どのように実現されたのでしょうか。
【田中】  たとえば、私たちの開発した新しいキャンピングカーで、 「リコルソ」 というバンコンがあるのですけれど、これ、見ていただくとお分かりになると思いますが、運転席とリビングを 「家具」 で仕切ってしまっているし、リヤドアを開けても、そこに壁が立ちふさがっている。
 普通に考えたら、めちゃくちゃに使い勝手の悪いバンコンなんですわ。
 でも、室内に入ってみると、もう無類に心地よいし、落ち着くんですよ。
 つまり、運転席のような “自動車的な機能” を視線から隠すことによって、クルマであることを忘れてしまうように造ったつもりなんですね。

リコルソ外形01

【田中】  で、そのことによってですね、たとえば都会の中でもちょっと景色のよいところに止めて、室内から外を眺めれば、もうそれだけで 「リゾート施設から眺めた景色」 に変わる。
 つまりね、日本という国は、欧米のように圧倒的にワイルドな自然というものが少ない。
 その代わり、ちょっと人工の手が入った 「リゾート的な景観」 なら、ものすごく豊富にある。
 そういう日本の特殊事情を楽しめるキャンピングカー空間というものを造形することが、すなわち 「日本的なるもの」 の追求なのかな? …と思うんですよ。

リコルソ内装02 リコルソ内装03

【町田】  でも、それって、ユーザーの想像力が試されるようなところがありますよね。
 たとえば、ちょっとヤシの木が植わったような海岸の駐車場に止めて、 「ここは素晴らしいリゾートだ!」 と思い込むためには、それなりの研ぎ澄まされた感性が要求されるわけでしょ?
 ある意味で、バーチャルな仮想空間で遊ぶことにも似ているわけですから。

【田中】  ええ。だからクルマの方も、そういうユーザーさんのイマジネーションが活発に働くようなデザインというものが要求されるわけですね。
 そこで、例えばリコルソでは、リゾート施設の一室から外を眺めているような 「部屋」 の感覚というものを大事にしましたし、リゾート感を出すために、家具の色合いとかソファーの材質感なども吟味しているわけです。

《 日常が旅になる 》

【町田】  確かに、日本中どこにでも 「ちょっと良い景色」 という場所はあるわけで、それが全部 「自分だけのリゾート」 になるとしたら、それはリッチな体験を得ることになりますね。
 僕はよく、こう考えるですけれど、日本という国は、どこに行ってもコンビニはあるし、立ち寄り温泉を探すのも簡単だし、それだけどんどん便利な国になってきたわけですけれど、その反面、日本中どこへ行っても、同じ景色が展開されるようになってしまった。
 そういう退屈感から逃れるためには、個性のあるキャンピングカーって必要だな…って。
 キャンピングカーという “魔法の空間” が、人間の想像力を刺激することによって、周りの風景も違ったように見えてくるな…って。

リバティLE外形01
 ▲ リバティLE

【田中】  そうなんです。もうひとつキャブコンで 「リバティLE」 というのがあるんですけれど、これは、その “リゾート地めぐり” を、さらに1ヶ月ぐらいの長期にわたって楽しめるように開発したクルマなんですが、やっぱり  「魔法の空間」 という狙いは大事であって、そのための意匠にもこだわりを持っているわけですね。
 たとえば、このエントランスステップのクロームメッキの取っ手。
 これなんか、けっこうコストが高くつくので、普通だったら絶対に使わないような部品なんですけれど、付けてみたら意外とぴったり合ってしまった。

リバティLE内装01
▲ リバティのエントランスドア脇の取っ手

【町田】  もう外せないと (笑) 。
【田中】  ええ。やっぱりこの取っ手を握って中に入るときに、この銀色の輝きが、 「さぁ、これから夢空間に突入するぞ!」 というような興奮を呼び起こすような気がして… (笑) 。

リバティLE内装03
▲ リバティLE室内

【町田】  人のイマジネーションを膨らませる力というのは、そういう細部のこだわりをいかに多く集積させたか…ということから生まれますものね。
 旅というのは、人を非日常へ誘導させることから始まるけれど、その非日常というのは、日常的な 「物」 が、普段とは違った形で現れるときに感じられるといいます。
 だから、本来ならステップの乗り降りを助けるためだけのアシストグリップが、クロームメッキの輝きを放つというだけで、それは、アシストグリップであっても、もうすでに普通のアシストグリップではない。
 そこから先は、非日常の夢空間が広がるというわけですね。

【田中】  ある大手自動車メーカーさんのCMに出てきた言葉で 「いいなぁ」 と思ったキャッチのひとつに、 「日常が旅になる」 というものがあったんですよ。
 例えば、通勤の途中で見ているような見慣れた風景も、ある日、ある陽射しの中で見ると、 「あ、こんなにきれいな場所だったんだ!」 とびっくりするようなことってあるじゃないですか。
 「日常が旅になる」 というのは、そういうことを意味していると思うんですよ。
 キャンピングカーというのは、そういう瞬間にバクっと食らい付いて、それを魅力的な 「旅」 にしてしまう力があると思うんですね。

【町田】  そういう楽しみ方を味わえるように、人間を育ててくれるクルマ…
【田中】  そのクルマがもたらすライフスタイルを、 「アネックススタイル」 。
 …まぁ、そんな気持ちを込めて、むりやりひねり出したキャッチなんですけどね (笑) 。

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campingcar | 投稿者 町田編集長 01:39 | コメント(0)| トラックバック(0)

RVのJポップ化

覆面座談会
【 Jポップ化する国産キャンピングカー 】


【A】  この2月には、幕張の 「キャンピング&RVショー」 、名古屋の 「キャンピングカーフェア」 と、春のビッグイベントが続いたわけだけど、今までのシーズンと何か変わったことってあった?
【B】  …というか、オレたちここに登場するの久しぶりだよね。昔は、よくこのブログに登場させてもらったけれど。
【C】  だけど、あいからずの扱いだよね。氏素性を紹介することもなく、いきなり 「A」 「B」 「C」 だもんな。

幕張キャンピングカーショー2009
 ▲ 幕張 「キャンピング&RVショー2009」

【A】  …ま、いいとして、今日は 「キャンピングカー業界の現在」 という座談会なんだけど。
【B】  業界というより、ユーザー層も含めた全体を語った方がいいよ。業界にも変化が訪れたけれど、客層も変ってきたから。
【C】  どう変わったっていうわけ?

【B】  名古屋のショーで、いろいろな業者さんに聞いたけれど、「キャンピングカーって知らないから見に来ました」 って人たちがものすごく増えているんだって。
【A】  新規の人たちが増えたということ? それは底辺が広がったということなんだから、業界としては歓迎すべきことなんじゃないの?

【B】  でも、いちいち説明するのが大変らしい。 「これって、普通免許で運転できるんですか?」 っていう人たちを相手にするわけだから。
【C】  「あ、トイレが付いているんだぁ!」 って驚いている見学者たちを相手にするんじゃ、営業マンも大変だろうな。
 下手にインバーターの機能なんか説明すると、見学者の頭がこんがらかっちゃうんだって。だから、尋ねられるまでは言い出さない、っていう人もいた。
【C】  いろんなキャンピングカーを眺めても、どれが自分たちの使い方に合っているのか、すぐには判断できない人たちが多くなったってことなんだよ。10年前に戻ったという人もいる。
【B】  つまり、すぐ商談には結びつかないケースが増えているっていうことだよね。

《 不況の影響を受けない業種 》

【A】  でも、いいことだよ。この大不況の時代に、ショーの来場者だけは、幕張も名古屋もすごく多かった。これは潜在的な購買層が増えたと見ていいわけで、すぐには “売り” に結びつかなくても、将来的な見通しは明るいということじゃない?
【C】  まだ分からないよね。庶民の生活が本当に苦しくなるのは今年の9月以降だろうという見方もある。

【A】  でも、みんなお金そのものを持っていないわけじゃないからね。不況の時代だといっても、息抜きがないと人間まいってしまう。そういうときは、安い遊びに向かうという傾向が出てくる。
 だから、オートキャンプって意外といいんだよ。
 現に、ショーに来ていたキャンプ場の経営者たちに聞いてみたら、一応この2月頃から始めたゴールデンウィークの予約は満杯だと答えた人たちが多かった。中にはもうお盆の予約も埋まったというところもあった。
 キャンピングカーだって初期投資は高いけれど、1台持てば安く旅行できる。そういう目で眺めれば、不況だって追い風だ。

【C】  いやぁ、買えないけれど見に来たって人も多いよ。特に若者たちは、「キャンピングカーっていいよなぁ。だけどみんな高いなぁ」 なんて話し合っているんだよね。結局、パンフレット集めて帰るだけ。
【А】  だけどね、休憩室で耳をダンボにして、立ち聞きしていたんだけどさ、明らかに愛知県のトヨタ関係者の夫婦なんだわ。
 ほら、トヨタって赤字すら計上しそうで、“派遣切り” なんかでも問題を多く抱えていてさ、まさに、一時はマスコミから企業の存亡が問われる時なんて採り上げ方されていたじゃない?
 でも、その夫婦は、いともことなげに、セカンドカーとして軽キャンピングカーを買うつもり話しているわけ。
 「ベース車をスズキにするか、スバルか、ダイハツか…」 なんて迷っているんだけどさ、夫婦の関心事は、 「トヨタ系のダイハツじゃないと、会社の駐車場に置きづらいしなぁ…」 なんて、そんなことが最大の悩みなのよ。

名古屋キャンピングカーショー2009春
 ▲ 名古屋 「キャンピングカーフェア2009」

【B】 マスコミで大げさに騒いでいるほど、不況は深刻でないということか…。
【C】 いや、消費者の志向が変わったのね。ちょっと高級で便利な台所用品とか、自炊用の家電とかは売れているというじゃない? 外で派手にお金を使うことを控える代わりに、家の中で、ちょっと安く “贅沢をする” ってのがトレンドになってきていると思う。
 キャンピングカーってのも、そういう “内向き消費” の文脈で考えると分かりやすいよね。

《 市場に理解され始めたRVの意義 》

【B】  オレねぇ、思うんだけど、 「不況だから安い遊びをしよう」 ってんでキャンプやキャンピングカーに目をつけた人たちも、そりゃ多いと思うけれど、それだけじゃなくて、キャンピングカーが提案している何かに、みんなが反応してきたんじゃないかな。
【A】  「何か」 って何よ?

【B】  会場で配られたRV協会の広報誌にも書いてあったけれど、 「家族や自然と調和しながら生きる」 というキャンピングカーの “哲学” みたいなものが、じわじわっと浸透してきているんじゃないの?
【C】  同じ “乗り物” なんだけど、乗用車とは違う何かがある…ってことだろうね。
【B】  そう。…だって、自動車業界の販売不振というのは、なにもアメリカ経済の落ち込みを受ける数年前から、ずぅーっと続いていたわけじゃない? だけどキャンピングカー業界だけは、この4年間、ずっと右肩上がりの出荷台数を維持してきたんだものね。 
 それって、何かといったら、 「新しい旅の形」 ってのを提案できているからなんだよ。

【A】  ホテルに泊まらずに、道の駅で泊まりましょうとか?
【B】  いやいや、そういうことじゃなくて、…結局、日本の風景も “近代化” に伴って、どんどん画一化されてきてさ、高速道路走っても同じ景色。ホテルに泊まっても同じサービス。
 そういう均一化された旅に飽きちゃった人にとってさ、キャンピングカーに備わっている個性が、実は 「旅の個性化」 につながってくるんだよ。
 だから、気に入った内装の、気に入った装備に囲まれて旅していれば、気分も盛り上がって、それが均一化された旅行からの 「脱出」 につながるわけよ。
【C】  ああ、それは分かりやすい例だね。そこが今のニーズに合ったのかな。

【B】  そう。それと、資源を消費して発展を遂げてきた重工業社会的な産業モデルに対して、キャンピングカーって、脱・工業社会的なイメージがあるじゃない?
 なにしろ、 「走るときより、止まっているときに本領を発揮する乗り物」 だっけ? RV協会さんのキャンペーン。
 燃料をやたら消費するのではなく、キャンプ場のような自然の中に滞在して、スロートラベルを味わうクルマ。
 そういうキャンペーンが少しずつ浸透してきた…という気がするんだ。

【C】  確かに、この不況の時代、キャンピングカー業界の人たちも 「さぁ、大変な時代が来た」 って青ざめていたわけだよね。
 しかし、実際に春のショーが始まってみれば、すぐには “売り” に結びつかないにせよ、反応はすごくいいわけじゃない? そうなればみんな 「ここは頑張って乗り切ろう」 と思うよね。
【B】  うん。やっぱりキャンピングカーには、乗用車と違った訴求ポイントがあるってことを、業界の人もみんな気づき始めてきたことは確か。
【C】  だから、ブースの作りなんかにも変化が現れてきたね。
【A】  どういう風に?

《 展示会風景にも変化のきざし 》

【C】  今までだとさぁ、戦国時代のようなノボリをたくさん立ててさ、展示車にも 「お買い得セール。このショーだけの限定価格!」 みたいな張り紙をペタペタ貼って、展示即売会みたいな雰囲気のブースが多かったけれど、それが少しずつ洗練されてきた。
【A】  いやぁ、基本的には変っていないよ。
【C】  だけど、中にはモーターショー並みに、こぎれいにブースをまとめたデザインマインドを感じさせる展示を心掛ける業者さんも出てきたよね。

【B】  そう。クルマの機能を売るというより、そのメーカーなりの思想とか哲学を売ろうという姿勢が少しずつだけど出てきているよね。
 そうなると、 「なんだ即売会か…」 と思って、あまり重視してくれなかった一般メディアの人たちも注目してくると思うよ。
【A】  オレは 「展示即売会」 的なにぎわいも必要だと思うけれどね。だって、夜店とかバザールの雰囲気って、庶民にとっては気楽でいいんだよ。
 それに、このご時世なんだから、 「うちのクルマは安いよ」 って貼り紙貼ったって、それで購買者の意識をキャッチできればいいわけじゃない?
 安く売るってのは企業努力なんだから、それを宣伝することはむしろ大事なことだよ。

【B】  そうだけど、それだけじゃ淋しい。やっぱこういう時代なんだから、「キャンピングカー業者も時代に対してこう考えていますよ」 ってアピールすることだって必要だと思うよ。
 たとえば、キャンピングカーで進められる 「エコ活動」 って何か? 
 そういう着目点って、大手企業が進めている “商売的なエコ” よりも、キャンピングカーそのものが 「エコ的使い方」 を許容する部分を含んでいるから説得力がある。

【C】  それに関しては、しっかりテーマを設定したディスプレイを掲げているところも出てきたよね。
【B】  まず、キャンピングカーそのものが変ってきたものね。
【A】  どういうふうに変ったというわけ?

【B】  開発ポリシーというものを 「形」 として表現したクルマというものが出てきたもの。中には自動車の大手メーカーですら注目するようなアイデアを披露するものまで登場した。
【C】  うん。いいことだよ。キャンピングカーって、自動車メーカーが供給するベース車の機能まで変えるわけにはいかないというハンディがあって、その部分ではやることが限られていたけれど、その自動車メーカーも振り向いてくれるようなアイデアを提供するって大事なことだよね。

《 カッコいいRVが急増した背景 》

【A】  確かに、まぁカッコいいキャンピングカーが増えたよな。中には 「あのベース車からこんなデザインが生まれるの?」 ってびっくりするような作品がバンバン出てくるようになったものな。
【B】  オレさぁ、「国産車のJポップ化」 が進んできたと思うの。
【A】  また、訳の分からないこと言い出す。

【B】  Jポップってさぁ、最初は洋楽のマネっ子から始まったわけじゃない? 今までの演歌・歌謡曲路線とは違う洋楽風のリズムやメロディで曲作りをして、洋楽ファンの間にも浸透することを図ったわけだよね。
 だけど、最初のうちは、やっぱり日本人の体質に沁み込んでいる 「和音階」 のメロディーラインから抜け出せなくてさ、サビの部分なんかになると、モロ歌謡曲になっちゃう曲もいっぱいあったよね。
【C】  歌詞だけ 「Hey Baby!」 でお茶をにごすとかね。
【A】  グループサウンズ的なノリでね。

【B】  それがどんどん洗練されてきちゃってさ、オレ、ミーシャの 「Everything」 なんか聞いたときは、 「あ、もう日本人には洋楽って必要ないのかもしれない」 …ぐらいに思っちゃったわけ。サビの部分も歌謡曲的な匂いがないんだもの。
 だけど 「洋楽か?」 っていったら、やはり違うのよ。世界のどこにもない日本のポップスになっているわけ。

【A】  それがキャンピングカーとどう結びつくのよ。
【B】  だから、国産キャンピングカーも、そうなってきているということなの。
 今までは、欧米の先進国のキャンピングカーが国産車の手本だったわけでしょ?
 造る方も使う方も、そういう頭があったから、キャンピングカーメーカーも装備類から内装デザインに及ぶまで、みな欧米コンセプトで造ってきたわけ。
 だけどさぁ、ベース車そのものも違えば、レギュレーションだって違うわけで、そっくり欧米のものを移植するなんて、どだい無理なわけでさ。
【C】  そこのところは、 「なんとなく気分で分ってよ」 という、作り手と買い手の暗黙の了承があったわけだよね。

《 国産RVのJポップ化が意味するもの 》

【B】  そうそう。だけど中には洋楽のように、向こうの基準がすべて正しいと思う人たちもいてさ。
 そういう人たちは 「あれも足りない、これも足りない」 って、すべて輸入モデルを基準にして、国産車をクサしていたわけだけど、日本の技術ってすごくてさ。いつの間にか、この国の風土や使用環境に適したものをものすごく洗練された形で練り上げてきたんだよね。
 今までは、それをあまり意識的に追求してはこなかったけれど、最近はそれを 「戦略」 として、むしろ商品価値を高める素材として使おうというメーカーもでてきたわけ。
 その成果がぼちぼちと浮上してきたのが、ちょうど今年あたりからだろうと思っているんだけどね。

【A】  でも、なんかそういうのって、閉鎖的じゃない? マーケットを国内に限定しているから、そういう話になるんであってね。
 やっぱ国際商品を目指さなければ 「普遍性」 って獲得できないでしょ。
 海外にも通用するようなベース車なりを得て、向こうのレギュレーションに適合するようなものを実際に販売してから、初めて誇れるものになると思うがなぁ…。
 オレはね、どんな文化でも、…それこそ商品だって、海外との緊張関係を失ったら衰退してしまうと思うの。
 だって、日本の国力がわぁーっと上がっていた時代って、どんな時代だったと思う?
 たとえば、天平の時代とかは、大陸や半島との緊張関係が日本人たちをピリピリさせたから、政治や文化が発展したでしょ。
 鎌倉時代だって、大陸の元との緊張関係があって、はじめて運慶のようなリアリズム芸術が生まれるし、日蓮のような宗教家も登場する。
 いちばん良い例は幕末だよね。
 黒船に脅かされて、日本人は初めて海外に目を向けて、「こりゃ大変だわ」 となったわけじゃない? 
 それが日本人の向上心に火を付けたわけでさ。
 キャンピングカーだって、 「日本のデザインすごいぞ!」 なんてふんぞり返っていたら、すぐ中国や韓国に足元をすくわれるって。

【B】  いや、それはまた別の話でね。日本人が日本国内で使うキャンピングカーに関しては、もう立派な 「日本デザイン」 が成立していると認めていいと思うよ。
 それが、今度は中国や韓国のキャンピングカーづくりに影響を及ぼしていくかもしれないじゃない?
 つまりね、欧米のマネッ子を脱出することに自覚的なメーカーも出てきたということなのよ。
 音楽でいえば、サビの部分で 「和音階」 に流れて、どっちつかずの曲になるのではなく、音としての独立性を高めてきた今のJポップみたいに、デザインの独立性を高めたキャンピングカーが生まれているんだよ。

【A】  そうかなぁ…。でも、やっぱり今の国産ビルダーのカタログ見ても、やたら 「ヨーロッパ調のデザイン」 とかって言葉を使って、自分たちの基準を海外に置いている宣伝の仕方って多いよ。
 でも、それが正しいんだよ。日本のキャンピングカーが欧米先進国から学ぶべきことは、逆にこれからもっと増えると思う。

【B】  でも音楽ではさぁ、最近の若いJポップのアーチストもさ、もう自分たちのお手本そのものが 「Jポップ」 なんだよ。
 昔のミュージシャンは違うよね。サザンの桑田さんなんかは、ルーツとなっているものがモロにビートルズだったり、クラプトンだったり、モータウンサウンズだったりすることが分かるわけじゃない?
 ミスチルなんかもビートルズの影を感じるよね。
 竹内まりやなんて、基本的には60年代アメリカンポップスのオールディズの路線。
 ブルーハーツなんかはパンクだったしさ。
 だけど、今はそういう先輩たちがやってきた日本のポップスを手本にして、自分たちの音を作っちゃう若い層が出てきているのね。
 だから、キャンピングカーも “日本風のカッコよさ” ってものをつくり出す若手のビルダーなんかが出てくるのは時間の問題だよ。

《 普遍的な文化はローカルな場所から生まれる 》

【A】  ただね、音楽だって、やっぱクラシックにせよ、ポップスにせよ、向こうの伝統と文化の背景を背負っているものは、やっぱり深みが違うよ。
 キャンピングカーだって、向こうの連中に愛されているものともなれば、やっぱり考えていることのレベルが違うもの。
 内装のデザイン性みたいなものだけならば、そりゃJポップ的な洗練度を国産車も持つようになったけれど、パッケージングを含めた機能的な総合力でいえば、まだ太刀打ちできないって。

【C】  ちょっと言っていい? 音楽でもさぁ、アートでもいいけれど、いま通用している普遍性ってさぁ。元はものすごくローカルなものじゃない? クラシック音楽なんていったって、ヨーロッパ地域の限定された世界における音楽理論が元になっているに過ぎないわけでさ。
 Jポップだって、ひょっとしたら、新しい時代の 「ワールドスタンダード」 に育っていくかもしんないじゃない?

【A】  音楽とキャンピングカーは一緒にできないって。だって、音楽は法令なんかで拘束されるものは何もない。
 だけど、キャンピング車となれば、各国の法令でさまざまな規定があって、それを乗り越えるのは簡単なことじゃない。
【B】  それはそうだけど、法令なんてものは、 「人間の暮らしを良くする」 ためのものに過ぎないんだから、日本のRVが、世界に発信できる技術なり、デザインを持つようになれば、世界の方が変っていくかもしれないじゃない?
 現に、日本のアニメとかゲームが 「ジャパン・クール」 といわれるように、一つの文化として評価されるようになっていることを考えれば、まずは内装デザインだけでも、世界のトレンドとして通用するものが生まれていくかもしれない。

【A】  でもね、 「機能」 があってのキャンピングカーだよ。芸術作品じゃないんだから。
 まず第一に、ベース車そのものの走りや安定性に関して不満を持っている人があまりにも多いよね。安全性だって、今のままでいいのか。
 そういうところに目をつぶって、「デザインが進んだ」 なんて、まだ手放しで褒められないでしょ。
 日本風のデザインコンセプトっていったって、例えば、キャブコンでいえば、トイレ・シャワーもない小型のキャブコンが主流というような話になっちゃうけれど、使う人の中には、キッチンの上に卓上コンロを置いただけで、ポリタンクの20リットルを積んでいるだけじゃ 「使えない」 っていう人だっていっぱいいるもの。

《 外食産業と似ているRV産業 》

【B】  いやいや、そういう人たちにはそれなりのクルマが用意されているところが日本のいいところでさ。
 キャンピングカーでも、こんなに車種バリエーションが豊富な国って、海外を見てもちょっとないよ。
 そこのところはさぁ、まさに日本の外食産業と似ているのよ。
 日本にいれば、「和」 はもとより、 「フレンチ」 「イタリアン」 「中華」 から 「インド」 「東南アジア」 …すべての料理が食べられる。しかも “おいしく” 。

【A】  でも、本場の本当の超一級にはかなわないぜ。……結論は町田さんに聞いてみよう。
【B】  だめだよ、あの人は自分のキャンピングカーの中で、一人で酒飲んで  「70年代ソウルミュージック」 を聞いて涙を流しているような人だもの。洋楽派なんだよ。
【C】  団塊の世代の限界だな。


campingcar | 投稿者 町田編集長 00:10 | コメント(0)| トラックバック(0)

トイファクトリー

【 トイファクトリー 藤井社長インタビュー 】

 未来社会に対する積極的な提言を、今キャンピングカー業界から一番強く発信しているメーカーとしてトイファクトリーさんの存在感は大きい。
 「断熱」 「ソーラーパネル」 「床暖房」 。
 それらの技術を駆使した同社の車両開発は、2009年のキャンピングカー産業の現在を語る上で欠かせないものだ。
 同社の藤井昭文社長に、数々の新技術を開発した背景やその苦労話をうかがってみた。

《 キャンピングカーは環境に優しくなれるのか 》

【町田】  この春に幕張で行なわれた 「キャンピング&RVショー」 を皮切りに、トイファクトリーさんは、未来に対する積極的な提言を秘めた新製品を次々と投入されているわけですが、そのテーマはみな 「環境対策」 という視点で統一されています。
 このような環境への “まなざし” をキャンピングカー開発に盛り込もうと考えられた動機は、どのようなところにあるのでしょうか。

トイファクトリー幕張展示風景01
▲ トイファクトリー 幕張ショー展示風景

【藤井】  地球の温暖化防止、エネルギー源の枯渇などが、人々の日常生活の中にも話題として採り上げられるような時代になると、僕たちのようなキャンピングカーメーカーといえども、21世紀を生きる企業としては、もう見逃すことのできない大問題だと感じていたんですね。
 そこで、いろいろなユーザーさんたちを中心に、「環境に適したクルマだったら、少しぐらい高くても買いますか?」
 という質問を投げかけてみたのですが、すると、大多数の皆さんが 「買うよ」 というんですよ。
 「なぜ?」 と尋ねると、
 「自然の中で遊ばせてもらっているのだから、それへの対策を施しているクルマに乗るのは、キャンピングカー乗りの責務だ」
 というような答が、実に多く返ってきたんですね。
 やはり、「自分だけが快適であればいい」 という時代は終わったと考えている人が増えてきたのではないでしょうか。
 たとえば、トヨタさんが発売されているハイブリッドカーのプリウスなどが人気を集めているというのも、そういう気分を反映しているように思うんですね。

【町田】 なるほど。キャンピングカーに乗るユーザーさんたちの意識も、変ってきたというわけですか。
【藤井】 ええ。僕もちょっと意外に思えるほど、ユーザーさんたちの意識は進んでいたんですね。
 それと、昨年デュッセルドルフで開かれた 「RV世界会議」 でも、各国のRVメーカーの首脳陣たちに、「一番大事なテーマは何か?」 ということをできるだけ聞いてみたんです。
 すると、当社が輸入販売を行うフェント・キャラバン (FENDT CARAVAN) の社長も含め、みな口々に 「今が世界の転換期なんだよ」 というわけです。
 どういうことかというと、やはりヨーロッパなどでは 「環境負荷を低減する」 ということがRV業界でも重要課題になっていると。
 僕たちが今回の車両造りの参考にしている場所として、世界で最もエコロジー技術が進んでいるといわれる南ドイツのフライブルグという町があるのですが、そこの代表に話を聞いても、やはり燃料電池とか、エタノールなどという化石燃料に代わる代替燃料に関心を深めていることが分かったんです。

バーデン外形02 バーデン内装02 
 ▲ 新しい提案を秘めたトイファクトリーの新型バンコン 「バーデン」

《 断熱対策のもたらす本当の意義 》

【町田】  それを知って、トイファクトリーさんも率先して環境問題にコミットしなければならないと思ったわけですね。
【藤井】  はい。このままでは日本のRV業界は、世界のRV社会から見捨てられるのではないかというほどの危機意識を抱きましたね。
【町田】  そこで、このたびその 「環境対策」 を全面的に打ち出したキャンピングカーを全面的にリリースされたということなのでしょうけれど、具体的には、どういうシステムを構築されたのでしょうか。

【藤井】  「環境対策」 というと大げさかもしれませんが、しっかり環境を意識した車両造りを行いたいと考えたわけです。
 僕たちは、これまでも 「断熱対策」 というものに力を入れて、ずっとそれに取り組んできたつもりなんです。
 ただ、「断熱対策」 が、具体的に地球環境の保全にどれだけつながるのかということを、僕たちも実証的なデータとして持ってはいなかったんですね。
 そこで、それを主観性が混入する恐れのある自社取りデータではなく、しっかりした研究機関を通して研究を進め、それを発表するようにしたのです。
 具体的にいうと、LCA (LIfe Cycle Аssessment = ライフ・サイクル・アセスメント) という仕組みなのですが、そこの研究に準じて専門家の指導のもとにデータ取りの成果を評価してもらい、それを公開するという手順を踏みました。
 まぁ、僕たちの今までの断熱へのこだわりの本当の成果を見ていただくという意味もありました。皆さんに、断熱は本当に効果があることを理解していただくため……という気持ちが一番強かったのかもしれません(笑)。

【町田】  そのLCAというものを少し説明してください。
【藤井】  これは、各企業やサービス部門の環境対策を評価する産業環境管理協会という団体で、ある製品なりサービスなりの 「製造」 「輸送」 「使用」 「廃棄」 「再利用」 まで含め、そのインプット、アウトプットを拾い出し、それがどれくらいの環境負荷を及ぼすものなのかを審議してですね、さらに、それに対する対策を施した製品などが、具体的にどれくらいの環境負荷の低減を実現したか…ということを測定する機関なんですね。
 日本では、1995年に産官学の協力によって、「LCA日本フォーラム」 というものが設立されまして、現在では、環境負荷削減に取り組む企業、組織などを表彰するようなシステムもできあがっています。

トイファクトリー幕張ショーブース
 ▲ 「エコ」 を訴求ポイントに挙げたトイファクトリーの幕張ショーブース

【町田】  なるほど。そうやって得られたデータをどのように活用されたわけですか。
【藤井】  はい。それを数十ページの報告書にまとめてですね、経済産業省の方に提出しています。
 そこで、各企業のそれぞれの環境活動の実績をまとめた報告書のようなものとして、『製品グリーンパフォーマンス高度化推進事業』 というものが編纂されるわけですが、その中に、トイファクトリーから 「断熱キャンピングカーのLCA効果」 というような形で発表されることが決まりました。

【町田】  その成果を、すこし具体的に説明していただけますか?
【藤井】  断熱ボディを造ることで達成されるものの一つとして、エンジンをアイドリングしてヒーター、クーラー効果を得るという方法から脱出することができます。
 そこで、実際にそれがどのくらいの効果を得るのかということを、実際、断熱したバンコンと断熱加工をしていないバンコンの同時走行テストを行なって測定してみたんです。
 すると、断熱加工したバンコンの計測燃費は、リッター当たり0.95kmに相当することがLCA評価基準に基づいて実証されたんですね。

【町田】  何か分かりやすい “例え” でいうと、どういうことなんでしょう。
【藤井】  このリッター当たり0.95kmという数値はですね、年間走行距離を10,000kmと仮定した場合、年間に280kgのCOの排出減に相当するんです。
 一般的に、杉の木が1年間に吸収するCOは約14kgだといわれています。
 すると、僕たちが開発する断熱バンコンというのは、1台で杉の木20本分のCO削減効果が達成できるんです。

【町田】  地球全体にもたらす効果は微々たるものかもしれませんけれど、台数が増えると大きな力になりますね。
【藤井】  はい。その力をさらに増大させるために、このほど開発したのが、「ソーラーバンコン」 です。
 これは、もう最初からルーフにソーラーパネルを搭載することを前提として、ルーフと一体型となったパネルスペースを製作しました。
 最初は 「カッコよくソラーパネルを載せたいなぁ」 と思ったのがきっかけでしたけれど (笑) 。

トイファクトリーソーラーパネル02
 ▲ TOYsBOXに搭載されたソーラーパネル

《 ソーラーパネルでCO削減に協力 》

【町田】  それは全車に装着可能なんですか?
【藤井】  ええ。今はまだオプションですが、全車に搭載できるようにしました。
 ソーラーシステムの特徴は、ご存知のように 「化石燃料に依存しない」 というところにあるわけですね。
 これも計算してみると、僕たちのソーラーバンコンに搭載されるパネルの発電量は年間約166キロワットなんです。
 これを日本の全電力の平均COの発生量と比較すると、年間約52kgの排出量低減に相当することが分かりました。
 先ほどの杉の木の例でいいますと、杉の木が1年間に吸収するCOは、約14kgといわれていますから、トイファクトリーのソーラーバンコンは、1台で杉の木の3.7本分のCOの削減効果があるということなんですね。

【町田】  なるほど。説得力がある (笑) 。
【藤井】  はい (笑) 。2005年の 「京都議定書」 では、日本の温室効果ガス排出量を2012年までに、1990年を基準年として、そこから6パーセント削減することを謳いましたよね。
 そこで 「チーム-6パーセント」 などの活動を通じて、いま国は、それを国民的なプロジェクトとして進めているところですけれど、僕たちの会社もそれに貢献するために、「ソーラーバンコン1000台」 を目指すという運動を展開しています。
 もしそれが実現したら、その効果は3,700本の杉の木、つまり東京ドームの4分の1個分の森に相当するCOの削減に協力することができます。

【町田】  そのような研究は独自で行なわれたわけですか?
【藤井】  いや、自社だけでやる研究には限界がありますので、これは琉球大学の工学部と共同して研究しているところです。
 幸い、私たちの工場が岐阜県のほかに沖縄にもあるものですから、とても連絡がいいんですね。
 沖縄は太陽光が強いので、四六時中データが取れます。
 で、そういう環境を利用して、バッテリーにチャージするのに一番効率のよいシステムというものを、琉球大学の力を借りて開発しているところです。
 おそらく、突入する電力の一番高いところを維持できるような機械的なシステムを構築することができるはずです。

《 画期的な床暖房システム 》

【町田】  そのソーラーシステムの開発と同時に、床暖房に対しても、新しい提案をなさいましたね。
【藤井】  はい。たとえば、僕たちが新しく開発した 「エコロ」 という新型ライト/タウンベースのバンコンがありますが、これなどは、この限られた空間の中にもしっかりした床暖房を実現しています。

エコロ外形01 エコロ内装01
 ▲ ライト/タウンエースベースの 「エコロ」

【町田】  どういう構造の暖房なのでしょう。
【藤井】  新型ライト/タウンベースの場合、一番下に発泡断熱材を敷くんですね。その上にコンパネ材を敷きまして、それからセラミック塗装を施して、その上に0.4mmのPTCという発熱体を敷きます。
 その上に、さらに4mmのベニヤ版が入り、全部で5層~6層になっています。

【町田】  PTCって何です? ごめんなさい、工学的な知識に暗くて…。
【藤井】  PTCというのは、「自己温度制御機能」 を持つ発熱体で、特殊インクをフィルムに塗布して、超薄型の……フレキシブルシートといいますけど、そういうシートで仕上げた発熱体なんですね。
 このPTCという面状発熱体による遠赤外線効果を利用したのが、僕たちの暖房システムなんですけど、そのPTCを収めたフィルムが、わずか0.4mmという薄さを実現しているので、まず厚みを取らない。だから、室内のクリアランスを十分に確保できる。
 それと、従来の熱線方式と違って、火災が生じたりする危険性を免れるという特徴があります。

トイファクトリー床暖房模型01
 ▲ 「エコロ」 に搭載された床暖房の説明模型

【町田】  従来の床暖房というのは、床に熱線を通したり、お湯を配管で回したりするシステムが一般的でしたよね。
【藤井】  はい。それがもう全然違うんですね。
 実は、僕たちもコースターをベースに床暖房を開発したことがあったんですけど、それは、単純にホースを通して、その中にラジエーターの水を回す方式だったり、後は、断熱材の周りにFFヒーターの熱を落とし込んだりするシステムだったのですが、それだと、どうしてもバンコンのようなクルマの場合は、室内高が取りづらくなってしまうんですね。
 また、そういう方式では、エコロジーという観点からも問題が出てくる。
 そこで、このシステムを採用することを決めたんです。

【町田】  いつ頃から、開発を進めていたのですか?
【藤井】  もう、去年の幕張のショーが終わった頃から、断熱を高めていくという方向で、床暖房の研究にも着手していましたね。
【町田】  その成果が実って、省エネと安全性の両方が確保できたと…。
【藤井】  はい、その通りですね。結局今までのものは電気が絶えず入れていないと熱源を確保できなかったんですが、これはON/OFFがフレキシブルにできるわけです。
 ある一定温度までは温度が上がるんですけど、上がった瞬間に、その温度を保ったまま暖房機能が解除される。
 そして、冷えてくるとまた熱を出す。最低温度は20度から最高は300度ぐらいまで設定できます。

【町田】  すごいですねぇ! そのような暖房システムを採り入れたキャンピングカーというのは、海外にはあるのでしょうか。
【藤井】  私が知っている限りないんですよ。ヨーロッパでも、まだ熱線を入れるような前のシステムのままなんですね。
 日本では、すでに住宅などでは相当普及しているシステムなんですが、それをクルマに採り入れているところは、まだないと思います。

《 大手メーカーも注目 》

【町田】  藤井さんの話をうかがっていると、日本のキャンピングカーの技術水準が非常に高まってきたような印象を受けます。
 なんか、キャンピングカー業界の将来は明るいぞ、という希望のようなものが湧いてきますね。
【藤井】  そういってくださると嬉しいですね。
 おかげさまで、こういう僕たちの方向性を大手自動車メーカーさんも評価してくださいまして、全国のトヨペットディーラーに、僕たちのクルマが持っているソーラーパネルの意義とか面白さを採り上げてもらえるようになりました。
 
【町田】  それは、具体的にはどういうことなんですか?
【藤井】  大手自動車メーカーさんが、最近 「クルマをベースにした新しい楽しみ方」 について、全国のディーラーさんにアイデアを募集したんですね。
 それで、全国のディーラーさんから様々なアイデアが寄せられたようなのですが、その中で選ばれたのが、ECO (エコ) を意識した私たちが提案したクルマだったんです。
 断熱とかソーラーを提案した 「環境対策の時代を見据えたクルマ」 ということが評価されたというわけですね。

【町田】  ちなみに、ほかの乗用車ディーラーさんから出ていたアイデアというのは、どのようなものだったんですか?
【藤井】  詳しくは聞いていないのですが、「エアロの装着」 とか 「新しいスポーツタイプデザイン」 などといった外形的な処理を提案したものが多かったと聞いています。
【町田】  やはり、未来型の自動車を提案する場合、「社会性」 「公共性」 というものが必要になってきたということなんでしょうね。

【藤井】  ええ。そこから話が進みまして、今トヨタさんが公開している 「トヨペットスクエア」 というホームページには、ハイエースのコーナーがありまして、大げさかもしれませんが 「ハイエースキャンピングカーの代表」 という形で、うちのトイズ・ボックス (TOYsBOX) が紹介されたりしています。それに乗ったオーナー様がどのように楽しまれているかなどということも紹介されていて、本当にうれしいことです。

【町田】  なるほど。「トヨタ公認のRV車両」 というわけですね。
 トイファクトリーさんの車両開発が、キャンピングカー業界全体の認知度を高めたことは確かなようですね。


campingcar | 投稿者 町田編集長 00:35 | コメント(0)| トラックバック(0)

RV世界会議

 千葉県の幕張で開かれた 「キャンピング&RVショー2009」 は盛況のうちに幕を閉じた。
 3日間取材して、日本のRV業界の活力というものを、本当に実感することができた。

 会場では、日本RV協会が発行する広報誌 『くるま旅』 第5号が配布されたが、この広報誌の編集をお手伝いさせてもらった関係上、取材ネタとして残した資料が手元にある。

 今回は、日本RV協会さんの承諾を得て、その資料の中から日本RV協会・海外情報部の猪俣慶喜氏のインタビュー記事をここに公開する。 
 基本的な内容は、『くるま旅』 5号に掲載されたものと同じだが、広報誌においてはスペース的な関係もあって割愛せざるを得なかった部分があった。

 ここに公開するのは、広報誌では割愛した部分を含めたインタビュー記事の全貌である。


《 RV世界会議について 》

 2008年9月4日に、ドイツ・デュッセルドルフのキャンピングカーショー 「キャラバンサロン2008」 にて開催された会議。
 日本、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、中国の各国代表がそれぞれ自国のキャンピングカー産業の現状とその使用環境を報告しあい、将来の展望を語り合った。
 日本からは 「日本RV協会 (JRVA) 」 前会長・増田英樹氏ほか、事務局・矢久保達也氏、海外情報部・猪俣慶喜氏ら3名が出席。他に会議の傍聴者として、RV協会から5社6名が参加した。

RV世界会議01増田前会長
▲ 議長のトレバー・ワトソン氏 (英国) と増田英樹前会長

《 世界のRV業者が集まった初の国際会議 》

【町田】  まず、この 「RV世界会議」 に参加した国々を教えてください。

【猪俣】  国単位という意味では、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、中国なんですが、ヨーロッパの場合はドイツのRV協会がヨーロッパ全域のRV事業者を代表する形でプレゼンテーションを行っていましたね。
 司会は、国際自動車連盟 (FIA) の副代表で、英国キャラバンクラブの代表も務めるイギリス人が務めていました。
 とにかく、今までキャンピングカー産業というのは、欧米中心のように思われていましたが、今やアジア、アフリカ、オセアニアにまで広がってきていることがこの度の会議で分かりました。

【町田】  これが第1回目の会議ということなんですが、このようなRV業界の国際会議が開かれた背景には、どのような事情があったのでしょう?

日本代表プレゼンター猪俣氏
▲ 壇上で基調報告を行うプレゼンターの猪俣氏

【猪俣】  ひとつには、経済問題や環境問題が世界規模で深刻化し、文明的な行き詰まり感も広がってきた中で、RV産業は時代とどう関わるのか。そういう問題意識が生まれてきたということですね。
 また、ビジネス的な側面から見ると、欧米ともに国内マーケットがピークを極める時期が読めてきて、さらなる市場を開拓するためには 「輸出」 が必要だという認識に達したからではないでしょうか。
 だからこの会議では、それぞれの国が、お互いのマーケットや法規制を報告しあって、お互いの輸出の可能性を探るという目的があったと思います。

【町田】  会議のプレゼンテーションの雰囲気はどんなものだったのですか?

【猪俣】  国によって違うのですが、一番面白くて充実していたのは、やはりアメリカのRV協会であるRVIAのプレゼンでしたね。
 とにかく喋りも慣れているし、笑いを取りつつ場を盛り上げるコツを心得ていました。彼らは、こういう場が一種の 「セレモニー」 であり 「フェスティバル」 だという認識を持っているんですね。


《 悩みもあれば希望もある各国代表 》

【町田】  アメリカ代表が発したメッセージそのものは、どんな内容でしたか?

【猪俣】  やはり自分たちの抱えている問題を正確に把握して、それを正直に発表していました。
 たとえば、ここ10年ほどアメリカのRVは車体も大きくなって、豪華になってきたわけですね。その分、当然重量も重くなり、燃費も悪くなりました。
 そういう流れが、原油資源の枯渇や地球の温暖化が問題視されている今の時代に合っているのかどうか。彼らにも心配はあるわけです。
 そういった懸念も正直に告白しつつ、ベース車の問題としてディーゼルが見直される時代になるだろうという予測も交え、アメリカンRVの新しい方向を模索する姿勢には共感できました。

【町田】  ヨーロッパの代表の意見はどのようなものでしたか?

【猪俣】  ヨーロッパもアメリカと同じような問題を抱えています。世界的な景気後退や環境問題を意識して、軽量小型のベース車の開発やオーバースペック (過剰装備) の見直しを図らねばならないことを模索しているように感じられました。
 ただ、ヨーロッパは、もともとベース車そのものに省資源やエコロジーを意識したものが多いですから、その方向にシフトしていくとなれば対応するのは早いかもしれません。

【町田】  それ以外のエリアの代表はどうだったのですか?

【猪俣】  まず、オーストラリアのRV業界が、産業規模からいってもマーケットからいっても、欧米に次ぐ地歩を築いてきていることが分かりました。
 オーストラリアでは、RV産業を社会全体が発展する要 (かなめ) として捉えているようなところがあります。
 この国は豊かな自然に恵まれているおかげもあって、RVだけでなく、アウトドアレジャーを広く振興させるための社会的合意を形成していこうという気運があるように感じられました。

【町田】  カナダはどうですか?

【猪俣】  この国もRV先進国であることは間違いありません。アメリカと地続きでもあるため、アメリカと同じRV文化を共有しています。
 また、アメリカ以上に自然環境が豊かな国ですから、RV産業の育成にもそういう風土と調和するような方向を模索しているという雰囲気がありましたね。

【町田】  南アフリカにRV業界があったというのが、少し意外な感じもするのですが…。

【猪俣】  南アフリカ共和国というのは他のアフリカ新興国とは違い、昔から政府の主要機関や基幹産業はオランダ系の白人によって運営されています。文化的には 「ヨーロッパ」 なんですね。
 南アフリカは、アフリカのサバンナなどを見学する観光にも力を入れています。だからこの国では、自然観光に適した特殊なRVが開発されています。そこがユニークなところですね。

【町田】  中国はどうでしょう?

【猪俣】  市場としても産業としても、まだ立ち上がったばかりの国なので、いずれも発展途上です。
 RVが文化として浸透し、成熟していくにはまだ時間がかかりそうですが、情熱とか意欲に関しては、他のRV先進国に負けない気概というものを感じました。

【町田】  なるほど。キャンピングカー先進国の欧米では、ベース車の見直しを含め、エネルギー問題や地球温暖化対策をにらんだ真摯な取り組み姿勢を示しているというわけですね。
 一方、キャンピングカーの発展途上国では、自然や環境との調和を意識したRV開発を目指していると。
 まさに、世界のさまざまな産業が直面している課題を、この業界も率先して受けとめ、前向きに進んでいるということが伝わってきました。

RV世界会議の様子

《 日本文化に高い注目が集まる 》

【町田】  日本のプレゼンターとして、猪俣さんが報告されたのはどのような内容のものだったのでしょう?

【猪俣】  日本のRV業界の生産台数や売上金額も含め、産業規模やインフラ整備の状況は 「キャンピングカー白書2008」 のデータを元に正確に伝えました。
 ただ、そういう数値的なデータよりも、彼らが関心を持ったのは日本型キャンピングカーの持つ珍しい文化だったんですね。

【町田】  どういうことでしょう?

【猪俣】  たとえば軽自動車のような超スモールキャンピングカー。こういうものは海外のカテゴリーにはないわけです。
 それを、私は日本特有の 「茶室」 や 「盆栽」 などという文化の延長線上にあるものだという形で、日本文化を代表する文物の画像なども例に採りながら紹介したんですね。それはかなり海外の人たちの目を惹きました。

【町田】  確かに今日本のアニメ、ゲームなどを中心にした日本のエンターティメント文化が欧米やアジアの若者たちから評価され、「ジャパン・クール」 というブームが起こっています。
 スシのような日本食も海外で定着しましたし、盆栽や墨絵といった伝統芸能を楽しむ外国人も増えています。
 日本のキャンピングカーが海外の代表から興味を持たれたというのは、そういう文脈の中で解釈すればよろしいのでしょうか。

【猪俣】  そうですね。やはりキャンピングカーにもその国固有の文化が反映しているというアプローチが良かったのだろうと思います。
 軽キャンパーのような日本独自の小型キャンピングカーが生まれてきた理由も、道路事情や税制上のメリットで説明するより、「宇宙の広大さを、極小の世界に閉じこめる日本文化が反映されたものだ」 と説明した方が反応がありましたね。

【町田】  面白いですねぇ! 聞いた話なんですが、フランスあたりでは、インテリの条件として、「日本文化に精通していること」 というのがあるそうなんですね。
 フランスあたりから、日本にやってくる観光客というのは、『源氏物語』 なども読んでくる人がいるとか。
 キャンピングカーにおいても、海外の人に日本のキャンピングカーを理解してもらうためには、今後そういうアプローチも必要になってくるかもしれませんね。

【猪俣】  それは必要でしょうね。だいたいハイエースなどをベースにした日本型クラスBというものが、海外にはありませんから。
 そういう車両の中には 「畳」 や 「障子」 を使った 「茶室」 みたいなキャンピングカーもあるということを画像も交えて紹介すると、彼らは興味を感じるようなんですね。

クエスト室内_2 クエスト室内_1

【町田】  「障子」 という素材そのものが天然素材ですし、そのようなエコロジカルな素材を使って、建物の内側と外に広がる自然との調和を保つという発想は、石の建築文化を築いてきた西洋にはないですものね。

【猪俣】  そうなんですね。日本にはそのようなキャンピングカーも生まれているということは、欧米人の発想を大いに刺激したのではないでしょうか。
 彼らは、アメ車やヨーロッパ車だけがスタンダードだと信じていたのに、まったく別のスタイルを持つRVがこの世に存在するということが面白くてしょうがない…という感じでした。

【町田】  彼らの目には、そういう日本型キャンピングカーが評価できるものとして映ったのでしょうか?

【猪俣】  そういうものが 「主流」 になるとは思わないでしょうけれど、少なくとも自分たちのRV文化を刺激する材料にはなったと思います。
 私のプレゼンが終わった後、アメリカRVIAの代表や南アフリカの代表が声をかけてきて、「非常にいいプレゼンだった。勉強になった」 と誉めてくれたことからも、なんらかの手応えを感じてくれたという気配は伝わってきました。


《 道の駅って何だ? 》

【町田】  そのほかに、外国の代表が関心を持ったことがありましたか?

【猪俣】  「道の駅とは何だ?」 という質問を受けましたね。「私たち日本のユーザーはキャンプ場などで宿泊する以外にも道の駅 = ロードサイドステーションで休憩することもある」 と伝えたんです。
 ところが、こういう正式な宿泊施設ではないのにキャンピングカーが休める “ファジー” な空間というのは、外国にはないわけですね。
 これもオリエンタル・デザインを施したジャパニーズRVと同じように、彼らには 「エキゾチシズムに満ちたスペース」 に感じられたようです。

【町田】  将来、日本製のキャンピングカーが 「国際商品」 になっていく可能性はあるんでしょうか?

【猪俣】  可能性は多いにあります。日本のビルダーの力というのはメキメキ向上しているから、クオリティだけいえば遜色のないものになっています。ただ、解決しなければならない問題も多いですね。
 まずレギュレーションの問題。
 欧米のRVに対する法規制というのはものすごく細かくて、しかも膨大な量に及んでいます。
 それに対して、日本のRV業界はそういう欧米のレギュレーションに対応する基準をまだ用意していません。
 まずそこで、正規に輸出するときに立ちはだかる壁があります。


《 国産キャンピングカーが世界に飛翔する日 》

【町田】  なるほど。これは難しい問題ですね。
【猪俣】  しかし、こうも考えられるわけですね。
 日本のキャンピングカーというのは、欧米のレギュレーションとは異なる構造要件に基づいて造られているにもかかわらず、この成熟した交通社会を実現している日本で、今日までたいした事故も起こさないまま安全に運行されてきたわけですね。
 これはどういうことかというと、日本のスタッフには、レギュレーションを厳密に守りながら造るという職人的な勤勉さが備わっているだけでなく、デザイナー的な直観力にも恵まれていて、…メーカーによって違うかもしれませんけれど、「安全を満たすにはこれだけの基準が必要になるだろう」 という判断基準を自分たちの “体内” に持っているからだろうと思います。
 だから、真剣になって輸出を考え始めたら、各国のレギュレーションに合わせた製造など、日本のRVメーカーは簡単にクリアしてしまうと思いますよ。

【町田】  実際、乗用車がそうでしたものね。輸出が伸びたのは、世界に散らばる細かなレギュレーションに適合するように、すべて仕様を変えて生産してきたからですものね。

【猪俣】  ただ、キャンピングカーともなると、そのコーチ (架装) 部分に関してはそう簡単に適合できない部分というものが残りますね。
 まず電気。
 現在、アメリカでは115V。ヨーロッパは220V。日本は100V。これに対応していくのが大変です。
 このような違いは、各国の住宅事情と密接に絡んでいますから、RVだけ共通化を図るということが非常に難しいんですね。
 また、LPガスの扱いも日本と諸外国では法律的にかなり違うところがあります。さらに排ガス規制の問題。これも国の認証がすべて異なるのでやっかいです。

【町田】  あとベース車の問題で、右ハンドルと左ハンドルの問題が出てきますね。

【猪俣】  そうですね。イギリス文化圏以外はみな左ハンドルですから、現状の国産車をベースに使うわけにはいかないでしょうね。
 だけどフィアットのデュカトなどを日本に入れて、それに架装して出すなどということができれば、また違ってくるのではないですか。

【町田】  でもそれは輸出入のコストがバカ高いものになって現実的でないのでは?

【猪俣】  しかし、いま国連などを中心に、モータリゼーションをもっとグローバル化しようという動きが進んでいます。つまり各国のレギュレーションの違いを解消して、より 「ハーモナイズ (調和) 」 させようという流れができているんですね。
 そのようにクルマのレギュレーションが統一されていけば、試験基準の違いなども解消されますから、相対的に輸出入にかかるコストが低減されます。
 ベース車がそのような方向に傾けば、架装部分を担当するビルダーさんにもそういう流れが波及するでしょう。少し時間のかかる問題かもしれませんが…。

【町田】  会議の流れとして、RV業界が明日の希望を見出すような方向が見えたのでしょうか。

【猪俣】  やはりそれが目的ですから、今後ますます厳しさを増しそうな環境において、RVの価値をどう創出し、どう訴えていくかという意欲はどの国の代表にもみなぎっていましたね。
 具体的な対策は、個々の国々でそれぞれ検討することになるでしょうけれど、おそらく今後のセールスプロモーションなどにおいては、それぞれの国で時代を見据えた建設的な提案がなされていくと思います。


campingcar | 投稿者 町田編集長 01:16 | コメント(2)| トラックバック(0)

幕張ショー印象記

08年度幕張ショー会場風景01

 幕張メッセ (千葉県) で、開催されている 『CAMPING&RV SHOW 2009』 を2日間取材してきました。
 今日は最終日。
 これからちょっと寝て、朝6時半に起きて、最終日の会場入りを果たす予定です。

 それにしても、びっくり。
 有料入場だというのに、昨日の土曜日は大変な人出。
 入場される