町田の独り言 キャンピングカーのガイド本を編集する町田が語るよもやま話

最近の記事
新ブログのご案内
04/28 17:06
久々の更新です
04/27 19:06
3・11以降
04/12 09:56
人類に残された資源
04/05 10:18
ザ・ウォーカー
04/03 00:53
島尾敏雄・贋学生
04/02 03:45
日本人は変わるか
03/31 01:36
渚にて
03/26 02:03
テレビは終わった
03/23 00:23
明かりの果ての闇
03/21 08:05
東電を怒る父さん
03/18 17:00
深い言葉
03/16 09:53
何かが変わった
03/15 00:06
災害時のキャンカー
03/13 16:18
大地震
03/12 13:16
ジュリアンオピー
03/11 02:35
親孝行ビジネス
03/08 20:02
OMCの北斗
03/07 00:18
アレクサンドリア
03/05 15:49
AtoZのバンビ
03/03 20:36
かるキャン
03/02 18:39
ハーレーの魔力
02/28 21:59
パークウェイ
02/23 18:59
CG880
02/20 13:11
忙しいぞぉ!
02/18 22:01
都市型キャンプ場
02/09 23:55
ファビュラス日本
02/07 19:32
老人の孤独
02/06 20:36
「都会」 の匂い
02/05 01:53
エジプトでは何が?
02/04 15:44
同人雑誌仲間
02/03 00:20
自己啓発ビジネス
02/01 02:10
ノスタルジー
01/30 05:23
夫婦の会話の危機
01/28 23:58
その一服は必要か
01/24 23:40
荒野の炎
01/23 19:43
山口冨士夫の精神
01/22 03:11
焚き火で育つ感性
01/20 19:55
キャンカー1人旅
01/19 01:37
車中泊の社会実験
01/17 15:40
個人の時代
01/16 11:50
細くなるネクタイ
01/13 20:32
映画アバター
01/12 20:07
若者の考える商売
01/11 14:36
パリッシュの絵画
01/09 04:00
300万アクセス
01/08 12:15
不思議な青空
01/07 21:04
TV・新聞の凋落
01/06 19:44
中国ルネッサンス
01/05 20:19
ベルイマン・沈黙
01/04 21:33
出来事いろいろ
01/03 02:43
謹賀新年
01/01 00:48
オールドマン
12/30 18:53
好奇心の力
12/29 14:28
「孤独死」の原因
12/27 20:17
廃墟のある島
12/26 02:48
遠いクリスマス
12/25 01:06
ロビン・フッド
12/24 03:48
地獄の電車
12/23 11:35
バッグス・バニー
12/22 02:59
正義の話をしよう
12/19 23:46
空気人形
12/18 13:10
ジジイ同士の酒
12/17 04:32
世界ゲーム革命
12/14 02:47
ハイマー懇親会
12/13 16:11
ガールズキャンプ
12/12 23:48
イタリアをめざせ
12/10 15:15
外来種の驚異 Ⅱ
12/09 00:41
外来種の脅威とは
12/08 20:46
Kポップの台頭
12/07 01:19
うつろひ
12/06 01:21
海老蔵さんの悲劇
12/05 01:07
追悼ジョンレノン
12/03 04:52
「個性化」のワナ
11/30 04:13
戦うブログ
11/29 04:09
子供の自然体験
11/28 04:50
RV好きの芸能人
11/26 01:01
胃の中にヘビ
11/25 16:12
消えた秋
11/22 14:14
歌謡ブルースの謎
11/20 04:29
おひとりさま時代
11/19 00:33
3行で総てを語る
11/18 00:15
塔の形而上学
11/17 02:04
裕次郎スナック
11/15 23:10
自然は子供を養う
11/12 20:28
おれ、ねこ
11/10 01:19
NHK車中泊報道
11/09 17:17
お台場パラダイス
11/08 20:34
伝える力
11/05 00:12
お台場ショー迫る
11/04 02:02
昔は戻らない
11/03 02:11
電子タバコ
11/02 00:04
一般国道の不思議
10/29 18:25
酒場放浪記
10/26 22:25
名古屋RVショー
10/25 19:25
ハイマーカー322
10/21 12:31
猫会議
10/21 00:05
飽きるという知恵
10/20 01:28
ロボット兵器
10/19 02:52
最近のコメント
突然の書き込み失礼…
最近の流行 05/12 00:01
はじめまして~文…
すまそ 05/08 16:44
>TJさん、ようこそ…
町田 04/28 13:47
>TJさん、ようこそ…
町田 04/28 12:06
便利+楽=快適、これ…
TJ 04/28 10:05
町田さん久しぶり…
motor-home 04/28 06:07
やはり、時代の変化・…
TJ 04/21 02:27
私はこのところ「自然…
磯部 04/12 14:52
>aki さん、よう…
町田 04/12 10:18
何度も投稿ボタンを押…
aki 04/08 10:57
>aki さん、よう…
町田 04/08 09:13
今のVWに乗り換える…
aki 04/07 15:19
>雷さん、ようこそ。…
町田 04/06 15:20
>ミペット@倉庫の肥…
町田 04/06 13:46
>JoeCoolさん…
町田 04/06 11:06
キャンピングカーは、…
雷 04/05 21:37
率直に言うと、研究所…
ミペット@倉庫の肥やし保存中 04/05 20:10
町田さま度々失礼…
JoeCool (in Peanuts) 04/05 12:56
>aki さん、よう…
町田 04/05 11:14
今のこの国の空気、ど…
aki 04/04 10:32
>solocarav…
町田 04/01 11:08
>JoeCool さ…
町田 04/01 10:32
>ムーンライトさん、…
町田 04/01 09:56
>赤い屋根さん、よう…
町田 04/01 08:53
「心に届く言葉」・・…
solocaravan 03/31 23:23
今回のように社会全体…
雷 03/31 23:05
米国では9.11の前…
Jo 03/31 11:21
米国では9.11の前…
JoeCool 03/31 11:19
米国では9.11の前…
JoeCool 03/31 11:05
そうだ、普遍性だ。…
ムーンライト 03/31 09:31
町田さんおはようござ…
赤い屋根 03/31 07:50
>おおきに! さん、…
町田 03/30 15:47
>雷さん、ようこそ。…
町田 03/30 14:57
>雷さん、ようこそ。…
町田 03/30 14:33
町田編集長さん こん…
おおきに! 03/29 08:29
今回の震災では、各局…
雷 03/28 21:22
本作品のリメイクであ…
雷 03/28 21:09
>おおきに! さん、…
町田 03/23 19:54
町田編集長さん こん…
おおきに! 03/23 07:48
>s-_-s さん…
町田 03/23 01:19
>ムーンライトさん、…
町田 03/23 00:46
人間は電気によって闇…
s-_-s 03/22 22:55
追記です。先ほど…
ムーンライト 03/22 14:24
数日前、市内の大型ス…
ムーンライト 03/22 12:24
>ブタイチさん、よう…
町田 03/22 03:09
お久しぶりです。町田…
ブタイチ 03/21 22:54
>鈴木様、ようこそ。…
町田 03/19 23:12
>ムーンライトさん、…
町田 03/19 22:35
今日、店からはじめて…
デルタリンク宮城 03/19 19:40
この「東電を怒る父さ…
ムーンライト 03/19 11:45
>ゆんたさん、ようこ…
町田 03/19 09:11
言葉に出して誰かに代…
ゆんた 03/19 07:50
>鈴木 様本当に…
町田 03/18 00:00
町田さん、ご心配あり…
デルタリンク宮城 03/17 20:52
>鈴木様コメント…
町田 03/17 16:04
>TOMYさん、よう…
町田 03/17 14:39
町田さんこんにちは。…
デルタリンク宮城 鈴木 03/17 11:32
こんばんは、町田さん…
TOMY 03/16 20:23
世界中に5億人を超え…
フェイスブック 03/15 11:30
>s-_-s さん、…
町田 03/14 00:28
町田さんご無事で何よ…
s-_-s 03/13 22:55
>ムーンライトさん、…
町田 03/12 17:43
町田さん。ご無事でし…
ムーンライト 03/12 16:25
>YAMAさん、よう…
町田 03/12 13:33
シンプルな風景画、い…
Yama 03/11 12:14
>渡部竜生さん、よう…
町田 03/10 02:33
>キャンピングカーと…
渡部竜生 03/09 14:02
>スパンキーさん、よ…
町田 03/08 19:22
いいですね、北斗。久…
スパンキー 03/07 13:52
>マッキー旅人さん、…
町田 03/03 22:45
町田さん、今日は。…
マッキー旅人 03/03 16:23
>ムーンライトさん、…
町田 02/28 22:42
町田さん。アマゾ…
ムーンライト 02/24 10:29
>渡部竜生さん、よう…
町田 02/19 05:42
>小平の福ちゃん様、…
町田 02/19 05:31
>matsumoto…
町田 02/19 05:18
>solocarav…
町田 02/19 05:03
>el さん、ようこ…
町田 02/19 04:50
>旭川の自称美女さん…
町田 02/19 04:14
幕張ではお世話になり…
渡部竜生 02/19 00:58
ご無沙汰しております…
小平の福ちゃん 02/19 00:03
お久しぶりです。ma…
matsumoto 02/14 07:35
ぜひ実現させたいアイ…
solocaravan 02/11 20:59
だいぶ経ってからのコ…
旭川の自称美女 02/11 11:51
町田さん、こんにちは…
el (エル) 02/11 11:11
>TOMY さん、よ…
町田 02/10 00:21
こんばんは、町田さん…
TOMY 02/09 21:45
>ムーンライトさん、…
町田 02/09 15:38
>ゆんた さん、よう…
町田 02/09 14:48
>Joe Cool …
町田 02/09 13:46
>磯部さん、ようこそ…
町田 02/09 11:54
「ゆんたさん」の文章…
ムーンライト 02/09 11:46
>TJさん、ようこそ…
町田 02/09 11:22
色々なことを考えまし…
ゆんた 02/09 06:36
同居していて5年前に…
JoeCool 02/08 16:01
最初に、このブログを…
磯部 02/08 05:14
写真で見る限り「FA…
TJ 02/07 21:20
>aki さん、よう…
町田 02/03 00:58
人生にドーピングはな…
aki 02/01 10:07
最近のトラックバック
ザ・バンド
12/11 09:46
鉄道の魅力、立体的に
09/10 07:38
関越高速道・・・寄居…
07/24 09:18
女性目線で見たキャン…
03/05 10:18
かるキャン 画期的な…
02/26 06:14
「くるま旅くらし読本…
02/06 10:22
言葉にならない
01/13 20:10
電動ポルシェ!?その…
10/31 09:50
路地裏
08/18 09:49
「すべての男は消耗品…
08/17 20:24
ガマの油
06/15 21:53
「ガマの油 」ちょっ…
06/15 07:58
52nd
04/25 21:52
007 カジノ・ロワ…
02/02 01:18
関西(大阪・京都・神…
01/30 05:21
【ネットができる宿|…
01/05 19:52
4輪&2輪
09/22 16:41
『秘伝 大学受験の国…
09/19 03:09
LPガスボンベ
07/26 11:37
ロス
05/28 22:39
テスト
05/28 22:36
大阪キャバクラnig…
04/26 20:37
キャバクラ/ニューク…
04/09 17:32
キャバクラ嬢ご用達し…
03/14 14:32
気になるキャンピング…
03/08 07:08
キャバクラ求人-Ag…
02/23 14:41
キャバクラ情報誌クラ…
02/22 19:14
No6 LPガスの充…
02/14 14:47
大阪キャバクラブログ
01/20 21:35
御当地!プルバック・…
12/20 00:53
カップヌードル
08/09 01:54
【キャンピングカー】…
08/05 16:23
【キャンピングカー】…
08/05 16:20
村松友視の「淳之介流…
08/04 11:11
荒井千暁著『職場はな…
06/29 22:35
元ちとせ/千の夜と千…
04/15 01:55
軽自動車エッセのうる…
03/26 08:21
カーナビの渋滞回避?…
03/10 20:07
車中泊なら虫の心配い…
03/07 18:35
こんなキャンピングカ…
03/07 03:56
キャンピング&RVシ…
03/02 01:17
キャンピング&RVシ…
02/23 18:45
キャンピング&RVシ…
02/18 06:43
キャンピング&RVシ…
02/17 00:23
ZECC(ゼック) …
02/15 23:27
トイレどうする?
02/15 10:25
キャンピング&RVシ…
02/10 21:46
新古車
02/04 17:19
軽自動車キャンピング…
01/25 13:10
ブレードランナー
01/14 12:03

一瞬の再会

【 小説・一瞬の再会 】

 俺の就職が決まった頃の話なんだけどさ。
 だから、もう30年以上も前の話よ。

 で、いろいろ 「就活」 に奔走したあげく、ようやく今の仕事場が決まって、ホッと一息ついていたんだけど、ひとつがうまくいくと、別のものが駄目になるというのは人生によくあることでね。

 その頃、付き合っていた彼女に、俺とは別の “恋人” ができたちゃったのよ。相手は、俺なんかより年上の妻子ある男だったのね。
 こいつはショックだったよ。

 俺、ようやく職にありついたこともあってさ、ま、社会人になったことを機に、そろそろ彼女との結婚を決めてもいいかな…なんて考えていたの。

 “彼” の話を聞かされたのは、まさにそのタイミングだったからさ、それまでまともな仕事にも就かず、アルバイトしながらブラブラ遊んでいたことに対する神様のバチが当たったのかと思ったよ。

 でも、俺、そこに至るまでに何か重要なことを見逃していたんだろうね。

 その頃、一人でアパート住まいしていたんだけど、彼女がときどき会社の帰りに食材を買って寄ってくれてね。
 つつましやかに飯食ってから、浅川マキのレコードなんか流しながらさぁ、彼女が食べ終わった皿とか洗って…。

浅川マキジャケ

 俺、タバコふかして、洗い物をしている彼女の後ろ姿なんか眺めながら、浅川マキを口ずさんでさ。
 それに飽きると、マンガ雑誌をペラペラめくったりね。
 
 部屋の中では、あいかわらず浅川マキがけだるく歌っているわけ。
 「不幸せという名の猫がいる、いつも私のそばに、ぴったり寄り添っている」 …とかね。
 
 暗いなぁ…とかため息つきながら、タバコの吸殻を灰皿に押し付けて、思うのよ。
 ……結婚してもさ、こんな生活だったら、ちょっと味気ないかなぁ…って。

運河001

 そこは、窓の外にどんづまりの運河が広がっているような、淋しい景色のところでさ。
 風向きがちょっと変ると、ドブの匂いなんかが漂ってくるのよ。

 風呂もないようなアパートでね。
 で、隣の住人の話が壁越しに聞こえてきたり、二階の住民の目覚ましが俺の目覚ましより早く鳴り出して、それで起こされるような住まいでさ。

 独身男が一人で暮らすならたいした問題じゃないけれど、結婚してもこんな生活が続くんなら、ちょっと耐えられないかな…。
 そんな気持ちもあったのよね。

 だからといって、もっとレベルの高い住処 (すみか) を探すには金もかかるってことだって分かってくるしさ。
 結婚て、気が重いな…。
 俺そんな風に感じ始めていたのよ。

 ところが彼女も、口にこそ出さなかったけれど、俺以上にそのことを感じていたのかもしれないのね。

 「私この男と一緒になっても、こんな生活が待っているなら幸せになれるのかしら…」 ってね。

 結婚のシミュレーションを具体的に始めたときにさぁ、お互いに初めて迷いが生じたんだろうな。

 そんな彼女の心のすきまに、 「貧しい結婚」 より 「華麗な恋愛」 という夢が入り込んだんだと思う。
 恋愛ってさ、人間を輝かせる最大のきっかけになるものだからね。彼女が本来持っている輝きを、そのときの俺はもう引き出す力を失っていたからさ。

 で、女が、男に見切りをつける時ってさぁ、共通することがあるんだよね。急になんでも規則正しくなるの。
 飲んでいるときもさぁ、以前だったら 「もうこんな時間? じゃあと10分だけ」 なんてダラダラしていたのが、 「時間だ! 帰る」 って感じになるし。
 デートの約束も 「何日の何時から何時半まで」 なんていうビジネス感覚になってくるのね。

 で、抱き寄せようとすると、今までと違ってさぁっと身を引くし、腰に手を回すとやんわりと振りほどくわけ。
 動作ひとつひとつが 「あなたと身体 (からだ) を触れ合わせたくないの」 という強いメッセージを発進してくるのね。

 なんか変だな。ずいぶんよそよそしくなってきたな…と、俺も少し異変に気づいてね。
 たまりかねて尋ねたよ。
 「最近変わったね」 って。

 やっと重い口を開いた。
 「気になる人がいる」 って。

 「ふぅーん…」

 ショックとは、すぐに訪れるものでもないのね。一体何が起こっているのか、それをうまくつかむことができないと衝撃すらも感じられないのよ。
 頭を整理するために、とりあえず一本タバコを吸ってさ。ゆっくり煙を吐いて。

タバコの煙

 「…で、その人のことを好きになったということ?」
 「分からないの。自分の気持ちが…」
 「その人は、君のこと好きなの?」
 「愛していると言われたわ」

 このへんから、チクチクと痛みがわいてくるのね。

 「でも私、あなたと別れるつもりはないの。生涯大切な人だと思っているから」
 こういう表現、微妙だよな。
 そう言われてホッとする人間なんて、まずいないんじゃないか?

 実は、その彼のことは、前から彼女の話に出ていたわけ。
 「会社に評判のプレイボーイがいる」
 って。
 奥さんも子供もありながら、若い女性をデートに誘うのが好き。しかもモテるらしい。

ダンスのイラスト
 
 クルマの運転もうまければ、ダンスもうまい。
 何よりも、話が洗練されている。
 …っていうんだよね。

 ただの世間話だと思っていたからさぁ、俺、さほど気にすることもなく 「ふぅーん」 って聞き流していたのね。
 その話の人物が、 「今の相手」 だと聞かされて、まったく虚を突かれた感じでね。

 心の整理がつかなくてさ。この場でどういう言葉を吐いたらいいのか、どういう態度をとればいいのか。
 頭の中は霧、また霧、さらに霧って感じでよ。
 はっきり 「嫌い」 と言われた方がナンボ楽かと思ったね。

 それからは彼女と会っても、出てくる話題はもう “彼” の家庭のことばかりになったの。

 「彼の奥さんを、私、見てしまったの。私よりはるかにきれいな人だった。なんであんな良い人がいるのに…」 とかね。
 「彼の奥さんが、私たちのことに気づいて、彼のネクタイを全部ハサミで切っちゃったんですって」
 なんてね。

 そういう話を彼女の口から聞きながら、俺、相手の男を憎んだよ。
 てめぇが自分の家庭を壊すのは勝手だけど、人の恋人まで奪うなよ、ってさ。

 でもさ、俺、その彼に気持ちで負けていたの。
 彼は家庭を持ちながら、堂々と彼女に 「愛してる」 って言ってるわけじゃない? 俺は彼女に、今まで 「愛している」 なんてはっきりと口に出したことがあっただろうか。
 そう思うとさぁ、今さら婚約者ヅラしたってもう遅いぜ…という気になってくるのね。

 もっと辛いのは、その男と比較されることだったね。
 彼女はこの頃しきりに 「いい男」 という言葉を使うようになってね。その条件を語るようになったのよ。

 女をエスコートするときのマナーやデート中の気配りに始まって、料理や酒の選び方、状況に応じた会話の進め方、金のつかい方…。
 「いい男というのは、そこに一つのスタイルを持っている」
 と、彼女はいうのよ。

 すべてその彼をモデルにしたものなんだろうけれど、その話から推測される彼の行動、話す言葉、思想、しぐさやクセ。

 みんなカッコいいんだわ!

 美化されている部分もあるんだろうけれど、割り引いて聞いても、 「社会人の男の凄み」 ってのが伝わってくるのね。こっちはまだ半分学生気分だったからさ、学生とは遊びのスケールが違うっていうことを痛いほど知らされたよ。

 で、俺、ある日彼女に向かって、 「もう会うのを止めようや」 って自分から切り出したの。

 日曜日の夕暮れだった。
 彼女を近くの駅まで送っていった後でね。

 ホームに並んで、電車を待ちながら、
 「そろそろ終わりにしようよ」
 …って言ったんだ。

私鉄のホーム
 
 電車がなかなか来なくてさ。
 その間、彼女は寂しそうな顔をしたけど、黙っていたな。

 そして別れ際に、こう言ったよ。
 「私は一生結婚しないから」

 彼と結婚することはないから安心してね、という意味とも取れるし、あなたとも結婚しないという宣言にも取れるし。
 きっと何かを決意したんだろうな。
 その男の 「愛人」 として一生を貫くという決意だったのかもしれないね。


 それからしばらく経ってから、俺、クルマっていうオモチャを手に入れてさ。もっぱら一人で気楽なドライブを楽しむようになったの。
 今でいうリッターカーにちょっと毛の生えたような、ちっぽけなクルマだったけれど、一応ツーリングカーカテゴリーに出ているクルマだってことが自慢でね。

 天気の良い休日には丹念にワックスかけてさ。カーショップでいろいろ小さなアクセサリーを買い込んで。

 クルマに乗らない日は、ドライブ中に聞く専用音楽テープを編集したりしてね。
 休みになると、そういう音楽ソースをたくさん抱えて、山道の峠越えをしたりとか、港の見える公園に行ったりさ。「センチメンタル・ジャーニー」 ってやつだよね。

港の公園

 でもさ、クルマが面白くてさ。
 クルマ関係の雑誌の仕事しているってことが、最高にハッピーだったのね。
 エンジンはノーマルだったけれど、 せっせとレーシングチームのステッカー貼ったりして、「そのうちボアアップしようかな」 とかね。 

 そんな生活しながら、2~3年経ったのかな。

 たった一度だけ、別れた彼女の住んでいた町までクルマを走らせたことがあったんだ。もう深夜ね。
 昔ときどき電車で送ってきたことがあってさ、その頃とあんまり景色も変わっていないのね。

 彼女の家が見える空き地にクルマを止めてさ、カーステレオのスイッチも切って、しばらくタバコをふかしていたな。
 田舎だからさ、人通りなんかないの。周囲もしんと静まり返っていてさ。それこそ星の触れ合う音でも聞こえてきそうな夜なのよ。

 別に会いたいとか思ったわけじゃないから、そろそろ帰ろうと思ってさぁ、エンジンをかけようとしたとき、路上を歩いてくる人の声がしたの。

 男と女の二人連れだった。
 まさかと思ったら、彼女でね。彼氏が家まで送ってきたところなんだね。
 俺、思わずシートに身を沈めて息をのんだよ。

 別れぎわに、バイバイって感じで彼女が手を振ってさ。男は優しそうに小さくうなずいて。
 いい感じだったよ。

 彼女が、家の前の路地を曲がって、玄関の奥に姿を消すまで、男はずっと立ち尽くしていたな。
 彼女の姿が完全に見えなくなってから、彼はゆっくりと体の向きを変え、少し疲れた足どりで、駅の方に戻り始めたの。

 二人の仲はまだ続いていていたのか…っていう驚きと、何かいいシーンを見たなという感激が入り交じって、ちょっと自分の気持ちの整理がつかなかったね。

 それから静かにエンジンをかけて、俺は彼の後を追うようにクルマを滑り出させたの。

 ゆっくりゆっくり歩いていた。
 少しくたびれた中年男の背中だった。

夜の後ろ姿

 もう電車なんて走ってない時間なのよ。俺が聞いている男の住んでいる町は、そこからとんでもなく遠いところなの。
 どうするんだろう。タクシーでも拾うのだろうか。
 俺、 「送りましょうか?」 って声をかけようとすら思ったよ。

 でもさ、相手は俺のことなんか知らないだろうしさ。俺のことが分かったとしても、話すことなんかないだろうしさ。
 そのままゆっくり追い越して、走り去ったけどね。

 二人の別れぎわが、俺には 「素敵な一枚の絵」 のように見えたことで、ああ、彼女のことは完全に過去の 「思い出」 になったんだな…って自覚したの。


ヨタ話 | 投稿者 町田編集長 00:25 | コメント(8)| トラックバック(0)
トラックバック
こちらの記事へのトラックバックは下のURLをコピーして行ってください。
コメント
>思わずシートに身を沈めて息をのんだよ。
 
若い頃に同じような事ありました♂ と言っても今の歳になっても1人身のTJはその延長線上ですが・・・笑
出会いから別れ・・・それが『思い出』になるまでのモヤモヤはした気持ちの時間が苦手です。。
投稿者 TJ 2009/12/16 02:08
>TJさん、ようこそ。
そうですかぁ…。めちゃモテそうな雰囲気のTJさんですら、そんなことがあったんですね。

>「出会いから別れ…それが “思い出” になるまでのモヤモヤした気分」 。

よ~く分ります。お互いに、男はダメですねぇ。

でも、私の場合は、まぁ小説なんで…。
 
投稿者 町田 2009/12/16 02:39
完全にボクです…

元妻の前に付き合っていた彼女との別れがこんな感じでした。

リアルにこんな状況が続いてる感じです…

まぁ独身貴族をエンジョイしてますが(笑)
投稿者 Jun-1 2009/12/16 03:16
小説と言われても、あまりにもリアルですね。
密かにあの人の家を探し、パートナーを確認してみたい欲求に駆られる時がある。
でも負けたくないから、近づかない。
出会いには別れがつきものだけど、別れには必ず再会があるものと、今は思っていたい。

投稿者 南 2009/12/16 12:11
>Jun-1 さん、ようこそ。
いろいろな事情がおありのようで、お察し申し上げます。
独身貴族もいいです!
パートナーがいれば、それはまたそれで素敵な時間を共有できますが、独身貴族状態で過ごすちょっとやるせないような、それでいて充実している時間というのも、かけがえのないもののような気もします。

人間、満たされていたものが “ちょっと欠けている” …という状態の方が、脳がクリエイティブに動くような気もするのですが、そんなことありません?

ブログのリニューアル、期待してますよぉ!
 
投稿者 町田 2009/12/17 00:10
>南さん、ようこそ。
>「負けたくないから、近づかない」 というのは、大事な 「意地」 かもしれませんね。そして、>「別れには再会がある」 というのも、ひとつの真実かもしれません。

ただ、「再会」 というのは、元の現状が復帰するということではないかもしれませんね。次元が予想したものとはまったく違っているという場合もあるでしょうし、さらに奥深い味わいがあるものかもしれません。

人の出会いと別れは、いずれにせよ味わいのあるもののような気がします。
 
投稿者 町田 2009/12/17 00:28
お久しぶりです、町田さん
「小説・一瞬の再開」と表現しましたか。
30年以上前の事を思い出してしまいました。

学校に行って、下手な麻雀に付き合ってもらって、酒の飲み方を教えてもらって、女の話をして、そしてJAZZの素晴らしさを教授いていただきました。

オレの青春の奥行きを広げてもらった気がします。
重厚な青春の1ページとなっております。

ありがとうございました。
投稿者 TOMY 2009/12/18 21:30
>TOMYさん、ようこそ。
お久しぶりです。
30年以上前、確かにいろいろありましたね。
でも、楽しかったです。

今でも “学校” のことはよく思い出します。
いろいろなプチイベントも二人で企画しましたが、TOMYさんが 「大将」 で、私が 「参謀」 でしたね。
TOMYさんには “華” があって、まぶしかったですよ。

お礼をいうのは、こちらの方です。

「そのうち一杯…」 と言いながら、先延ばしになっていて申し訳ありません。

今度は “ぜひ” ね!
 
投稿者 町田 2009/12/19 03:05
名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:
<<  2009年 12月  >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
ホビダス[趣味の総合サイト]