町田の独り言 キャンピングカーのガイド本を編集する町田が語るよもやま話

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小説・渋滞

《 怪談特集 ④ 渋滞 》

 バックミラーに、赤くただれたような空が映った。
 この世のものとは思えぬほどの鮮やかな夕焼けだ。

 なのに、目の前には陰鬱な梅雨空が広がり、フロントグラスに降り懸かる雨を振り払うために、ワイパーがせわしなく首を降り続けている。
 ちょうど自分の乗っているクルマあたりを境に、世界が二つに分かれてしまった感じだ。

 「変な日だ」
 そうつぶやいてみたが、助手席に座る景子の反応はない。
 どこを見ているのか、何を考えているのか、首を少しかしげたまま、ふてくされたような表情で、前方をじっと見ている。
 
 「また、だんまりかよ」
 そう吐き捨てたいのをこらえ、私は黙ったまま、煙草を口にくわえて、シガーライターから火を取った。

 何本目の煙草だろう。
 景子のイライラがこちらにも伝染してきているのか、気を紛らわすための煙草がやたら増えている。

 心がザラついているのは、渋滞のせいかもしれない。
 3連休の中日。
 高速道路に入ったときから、3車線の道路は切れ目なくクルマで埋まっていた。

渋滞画像109

 景子のために、わざわざネットで探した “落ち着いた大人のホテル” 。
 そこも結局は家族連れであふれかえり、ロビーも廊下も、騒ぐ子供たちの声とそれをたしなめる親たちの怒号が絶えることがなかった。
 「大人の隠れ里」 と銘打ったホテルなのに、カップルで来た人間の方が浮いた存在になってしまった。

 景子ももう若いとはいえない。来年で29歳になる。
 私と並べば、 「中年の旦那に若い妻」 と見えてもおかしくはないのだが、ホテルのメインダイニングに座った家族たちは、一人として私たちをそのようには見なかった。

 「ワケあり風の、場違いな2人連れ」

 周りの視線にさらされて、景子が傷ついたことは想像にかたくない。


 「3連休なのに、どうして1泊なの?」
 ホテルの予約を入れたことを、電話で景子に告げた日、彼女の声は冷ややかに沈んでいた。

 「最終日はクライアントの曽根崎部長からゴルフに誘われていると、前にも言っただろう」
 思わず声を荒げてしまったのは、後ろめたかったからである。

 本当は、7歳になる娘をディズニーランドに連れて行く約束があったからだ。
 しかし、それは景子には言えない。

 最初のうちは、景子のために、家族に嘘をついた。
 しかし、今は家族のために、景子に嘘をついている。
 それが景子にも分るのか、ここ数ヶ月、もう景子の笑顔を見たことがない。

 夕暮れが迫り、渋滞はますますひどくなる。
 景子をマンションに送り届けてから自分の家に戻るのは深夜になるかもしれない。
 ディズニーランドに行くのを楽しみしている娘を寝かしつけるために苦労している妻の顔が浮かぶ。
 景子との秘密の旅も、これが最後になるのだろうか。

 カーナビが妙な動きをしている。
 自車の位置を示す矢印マークが、道路からズレ始めたのだ。
 高速道路を離れ、山の中を進んでいるようだ。
 トンネルが多かったせいで、GPSが自車の位置を正確に把握できなかったのかもしれない。

 スイッチをいったんオフにして、目的地を再入力しても、ナビの誤作動は解消しない。
 いま走っているはずの高速道路はとっくに画面から消え去り、黒々とした大地がモニターいっぱいに広がっている。
 その闇の中から、白地の地名が浮かび上がった。

 「水無川」

 はて、ここらにそんな川があっただろうか。

 目の前を埋めるおびただしいクルマのテールランプの輝きが濃くなっていく。
 ストップランプが点灯する時間帯が多くなってきたからだ。どのクルマも、ブレーキを踏んでいる時間が長くなったことを意味している。
 いったいこの渋滞は、いつ解消するというのか。
 気づかないうちに、また煙草をくわえている。

 クルマは動かないというのに、ナビのモニターでは、矢印マークが規則正しく北上していく。
 「水無川」 を越え、 「刺串峠」 を登っているようだ。
 さしぐし…?
 聞いたこともない峠だ。
 いったいこのナビはどうなっているんだ? 

 水無川……
 刺串峠……
 
 待てよ。
 あれは、娘が5歳の頃だったかもしれない。

 「パパおしっこしたい」
 ペンションを探して夜道を走る途中、娘がそう言ったのだ。
 「この峠を越えたら町に出るから、待てない?」
 妻が娘にそう言った。
 「だめ、我慢できない」

 「膀胱炎になっちゃ大変だ。クルマを止めておしっこさせよう」
 私は妻に言った。
 「だって、こんな寂しい峠で、外に出ておしっこさせるなんて、酷よ」
 妻はそういい返してきた。
 「大丈夫だよ。なんなら俺がいい場所探してやるから」

 クルマの速度を落としても、追い越すクルマも対向車もなかった。
 ヘッドライトを消すと真っ暗になるので、ヘッドライトをともしたままクルマをとめ、私は娘の手を引いて外に出た。

 「あの柵をちょっと越えれば、木の陰になるから。そこでおしっこしておいで」
 「恐いからパパも一緒に来て」
 「大丈夫だ。ここにいるから、すぐしておいで」
 「いや、パパも一緒に」
 「分ったよ。木の手前まで一緒にね」

 だが、そこまで行って驚いた。
 暗くて分らなかったが、木の向こうは断崖絶壁だったのだ。
 娘を一人で送り出していたら、この谷底に転げ落ちていたかもしれない。

 「木の向こうは谷だから、もうここでおしっこしようね。パパはちょっとだけ後を向いているから」
 「うん。すぐ終わる」

 しかし、私はそっと見ていた。
 暗闇に白く浮き上がる娘の小さな尻を。
 そして、その尻の向こうに、ぽっかりと口を開けた奈落の底を。

 「あそこから人を落としたら、たぶん誰にも見つからないだろう」

 なぜか、そんなことをぼんやりと考えていた。

 あの峠を、もしかしたら刺串峠といったのではなかったか。
 それにしても、奇妙な地名だ。
 「串刺し」 なら分るが、 「刺串」 というのは何か変だ。
 どういう由来があるのだろう。

 しかし、そんな思い出はどうでもいい。この渋滞がいつ終わるかが問題だ。
 帰りが御前様になったら、俺の立場はどうなるんだ?
 明日のディズニーランド行きの打ち合わせをするために、妻はきっと私が帰るまで起きているだろう。
 「こんな時間まで、誰と会っていたの?」
 そういう妻の顔が目に浮かぶ。

 渋滞は景子のせいでもなんでもないのに、なぜか景子の存在が腹立たしく思えてくる。
 さっきから黙りこくっている景子が、無言のうちに 「今回の旅行プランは失敗だった」 と圧力をかけているような気がしてならない。

 渋滞
 渋滞
 いまいましい渋滞め。

 口の中で、そう罵ってはみるものの、いまいましいのは渋滞ではなく、景子の方だという気分がますます募ってくる。

渋滞画像111

 またトンネルだ。
 いったい何本のトンネルを抜けなければならないのか。
 
 道路公団はどうかしている。
 こんなトンネルばかり掘ってカネを無駄に使いやがって。もう少し別なルートがなかったのか。
 しかも、こんな陰気なトンネル…
 崩れたレンガでアーチを築いた入口には、蔦 (つた) がブドウのふさのように重なりあい、入る前から廃虚に吸い込まれるような気分だった。

 掘った土にただコンクリを吹きつけただけの、おそろしく粗雑な壁。
 クルマのライトに照らされて浮かび上がる壁の凹凸が、光りの角度によって人の顔にもケモノの姿にも見える。

 ひどいことに、このトンネルには照明というものがない。
 もし、ここにいるすべてのクルマが、一斉にライトを消したら原始の闇だ。
 自分が死んで、目を開けた時に、ここが 「死後の世界」 だと説明されれば、素直に信じてしまうかもしれない。

 それにしても、サービスエリアにお風呂やコンビニまで導入させた道路公団が、こんな原始的なトンネルを放置しているなんて、ちょっとおかしいんではないか。

 ほら、冗談じゃないぜ。
 天井から、血のしずくのような黒ずんだ水がポタポタと落ちてきている。
 渋滞でなかったら、一気に加速して抜けるところだが、このトンネルに入ったとたん、ほとんどクルマが動かなくなった。

 もし、ここで土砂崩れでも起きたら、いったいどうなるんだ?
 新聞記事に、事故の被害者として私の名前が出る。

 「同乗していた女性は、同じ職場の部下で……」。

 そんなことになったら私の職場での地位も、それこそ一巻の終わりだ。
 風紀にやかましい新社長が就任してからは、わざわざ 「既婚者の社内恋愛はご法度」 などという訓辞すら出されている。
 それを私と景子は破っているのだから、もし発覚したら、私たちに対する社内の風はとてつもなく冷たいものになるだろう。

 早く、ここを抜けたい。
 そう思えば思うほど、クルマは一向に前に進まない。

 周りの連中は車内で何をしているんだろう。
 私と同じように、イラだちを抑えながら、ひたすらクルマが動き出すのを持っているのだろうか。
 それとも、家族で仲良く “しりとり遊び” でもしているのか。
 ラジオから流れる野球中継に耳を傾けているのか。

 どうも違う。
 やつらの目つきがおかしい。
 みな息を潜めて、私と景子の様子をうかがっている。

 「あのクルマの2人連れ、きっとアレよ、アレなのよ」
 「夫婦を装っても、すぐバレるのに、誤魔化し通せると思っているのかしら」
 「いいクルマに乗ってるじゃない。高級車だよ。ありゃ女はカネ目当てだな」
 「あのくらいの年の男ってさあ、けっこう若いときより性欲が強いんだよね」

 トンネルに充満しているアイドリングの響きをぬって、そんなヒソヒソ話が聞こえてきそうだ。

 人は、悪意を胸に秘めると、それを表に出さないように、仮面のような顔になる。
 前からも、後ろからも、右からも、左からも、仮面を被った人間たちが、わざと何も知らないふりして、私のクルマをこっそり盗み見している。

 人間の目というのは、好奇心に駆られると、あんなに卑しい目になるのか。
 含み笑いを隠した口元というのは、あんなに醜く歪むのか。

 一見、空洞のような、やつらの目。
 人間の心が溶け落ちて、邪悪な意志だけが残った空虚な穴。
 やつらの悪意ある視線と、意地の悪い沈黙が、私の脳を爆破させそうだ。

アンソール絵画01

 景子
 景子!
 景子!!
 お前がいるからだ!
 思わず叫び声をあげそうになったが、私は必死でこらえた。

 どうかしているぜ。俺は…。
 ハンドルを握る手がべっとり濡れている。
 発狂しそうなほどに緊張が高まり、手のひらに大量の汗が吹き出したのかもしれない。

 落ちつけ。
 もうじきトンネルから抜ける。
 ほら、出口の明かりが見えてきた。
 いや…違うか。
 避難所のようだ。

 トンネルの左側に、一ヵ所だけ、コンクリの一部をえぐり取って、人がかろうじて身を避けられるぐらいの個室が造られていた。
 個室には、ガラス戸を埋めたドアがあり、ドアには 「緊急避難場所 SOS」 という文字が書かれている。

 中に人がいた。
 女の後ろ姿が見える。
 事故でも起こったのだろうか。
 個室内には、 「緊急事態発生」 を連絡するための黒い電話器があるというのに、彼女はその電話器さえ取らず、背中をこちらに向けたまま、じっと壁にもたれかかっている。
 怪我しているのか?
 こめかみから血が流れている。
 その血がワンピースの肩までしたたり落ち、髪の毛と絡まりあって、古木に巻きついた蔦 (つた) のように見える。

 「景子、あれを見たか?」
 思わず私は景子に言ったが、景子はそれを聞いても、振り向こうともしない。

 「彼女はケガをしているぞ。ちょっとクルマを止めよう」
 
 そのとき、黙りこくっていた景子がはじめて口をきいた。
 「もう手遅れよ」
 感情のぬくもりを削ぎ落とした、機械の合成音のような声だった。

 「手遅れって、お前、どうして……」
 そういいかけて、私は口をつぐんだ。

 景子に、なぜ手遅れだということが分かるのだろう。
 まるで、目撃者であるかのような口ぶりじゃないか。
 それとも、 「あの女は自分だ」 とでも言いたいのか?
 そういえば、あの後ろ姿は、景子にそっくりだった。
 あれが景子だとしたら、いま隣りに座っているお前は誰だ?

 ……まてまて。落ちつけ。
 いったい、どうして自分はこんなに動揺しているのか、少し冷静になって考えなければ。
 
 「すべては、ナビが狂いだしたときに始まったのかも…」

 そう声に出したわけでもなく、頭の中で思っただけなのに、景子は私の気持ちを読み取ったのか、ゆっくりと、抑揚のない声でこう言った。

 「ナビの方が正しいのよ」

 私は、景子の言っている意味がよく分らず、その真意を探ろうとして顔を覗き込んだ。
 景子は目を見開いたまま、唇も動かさずにスルスルと喋り始めた。

 「さっき水無川を越えたでしょ。もうじき刺串峠のトンネルを出るわ」
 「だって俺たちは、渋滞中の高速道路を走っているんだぜ」
 「それは、あなたの心が見たい風景なのよ。本当のことから目を逸らしたくて」
 「お前、何を言い出すんだ?」
 「刺串峠で私を捨てるんでしょ? トンネルの中で殺した私の死体を」

 景子は、人形のようにまっすぐ前を向き、目も口も動かさずにそういった。
 そのこめかみからは流れ出た血は、今はようやく固まり、髪の毛と絡まって、古木にまとわりつく蔦 (つた) のように見えた。

 景子が口をつぐむと、周囲にいたクルマの群れはあとかたもなく消え去り、静まり返ったトンネルも、闇の底に沈んだ。


ヨタ話 | 投稿者 町田編集長 22:38 | コメント(0)| トラックバック(0)
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