2009年03月29日
夜明けのR&B
静まり返った会社の部屋で、独り70年代SOULミュージックを聴きつつ、原稿を書いている。

明け方の5時。
『キャンピングカー スーパーガイド2009』 の締め切りまであとわずか。
もうじき会社の裏を走る私鉄の始発が動き出す。
眠気を追いやるために、身体はカフェイン漬け。
30分おきにインスタントコーヒーを飲んでいるし、 「眠気ざまし」 の内服液も必需品。
いろいろ試してみたが、ゼリア新薬工業というところの 「ポンツシン内服液」 というのが一番効くようだ。
「使用上の注意」 というところに、 「してはいけないこと」 というのが書いてあって、 「コーヒーやお茶などのカフェインを含有する飲料と同時に服用しないでください」 と書いてあるのだけれど、全然気づかずに、コーヒーを飲む合間にガンガン飲んでいた。
併用するとどうなるのだろう?
胃でも悪くなるのだろうか。
今のところなんともない。
鈍感な身体にできていることを、親か神に、感謝しなければならない。
それにしても、結局、また同じ音楽を聞いてしまう。
スピナーズの 『アイル・ビー・アラウンド』 。
メインイングリーンディエントの 『独りにしないで』 。
ステイプルシンガーズの 『レッツ・ドゥ・イット・アゲイン』 。
テッド・テイラーの 『オンリー・ザ・ロンリー・ノウ』
チャイライツの 『オー・ガール』 。
スモーキー・ロビンソンの 『ベイビー・カム・クローズ』 ……
演歌も、Jポップも、ロックも、ジャズもさんざん聞いてきたけれど、最後はこのへんにたどり着く。
とうとう、音楽に関してはな~んにも進歩しなかった。
なんのことはない。
20代の初めにのめり込んだ音に、結局、一生支配されてしまったわけだ。
「70年代ソウル」 …というと、マービン・ゲイがいて、スティービー・ワンダーがいて、スタイリスティックスがいて、アル・グリーンがいて…と、なんだか黒人音楽の豊饒期という感じがするけれど、考えてみると、ごく短い間でしかなかった。
たぶん、その黄金期は '72年から '74年までの2年間である。

この時期、黒人音楽が、突然閃光を放った。
それまでのポップでダンサナブルな音楽からするりと身をかわし、艶やかな陰影と先鋭的な批評性を携えた、大人が観賞するに堪えうる音楽に生まれ変わった。
自分はディスコ小僧だったから、60年代のジェームス・ブラウン、サム&デイブ、ウィルソン・ピケット、テンプテーションズ、フォートップス・シュープリームスの方に身体がなじんでいる。
しかし、そのあたりの曲は、聞けばなつかしく身体がスィングするけれど、しょせんはナツメロ。
だけど70年代ソウルは、心がスィングする。
そして、それを聞いていると、この都会の片隅のどこかには、いまだ自分が経験したこともないような贅沢な恋が待っていて、そのまま死んでもかまわないようなディープな快楽が口を開いていて、そこにハマったらもう後に戻れなくなるに違いない。
…という感じの胸騒ぎが、胸をかきむしるのだ。

この時代のR&Bだけに存在する不思議なゴージャスさ。
泡がツブ立つシャンパンのような華やかさと、チョコレートのようなビターな甘さ。
それでいて、鋭利な刃物で身を切られるような冷たさ。
人なつっこい優しさの奥に秘められた不良のふてぶてしさ。
そういった感触が、「70年代SOUL」 という音楽からこぼれ出てくる。
この時代の音は、ざわめくパーティ会場で聞いても似合うし、朝の冷気の中で、独りで聞くのにも合う。

そういう音楽性というのはどこから来たのだろう?
…と、いまだに不思議に思う。
70年代当初のアメリカ社会では、あいかわらず黒人たちは差別の中であえいでいたが、彼らは、少しずつ身につけた経済力を背景に、政治的な差別とは関係ないところで、自分たちの楽しみ方を見出しつつあった。
彼らは、白人のモテ方とは違うモテ方を知ったし、白人の快楽とは違う快楽を知った。
それまで、白人のように振る舞わないとバカにされると怯えていた彼らは、自分たちの縮れた髪に抱いていた劣等感をかなぐり捨て、わざと縮れ髪を頭上高く盛り上げるアフロヘアにして、路上を闊歩した。
そんな彼らが見たアメリカの風景は、同じ景色を見ても、彼らのオヤジやオフクロが見ていた風景とは違って見えたはずだ。
「70年代SOULミュージック」 は、たぶんそういう景色を見た人間たちがつくり出した音楽なのだ。
だから、音そのものに、 「未知」 だった世界が開けてきたときの新鮮なときめきがある。
20代のはじめに、この音に接した自分もまた、70年代ソウルミュージックのなかに、 「新鮮なときめき」 があることを知った。
そして、50代もそろそろ終わろうとしているこの年になっても、この音を聞くと 「新鮮なときめき」 が襲ってくる。
涙が流れるほど、暴力的に。

70年代SOULミュージックは、衰退するのも早かった。
70年代も半ば以降になると、ディスコミュージックの全盛期がやってくる。
それは健康的で楽しい音楽だったが、それだけだった。
ディスコビートが 「世界言語」 化して、民族や文化を超えて普遍化したときに、何かが終わった。
それは、白人社会の快楽とは違った 「快楽」 を見出した黒人の若者たちが、そのうち、その刺激にも慣れ、自分たちの見出した新しい世界に無頓着になったのと同じタイミングだった。
SOULミュージックは、またただのダンス音楽に戻った。
だから私は、突然雲間が切れて、地上にまばゆい光が差し込んだような 「70年代初期のSOUL」 を聞き続ける。
それは、あの時代だけに生まれた奇跡のように思える。
明け方の5時。
『キャンピングカー スーパーガイド2009』 の締め切りまであとわずか。
もうじき会社の裏を走る私鉄の始発が動き出す。
眠気を追いやるために、身体はカフェイン漬け。
30分おきにインスタントコーヒーを飲んでいるし、 「眠気ざまし」 の内服液も必需品。
いろいろ試してみたが、ゼリア新薬工業というところの 「ポンツシン内服液」 というのが一番効くようだ。
「使用上の注意」 というところに、 「してはいけないこと」 というのが書いてあって、 「コーヒーやお茶などのカフェインを含有する飲料と同時に服用しないでください」 と書いてあるのだけれど、全然気づかずに、コーヒーを飲む合間にガンガン飲んでいた。
併用するとどうなるのだろう?
胃でも悪くなるのだろうか。
今のところなんともない。
鈍感な身体にできていることを、親か神に、感謝しなければならない。
それにしても、結局、また同じ音楽を聞いてしまう。
スピナーズの 『アイル・ビー・アラウンド』 。
メインイングリーンディエントの 『独りにしないで』 。
ステイプルシンガーズの 『レッツ・ドゥ・イット・アゲイン』 。
テッド・テイラーの 『オンリー・ザ・ロンリー・ノウ』
チャイライツの 『オー・ガール』 。
スモーキー・ロビンソンの 『ベイビー・カム・クローズ』 ……
演歌も、Jポップも、ロックも、ジャズもさんざん聞いてきたけれど、最後はこのへんにたどり着く。
とうとう、音楽に関してはな~んにも進歩しなかった。
なんのことはない。
20代の初めにのめり込んだ音に、結局、一生支配されてしまったわけだ。
「70年代ソウル」 …というと、マービン・ゲイがいて、スティービー・ワンダーがいて、スタイリスティックスがいて、アル・グリーンがいて…と、なんだか黒人音楽の豊饒期という感じがするけれど、考えてみると、ごく短い間でしかなかった。
たぶん、その黄金期は '72年から '74年までの2年間である。
この時期、黒人音楽が、突然閃光を放った。
それまでのポップでダンサナブルな音楽からするりと身をかわし、艶やかな陰影と先鋭的な批評性を携えた、大人が観賞するに堪えうる音楽に生まれ変わった。
自分はディスコ小僧だったから、60年代のジェームス・ブラウン、サム&デイブ、ウィルソン・ピケット、テンプテーションズ、フォートップス・シュープリームスの方に身体がなじんでいる。
しかし、そのあたりの曲は、聞けばなつかしく身体がスィングするけれど、しょせんはナツメロ。
だけど70年代ソウルは、心がスィングする。
そして、それを聞いていると、この都会の片隅のどこかには、いまだ自分が経験したこともないような贅沢な恋が待っていて、そのまま死んでもかまわないようなディープな快楽が口を開いていて、そこにハマったらもう後に戻れなくなるに違いない。
…という感じの胸騒ぎが、胸をかきむしるのだ。
この時代のR&Bだけに存在する不思議なゴージャスさ。
泡がツブ立つシャンパンのような華やかさと、チョコレートのようなビターな甘さ。
それでいて、鋭利な刃物で身を切られるような冷たさ。
人なつっこい優しさの奥に秘められた不良のふてぶてしさ。
そういった感触が、「70年代SOUL」 という音楽からこぼれ出てくる。
この時代の音は、ざわめくパーティ会場で聞いても似合うし、朝の冷気の中で、独りで聞くのにも合う。
そういう音楽性というのはどこから来たのだろう?
…と、いまだに不思議に思う。
70年代当初のアメリカ社会では、あいかわらず黒人たちは差別の中であえいでいたが、彼らは、少しずつ身につけた経済力を背景に、政治的な差別とは関係ないところで、自分たちの楽しみ方を見出しつつあった。
彼らは、白人のモテ方とは違うモテ方を知ったし、白人の快楽とは違う快楽を知った。
それまで、白人のように振る舞わないとバカにされると怯えていた彼らは、自分たちの縮れた髪に抱いていた劣等感をかなぐり捨て、わざと縮れ髪を頭上高く盛り上げるアフロヘアにして、路上を闊歩した。
そんな彼らが見たアメリカの風景は、同じ景色を見ても、彼らのオヤジやオフクロが見ていた風景とは違って見えたはずだ。
「70年代SOULミュージック」 は、たぶんそういう景色を見た人間たちがつくり出した音楽なのだ。
だから、音そのものに、 「未知」 だった世界が開けてきたときの新鮮なときめきがある。
20代のはじめに、この音に接した自分もまた、70年代ソウルミュージックのなかに、 「新鮮なときめき」 があることを知った。
そして、50代もそろそろ終わろうとしているこの年になっても、この音を聞くと 「新鮮なときめき」 が襲ってくる。
涙が流れるほど、暴力的に。
70年代SOULミュージックは、衰退するのも早かった。
70年代も半ば以降になると、ディスコミュージックの全盛期がやってくる。
それは健康的で楽しい音楽だったが、それだけだった。
ディスコビートが 「世界言語」 化して、民族や文化を超えて普遍化したときに、何かが終わった。
それは、白人社会の快楽とは違った 「快楽」 を見出した黒人の若者たちが、そのうち、その刺激にも慣れ、自分たちの見出した新しい世界に無頓着になったのと同じタイミングだった。
SOULミュージックは、またただのダンス音楽に戻った。
だから私は、突然雲間が切れて、地上にまばゆい光が差し込んだような 「70年代初期のSOUL」 を聞き続ける。
それは、あの時代だけに生まれた奇跡のように思える。

私も、です。
町田さんも、そうだったのですね。
大木さんは10代半ばで聴いた音にずっと・・・ですしね。
大木さんからブラックミュージックへと聴く対象が広がっていったという方は多いです。
私はと黒人ブルースのレコードを集めたりもしましたが、
結局は、大木さんでした。
(スモーキー・ロビンソンは持っています)
「素晴らしい」とか「偉大だ」とか思っている訳ではないのですが。
どうなっているのでしょうね。
因果なことだ、と時々思います。
今、とってもお忙しい時期なのですね。
お忙しいのに私の「初歩の質問」に丁寧にお答えいただき恐縮いたしました。
お体に気をつけて頑張ってください。
『キャンピングカー スーパーガイド2009』。楽しみです。
先日の番組の動画がありましたので、ご紹介しておきます。
そのうちお時間がありましたら、ご覧下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=6yLZYkZAR_U
http://momo0130kuu.blog95.fc2.com/blog-entry-88.html
こちらでした。(一部違っていました)
http://www.youtube.com/watch?v=6yLZYkZAR_U
http://www.youtube.com/watch?v=I1AiT7bEZsk&feature=related
自分は76年、高校2年でアメリカに行って…ロスのレコード屋で、ジェームス・ブラウンとアース・ウインド・アンド・ファイヤーとワイルドチェリーとアベレージ・ホワイト・バンドを勧められました。丁度、町田さんがターニングポイントと言われているところですね。
75年あたりを境に、確かに差があるように思います。自分は後半派で…それ以後のシンセサイザーが台頭する前まであたりが…脳天気で明るくて…好きですね~。
コメントを頂いてから、ずいぶん時間が経過してしまいました。
もうお忘れかもしれませんね。
本当に返信が遅くなりまして、ごめんなさい。
10代から20代くらいに出会った音楽が、一生人間を支配してしまうというのは、多くの人にもあるように思えます。それはきっとそのぐらいの年齢が一番感受性が鋭敏に働いていたからなんでしょうね。
今の時代の新しい音の中にも、新鮮なものがあり、素晴らしい感動があるのかもしれませんけれど、私などは、どうしても、「今の音」の中にも「昔の音」の影を探してしまう性格で、そのために、聞き方に偏りが生まれているようにも思います。
でも、それでいいんだ…ってな開き直りもあるのです。
「音楽」とは「音を楽しむ」わけだから、結局は自分が一番楽しいと思えるものを聞いて、後の余生を過ごすか…ってな心境です。
せっかくのコメント、無視したわけではないのですが、お返事を書くほどの精神的ゆとりがなくて、申し訳ございませんでした。
ジェームズ・ブラウンは別格としても、アース、ワイルドチェリー、アベレージ・ホワイトバンド。みなすごいグループですよね。見事にみなファンキーですね。
それにクール&ギャングを加え、そこらあたりのアルバムも、実はしっかり抑えています。
おっしゃるように「能天気な明るさ」なんですが、音としては、それ以前のバンドと比べると格段に進歩しているのじゃないでしょうか。
うまい! と思いますもの。
でも、私は結局 「歌もの」 が好きなんでしょうね。バンドとしての音もさることながら、70年代初期のコーラスグループなんかの歌が好きなんです。
一度音楽の話なども、ゆっくり伺いたいですね。
「一番うまい発泡酒はどれだ?」 などと吟味しつつ…