2009年03月12日
レガード伝説
もしかしたら、ロデオ以来の “伝説の名車” になるのではないか。
そんな予感さえ抱かせるすごいクルマの登場である。
カムロードをベースにしたキャブコンは、レイアウトも装備内容もあらかたのアイデアが出尽くした感があったが、ヨコハマモーターセールスの開発したレガードを見ると、工夫によっては、このシャシーにもまだ豊かな可能性が残されていたのだな…という気がする。

▲ レガード
レガードは、居住空間の充実、収納能力の向上、走行安定性の確保などという、それぞれ対処方法の異なる課題を、すべて根底から解決してしまうという途方もないもくろみを持ったキャブコンである。
まず、そういう発想を持つということ自体が並みのビルダーにはできない。
ロデオなどの開発で国産キャンピングカー製作の先陣を切り、さらに官公庁や各種企業からさまざまな特装車を受注してきたヨコハマモーターセールスだからこそ、その領域に敢然と足を踏み込んでいくことができたのかもしれない。
経験は力なり。
老舗の底力というものを、そこから感じることができる。
▲ レガードのリビング

▲ プルダウンベッド

▲ リヤ2段ベッド
では、居住空間の充実と、荷物などの収納容積の拡大といった相反するベクトルを、このレガードではどう調和させようとしたのか。
室内面積を単純に追求するだけだったら、リヤオーバーハングを伸ばせばいいということになる。
しかし、それでは後軸に荷重が集中し過ぎて、走行安定性の確保もままならず、安全性も保てない。
そこで、ヨコハマモーターセールスの開発陣が考えたのは、ホイールベースそのもののストレッチ (延長) だった。
そうすれば、後軸に集中する荷重を前軸に分散させることが可能となり、理想に近い重量配分が実現する。もちろん、直進安定性も格段に向上していく。

▲ 治具を用いたホイールベースの延長
ところが、問題も出てくる。
当然、フレームやドライブシャフトなども延長されることになるので、重量増という問題を抱えることになる。

そこで、彼らは次の手を考えた。
もともと、ヨコハマモーターセールスには、地面から上がってくる湿気や水はねを遮断するために、木製床面をFRP製フロアユニットでサンドイッチするという技術がある。
このフロアユニット機構をさらに緻密化させ、あらかじめ床下収納、タイヤハウス、ステップ、シャワーパン、シートの台座まで一体成形で型取ってしまえば、起伏が多くなった分…つまりリブ構造を採った分、フロア剛性も上がり、サブフレームのコンパクト化が図れるのではないか。
つまりは、その分、軽量化を詰めていくことが可能となるはずだ。
…ということで、レガードでは、このフロアユニットを有効活用することによって、スチールフレームなどを削減し、軽量化を押し進めるという手法が採られることになった。
▲ FRP製フロアユニット
しかし、レガードの凄みが光るのは、ここから先だ。
それが、低重心設計。
キャブコンの走行性を不安定にさせる要因のひとつに、重心高が上がりすぎるというのがある。
居住空間を水平方向に広げるには、どうしても限度があるために、キャブコンの場合は、バンクベッド、縦長収納庫、さらにはルーフにトランクを積むなど、装備や荷物が垂直方向に積み重なっていく傾向がある。
当然、重心高が高くなり過ぎた場合は安定性を欠き、走行中のふらつきやコーナリング時の横転なども考えられるようになる。
ここで、PRP製フロアユニットがレガードに投入されたもうひとつの意味が浮かび上がる。
このユニットは、低重心設計を追求するためのものでもあったのだ。
なにしろ、これを設定することによって、室内の一般床面が、フレームの上面から63mmも低位置に設計されたというから、そのもくろみの徹底性をうかがい知ることができる。

▲ 低重心設計された各収納庫
特に収納庫は、のきなみ低重心設計の “洗礼” を受けた。
2重底となったリヤ大型収納庫の底面などは、ダウンフレーム化することによって一般床面よりも400mm下げられ、リヤ側荷室部分の床面は250mm。ボディ左右の外部収納庫は、一般床面から375mm下げられたという。
これらの収納スペースの低重心化は、同時に荷物の収納容積の拡大を果たすことになった。
低重心対策は、それだけではない。
燃料タンクやスペアタイヤの位置も下方に移設された。
燃料タンクは標準の高さから50mm。
スペアタイヤの搭載位置は60mm下げられたというから、ベース車そのものの改良もハンパじゃない。
バンクを削ぎ落としたのも、軽量化と低重心化を考慮したものであるが、それ以上に、これには風の抵抗をやわらげるという狙いがある。
ルーフの各コーナーには、R100以上の形状を持たせて、空力特性の向上を図ったというから、何から何まで徹底している。

▲ 空力特性を追求したエアロフォルム
このような画期的な試みが、何のために行われたのか。
ヨコハマモーターセールス営業部の平野一幸さんは、それについて、こう語ってくれた。

▲ 平野一幸さん
「レガードは、人間が快適に旅をするには何が必要かという原点に立ち返って開発したクルマなんです。
たぶん、このクルマが誕生したことによって、キャンピングカーの快適さと安全に対する基準が変わると信じています。
大きなことをいうと、これから先の社会は、 “モノ” から “ココロ” の時代へと移っていくでしょう。
そうなると、旅というものが、今以上に人間の心を解放し、人間に豊かな人生を約束するものだという認識が高まっていくでしょう。
その旅を、いかに快適に、安全に楽しむか。
レガードはそれへの提言なのです」

観光庁も 「ニューツーリズム」 という、地域資源を活用して観光産業を活性化させようという新しい旅のスタイルを国民に呼びかける時代になった。
レガードというクルマは、そういう社会が実り多きものになることを願った、ヨコハマモーターセールスとしての提案なのだという。
平野さんは、続けて言う。
「20世紀までは、道具を進化させれば、人間の幸せも着いてくると信じられた時代でした。
つまり、道具そのものを複雑にして、その数を増やしていけば、それで人間も安心していられたんですね。
しかし、その結果、人間は環境に負荷をかけ、有限な資源を無駄に使うことも覚えてしまった。
もう、そういうプラスにプラスを重ねる思考方法そのものの限界も見えてきたように思うんですよ。
これからの社会に大切なのは、 “引き算” の思想。
このレガードは、ベース車のキャパシティを理解した上で、本当に大切な要素を抽出するためには“何を取り除くのか”ということを、引き算で組み立てたクルマなんです。
…こういう装備を増やせば、さらに便利になるだろうという発想を捨てたんです。
レガードに投入された技術は、すべてが、大切な要素を抽出するための引き算から導き出された技術です。
重量を減らす。
風の抵抗を減らす。
消費エネルギーを減らす。
不安定材料を減らす。
事故を減らす。
引き算によって、逆に得られる幸せというものがあるはずです。
それを形に現したものが、このレガードです」
キャンピングカーは人間の幸せにどう関わっていくのか。
そういうことについての哲学を持とうとするビルダーが、少しずつだが現れてきたように思う。
そんな予感さえ抱かせるすごいクルマの登場である。
カムロードをベースにしたキャブコンは、レイアウトも装備内容もあらかたのアイデアが出尽くした感があったが、ヨコハマモーターセールスの開発したレガードを見ると、工夫によっては、このシャシーにもまだ豊かな可能性が残されていたのだな…という気がする。
▲ レガード
レガードは、居住空間の充実、収納能力の向上、走行安定性の確保などという、それぞれ対処方法の異なる課題を、すべて根底から解決してしまうという途方もないもくろみを持ったキャブコンである。
まず、そういう発想を持つということ自体が並みのビルダーにはできない。
ロデオなどの開発で国産キャンピングカー製作の先陣を切り、さらに官公庁や各種企業からさまざまな特装車を受注してきたヨコハマモーターセールスだからこそ、その領域に敢然と足を踏み込んでいくことができたのかもしれない。
経験は力なり。
老舗の底力というものを、そこから感じることができる。
▲ レガードのリビング
▲ プルダウンベッド
▲ リヤ2段ベッド
では、居住空間の充実と、荷物などの収納容積の拡大といった相反するベクトルを、このレガードではどう調和させようとしたのか。
室内面積を単純に追求するだけだったら、リヤオーバーハングを伸ばせばいいということになる。
しかし、それでは後軸に荷重が集中し過ぎて、走行安定性の確保もままならず、安全性も保てない。
そこで、ヨコハマモーターセールスの開発陣が考えたのは、ホイールベースそのもののストレッチ (延長) だった。
そうすれば、後軸に集中する荷重を前軸に分散させることが可能となり、理想に近い重量配分が実現する。もちろん、直進安定性も格段に向上していく。
▲ 治具を用いたホイールベースの延長
ところが、問題も出てくる。
当然、フレームやドライブシャフトなども延長されることになるので、重量増という問題を抱えることになる。
そこで、彼らは次の手を考えた。
もともと、ヨコハマモーターセールスには、地面から上がってくる湿気や水はねを遮断するために、木製床面をFRP製フロアユニットでサンドイッチするという技術がある。
このフロアユニット機構をさらに緻密化させ、あらかじめ床下収納、タイヤハウス、ステップ、シャワーパン、シートの台座まで一体成形で型取ってしまえば、起伏が多くなった分…つまりリブ構造を採った分、フロア剛性も上がり、サブフレームのコンパクト化が図れるのではないか。
つまりは、その分、軽量化を詰めていくことが可能となるはずだ。
…ということで、レガードでは、このフロアユニットを有効活用することによって、スチールフレームなどを削減し、軽量化を押し進めるという手法が採られることになった。
▲ FRP製フロアユニット
しかし、レガードの凄みが光るのは、ここから先だ。
それが、低重心設計。
キャブコンの走行性を不安定にさせる要因のひとつに、重心高が上がりすぎるというのがある。
居住空間を水平方向に広げるには、どうしても限度があるために、キャブコンの場合は、バンクベッド、縦長収納庫、さらにはルーフにトランクを積むなど、装備や荷物が垂直方向に積み重なっていく傾向がある。
当然、重心高が高くなり過ぎた場合は安定性を欠き、走行中のふらつきやコーナリング時の横転なども考えられるようになる。
ここで、PRP製フロアユニットがレガードに投入されたもうひとつの意味が浮かび上がる。
このユニットは、低重心設計を追求するためのものでもあったのだ。
なにしろ、これを設定することによって、室内の一般床面が、フレームの上面から63mmも低位置に設計されたというから、そのもくろみの徹底性をうかがい知ることができる。
▲ 低重心設計された各収納庫
特に収納庫は、のきなみ低重心設計の “洗礼” を受けた。
2重底となったリヤ大型収納庫の底面などは、ダウンフレーム化することによって一般床面よりも400mm下げられ、リヤ側荷室部分の床面は250mm。ボディ左右の外部収納庫は、一般床面から375mm下げられたという。
これらの収納スペースの低重心化は、同時に荷物の収納容積の拡大を果たすことになった。
低重心対策は、それだけではない。
燃料タンクやスペアタイヤの位置も下方に移設された。
燃料タンクは標準の高さから50mm。
スペアタイヤの搭載位置は60mm下げられたというから、ベース車そのものの改良もハンパじゃない。
バンクを削ぎ落としたのも、軽量化と低重心化を考慮したものであるが、それ以上に、これには風の抵抗をやわらげるという狙いがある。
ルーフの各コーナーには、R100以上の形状を持たせて、空力特性の向上を図ったというから、何から何まで徹底している。
▲ 空力特性を追求したエアロフォルム
このような画期的な試みが、何のために行われたのか。
ヨコハマモーターセールス営業部の平野一幸さんは、それについて、こう語ってくれた。
▲ 平野一幸さん
「レガードは、人間が快適に旅をするには何が必要かという原点に立ち返って開発したクルマなんです。
たぶん、このクルマが誕生したことによって、キャンピングカーの快適さと安全に対する基準が変わると信じています。
大きなことをいうと、これから先の社会は、 “モノ” から “ココロ” の時代へと移っていくでしょう。
そうなると、旅というものが、今以上に人間の心を解放し、人間に豊かな人生を約束するものだという認識が高まっていくでしょう。
その旅を、いかに快適に、安全に楽しむか。
レガードはそれへの提言なのです」
観光庁も 「ニューツーリズム」 という、地域資源を活用して観光産業を活性化させようという新しい旅のスタイルを国民に呼びかける時代になった。
レガードというクルマは、そういう社会が実り多きものになることを願った、ヨコハマモーターセールスとしての提案なのだという。
平野さんは、続けて言う。
「20世紀までは、道具を進化させれば、人間の幸せも着いてくると信じられた時代でした。
つまり、道具そのものを複雑にして、その数を増やしていけば、それで人間も安心していられたんですね。
しかし、その結果、人間は環境に負荷をかけ、有限な資源を無駄に使うことも覚えてしまった。
もう、そういうプラスにプラスを重ねる思考方法そのものの限界も見えてきたように思うんですよ。
これからの社会に大切なのは、 “引き算” の思想。
このレガードは、ベース車のキャパシティを理解した上で、本当に大切な要素を抽出するためには“何を取り除くのか”ということを、引き算で組み立てたクルマなんです。
…こういう装備を増やせば、さらに便利になるだろうという発想を捨てたんです。
レガードに投入された技術は、すべてが、大切な要素を抽出するための引き算から導き出された技術です。
重量を減らす。
風の抵抗を減らす。
消費エネルギーを減らす。
不安定材料を減らす。
事故を減らす。
引き算によって、逆に得られる幸せというものがあるはずです。
それを形に現したものが、このレガードです」
キャンピングカーは人間の幸せにどう関わっていくのか。
そういうことについての哲学を持とうとするビルダーが、少しずつだが現れてきたように思う。

YMSといえば以前フォレスターという本格トレーラーを作っていました。今回のFRP成型床構造はトレーラーにも応用できないでしょうかね。それができればかなり画期的なものができるのでは。ぜひこの技術を活かして、ふたたび国産トレーラーの新型を開発してほしいと思います。
YMSといえば、以前フォレスターという本格トレーラーを作っていましたが、トレーラーファンの私としては、このFRP成型床構造をトレーラーにも応用できないかと考えてしまいます。それができればかなり画期的なものができるのでは。ぜひこの技術を活かして、ふたたび国産トレーラーを開発してほしいと思います。
今後はこのようないろんな角度からみた商品開発をしていただけるビルダーさんが増えたらいいなあ。
YMSは、以前よりキャブコンの低重心設計や軽量化には神経を注いできたメーカーです。このレガードも、そういう蓄積の上に成立したクルマといえそうです。
ゼロからスタートしていたら、ここまでの完成度は見られなかったかもしれませんね。
また、おっしゃるように、YMSは今は忘れられているかもしれませんが、トレーラーの量産メーカーでしたね。フォレスターをはじめ、ファンシー、ホンダ向けOEMのデイトリッパーなどを製作していたと思います。
このようなフロア構造を生かしたトレーラーも、検討してくれるといいですね。
欧米のキャブコン(クラスC)では、バンクレスのタイプが増えてきていますが、レガードはそういう流れを広めるきっかけになるかもしれませんね。
バンクレスのキャブコンは、日本でも昔からあって、はっきりと 「空力」 を意識して開発したのはセキソーさんからでしょうけれど、このレガードから、ひとつのムーブメントが生まれそうな予感がしています。
確かにバンクベッドは就寝定員を稼ぐ絶好のスペースではあるのですが、風の抵抗と走行安定性を考えていくと、バンクベッドに代わるプルダウンベッドの研究がこれまで以上に進むかもしれません。