2009年02月16日
RV世界会議
千葉県の幕張で開かれた 「キャンピング&RVショー2009」 は盛況のうちに幕を閉じた。
3日間取材して、日本のRV業界の活力というものを、本当に実感することができた。
会場では、日本RV協会が発行する広報誌 『くるま旅』 第5号が配布されたが、この広報誌の編集をお手伝いさせてもらった関係上、取材ネタとして残した資料が手元にある。
今回は、日本RV協会さんの承諾を得て、その資料の中から日本RV協会・海外情報部の猪俣慶喜氏のインタビュー記事をここに公開する。
基本的な内容は、『くるま旅』 5号に掲載されたものと同じだが、広報誌においてはスペース的な関係もあって割愛せざるを得なかった部分があった。
ここに公開するのは、広報誌では割愛した部分を含めたインタビュー記事の全貌である。
《 RV世界会議について 》
2008年9月4日に、ドイツ・デュッセルドルフのキャンピングカーショー 「キャラバンサロン2008」 にて開催された会議。
日本、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、中国の各国代表がそれぞれ自国のキャンピングカー産業の現状とその使用環境を報告しあい、将来の展望を語り合った。
日本からは 「日本RV協会 (JRVA) 」 前会長・増田英樹氏ほか、事務局・矢久保達也氏、海外情報部・猪俣慶喜氏ら3名が出席。他に会議の傍聴者として、RV協会から5社6名が参加した。

▲ 議長のトレバー・ワトソン氏 (英国) と増田英樹前会長
《 世界のRV業者が集まった初の国際会議 》
【町田】 まず、この 「RV世界会議」 に参加した国々を教えてください。
【猪俣】 国単位という意味では、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、中国なんですが、ヨーロッパの場合はドイツのRV協会がヨーロッパ全域のRV事業者を代表する形でプレゼンテーションを行っていましたね。
司会は、国際自動車連盟 (FIA) の副代表で、英国キャラバンクラブの代表も務めるイギリス人が務めていました。
とにかく、今までキャンピングカー産業というのは、欧米中心のように思われていましたが、今やアジア、アフリカ、オセアニアにまで広がってきていることがこの度の会議で分かりました。
【町田】 これが第1回目の会議ということなんですが、このようなRV業界の国際会議が開かれた背景には、どのような事情があったのでしょう?

▲ 壇上で基調報告を行うプレゼンターの猪俣氏
【猪俣】 ひとつには、経済問題や環境問題が世界規模で深刻化し、文明的な行き詰まり感も広がってきた中で、RV産業は時代とどう関わるのか。そういう問題意識が生まれてきたということですね。
また、ビジネス的な側面から見ると、欧米ともに国内マーケットがピークを極める時期が読めてきて、さらなる市場を開拓するためには 「輸出」 が必要だという認識に達したからではないでしょうか。
だからこの会議では、それぞれの国が、お互いのマーケットや法規制を報告しあって、お互いの輸出の可能性を探るという目的があったと思います。
【町田】 会議のプレゼンテーションの雰囲気はどんなものだったのですか?
【猪俣】 国によって違うのですが、一番面白くて充実していたのは、やはりアメリカのRV協会であるRVIAのプレゼンでしたね。
とにかく喋りも慣れているし、笑いを取りつつ場を盛り上げるコツを心得ていました。彼らは、こういう場が一種の 「セレモニー」 であり 「フェスティバル」 だという認識を持っているんですね。
《 悩みもあれば希望もある各国代表 》
【町田】 アメリカ代表が発したメッセージそのものは、どんな内容でしたか?
【猪俣】 やはり自分たちの抱えている問題を正確に把握して、それを正直に発表していました。
たとえば、ここ10年ほどアメリカのRVは車体も大きくなって、豪華になってきたわけですね。その分、当然重量も重くなり、燃費も悪くなりました。
そういう流れが、原油資源の枯渇や地球の温暖化が問題視されている今の時代に合っているのかどうか。彼らにも心配はあるわけです。
そういった懸念も正直に告白しつつ、ベース車の問題としてディーゼルが見直される時代になるだろうという予測も交え、アメリカンRVの新しい方向を模索する姿勢には共感できました。
【町田】 ヨーロッパの代表の意見はどのようなものでしたか?
【猪俣】 ヨーロッパもアメリカと同じような問題を抱えています。世界的な景気後退や環境問題を意識して、軽量小型のベース車の開発やオーバースペック (過剰装備) の見直しを図らねばならないことを模索しているように感じられました。
ただ、ヨーロッパは、もともとベース車そのものに省資源やエコロジーを意識したものが多いですから、その方向にシフトしていくとなれば対応するのは早いかもしれません。
【町田】 それ以外のエリアの代表はどうだったのですか?
【猪俣】 まず、オーストラリアのRV業界が、産業規模からいってもマーケットからいっても、欧米に次ぐ地歩を築いてきていることが分かりました。
オーストラリアでは、RV産業を社会全体が発展する要 (かなめ) として捉えているようなところがあります。
この国は豊かな自然に恵まれているおかげもあって、RVだけでなく、アウトドアレジャーを広く振興させるための社会的合意を形成していこうという気運があるように感じられました。
【町田】 カナダはどうですか?
【猪俣】 この国もRV先進国であることは間違いありません。アメリカと地続きでもあるため、アメリカと同じRV文化を共有しています。
また、アメリカ以上に自然環境が豊かな国ですから、RV産業の育成にもそういう風土と調和するような方向を模索しているという雰囲気がありましたね。
【町田】 南アフリカにRV業界があったというのが、少し意外な感じもするのですが…。
【猪俣】 南アフリカ共和国というのは他のアフリカ新興国とは違い、昔から政府の主要機関や基幹産業はオランダ系の白人によって運営されています。文化的には 「ヨーロッパ」 なんですね。
南アフリカは、アフリカのサバンナなどを見学する観光にも力を入れています。だからこの国では、自然観光に適した特殊なRVが開発されています。そこがユニークなところですね。
【町田】 中国はどうでしょう?
【猪俣】 市場としても産業としても、まだ立ち上がったばかりの国なので、いずれも発展途上です。
RVが文化として浸透し、成熟していくにはまだ時間がかかりそうですが、情熱とか意欲に関しては、他のRV先進国に負けない気概というものを感じました。
【町田】 なるほど。キャンピングカー先進国の欧米では、ベース車の見直しを含め、エネルギー問題や地球温暖化対策をにらんだ真摯な取り組み姿勢を示しているというわけですね。
一方、キャンピングカーの発展途上国では、自然や環境との調和を意識したRV開発を目指していると。
まさに、世界のさまざまな産業が直面している課題を、この業界も率先して受けとめ、前向きに進んでいるということが伝わってきました。

《 日本文化に高い注目が集まる 》
【町田】 日本のプレゼンターとして、猪俣さんが報告されたのはどのような内容のものだったのでしょう?
【猪俣】 日本のRV業界の生産台数や売上金額も含め、産業規模やインフラ整備の状況は 「キャンピングカー白書2008」 のデータを元に正確に伝えました。
ただ、そういう数値的なデータよりも、彼らが関心を持ったのは日本型キャンピングカーの持つ珍しい文化だったんですね。
【町田】 どういうことでしょう?
【猪俣】 たとえば軽自動車のような超スモールキャンピングカー。こういうものは海外のカテゴリーにはないわけです。
それを、私は日本特有の 「茶室」 や 「盆栽」 などという文化の延長線上にあるものだという形で、日本文化を代表する文物の画像なども例に採りながら紹介したんですね。それはかなり海外の人たちの目を惹きました。
【町田】 確かに今日本のアニメ、ゲームなどを中心にした日本のエンターティメント文化が欧米やアジアの若者たちから評価され、「ジャパン・クール」 というブームが起こっています。
スシのような日本食も海外で定着しましたし、盆栽や墨絵といった伝統芸能を楽しむ外国人も増えています。
日本のキャンピングカーが海外の代表から興味を持たれたというのは、そういう文脈の中で解釈すればよろしいのでしょうか。
【猪俣】 そうですね。やはりキャンピングカーにもその国固有の文化が反映しているというアプローチが良かったのだろうと思います。
軽キャンパーのような日本独自の小型キャンピングカーが生まれてきた理由も、道路事情や税制上のメリットで説明するより、「宇宙の広大さを、極小の世界に閉じこめる日本文化が反映されたものだ」 と説明した方が反応がありましたね。
【町田】 面白いですねぇ! 聞いた話なんですが、フランスあたりでは、インテリの条件として、「日本文化に精通していること」 というのがあるそうなんですね。
フランスあたりから、日本にやってくる観光客というのは、『源氏物語』 なども読んでくる人がいるとか。
キャンピングカーにおいても、海外の人に日本のキャンピングカーを理解してもらうためには、今後そういうアプローチも必要になってくるかもしれませんね。
【猪俣】 それは必要でしょうね。だいたいハイエースなどをベースにした日本型クラスBというものが、海外にはありませんから。
そういう車両の中には 「畳」 や 「障子」 を使った 「茶室」 みたいなキャンピングカーもあるということを画像も交えて紹介すると、彼らは興味を感じるようなんですね。

【町田】 「障子」 という素材そのものが天然素材ですし、そのようなエコロジカルな素材を使って、建物の内側と外に広がる自然との調和を保つという発想は、石の建築文化を築いてきた西洋にはないですものね。
【猪俣】 そうなんですね。日本にはそのようなキャンピングカーも生まれているということは、欧米人の発想を大いに刺激したのではないでしょうか。
彼らは、アメ車やヨーロッパ車だけがスタンダードだと信じていたのに、まったく別のスタイルを持つRVがこの世に存在するということが面白くてしょうがない…という感じでした。
【町田】 彼らの目には、そういう日本型キャンピングカーが評価できるものとして映ったのでしょうか?
【猪俣】 そういうものが 「主流」 になるとは思わないでしょうけれど、少なくとも自分たちのRV文化を刺激する材料にはなったと思います。
私のプレゼンが終わった後、アメリカRVIAの代表や南アフリカの代表が声をかけてきて、「非常にいいプレゼンだった。勉強になった」 と誉めてくれたことからも、なんらかの手応えを感じてくれたという気配は伝わってきました。
《 道の駅って何だ? 》
【町田】 そのほかに、外国の代表が関心を持ったことがありましたか?
【猪俣】 「道の駅とは何だ?」 という質問を受けましたね。「私たち日本のユーザーはキャンプ場などで宿泊する以外にも道の駅 = ロードサイドステーションで休憩することもある」 と伝えたんです。
ところが、こういう正式な宿泊施設ではないのにキャンピングカーが休める “ファジー” な空間というのは、外国にはないわけですね。
これもオリエンタル・デザインを施したジャパニーズRVと同じように、彼らには 「エキゾチシズムに満ちたスペース」 に感じられたようです。
【町田】 将来、日本製のキャンピングカーが 「国際商品」 になっていく可能性はあるんでしょうか?
【猪俣】 可能性は多いにあります。日本のビルダーの力というのはメキメキ向上しているから、クオリティだけいえば遜色のないものになっています。ただ、解決しなければならない問題も多いですね。
まずレギュレーションの問題。
欧米のRVに対する法規制というのはものすごく細かくて、しかも膨大な量に及んでいます。
それに対して、日本のRV業界はそういう欧米のレギュレーションに対応する基準をまだ用意していません。
まずそこで、正規に輸出するときに立ちはだかる壁があります。
《 国産キャンピングカーが世界に飛翔する日 》
【町田】 なるほど。これは難しい問題ですね。
【猪俣】 しかし、こうも考えられるわけですね。
日本のキャンピングカーというのは、欧米のレギュレーションとは異なる構造要件に基づいて造られているにもかかわらず、この成熟した交通社会を実現している日本で、今日までたいした事故も起こさないまま安全に運行されてきたわけですね。
これはどういうことかというと、日本のスタッフには、レギュレーションを厳密に守りながら造るという職人的な勤勉さが備わっているだけでなく、デザイナー的な直観力にも恵まれていて、…メーカーによって違うかもしれませんけれど、「安全を満たすにはこれだけの基準が必要になるだろう」 という判断基準を自分たちの “体内” に持っているからだろうと思います。
だから、真剣になって輸出を考え始めたら、各国のレギュレーションに合わせた製造など、日本のRVメーカーは簡単にクリアしてしまうと思いますよ。
【町田】 実際、乗用車がそうでしたものね。輸出が伸びたのは、世界に散らばる細かなレギュレーションに適合するように、すべて仕様を変えて生産してきたからですものね。
【猪俣】 ただ、キャンピングカーともなると、そのコーチ (架装) 部分に関してはそう簡単に適合できない部分というものが残りますね。
まず電気。
現在、アメリカでは115V。ヨーロッパは220V。日本は100V。これに対応していくのが大変です。
このような違いは、各国の住宅事情と密接に絡んでいますから、RVだけ共通化を図るということが非常に難しいんですね。
また、LPガスの扱いも日本と諸外国では法律的にかなり違うところがあります。さらに排ガス規制の問題。これも国の認証がすべて異なるのでやっかいです。
【町田】 あとベース車の問題で、右ハンドルと左ハンドルの問題が出てきますね。
【猪俣】 そうですね。イギリス文化圏以外はみな左ハンドルですから、現状の国産車をベースに使うわけにはいかないでしょうね。
だけどフィアットのデュカトなどを日本に入れて、それに架装して出すなどということができれば、また違ってくるのではないですか。
【町田】 でもそれは輸出入のコストがバカ高いものになって現実的でないのでは?
【猪俣】 しかし、いま国連などを中心に、モータリゼーションをもっとグローバル化しようという動きが進んでいます。つまり各国のレギュレーションの違いを解消して、より 「ハーモナイズ (調和) 」 させようという流れができているんですね。
そのようにクルマのレギュレーションが統一されていけば、試験基準の違いなども解消されますから、相対的に輸出入にかかるコストが低減されます。
ベース車がそのような方向に傾けば、架装部分を担当するビルダーさんにもそういう流れが波及するでしょう。少し時間のかかる問題かもしれませんが…。
【町田】 会議の流れとして、RV業界が明日の希望を見出すような方向が見えたのでしょうか。
【猪俣】 やはりそれが目的ですから、今後ますます厳しさを増しそうな環境において、RVの価値をどう創出し、どう訴えていくかという意欲はどの国の代表にもみなぎっていましたね。
具体的な対策は、個々の国々でそれぞれ検討することになるでしょうけれど、おそらく今後のセールスプロモーションなどにおいては、それぞれの国で時代を見据えた建設的な提案がなされていくと思います。
3日間取材して、日本のRV業界の活力というものを、本当に実感することができた。
会場では、日本RV協会が発行する広報誌 『くるま旅』 第5号が配布されたが、この広報誌の編集をお手伝いさせてもらった関係上、取材ネタとして残した資料が手元にある。
今回は、日本RV協会さんの承諾を得て、その資料の中から日本RV協会・海外情報部の猪俣慶喜氏のインタビュー記事をここに公開する。
基本的な内容は、『くるま旅』 5号に掲載されたものと同じだが、広報誌においてはスペース的な関係もあって割愛せざるを得なかった部分があった。
ここに公開するのは、広報誌では割愛した部分を含めたインタビュー記事の全貌である。
《 RV世界会議について 》
2008年9月4日に、ドイツ・デュッセルドルフのキャンピングカーショー 「キャラバンサロン2008」 にて開催された会議。
日本、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、中国の各国代表がそれぞれ自国のキャンピングカー産業の現状とその使用環境を報告しあい、将来の展望を語り合った。
日本からは 「日本RV協会 (JRVA) 」 前会長・増田英樹氏ほか、事務局・矢久保達也氏、海外情報部・猪俣慶喜氏ら3名が出席。他に会議の傍聴者として、RV協会から5社6名が参加した。
▲ 議長のトレバー・ワトソン氏 (英国) と増田英樹前会長
《 世界のRV業者が集まった初の国際会議 》
【町田】 まず、この 「RV世界会議」 に参加した国々を教えてください。
【猪俣】 国単位という意味では、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、中国なんですが、ヨーロッパの場合はドイツのRV協会がヨーロッパ全域のRV事業者を代表する形でプレゼンテーションを行っていましたね。
司会は、国際自動車連盟 (FIA) の副代表で、英国キャラバンクラブの代表も務めるイギリス人が務めていました。
とにかく、今までキャンピングカー産業というのは、欧米中心のように思われていましたが、今やアジア、アフリカ、オセアニアにまで広がってきていることがこの度の会議で分かりました。
【町田】 これが第1回目の会議ということなんですが、このようなRV業界の国際会議が開かれた背景には、どのような事情があったのでしょう?
▲ 壇上で基調報告を行うプレゼンターの猪俣氏
【猪俣】 ひとつには、経済問題や環境問題が世界規模で深刻化し、文明的な行き詰まり感も広がってきた中で、RV産業は時代とどう関わるのか。そういう問題意識が生まれてきたということですね。
また、ビジネス的な側面から見ると、欧米ともに国内マーケットがピークを極める時期が読めてきて、さらなる市場を開拓するためには 「輸出」 が必要だという認識に達したからではないでしょうか。
だからこの会議では、それぞれの国が、お互いのマーケットや法規制を報告しあって、お互いの輸出の可能性を探るという目的があったと思います。
【町田】 会議のプレゼンテーションの雰囲気はどんなものだったのですか?
【猪俣】 国によって違うのですが、一番面白くて充実していたのは、やはりアメリカのRV協会であるRVIAのプレゼンでしたね。
とにかく喋りも慣れているし、笑いを取りつつ場を盛り上げるコツを心得ていました。彼らは、こういう場が一種の 「セレモニー」 であり 「フェスティバル」 だという認識を持っているんですね。
《 悩みもあれば希望もある各国代表 》
【町田】 アメリカ代表が発したメッセージそのものは、どんな内容でしたか?
【猪俣】 やはり自分たちの抱えている問題を正確に把握して、それを正直に発表していました。
たとえば、ここ10年ほどアメリカのRVは車体も大きくなって、豪華になってきたわけですね。その分、当然重量も重くなり、燃費も悪くなりました。
そういう流れが、原油資源の枯渇や地球の温暖化が問題視されている今の時代に合っているのかどうか。彼らにも心配はあるわけです。
そういった懸念も正直に告白しつつ、ベース車の問題としてディーゼルが見直される時代になるだろうという予測も交え、アメリカンRVの新しい方向を模索する姿勢には共感できました。
【町田】 ヨーロッパの代表の意見はどのようなものでしたか?
【猪俣】 ヨーロッパもアメリカと同じような問題を抱えています。世界的な景気後退や環境問題を意識して、軽量小型のベース車の開発やオーバースペック (過剰装備) の見直しを図らねばならないことを模索しているように感じられました。
ただ、ヨーロッパは、もともとベース車そのものに省資源やエコロジーを意識したものが多いですから、その方向にシフトしていくとなれば対応するのは早いかもしれません。
【町田】 それ以外のエリアの代表はどうだったのですか?
【猪俣】 まず、オーストラリアのRV業界が、産業規模からいってもマーケットからいっても、欧米に次ぐ地歩を築いてきていることが分かりました。
オーストラリアでは、RV産業を社会全体が発展する要 (かなめ) として捉えているようなところがあります。
この国は豊かな自然に恵まれているおかげもあって、RVだけでなく、アウトドアレジャーを広く振興させるための社会的合意を形成していこうという気運があるように感じられました。
【町田】 カナダはどうですか?
【猪俣】 この国もRV先進国であることは間違いありません。アメリカと地続きでもあるため、アメリカと同じRV文化を共有しています。
また、アメリカ以上に自然環境が豊かな国ですから、RV産業の育成にもそういう風土と調和するような方向を模索しているという雰囲気がありましたね。
【町田】 南アフリカにRV業界があったというのが、少し意外な感じもするのですが…。
【猪俣】 南アフリカ共和国というのは他のアフリカ新興国とは違い、昔から政府の主要機関や基幹産業はオランダ系の白人によって運営されています。文化的には 「ヨーロッパ」 なんですね。
南アフリカは、アフリカのサバンナなどを見学する観光にも力を入れています。だからこの国では、自然観光に適した特殊なRVが開発されています。そこがユニークなところですね。
【町田】 中国はどうでしょう?
【猪俣】 市場としても産業としても、まだ立ち上がったばかりの国なので、いずれも発展途上です。
RVが文化として浸透し、成熟していくにはまだ時間がかかりそうですが、情熱とか意欲に関しては、他のRV先進国に負けない気概というものを感じました。
【町田】 なるほど。キャンピングカー先進国の欧米では、ベース車の見直しを含め、エネルギー問題や地球温暖化対策をにらんだ真摯な取り組み姿勢を示しているというわけですね。
一方、キャンピングカーの発展途上国では、自然や環境との調和を意識したRV開発を目指していると。
まさに、世界のさまざまな産業が直面している課題を、この業界も率先して受けとめ、前向きに進んでいるということが伝わってきました。
《 日本文化に高い注目が集まる 》
【町田】 日本のプレゼンターとして、猪俣さんが報告されたのはどのような内容のものだったのでしょう?
【猪俣】 日本のRV業界の生産台数や売上金額も含め、産業規模やインフラ整備の状況は 「キャンピングカー白書2008」 のデータを元に正確に伝えました。
ただ、そういう数値的なデータよりも、彼らが関心を持ったのは日本型キャンピングカーの持つ珍しい文化だったんですね。
【町田】 どういうことでしょう?
【猪俣】 たとえば軽自動車のような超スモールキャンピングカー。こういうものは海外のカテゴリーにはないわけです。
それを、私は日本特有の 「茶室」 や 「盆栽」 などという文化の延長線上にあるものだという形で、日本文化を代表する文物の画像なども例に採りながら紹介したんですね。それはかなり海外の人たちの目を惹きました。
【町田】 確かに今日本のアニメ、ゲームなどを中心にした日本のエンターティメント文化が欧米やアジアの若者たちから評価され、「ジャパン・クール」 というブームが起こっています。
スシのような日本食も海外で定着しましたし、盆栽や墨絵といった伝統芸能を楽しむ外国人も増えています。
日本のキャンピングカーが海外の代表から興味を持たれたというのは、そういう文脈の中で解釈すればよろしいのでしょうか。
【猪俣】 そうですね。やはりキャンピングカーにもその国固有の文化が反映しているというアプローチが良かったのだろうと思います。
軽キャンパーのような日本独自の小型キャンピングカーが生まれてきた理由も、道路事情や税制上のメリットで説明するより、「宇宙の広大さを、極小の世界に閉じこめる日本文化が反映されたものだ」 と説明した方が反応がありましたね。
【町田】 面白いですねぇ! 聞いた話なんですが、フランスあたりでは、インテリの条件として、「日本文化に精通していること」 というのがあるそうなんですね。
フランスあたりから、日本にやってくる観光客というのは、『源氏物語』 なども読んでくる人がいるとか。
キャンピングカーにおいても、海外の人に日本のキャンピングカーを理解してもらうためには、今後そういうアプローチも必要になってくるかもしれませんね。
【猪俣】 それは必要でしょうね。だいたいハイエースなどをベースにした日本型クラスBというものが、海外にはありませんから。
そういう車両の中には 「畳」 や 「障子」 を使った 「茶室」 みたいなキャンピングカーもあるということを画像も交えて紹介すると、彼らは興味を感じるようなんですね。
【町田】 「障子」 という素材そのものが天然素材ですし、そのようなエコロジカルな素材を使って、建物の内側と外に広がる自然との調和を保つという発想は、石の建築文化を築いてきた西洋にはないですものね。
【猪俣】 そうなんですね。日本にはそのようなキャンピングカーも生まれているということは、欧米人の発想を大いに刺激したのではないでしょうか。
彼らは、アメ車やヨーロッパ車だけがスタンダードだと信じていたのに、まったく別のスタイルを持つRVがこの世に存在するということが面白くてしょうがない…という感じでした。
【町田】 彼らの目には、そういう日本型キャンピングカーが評価できるものとして映ったのでしょうか?
【猪俣】 そういうものが 「主流」 になるとは思わないでしょうけれど、少なくとも自分たちのRV文化を刺激する材料にはなったと思います。
私のプレゼンが終わった後、アメリカRVIAの代表や南アフリカの代表が声をかけてきて、「非常にいいプレゼンだった。勉強になった」 と誉めてくれたことからも、なんらかの手応えを感じてくれたという気配は伝わってきました。
《 道の駅って何だ? 》
【町田】 そのほかに、外国の代表が関心を持ったことがありましたか?
【猪俣】 「道の駅とは何だ?」 という質問を受けましたね。「私たち日本のユーザーはキャンプ場などで宿泊する以外にも道の駅 = ロードサイドステーションで休憩することもある」 と伝えたんです。
ところが、こういう正式な宿泊施設ではないのにキャンピングカーが休める “ファジー” な空間というのは、外国にはないわけですね。
これもオリエンタル・デザインを施したジャパニーズRVと同じように、彼らには 「エキゾチシズムに満ちたスペース」 に感じられたようです。
【町田】 将来、日本製のキャンピングカーが 「国際商品」 になっていく可能性はあるんでしょうか?
【猪俣】 可能性は多いにあります。日本のビルダーの力というのはメキメキ向上しているから、クオリティだけいえば遜色のないものになっています。ただ、解決しなければならない問題も多いですね。
まずレギュレーションの問題。
欧米のRVに対する法規制というのはものすごく細かくて、しかも膨大な量に及んでいます。
それに対して、日本のRV業界はそういう欧米のレギュレーションに対応する基準をまだ用意していません。
まずそこで、正規に輸出するときに立ちはだかる壁があります。
《 国産キャンピングカーが世界に飛翔する日 》
【町田】 なるほど。これは難しい問題ですね。
【猪俣】 しかし、こうも考えられるわけですね。
日本のキャンピングカーというのは、欧米のレギュレーションとは異なる構造要件に基づいて造られているにもかかわらず、この成熟した交通社会を実現している日本で、今日までたいした事故も起こさないまま安全に運行されてきたわけですね。
これはどういうことかというと、日本のスタッフには、レギュレーションを厳密に守りながら造るという職人的な勤勉さが備わっているだけでなく、デザイナー的な直観力にも恵まれていて、…メーカーによって違うかもしれませんけれど、「安全を満たすにはこれだけの基準が必要になるだろう」 という判断基準を自分たちの “体内” に持っているからだろうと思います。
だから、真剣になって輸出を考え始めたら、各国のレギュレーションに合わせた製造など、日本のRVメーカーは簡単にクリアしてしまうと思いますよ。
【町田】 実際、乗用車がそうでしたものね。輸出が伸びたのは、世界に散らばる細かなレギュレーションに適合するように、すべて仕様を変えて生産してきたからですものね。
【猪俣】 ただ、キャンピングカーともなると、そのコーチ (架装) 部分に関してはそう簡単に適合できない部分というものが残りますね。
まず電気。
現在、アメリカでは115V。ヨーロッパは220V。日本は100V。これに対応していくのが大変です。
このような違いは、各国の住宅事情と密接に絡んでいますから、RVだけ共通化を図るということが非常に難しいんですね。
また、LPガスの扱いも日本と諸外国では法律的にかなり違うところがあります。さらに排ガス規制の問題。これも国の認証がすべて異なるのでやっかいです。
【町田】 あとベース車の問題で、右ハンドルと左ハンドルの問題が出てきますね。
【猪俣】 そうですね。イギリス文化圏以外はみな左ハンドルですから、現状の国産車をベースに使うわけにはいかないでしょうね。
だけどフィアットのデュカトなどを日本に入れて、それに架装して出すなどということができれば、また違ってくるのではないですか。
【町田】 でもそれは輸出入のコストがバカ高いものになって現実的でないのでは?
【猪俣】 しかし、いま国連などを中心に、モータリゼーションをもっとグローバル化しようという動きが進んでいます。つまり各国のレギュレーションの違いを解消して、より 「ハーモナイズ (調和) 」 させようという流れができているんですね。
そのようにクルマのレギュレーションが統一されていけば、試験基準の違いなども解消されますから、相対的に輸出入にかかるコストが低減されます。
ベース車がそのような方向に傾けば、架装部分を担当するビルダーさんにもそういう流れが波及するでしょう。少し時間のかかる問題かもしれませんが…。
【町田】 会議の流れとして、RV業界が明日の希望を見出すような方向が見えたのでしょうか。
【猪俣】 やはりそれが目的ですから、今後ますます厳しさを増しそうな環境において、RVの価値をどう創出し、どう訴えていくかという意欲はどの国の代表にもみなぎっていましたね。
具体的な対策は、個々の国々でそれぞれ検討することになるでしょうけれど、おそらく今後のセールスプロモーションなどにおいては、それぞれの国で時代を見据えた建設的な提案がなされていくと思います。

ところで前回ブログのRVショー会場のお写真が臨場感たっぷりでしたので、コピーして拙ブログに使わせていただきました。事後報告になってしまい失礼いたしました。
solocaravanさんの幕張ショーの予測と、そのレポートも大変楽しく拝読いたしました。
金曜日はウィークデイだったので、土日ほどの来場者がいませんでしたけれど、さるイベント企画家の話を聞いたところ、最近のショーで平日に有料のイベントでこれだけ人を集まるというのは、なかなかないとのことでした。
主催者の発表によると、日曜日の入場者は昨年を上回ったそうです。
軽キャンカーの説明の仕方ですが、確かに諸般の事情が許せば、もう少し大きなキャンピング車が欲しいと思われている方もいらっしゃるでしょうね。
ただ一方で、軽キャンカーに、普通サイズのキャンピング車にない独特の世界を感じて使われている方もいらっしゃいます。
そういう方の中には、「高度な文明」 とはいかないまでも、「小さな空間の中で、これだけの完成度を高めるというのは驚異だ」 と言った方もいらっしゃいました。
人によって、それぞれ微妙に捉え方が違うのでしょうね。
私自身は、軽キャンカーとは別なのですが、今の家族で使うキャンピングカーとは別に、独り用のサクシードかプロボックスベースの “寝られるだけ” のライトキャンパーが1台欲しいな…ぐらいに思っています。
画像は使えるものがあったら遠慮なくお使いください。solocaravan さんに使って頂けるならうれしい限りです。