2008年06月26日
旅は相棒で決まる
《 モーターホームでアメリカを走る 番外編 1 》

旅が楽しくなるかどうかは、“相棒” で決まる。
特に、長期旅行は、相棒との相性が大事だ。
日頃仲が良い友達だからといって、旅先まで、その仲の良さが持続するとは限らない。
かえってお互いにわがままが出て、旅先で気まずくなることもある。
逆に、日頃それほど深くない付き合いだったのに、旅先でお互いのキャラクターに惹かれ合い、それから親交が深まるケースもある。
今回、レンタルモーターホームを借りて、ネバダ州、アリゾナ州、ユタ州を回る 「グランドサークルの旅」 では、この相棒に恵まれた。
トラベルデポ・インコーポレイテッドの小林康之社長。
なにしろ、ご本人が 「レンタルモーターホームによるアメリカ旅行」 をアレンジする仕事に携われているだけに、これは心強かった。

小林氏と付き合うきっかけは何だったか。
たぶん、どこかのキャンピングカーショーのイベント会場で、「モーターホームによるアメリカ旅行」 を案内するブースを出されていたときだったかと思う。
挨拶を交わした後、
「しんどいビジネスですよ」
と、私は言った記憶がある。
実際、レンタルモーターホームによるアメリカツァーというビジネスは、なかなか難しい。
私も過去何度か、そういう企画を練っているという旅行会社さんから相談を受けたことがある。
みな思うように進展しなかったようだ。
こういうビジネスを軌道に乗せるには、高いハードルがいくつかある。
まずお客さんが、こういう旅の企画をすんなりと受け入れるかどうか。
キャンピングカーユーザーならともかく、乗用車しか運転したことがない人が、写真で見るだけでも大きく感じられるアメリカンモーターホームを乗りこなせると思えるかどうか。まずそこが最初の難関となる。
また、交通ルールや道路標識も異なる異国を、果たして、無事にドライブできるかどうか。
さらには、英語に慣れていない場合、食事、買い物、観光、給油などをスムースにこなせるかどうか。
そういう心配が出てくると、「面白そう」 とは感じても、いざ実行するとなると、二の足を踏む人が多いように思える。
現に私がそうだった。
こういう旅には 「準備がいる」 と思えたからだ。
行く先々の観光情報を集めるだけではすまない。
日本とは異なる交通ルールの勉強。
レンタカーを借りたり、走行中のトラブルに巻き込まれたりしたときの交渉術の会得。
語学力を高めるとともに、そういうケースを想定した周到な準備が必要な旅だと思えたのだ。
しかし、今回、
「無料のレンタルモーターホームが1台借りられました。私も同行します。一緒に行きません?」
という小林さんからの誘いを得て、これは好機だと思った。
“周到な準備” をせずとも、旅のおいしいところだけが味わえる!
そんな虫のいいことを考えた。
具体的な日程が決まる頃、資料の束をどっさりと抱えた小林さんと会った。
・各地域の詳細な観光パンフレット
・地図
・モーターホームの使い方の手引き集
・アメリカの交通事情の紹介
・現地でのサポート体制への連絡方法
そのほとんどは、小林さん自身の手作りによる資料だった。
読んでいくと、旅に対する不安や疑問が解消していくばかりでなく、どんどん興味がつのっていく。
かなり細部にまで気配りが行き届いた資料であると同時に、その気にさせる 「呼びかけ」 「誘い」 が巧み。
情報発信のツボを心得ていられる方だと知った。

ご本人もこのホビダスのサイトで、『モーターホームの旅専門旅行会社 社長の格闘日記』 (ハンドルネーム 「motor-home」 ) というブログを運営されている。
そちらの記事も、こういうビジネスの知られざる一面を理解できるので面白い。
しかし、小林さんのブログタイトルに付けられた 「格闘日記」 という意味は、いったい何なのか。
彼は何と格闘しているのだろう。
小林さんは、まだ一般的には認知されていないこの業務を、ひとつのビジネスモデルとして立ち上げられるのかどうか格闘しているのだ。
レンタルモーターホームを使ったアメリカツァーは、過去何度か旅行会社によって企画されたことがあったが、それが華々しい成果を上げていないということは、小林さんもご承知であった。
「しかし、取り組み姿勢の問題ではないか」
と彼はいう。
こういうツァーのコーディネートには、次のような作業が要求される。
・現地のレンタルモーターホーム会社と契約する。
・現地でケアしてくれる日本語の通じるスタッフを用意する。
・顧客の旅に求めるイメージを聞き、その日程スケジュールを組む。
・どの場所でどんな観光ができるか、何が食べられるか、日程に合わせてツァーの“目玉”をピックアップする。
・途中で泊まるRVパークを調べ、事前予約を取る。
「とてもじゃないが、大手旅行会社ができるような仕事ではない」
という。
「昼夜を問わず、刻々と変化していく現地の状況を的確に把握していかなければできない仕事。担当した社員には相当なハードワークが要求されるだろうし、旅行会社が真面目に取り組むとなると、採算が合わなくなるでしょう」
自ら大手旅行会社に勤務して、添乗員として豊富な渡航体験も持っている小林さんだからこそ言える言葉かもしれない。
このような旅を、いったいどうして小林さんは思いついたのだろう。
学生時代に、レンタカーを借りて、アメリカを回ったことがひとつのきっかけになったという。
言葉も十分に通じない。地図もなかなか手には入らない。心細くて、気が萎えそうにもなった孤独なアメリカドライブ。
しかし、それを乗り切ったときの達成感は大きかった。
旅行会社が用意したパックツァーなどでは絶対に味わうことのできない、充実感があった。
「自分で手に入れた旅」。
旅行会社が、ホテルから観光バスまですべてお膳立てしてくれるパックツァーを 「与えられた旅」 とするならば、自分でクルマを運転して、泊まる場所も自分で確保するような旅は 「自分で手に入れた旅」 といえる。
「与えられた旅」 は、観光地の絵ハガキのような記憶しか残さないが、「自分で手に入れた旅」 は、ドキュメント映画のような映像として、生涯記憶に残る。
今の時代は、そっちの方がはるかに “贅沢” 。
レンタルモーターホームで回るアメリカツァーには、その贅沢さがある。
……と、小林さんは語る。
実際、今回自らモーターホームを運転して、車内で泊まってみて、この旅が実に贅沢な旅であることが分かった。
モーターホームとは、文字どおり 「動く家」 。
つまり、「食う」 、「寝る」 、「住む」 という人間の基本生活をこなしながらの旅となる。
当然、土地の人たちと接触することも多いし、ちょっとしたトラブルを自分で解決していくときに勉強できるものも多い。
このダイレクト感というのは、他の旅ではちょっと得がたい。
何日か使っているうちに、レンタルとはいえ、クルマにも愛着がわく。
夜、ベッドに横たわる前に、運転席の方に向かって、
「今日も1日、ご苦労様」
と、声もかけたくなる。
西部の開拓時代。
フロンティアを目指して西へ移動していた幌馬車の人たちは、寝る前に馬たちに向かって 「ご苦労様」 を言ったのだろうか。
ふと、そんなことまで、頭に浮かべるような旅だった。
最後に、こういうツァーにチャレンジしてみたいと思う人に、ちょっと気づいたことをお伝えしたい。
まず、メインドライバーを務める人は、状況把握をしっかりできるナビゲーターを必ず1人確保すること。
初めて異国の地を走るときは、
「ドライバーとナビゲーターが2人セットになって、はじめてドライバー1人の能力になる」 と理解した方がいい。
特に、都市部に入ったときは要注意。
慣れない右側通行、日本と異なる信号システムなど、ドライバーはクルマを前に進めるだけでも神経をすり減らしてしまう。
ましてや、モーターホームに乗りつけていない人は、最初のうちはその車幅感覚がつかめないため、周りに乗用車がひしめいてくると、それだけでパニックになる。
そうなると、英語の標識までじっくり読んでいる余裕がない。
そういう時こそ、ナビゲーターの出番だ。
ナビをこなす人は、事前に地図などを念入りに調べ、右左折のポイントなどを早め早めにドライバーに教えてあげてほしい。
そういう連係プレーがうまくいかないと、ドライバーだけにストレスが集中し、そのイライラと不安が事故を呼ぶことになってしまう。
郊外に出れば、果てしなく伸びる一直線が続くことになるので、ドライバーはようやく気を抜くことができる。

しかし、ナビゲーターは、のんきに外の景色ばかり見とれてはいられない。
単調な一本道を走っていると、視界の良さに気を許して、かえって道路標識を見逃してしまうことがある。
そうなると、同じような景色ばかり続くので、なかなかコースアウトに気づかない。「何か変…」 と感じた頃には、すでに相当無駄な距離を走っていたりする。
それほど、ナビゲーターの役割は大変なのだが、今回の旅行では、最良のナビゲーターを得ることができた。
なにしろ、このツァーの主催者である小林さん自身だったのだから。
事故もなく旅を終えて、今こうしてエラソーに海外ドライブのコツなどを述べ立てていられるのも、小林さんの適切なナビがあったからである。
こういう贅沢なナビゲーターを得られた自分は幸せ者である。
「相棒に恵まれた」 という意味には、そのことも含まれている。
旅が楽しくなるかどうかは、“相棒” で決まる。
特に、長期旅行は、相棒との相性が大事だ。
日頃仲が良い友達だからといって、旅先まで、その仲の良さが持続するとは限らない。
かえってお互いにわがままが出て、旅先で気まずくなることもある。
逆に、日頃それほど深くない付き合いだったのに、旅先でお互いのキャラクターに惹かれ合い、それから親交が深まるケースもある。
今回、レンタルモーターホームを借りて、ネバダ州、アリゾナ州、ユタ州を回る 「グランドサークルの旅」 では、この相棒に恵まれた。
トラベルデポ・インコーポレイテッドの小林康之社長。
なにしろ、ご本人が 「レンタルモーターホームによるアメリカ旅行」 をアレンジする仕事に携われているだけに、これは心強かった。
小林氏と付き合うきっかけは何だったか。
たぶん、どこかのキャンピングカーショーのイベント会場で、「モーターホームによるアメリカ旅行」 を案内するブースを出されていたときだったかと思う。
挨拶を交わした後、
「しんどいビジネスですよ」
と、私は言った記憶がある。
実際、レンタルモーターホームによるアメリカツァーというビジネスは、なかなか難しい。
私も過去何度か、そういう企画を練っているという旅行会社さんから相談を受けたことがある。
みな思うように進展しなかったようだ。
こういうビジネスを軌道に乗せるには、高いハードルがいくつかある。
まずお客さんが、こういう旅の企画をすんなりと受け入れるかどうか。
キャンピングカーユーザーならともかく、乗用車しか運転したことがない人が、写真で見るだけでも大きく感じられるアメリカンモーターホームを乗りこなせると思えるかどうか。まずそこが最初の難関となる。
また、交通ルールや道路標識も異なる異国を、果たして、無事にドライブできるかどうか。
さらには、英語に慣れていない場合、食事、買い物、観光、給油などをスムースにこなせるかどうか。
そういう心配が出てくると、「面白そう」 とは感じても、いざ実行するとなると、二の足を踏む人が多いように思える。
現に私がそうだった。
こういう旅には 「準備がいる」 と思えたからだ。
行く先々の観光情報を集めるだけではすまない。
日本とは異なる交通ルールの勉強。
レンタカーを借りたり、走行中のトラブルに巻き込まれたりしたときの交渉術の会得。
語学力を高めるとともに、そういうケースを想定した周到な準備が必要な旅だと思えたのだ。
しかし、今回、
「無料のレンタルモーターホームが1台借りられました。私も同行します。一緒に行きません?」
という小林さんからの誘いを得て、これは好機だと思った。
“周到な準備” をせずとも、旅のおいしいところだけが味わえる!
そんな虫のいいことを考えた。
具体的な日程が決まる頃、資料の束をどっさりと抱えた小林さんと会った。
・各地域の詳細な観光パンフレット
・地図
・モーターホームの使い方の手引き集
・アメリカの交通事情の紹介
・現地でのサポート体制への連絡方法
そのほとんどは、小林さん自身の手作りによる資料だった。
読んでいくと、旅に対する不安や疑問が解消していくばかりでなく、どんどん興味がつのっていく。
かなり細部にまで気配りが行き届いた資料であると同時に、その気にさせる 「呼びかけ」 「誘い」 が巧み。
情報発信のツボを心得ていられる方だと知った。
ご本人もこのホビダスのサイトで、『モーターホームの旅専門旅行会社 社長の格闘日記』 (ハンドルネーム 「motor-home」 ) というブログを運営されている。
そちらの記事も、こういうビジネスの知られざる一面を理解できるので面白い。
しかし、小林さんのブログタイトルに付けられた 「格闘日記」 という意味は、いったい何なのか。
彼は何と格闘しているのだろう。
小林さんは、まだ一般的には認知されていないこの業務を、ひとつのビジネスモデルとして立ち上げられるのかどうか格闘しているのだ。
レンタルモーターホームを使ったアメリカツァーは、過去何度か旅行会社によって企画されたことがあったが、それが華々しい成果を上げていないということは、小林さんもご承知であった。
「しかし、取り組み姿勢の問題ではないか」
と彼はいう。
こういうツァーのコーディネートには、次のような作業が要求される。
・現地のレンタルモーターホーム会社と契約する。
・現地でケアしてくれる日本語の通じるスタッフを用意する。
・顧客の旅に求めるイメージを聞き、その日程スケジュールを組む。
・どの場所でどんな観光ができるか、何が食べられるか、日程に合わせてツァーの“目玉”をピックアップする。
・途中で泊まるRVパークを調べ、事前予約を取る。
「とてもじゃないが、大手旅行会社ができるような仕事ではない」
という。
「昼夜を問わず、刻々と変化していく現地の状況を的確に把握していかなければできない仕事。担当した社員には相当なハードワークが要求されるだろうし、旅行会社が真面目に取り組むとなると、採算が合わなくなるでしょう」
自ら大手旅行会社に勤務して、添乗員として豊富な渡航体験も持っている小林さんだからこそ言える言葉かもしれない。
このような旅を、いったいどうして小林さんは思いついたのだろう。
学生時代に、レンタカーを借りて、アメリカを回ったことがひとつのきっかけになったという。
言葉も十分に通じない。地図もなかなか手には入らない。心細くて、気が萎えそうにもなった孤独なアメリカドライブ。
しかし、それを乗り切ったときの達成感は大きかった。
旅行会社が用意したパックツァーなどでは絶対に味わうことのできない、充実感があった。
「自分で手に入れた旅」。
旅行会社が、ホテルから観光バスまですべてお膳立てしてくれるパックツァーを 「与えられた旅」 とするならば、自分でクルマを運転して、泊まる場所も自分で確保するような旅は 「自分で手に入れた旅」 といえる。
「与えられた旅」 は、観光地の絵ハガキのような記憶しか残さないが、「自分で手に入れた旅」 は、ドキュメント映画のような映像として、生涯記憶に残る。
今の時代は、そっちの方がはるかに “贅沢” 。
レンタルモーターホームで回るアメリカツァーには、その贅沢さがある。
……と、小林さんは語る。
実際、今回自らモーターホームを運転して、車内で泊まってみて、この旅が実に贅沢な旅であることが分かった。
モーターホームとは、文字どおり 「動く家」 。
つまり、「食う」 、「寝る」 、「住む」 という人間の基本生活をこなしながらの旅となる。
当然、土地の人たちと接触することも多いし、ちょっとしたトラブルを自分で解決していくときに勉強できるものも多い。
このダイレクト感というのは、他の旅ではちょっと得がたい。
何日か使っているうちに、レンタルとはいえ、クルマにも愛着がわく。
夜、ベッドに横たわる前に、運転席の方に向かって、
「今日も1日、ご苦労様」
と、声もかけたくなる。
西部の開拓時代。
フロンティアを目指して西へ移動していた幌馬車の人たちは、寝る前に馬たちに向かって 「ご苦労様」 を言ったのだろうか。
ふと、そんなことまで、頭に浮かべるような旅だった。
最後に、こういうツァーにチャレンジしてみたいと思う人に、ちょっと気づいたことをお伝えしたい。
まず、メインドライバーを務める人は、状況把握をしっかりできるナビゲーターを必ず1人確保すること。
初めて異国の地を走るときは、
「ドライバーとナビゲーターが2人セットになって、はじめてドライバー1人の能力になる」 と理解した方がいい。
特に、都市部に入ったときは要注意。
慣れない右側通行、日本と異なる信号システムなど、ドライバーはクルマを前に進めるだけでも神経をすり減らしてしまう。
ましてや、モーターホームに乗りつけていない人は、最初のうちはその車幅感覚がつかめないため、周りに乗用車がひしめいてくると、それだけでパニックになる。
そうなると、英語の標識までじっくり読んでいる余裕がない。
そういう時こそ、ナビゲーターの出番だ。
ナビをこなす人は、事前に地図などを念入りに調べ、右左折のポイントなどを早め早めにドライバーに教えてあげてほしい。
そういう連係プレーがうまくいかないと、ドライバーだけにストレスが集中し、そのイライラと不安が事故を呼ぶことになってしまう。
郊外に出れば、果てしなく伸びる一直線が続くことになるので、ドライバーはようやく気を抜くことができる。
しかし、ナビゲーターは、のんきに外の景色ばかり見とれてはいられない。
単調な一本道を走っていると、視界の良さに気を許して、かえって道路標識を見逃してしまうことがある。
そうなると、同じような景色ばかり続くので、なかなかコースアウトに気づかない。「何か変…」 と感じた頃には、すでに相当無駄な距離を走っていたりする。
それほど、ナビゲーターの役割は大変なのだが、今回の旅行では、最良のナビゲーターを得ることができた。
なにしろ、このツァーの主催者である小林さん自身だったのだから。
事故もなく旅を終えて、今こうしてエラソーに海外ドライブのコツなどを述べ立てていられるのも、小林さんの適切なナビがあったからである。
こういう贅沢なナビゲーターを得られた自分は幸せ者である。
「相棒に恵まれた」 という意味には、そのことも含まれている。

私も26,7年前にカナデイアンロッキーをキャンピングカーで走破しましたが、大変な思いをしました。
でも旅が終了すると、感激もひとしおでした。
今でも当時を思い出しながら、毎年キャンピングカーで北海道を走り回っています。
26~27年前のキャンピングカーの旅となると、日本でようやくキャンピングカーが普及し始めたような時代ですよね。さぞやご苦労もあったかと思います。
でも、その時代に、カナディアンロッキーをキャンピングカーで旅されるとはずいぶん進んでいたんですね。きっと素晴らしい思い出をたくさんお持ちのことでしょう。
もう少し詳しいお話も伺ってみたいと思いました。