2008年06月16日
恐怖の大絶壁
《 モーターホームでアメリカを走る 6 》
ルート66の旅は続く。
セリグマンの町を出て、再びグランドキャニオンに向けて走り始める。
ウィリアムズの町に入った頃、車道に落ちる建物の影に、夕方の気配が忍び込んできたことに気づく。
有名な、グランドキャニオンに沈む夕陽を見物できるかどうか微妙な時間帯になった。
ウィリアムズも、ルート66の面影が強く残っていることで知られる町なのだが、見物している余裕がない。
グランドキャニオンへは、ここから64号線に入って1時間かかるという。
運転速度を、制限速度の65マイルから70マイルにスピードアップする。

▲ 素通りしてしまったウィリアムズの町。 「古き良きアメリカ」 を上手に演出した “映画のセット” のような町並みが続く。
それにしても、シボレーベースのジャンボリー。
31フィートという巨体をものともせず、よく走るクルマだ。
標高がどんどん高くなっているというのに、スピードが落ちない。
じわっとアクセルを踏み込んでいくと、登り坂だというのに、ムチを当てられた競走馬のようにさらに加速していく。
まさに 「パワーでねじ伏せる」 という表現がぴったり。
登り坂でも、高速でも、場所を選ばず豪快な走りを実現することはとてもいいことだと思うけど、こういうクルマがガソリン高騰時代を乗りきっていけるのかどうか、かなり心配になる。

標高が高くなってきたせいか、いつの間にか周囲の景色が荒野から森に変った。
青々とした緑の世界を見るのは久しぶりだ。どこか日本の道を走っている気分になる。
その森の向こう側に、赤味を強くした太陽がゆっくり落ちていく。
サザンロックの伝説的なバンド 「アウトローズ 」 の 「ハリーサンダウン」 という曲を思い出す。そのアップテンポのビートが頭の中で鳴り出して、クルマのスピード感とシンクロした。
夕陽が落ちていく姿は、夜を待ちわびる人間にとっては、じれったいほど遅く感じられ、明るさを惜しむ人間には、あっけないほど速い。

▲ グランドキャニオンへ向かう道。左右に緑の木立が見えるようになる。
沈む夕陽と競争するように走り続け、「もう間に合わない 」 と感じた頃に、ようやくグランドキャニオンに着いた。
ここの駐車場は 「RV乗り入れ禁止 」 になっているため、乗用車が縦列駐車している道ばたにモーターホームを割り込ませ、カメラ片手にビューポイントまで走る。

▲ 「No Buses No RV's No Towed Units」 。バスとキャンピングカー、トレーラーの入場は禁止。

▲ 夕暮れの残照に染まったグランドキャニオン。
壮大な広がりを見せる大地の裂け目に、夕陽の最後の残照が当たるところだった。
必死に写真を撮っていたから気づかなかったが、ふとファインダーから目を逸らすと、立っている足元のすぐ下が断崖絶壁。
こういう場合、日本では必ず記転落防止の柵などを設けているはずなのだが、アメリカでは自然の景観を壊す柵などは最小限にとどめているようだ。
足元を覗き込んだ瞬間、気が遠くなった。
高所恐怖症なのである。
周りを見ると、崖っぷちの先端に座り込んで、優雅に下を見下ろしている若者もいる。
信じられない!
他人のそういう姿を見ただけでも、こちらはもうキン○○のあたりにスゥースゥーと風が舞い込んでくる。

▲ 柵も何もないむき出しの絶壁が間近に!
夕陽が沈みきると、谷は静かに荘厳な紫色に包まれていく。
神秘的な光景だが、
「暗くなって道を踏み外したら大変!」
という思いばかりが先にたち、それを楽しむどころではない。
「明日、朝日が昇る頃にまた訪れましょう」 という小林さんの言葉を頼りに、今日はさっさと引き上げることにした。
この後、小さなアクシデントと、大きなアクシデントに連続して見舞われる。
小さなアクシデントは、宿泊を予定していた 「トレーラービレッジ」 というRVパークが、サイトが満杯だと断られたことだ。
「トレーラービレッジ」の近くには、大型モーターホームが何台も泊まれる広さを持った駐車場があるのだが、アメリカでは 「駐車場での車中泊」 という習慣がない。
そういう場所に泊まっていると、警官やレンジャーパトロールがやってきて、「ここは泊まるところではない」 と立ち退きを勧告する。
無視して泊まってもいいが、強盗などに襲われても、それは自己責任ということで、誰もケアしてくれない。
グランドキャニオンに来る途中に、「グランドキャニオン・キャンプグランド」 というRVパークがあったのを思い出し、闇の中をヘッドライトだけを頼りに戻ることにする。
グランドキャニオンを目指した観光客は、もうすべて近隣の宿舎内に収まったのか、道路を走るクルマの姿もほとんどない。
途中、何度か道に迷って同じ場所をグルグル回る。広大な国立公園の中を、ただ1台さまようのは、なんとも心細いものだ。
夜の11時。
ようやくたどり着いたRVパークには管理人の姿もなかった。
しかし、アメリカのRVパークには 「レイトチェックイン」 というシステムがあるので、料金を封筒に入れてポストに投函するか、もしくは用紙に住所・連絡先を記入して、後からクレジットカードで払い込むことができる。
とにかく、安全に一夜を過ごせる場所を確保することができた。
しかし、そこで第二のアクシデントに見舞われる。
妙に室内灯の光りが暗いのだ。
「変だな…」 と思って、サブバッテリーの残量メーターを調べると、メインバッテリーはフル充電状態なのに、サブバッテリーだけがすっからかん状態。走行充電に支障がないほどたっぷり走ったというのに、これはまたどうしたことか。
それでも最初のうちは、フックアップ設備に電源コードを接続すればなんとかなるだろう…とタカをくくっていたのだが、ACにつないでも電気が来ないことに気づいたときには、愕然とした。
たぶん配線系統のトラブルなのだが、テスターもない状態で、何をどう調べたらよいのやら。
冷蔵庫もいかれていた。
車載の冷蔵庫は、AC電源を取り込むと、LPガスからACに自動的に切り替わるシステムになっているのだが、それも、いつのまにか作動しなくなっている。
ジェネレーターのスイッチをオンにしてみたが、こちらもウンともスンともいわない。
前日まではサブバッテリーもフル充電。
冷蔵庫の冷えもギンギン。
ジェネレーターの作動にもまったく問題ないことを確認していただけに、これには参った。
突然の不調の原因が分からない。
帰国後、ニートRVの猪俣常務にこのことを問い合わせてみた。
「ウィネベーゴ製モーターホームなら問題なかったんでしょうけどね (笑) 」
と、のっけからきついジョークをかまされた。
「それにしても、AC電源を接続してもライトが明るくならないということはちょっと重症ですねぇ。一ヵ所だけでなく、複合的なトラブルが考えられますね」
という。
その日は、結局外灯から差し込んでくる乏しい明かりを頼りに、酒宴の準備にとりかかることにした。
スーパーで焼きソバの麺を仕入れたので、それをソイソースで味付けして、日本風焼きソバを楽しむ予定だったが、そんな手の込んだことをしている余裕がない。
パンにチーズを載せて、それをつまみに小林さんとウィスキーを飲む。
窓の外を見上げると星明り。
暗さに目が慣れてくると、これもなかなかいいもんだ。
最悪の夜を迎えたはずだが、なぜか酔いが回るにつれ、お互いに饒舌になる。
結局は、「旅にはアクシデントがあるからこそ、それを乗り切った時の達成感もまた格別」 という結論を得て、バンクベッドとリヤベッドにそれぞれ分かれ、心地よく眠る。
ルート66の旅は続く。
セリグマンの町を出て、再びグランドキャニオンに向けて走り始める。
ウィリアムズの町に入った頃、車道に落ちる建物の影に、夕方の気配が忍び込んできたことに気づく。
有名な、グランドキャニオンに沈む夕陽を見物できるかどうか微妙な時間帯になった。
ウィリアムズも、ルート66の面影が強く残っていることで知られる町なのだが、見物している余裕がない。
グランドキャニオンへは、ここから64号線に入って1時間かかるという。
運転速度を、制限速度の65マイルから70マイルにスピードアップする。
▲ 素通りしてしまったウィリアムズの町。 「古き良きアメリカ」 を上手に演出した “映画のセット” のような町並みが続く。
それにしても、シボレーベースのジャンボリー。
31フィートという巨体をものともせず、よく走るクルマだ。
標高がどんどん高くなっているというのに、スピードが落ちない。
じわっとアクセルを踏み込んでいくと、登り坂だというのに、ムチを当てられた競走馬のようにさらに加速していく。
まさに 「パワーでねじ伏せる」 という表現がぴったり。
登り坂でも、高速でも、場所を選ばず豪快な走りを実現することはとてもいいことだと思うけど、こういうクルマがガソリン高騰時代を乗りきっていけるのかどうか、かなり心配になる。
標高が高くなってきたせいか、いつの間にか周囲の景色が荒野から森に変った。
青々とした緑の世界を見るのは久しぶりだ。どこか日本の道を走っている気分になる。
その森の向こう側に、赤味を強くした太陽がゆっくり落ちていく。
サザンロックの伝説的なバンド 「アウトローズ 」 の 「ハリーサンダウン」 という曲を思い出す。そのアップテンポのビートが頭の中で鳴り出して、クルマのスピード感とシンクロした。
夕陽が落ちていく姿は、夜を待ちわびる人間にとっては、じれったいほど遅く感じられ、明るさを惜しむ人間には、あっけないほど速い。
▲ グランドキャニオンへ向かう道。左右に緑の木立が見えるようになる。
沈む夕陽と競争するように走り続け、「もう間に合わない 」 と感じた頃に、ようやくグランドキャニオンに着いた。
ここの駐車場は 「RV乗り入れ禁止 」 になっているため、乗用車が縦列駐車している道ばたにモーターホームを割り込ませ、カメラ片手にビューポイントまで走る。
▲ 「No Buses No RV's No Towed Units」 。バスとキャンピングカー、トレーラーの入場は禁止。
▲ 夕暮れの残照に染まったグランドキャニオン。
壮大な広がりを見せる大地の裂け目に、夕陽の最後の残照が当たるところだった。
必死に写真を撮っていたから気づかなかったが、ふとファインダーから目を逸らすと、立っている足元のすぐ下が断崖絶壁。
こういう場合、日本では必ず記転落防止の柵などを設けているはずなのだが、アメリカでは自然の景観を壊す柵などは最小限にとどめているようだ。
足元を覗き込んだ瞬間、気が遠くなった。
高所恐怖症なのである。
周りを見ると、崖っぷちの先端に座り込んで、優雅に下を見下ろしている若者もいる。
信じられない!
他人のそういう姿を見ただけでも、こちらはもうキン○○のあたりにスゥースゥーと風が舞い込んでくる。
▲ 柵も何もないむき出しの絶壁が間近に!
夕陽が沈みきると、谷は静かに荘厳な紫色に包まれていく。
神秘的な光景だが、
「暗くなって道を踏み外したら大変!」
という思いばかりが先にたち、それを楽しむどころではない。
「明日、朝日が昇る頃にまた訪れましょう」 という小林さんの言葉を頼りに、今日はさっさと引き上げることにした。
この後、小さなアクシデントと、大きなアクシデントに連続して見舞われる。
小さなアクシデントは、宿泊を予定していた 「トレーラービレッジ」 というRVパークが、サイトが満杯だと断られたことだ。
「トレーラービレッジ」の近くには、大型モーターホームが何台も泊まれる広さを持った駐車場があるのだが、アメリカでは 「駐車場での車中泊」 という習慣がない。
そういう場所に泊まっていると、警官やレンジャーパトロールがやってきて、「ここは泊まるところではない」 と立ち退きを勧告する。
無視して泊まってもいいが、強盗などに襲われても、それは自己責任ということで、誰もケアしてくれない。
グランドキャニオンに来る途中に、「グランドキャニオン・キャンプグランド」 というRVパークがあったのを思い出し、闇の中をヘッドライトだけを頼りに戻ることにする。
グランドキャニオンを目指した観光客は、もうすべて近隣の宿舎内に収まったのか、道路を走るクルマの姿もほとんどない。
途中、何度か道に迷って同じ場所をグルグル回る。広大な国立公園の中を、ただ1台さまようのは、なんとも心細いものだ。
夜の11時。
ようやくたどり着いたRVパークには管理人の姿もなかった。
しかし、アメリカのRVパークには 「レイトチェックイン」 というシステムがあるので、料金を封筒に入れてポストに投函するか、もしくは用紙に住所・連絡先を記入して、後からクレジットカードで払い込むことができる。
とにかく、安全に一夜を過ごせる場所を確保することができた。
しかし、そこで第二のアクシデントに見舞われる。
妙に室内灯の光りが暗いのだ。
「変だな…」 と思って、サブバッテリーの残量メーターを調べると、メインバッテリーはフル充電状態なのに、サブバッテリーだけがすっからかん状態。走行充電に支障がないほどたっぷり走ったというのに、これはまたどうしたことか。
それでも最初のうちは、フックアップ設備に電源コードを接続すればなんとかなるだろう…とタカをくくっていたのだが、ACにつないでも電気が来ないことに気づいたときには、愕然とした。
たぶん配線系統のトラブルなのだが、テスターもない状態で、何をどう調べたらよいのやら。
冷蔵庫もいかれていた。
車載の冷蔵庫は、AC電源を取り込むと、LPガスからACに自動的に切り替わるシステムになっているのだが、それも、いつのまにか作動しなくなっている。
ジェネレーターのスイッチをオンにしてみたが、こちらもウンともスンともいわない。
前日まではサブバッテリーもフル充電。
冷蔵庫の冷えもギンギン。
ジェネレーターの作動にもまったく問題ないことを確認していただけに、これには参った。
突然の不調の原因が分からない。
帰国後、ニートRVの猪俣常務にこのことを問い合わせてみた。
「ウィネベーゴ製モーターホームなら問題なかったんでしょうけどね (笑) 」
と、のっけからきついジョークをかまされた。
「それにしても、AC電源を接続してもライトが明るくならないということはちょっと重症ですねぇ。一ヵ所だけでなく、複合的なトラブルが考えられますね」
という。
その日は、結局外灯から差し込んでくる乏しい明かりを頼りに、酒宴の準備にとりかかることにした。
スーパーで焼きソバの麺を仕入れたので、それをソイソースで味付けして、日本風焼きソバを楽しむ予定だったが、そんな手の込んだことをしている余裕がない。
パンにチーズを載せて、それをつまみに小林さんとウィスキーを飲む。
窓の外を見上げると星明り。
暗さに目が慣れてくると、これもなかなかいいもんだ。
最悪の夜を迎えたはずだが、なぜか酔いが回るにつれ、お互いに饒舌になる。
結局は、「旅にはアクシデントがあるからこそ、それを乗り切った時の達成感もまた格別」 という結論を得て、バンクベッドとリヤベッドにそれぞれ分かれ、心地よく眠る。

いつも読んでくださっているというコメント、ありがとうございます。
アメリカ・グランドサークルの旅は、すでに経験されている方々も多く、いまさらレポートすることもないように思えるのですが、自分にとっては一度行ってみたい場所だったので、とりあえず、初体験の感激だけは綴っていこうと思っています。
グランドキャニオンのように、「人工物が何もない場所」 というのが、規模が壮大というだけで観光地になるというのも、アメリカらしいと感じました。
そんな感じ方をストレートに表現できたらいいな、と思いつつ書いています。