2008年04月17日
切所
「切所」 (せっしょ) という言葉がある。
峠などの難所を示す言葉で、人生の岐路となる重大な局面に差し掛かったことを表現するときにも使う。
今回の 『キャンピングカー super ガイド 2008 』でも切所はあった。
4月2日だった。
当初、計画していた「4月28日搬入・5月1日売り」という路線が危うくなった。
書かなければならない残った原稿の量、揃えなければならない画像数、取り寄せなければならない資料数などを計算してみると、印刷所と打ち合わせをしたスケジュールどおりに消化できないことが分かった。
掲載を予定していた新型車の完成が、大幅に遅れている。
だから、送信されてくるはずの画像が間に合いそうもない。
既に原稿を書いた車両のコンセプトが途中から変わった。
記事をもう一度書き直さなければならない。
遅れる理由は、対外的にたくさん求めることもできるが、なによりも内部事情が大きい。
原稿書きそのものに時間がかかる。
取材インタビューしたときのメモを開き、資料を精査し、一定のフォーマットに則った形で、車両スペック、装備品、本文、担当者のコメントという順序で手入力していく。
コンセプトが昨年と変わらぬクルマの場合は、価格、装備類を新しいものに変更し、本文は昨年の原稿をベースに、新しい情報を上書きする。
それでも、1台分の原稿を仕上げるには40分~50分。
新車の場合は、1台分の原稿を仕上げるのに必要な時間は1時間半から2時間。複雑なものとなると3時間。
早朝から深夜までデスクに張り付いて作業しても、1日5~6台分の原稿しか書けない日もある。今年は、その新車がやけに多い。
そういうことから逆算してみると、4月2日の段階では 「4月28日搬入」 というスケジュールに危険信号が灯った。
当日の昼休み、携帯電話を握り締めて、桜の見える運河沿いまで歩いた。
スケジュールの再調整を、発売元の担当者と詰める必要が出てきたからだ。
大事な電話を、運河を眺めながらかけるということに、特に意味があったわけではない。
足が自然に今までとは違った景色を求めて動き出すのに 「心」 が従ったまでだ。
搬入を少し後ろに遅らせても、配本日を変えない余地は残っているのかどうか。
配本日がずれるとなると、それはいったいいつになるのか。
それを発売元と最終的に詰めなければならない。
とにかく、この4月2日という日は、配本日を調整するために残された最後の日だったのだ。
この日に配本予定日が確定され、それが決まれば、もう落とせない。
仕上がらなかった部分は割愛し、大幅にページを減らしてでも、とにかく決められた期日に間に合わせなくてはならない。
電話での打ち合わせで、どういう答が出るのか。
胃がキリキリ痛む思いがした。
運河にこぼれる桜の花を見つめながら、発売元のブッキングさんに電話を入れた。
「4月28日納品の予定を、あと2日だけ延ばして30日になりませんかね?」
返事は、「難しい」 という。
28日のスケジューリングなら5月1日売りも可能だが、2日ずれると、次の配本日は5月の中旬以降になるとも。
いったん電話を切った。
目の前では、春爛漫を思わせる青空が広がっているというのに、それが真っ暗に見えた。
どうするか…
ここが 「切所」 だと思った。
印刷工程をつめるしかなかった。
続いて、印刷所に電話を入れた。
「なんとか、あと2日ほど印刷工程を詰められないものだろうか」
すがるような気持ちで印刷所の担当者に尋ねてみると、
「これ以上は無理ですよ」
という暗い声。
初稿校了を提案してみた。
校正紙に赤字 (修正) を一回入れただけで製本に回す。
つまり、赤字入れが正確に反映されたかどうかを確認する機会のないまま本ができあがる。
しかし、それだと赤字部分の修正が不完全な場合、印刷所に責任が回る。
印刷所としては、そういう事態は避けたい。
もちろん、できれば、こちらも避けたい。
いろいろと話し合った。
ラチがあかないと思った瞬間、
「分かりました。一緒に腹をくくってやりましょう」
打って変わったような、担当者の声が明るい声が返ってきた。
最近聞いた言葉の中でも、これはもっともうれしい言葉だった。
しかも、担当者は、
「腹をくくってやります」 ではなく、
「一緒にやりましょう」
と、私の肩にも腕を回して、スクラムを組んでくれたのだ。
印刷所担当者も、土日返上、連日徹夜覚悟で現場に協力させる腹をくくったのだろう。
そうとなれば、こちらも、夜になっても寝てなどはいられない。
「Z旗 (戦闘旗) は掲げられたな」
ふと、そんな古い言葉が頭に浮かんだ。
毎年、桜の花が咲いて、それが散るまでの期間は、胃がキリキリと悲鳴をあげる日々が続く。
とはいっても、それはあくまでも比喩で、実際に胃が痛んだりすることはない。
頑丈な…というか、鈍感な胃袋を持っているおかげで、14年間耐え忍ぶことができている。
▼ 2008ガイド
発行 自動車週報社 /発売 ブッキング

峠などの難所を示す言葉で、人生の岐路となる重大な局面に差し掛かったことを表現するときにも使う。
今回の 『キャンピングカー super ガイド 2008 』でも切所はあった。
4月2日だった。
当初、計画していた「4月28日搬入・5月1日売り」という路線が危うくなった。
書かなければならない残った原稿の量、揃えなければならない画像数、取り寄せなければならない資料数などを計算してみると、印刷所と打ち合わせをしたスケジュールどおりに消化できないことが分かった。
掲載を予定していた新型車の完成が、大幅に遅れている。
だから、送信されてくるはずの画像が間に合いそうもない。
既に原稿を書いた車両のコンセプトが途中から変わった。
記事をもう一度書き直さなければならない。
遅れる理由は、対外的にたくさん求めることもできるが、なによりも内部事情が大きい。
原稿書きそのものに時間がかかる。
取材インタビューしたときのメモを開き、資料を精査し、一定のフォーマットに則った形で、車両スペック、装備品、本文、担当者のコメントという順序で手入力していく。
コンセプトが昨年と変わらぬクルマの場合は、価格、装備類を新しいものに変更し、本文は昨年の原稿をベースに、新しい情報を上書きする。
それでも、1台分の原稿を仕上げるには40分~50分。
新車の場合は、1台分の原稿を仕上げるのに必要な時間は1時間半から2時間。複雑なものとなると3時間。
早朝から深夜までデスクに張り付いて作業しても、1日5~6台分の原稿しか書けない日もある。今年は、その新車がやけに多い。
そういうことから逆算してみると、4月2日の段階では 「4月28日搬入」 というスケジュールに危険信号が灯った。
当日の昼休み、携帯電話を握り締めて、桜の見える運河沿いまで歩いた。
スケジュールの再調整を、発売元の担当者と詰める必要が出てきたからだ。
大事な電話を、運河を眺めながらかけるということに、特に意味があったわけではない。
足が自然に今までとは違った景色を求めて動き出すのに 「心」 が従ったまでだ。
搬入を少し後ろに遅らせても、配本日を変えない余地は残っているのかどうか。
配本日がずれるとなると、それはいったいいつになるのか。
それを発売元と最終的に詰めなければならない。
とにかく、この4月2日という日は、配本日を調整するために残された最後の日だったのだ。
この日に配本予定日が確定され、それが決まれば、もう落とせない。
仕上がらなかった部分は割愛し、大幅にページを減らしてでも、とにかく決められた期日に間に合わせなくてはならない。
電話での打ち合わせで、どういう答が出るのか。
胃がキリキリ痛む思いがした。
運河にこぼれる桜の花を見つめながら、発売元のブッキングさんに電話を入れた。
「4月28日納品の予定を、あと2日だけ延ばして30日になりませんかね?」
返事は、「難しい」 という。
28日のスケジューリングなら5月1日売りも可能だが、2日ずれると、次の配本日は5月の中旬以降になるとも。
いったん電話を切った。
目の前では、春爛漫を思わせる青空が広がっているというのに、それが真っ暗に見えた。
どうするか…
ここが 「切所」 だと思った。
印刷工程をつめるしかなかった。
続いて、印刷所に電話を入れた。
「なんとか、あと2日ほど印刷工程を詰められないものだろうか」
すがるような気持ちで印刷所の担当者に尋ねてみると、
「これ以上は無理ですよ」
という暗い声。
初稿校了を提案してみた。
校正紙に赤字 (修正) を一回入れただけで製本に回す。
つまり、赤字入れが正確に反映されたかどうかを確認する機会のないまま本ができあがる。
しかし、それだと赤字部分の修正が不完全な場合、印刷所に責任が回る。
印刷所としては、そういう事態は避けたい。
もちろん、できれば、こちらも避けたい。
いろいろと話し合った。
ラチがあかないと思った瞬間、
「分かりました。一緒に腹をくくってやりましょう」
打って変わったような、担当者の声が明るい声が返ってきた。
最近聞いた言葉の中でも、これはもっともうれしい言葉だった。
しかも、担当者は、
「腹をくくってやります」 ではなく、
「一緒にやりましょう」
と、私の肩にも腕を回して、スクラムを組んでくれたのだ。
印刷所担当者も、土日返上、連日徹夜覚悟で現場に協力させる腹をくくったのだろう。
そうとなれば、こちらも、夜になっても寝てなどはいられない。
「Z旗 (戦闘旗) は掲げられたな」
ふと、そんな古い言葉が頭に浮かんだ。
毎年、桜の花が咲いて、それが散るまでの期間は、胃がキリキリと悲鳴をあげる日々が続く。
とはいっても、それはあくまでも比喩で、実際に胃が痛んだりすることはない。
頑丈な…というか、鈍感な胃袋を持っているおかげで、14年間耐え忍ぶことができている。
▼ 2008ガイド
発行 自動車週報社 /発売 ブッキング

責了校正とか、分野が少し違いますが同じような仕事しています。
間に合ってよかった、よかった。
本当に、発売タイミングって大事ですよね。
こちらも、せっかく仕入れた最新情報が遅れて発信してしまうことにやきもきしていました。
頑張ってくれた印刷所には感謝です。
明日は土曜日。
まだキャンプに行くわけではないんですが、久しぶりにキャンピングカーに乗って、近所を走ってみるつもりです。