2007年06月06日
エスカルゴ号の話
今、日本のキャンピングカーの歴史を調べている。
この前、このブログでそのことを書いたら、さっそく、国産キャンピングカーの1号車といわれるエスカルゴ号の資料をお貸しくださる方が現れた。
エスカルゴ号は、1958年(昭和33年)に、洋画家の桐野江節雄氏が、マツダのオート3輪を改造して製作したキャンピングカー。
桐野江氏は、13歳年下の相棒である神保五生氏を伴って、絵の題材を求め、このクルマでアメリカ、メキシコ、ヨーロッパを回り、その見聞を 『世界は俺の庭だ』 という著作として残した。
なんと、その本そのものを借りることができた!

奥付を見ると、昭和40年(1965年)8月8日の発行。
桐野江氏が帰国して、2年後ぐらいに書かれた本であることが分かる。
定価は390円。
今アマゾンの古書を検索すると、11,800円の価格が付いている。
まさに“お宝”をお借りしたことになる。
さっそく手にとって読み始めた。
これが、もう面白いのなんの!
ニューヨーク五番街を走行中、大渋滞のなかで、にわかに尿意を催した桐野江氏。
しかし、慣れない道を運転中なので、トイレに行く余裕がない。
ついに、我慢にも限界が…
わずかにドアを開け、そこから道路に向かって、シャー…
もちろん、マナーに厳しいニューヨークで、それを警官が見逃すはずがない。
ピッピッピ!
「そこの東洋人止まれ!」
覚悟を決めて、窓から首を出した桐野江氏に、その警官は厳しい表情で、
「ラジエーターが壊れているぞ。水が漏れている。気をつけて行けよ」
「あ、分かりました、サンキュー」
その後の記述がふるっている。
「エスカルゴ号は空冷なので、ラジエーターなど最初から付いていないのだ。
オート3輪といういうものを知らないアメリカ人の無知さと優しさに助けられた」
この本で、だいぶエスカルゴ号の様子が分かってきた。
ベースはマツダの58年型2トン車で、1500cc、43馬力。
前回のブログでT2000ではないか、とうっかり書いたが、どうやらその1代前のモデルのようだ。
このオート3輪の荷台に、小さな箱に小分けにして、炊事用具、修理用工具とパーツ一式、着替え、油絵の具、キャンバスなどを収納する。
その上に板を敷き、そこが寝室&居間。

もちろん、シンクのたぐいもトイレもない。
サンフランシスコに着いた最初の晩は、町の駐車場で寝た。
最初の晩から、困ったことに気がついたという。
「はて、トイレはどうしよう?」
駐車場にはトイレもなかった。
すかさずひらめいたのは、コカコーラの瓶。
以来、緊急用トイレとして、コカコーラの大型ボトルを使うことになったという。
これが、国産キャンピングカーの最初の“ポータブルトイレ”ということになるのだろう。
食事はほとんど自炊だったようだ。
炊事用具として、持ち込んだ物のリストには、
2連式のガソリンストーブ、2リットル入りポリエチレン水筒2本、大・中・小三つの鍋。シナ鍋、フライパン、やかん、庖丁、まな板などという記述が見える。
ほかに、洗濯用のポリエチレンの角箱。
スーツ、下着、和服。
そうとう大がかりな準備だ。
さらに、修理用パーツとして、クラッチディスク、ブレーキシュー、ライニング、ピストン、バルブなども用意していったというから、かなりの決意で乗り込んだ様子が伝わってくる。
それに、700本の油絵の具、キャンバス、紙、筆。
ゴルフクラブ8本、釣竿などという記述もあるので、いったい車内でどんなふうに体を横たえていたのやら。
収納術に関しては、学ぶところがいっぱいありそうだ。
オート3輪で海外を回ると言ったとき、国内のお偉いさんのなかには、
「そんな貧弱な乗り物で海外に出るなど、国辱ものだ」
と怒った人もいたという。
しかし、実際にアメリカを走るとモテモテ。
駐車場に止めるごとに、
「これは何ていう乗り物だ?」
と黒山の人だかりとなった。
「へーい! YOUのクルマは、タイヤを1本落っことしているぜ」
とジョークをかまし、ニコニコ顔で、追い抜いていくトラックドライバーがいる。
あるところでは、パトカーがサイレンを鳴らしながら、追いかけてくる。
「スピード違反をするほど、スピードの出るクルマではないんだがなぁ…」
と不安にかられながら、クルマを止めると、
「俺は、3ヶ月前、ヨコハマにいたぜ」
たったそれだけを告げるために、警官はエスカルゴ号を止めさせた。
とにかく、楽しい本だ。
今、ようやくアメリカのパートを読み終えたところだ。
これから、メキシコ編。
この先、どういう展開になるのやら。
面白くてやめられない。
関連記事 「エスカルゴ号2」
この前、このブログでそのことを書いたら、さっそく、国産キャンピングカーの1号車といわれるエスカルゴ号の資料をお貸しくださる方が現れた。
エスカルゴ号は、1958年(昭和33年)に、洋画家の桐野江節雄氏が、マツダのオート3輪を改造して製作したキャンピングカー。
桐野江氏は、13歳年下の相棒である神保五生氏を伴って、絵の題材を求め、このクルマでアメリカ、メキシコ、ヨーロッパを回り、その見聞を 『世界は俺の庭だ』 という著作として残した。
なんと、その本そのものを借りることができた!

奥付を見ると、昭和40年(1965年)8月8日の発行。
桐野江氏が帰国して、2年後ぐらいに書かれた本であることが分かる。
定価は390円。
今アマゾンの古書を検索すると、11,800円の価格が付いている。
まさに“お宝”をお借りしたことになる。
さっそく手にとって読み始めた。
これが、もう面白いのなんの!
ニューヨーク五番街を走行中、大渋滞のなかで、にわかに尿意を催した桐野江氏。
しかし、慣れない道を運転中なので、トイレに行く余裕がない。
ついに、我慢にも限界が…
わずかにドアを開け、そこから道路に向かって、シャー…
もちろん、マナーに厳しいニューヨークで、それを警官が見逃すはずがない。
ピッピッピ!
「そこの東洋人止まれ!」
覚悟を決めて、窓から首を出した桐野江氏に、その警官は厳しい表情で、
「ラジエーターが壊れているぞ。水が漏れている。気をつけて行けよ」
「あ、分かりました、サンキュー」
その後の記述がふるっている。
「エスカルゴ号は空冷なので、ラジエーターなど最初から付いていないのだ。
オート3輪といういうものを知らないアメリカ人の無知さと優しさに助けられた」
この本で、だいぶエスカルゴ号の様子が分かってきた。
ベースはマツダの58年型2トン車で、1500cc、43馬力。
前回のブログでT2000ではないか、とうっかり書いたが、どうやらその1代前のモデルのようだ。
このオート3輪の荷台に、小さな箱に小分けにして、炊事用具、修理用工具とパーツ一式、着替え、油絵の具、キャンバスなどを収納する。
その上に板を敷き、そこが寝室&居間。

もちろん、シンクのたぐいもトイレもない。
サンフランシスコに着いた最初の晩は、町の駐車場で寝た。
最初の晩から、困ったことに気がついたという。
「はて、トイレはどうしよう?」
駐車場にはトイレもなかった。
すかさずひらめいたのは、コカコーラの瓶。
以来、緊急用トイレとして、コカコーラの大型ボトルを使うことになったという。
これが、国産キャンピングカーの最初の“ポータブルトイレ”ということになるのだろう。
食事はほとんど自炊だったようだ。
炊事用具として、持ち込んだ物のリストには、
2連式のガソリンストーブ、2リットル入りポリエチレン水筒2本、大・中・小三つの鍋。シナ鍋、フライパン、やかん、庖丁、まな板などという記述が見える。
ほかに、洗濯用のポリエチレンの角箱。
スーツ、下着、和服。
そうとう大がかりな準備だ。
さらに、修理用パーツとして、クラッチディスク、ブレーキシュー、ライニング、ピストン、バルブなども用意していったというから、かなりの決意で乗り込んだ様子が伝わってくる。
それに、700本の油絵の具、キャンバス、紙、筆。
ゴルフクラブ8本、釣竿などという記述もあるので、いったい車内でどんなふうに体を横たえていたのやら。
収納術に関しては、学ぶところがいっぱいありそうだ。
オート3輪で海外を回ると言ったとき、国内のお偉いさんのなかには、
「そんな貧弱な乗り物で海外に出るなど、国辱ものだ」
と怒った人もいたという。
しかし、実際にアメリカを走るとモテモテ。
駐車場に止めるごとに、
「これは何ていう乗り物だ?」
と黒山の人だかりとなった。
「へーい! YOUのクルマは、タイヤを1本落っことしているぜ」
とジョークをかまし、ニコニコ顔で、追い抜いていくトラックドライバーがいる。
あるところでは、パトカーがサイレンを鳴らしながら、追いかけてくる。
「スピード違反をするほど、スピードの出るクルマではないんだがなぁ…」
と不安にかられながら、クルマを止めると、
「俺は、3ヶ月前、ヨコハマにいたぜ」
たったそれだけを告げるために、警官はエスカルゴ号を止めさせた。
とにかく、楽しい本だ。
今、ようやくアメリカのパートを読み終えたところだ。
これから、メキシコ編。
この先、どういう展開になるのやら。
面白くてやめられない。
関連記事 「エスカルゴ号2」
海外ではこのサイズの3輪車は珍しいです。でも、オート3輪は構造がシンプルで空冷エンジン等、何かあっても修理しやすいのも当時キャンピングカーとしては(まして海外では)理にかなっていますね。
この当時の国産で荷台の大きさが一番大きかったのではないでしょうか!?エンジンの搭載位置の関係もあり荷台はフラットにもなっているのもキャンピングカーに適していたのではないでしょうか。
85度ぐらいでお湯が沸騰するようなメキシコの高地に行ったときも、周りの乗用車がみなエンコしてしまうような状況なのに、空冷のエスカルゴ号はまったく心配なかった…などという記述も出てきました。
この本、とても痛快ですよ!
先ほど、アマゾンで注文してしまいました。
キャラバン中は、うちの車に常備しておくことにします。
とても高かったのではないですか?
でも、お仲間ができてうれしいです。
今度のラリーでお会いしたときは、ぜひ感想を語り合いましょう。
ビンテージ!?ものには弱いです。
来年のラリーが楽しみです。
ふと、気づきました。今までは、ただの「古本」かと。
そうじゃないんですね。その古い物を、いつしみ、味わい、堪能するときに、古い物が「ビンテージ」となるわけですね。
いい言葉をいただきました。