町田の独り言 キャンピングカーのガイド本を編集する町田が語るよもやま話

最近の記事
新ブログのご案内
04/28 17:06
久々の更新です
04/27 19:06
3・11以降
04/12 09:56
人類に残された資源
04/05 10:18
ザ・ウォーカー
04/03 00:53
島尾敏雄・贋学生
04/02 03:45
日本人は変わるか
03/31 01:36
渚にて
03/26 02:03
テレビは終わった
03/23 00:23
明かりの果ての闇
03/21 08:05
東電を怒る父さん
03/18 17:00
深い言葉
03/16 09:53
何かが変わった
03/15 00:06
災害時のキャンカー
03/13 16:18
大地震
03/12 13:16
ジュリアンオピー
03/11 02:35
親孝行ビジネス
03/08 20:02
OMCの北斗
03/07 00:18
アレクサンドリア
03/05 15:49
AtoZのバンビ
03/03 20:36
かるキャン
03/02 18:39
ハーレーの魔力
02/28 21:59
パークウェイ
02/23 18:59
CG880
02/20 13:11
忙しいぞぉ!
02/18 22:01
都市型キャンプ場
02/09 23:55
ファビュラス日本
02/07 19:32
老人の孤独
02/06 20:36
「都会」 の匂い
02/05 01:53
エジプトでは何が?
02/04 15:44
同人雑誌仲間
02/03 00:20
自己啓発ビジネス
02/01 02:10
ノスタルジー
01/30 05:23
夫婦の会話の危機
01/28 23:58
その一服は必要か
01/24 23:40
荒野の炎
01/23 19:43
山口冨士夫の精神
01/22 03:11
焚き火で育つ感性
01/20 19:55
キャンカー1人旅
01/19 01:37
車中泊の社会実験
01/17 15:40
個人の時代
01/16 11:50
細くなるネクタイ
01/13 20:32
映画アバター
01/12 20:07
若者の考える商売
01/11 14:36
パリッシュの絵画
01/09 04:00
300万アクセス
01/08 12:15
不思議な青空
01/07 21:04
TV・新聞の凋落
01/06 19:44
中国ルネッサンス
01/05 20:19
ベルイマン・沈黙
01/04 21:33
出来事いろいろ
01/03 02:43
謹賀新年
01/01 00:48
オールドマン
12/30 18:53
好奇心の力
12/29 14:28
「孤独死」の原因
12/27 20:17
廃墟のある島
12/26 02:48
遠いクリスマス
12/25 01:06
ロビン・フッド
12/24 03:48
地獄の電車
12/23 11:35
バッグス・バニー
12/22 02:59
正義の話をしよう
12/19 23:46
空気人形
12/18 13:10
ジジイ同士の酒
12/17 04:32
世界ゲーム革命
12/14 02:47
ハイマー懇親会
12/13 16:11
ガールズキャンプ
12/12 23:48
イタリアをめざせ
12/10 15:15
外来種の驚異 Ⅱ
12/09 00:41
外来種の脅威とは
12/08 20:46
Kポップの台頭
12/07 01:19
うつろひ
12/06 01:21
海老蔵さんの悲劇
12/05 01:07
追悼ジョンレノン
12/03 04:52
「個性化」のワナ
11/30 04:13
戦うブログ
11/29 04:09
子供の自然体験
11/28 04:50
RV好きの芸能人
11/26 01:01
胃の中にヘビ
11/25 16:12
消えた秋
11/22 14:14
歌謡ブルースの謎
11/20 04:29
おひとりさま時代
11/19 00:33
3行で総てを語る
11/18 00:15
塔の形而上学
11/17 02:04
裕次郎スナック
11/15 23:10
自然は子供を養う
11/12 20:28
おれ、ねこ
11/10 01:19
NHK車中泊報道
11/09 17:17
お台場パラダイス
11/08 20:34
伝える力
11/05 00:12
お台場ショー迫る
11/04 02:02
昔は戻らない
11/03 02:11
電子タバコ
11/02 00:04
一般国道の不思議
10/29 18:25
酒場放浪記
10/26 22:25
名古屋RVショー
10/25 19:25
ハイマーカー322
10/21 12:31
猫会議
10/21 00:05
飽きるという知恵
10/20 01:28
ロボット兵器
10/19 02:52
最近のコメント
突然の書き込み失礼…
最近の流行 05/12 00:01
はじめまして~文…
すまそ 05/08 16:44
>TJさん、ようこそ…
町田 04/28 13:47
>TJさん、ようこそ…
町田 04/28 12:06
便利+楽=快適、これ…
TJ 04/28 10:05
町田さん久しぶり…
motor-home 04/28 06:07
やはり、時代の変化・…
TJ 04/21 02:27
私はこのところ「自然…
磯部 04/12 14:52
>aki さん、よう…
町田 04/12 10:18
何度も投稿ボタンを押…
aki 04/08 10:57
>aki さん、よう…
町田 04/08 09:13
今のVWに乗り換える…
aki 04/07 15:19
>雷さん、ようこそ。…
町田 04/06 15:20
>ミペット@倉庫の肥…
町田 04/06 13:46
>JoeCoolさん…
町田 04/06 11:06
キャンピングカーは、…
雷 04/05 21:37
率直に言うと、研究所…
ミペット@倉庫の肥やし保存中 04/05 20:10
町田さま度々失礼…
JoeCool (in Peanuts) 04/05 12:56
>aki さん、よう…
町田 04/05 11:14
今のこの国の空気、ど…
aki 04/04 10:32
>solocarav…
町田 04/01 11:08
>JoeCool さ…
町田 04/01 10:32
>ムーンライトさん、…
町田 04/01 09:56
>赤い屋根さん、よう…
町田 04/01 08:53
「心に届く言葉」・・…
solocaravan 03/31 23:23
今回のように社会全体…
雷 03/31 23:05
米国では9.11の前…
Jo 03/31 11:21
米国では9.11の前…
JoeCool 03/31 11:19
米国では9.11の前…
JoeCool 03/31 11:05
そうだ、普遍性だ。…
ムーンライト 03/31 09:31
町田さんおはようござ…
赤い屋根 03/31 07:50
>おおきに! さん、…
町田 03/30 15:47
>雷さん、ようこそ。…
町田 03/30 14:57
>雷さん、ようこそ。…
町田 03/30 14:33
町田編集長さん こん…
おおきに! 03/29 08:29
今回の震災では、各局…
雷 03/28 21:22
本作品のリメイクであ…
雷 03/28 21:09
>おおきに! さん、…
町田 03/23 19:54
町田編集長さん こん…
おおきに! 03/23 07:48
>s-_-s さん…
町田 03/23 01:19
>ムーンライトさん、…
町田 03/23 00:46
人間は電気によって闇…
s-_-s 03/22 22:55
追記です。先ほど…
ムーンライト 03/22 14:24
数日前、市内の大型ス…
ムーンライト 03/22 12:24
>ブタイチさん、よう…
町田 03/22 03:09
お久しぶりです。町田…
ブタイチ 03/21 22:54
>鈴木様、ようこそ。…
町田 03/19 23:12
>ムーンライトさん、…
町田 03/19 22:35
今日、店からはじめて…
デルタリンク宮城 03/19 19:40
この「東電を怒る父さ…
ムーンライト 03/19 11:45
>ゆんたさん、ようこ…
町田 03/19 09:11
言葉に出して誰かに代…
ゆんた 03/19 07:50
>鈴木 様本当に…
町田 03/18 00:00
町田さん、ご心配あり…
デルタリンク宮城 03/17 20:52
>鈴木様コメント…
町田 03/17 16:04
>TOMYさん、よう…
町田 03/17 14:39
町田さんこんにちは。…
デルタリンク宮城 鈴木 03/17 11:32
こんばんは、町田さん…
TOMY 03/16 20:23
世界中に5億人を超え…
フェイスブック 03/15 11:30
>s-_-s さん、…
町田 03/14 00:28
町田さんご無事で何よ…
s-_-s 03/13 22:55
>ムーンライトさん、…
町田 03/12 17:43
町田さん。ご無事でし…
ムーンライト 03/12 16:25
>YAMAさん、よう…
町田 03/12 13:33
シンプルな風景画、い…
Yama 03/11 12:14
>渡部竜生さん、よう…
町田 03/10 02:33
>キャンピングカーと…
渡部竜生 03/09 14:02
>スパンキーさん、よ…
町田 03/08 19:22
いいですね、北斗。久…
スパンキー 03/07 13:52
>マッキー旅人さん、…
町田 03/03 22:45
町田さん、今日は。…
マッキー旅人 03/03 16:23
>ムーンライトさん、…
町田 02/28 22:42
町田さん。アマゾ…
ムーンライト 02/24 10:29
>渡部竜生さん、よう…
町田 02/19 05:42
>小平の福ちゃん様、…
町田 02/19 05:31
>matsumoto…
町田 02/19 05:18
>solocarav…
町田 02/19 05:03
>el さん、ようこ…
町田 02/19 04:50
>旭川の自称美女さん…
町田 02/19 04:14
幕張ではお世話になり…
渡部竜生 02/19 00:58
ご無沙汰しております…
小平の福ちゃん 02/19 00:03
お久しぶりです。ma…
matsumoto 02/14 07:35
ぜひ実現させたいアイ…
solocaravan 02/11 20:59
だいぶ経ってからのコ…
旭川の自称美女 02/11 11:51
町田さん、こんにちは…
el (エル) 02/11 11:11
>TOMY さん、よ…
町田 02/10 00:21
こんばんは、町田さん…
TOMY 02/09 21:45
>ムーンライトさん、…
町田 02/09 15:38
>ゆんた さん、よう…
町田 02/09 14:48
>Joe Cool …
町田 02/09 13:46
>磯部さん、ようこそ…
町田 02/09 11:54
「ゆんたさん」の文章…
ムーンライト 02/09 11:46
>TJさん、ようこそ…
町田 02/09 11:22
色々なことを考えまし…
ゆんた 02/09 06:36
同居していて5年前に…
JoeCool 02/08 16:01
最初に、このブログを…
磯部 02/08 05:14
写真で見る限り「FA…
TJ 02/07 21:20
>aki さん、よう…
町田 02/03 00:58
人生にドーピングはな…
aki 02/01 10:07
最近のトラックバック
ザ・バンド
12/11 09:46
鉄道の魅力、立体的に
09/10 07:38
関越高速道・・・寄居…
07/24 09:18
女性目線で見たキャン…
03/05 10:18
かるキャン 画期的な…
02/26 06:14
「くるま旅くらし読本…
02/06 10:22
言葉にならない
01/13 20:10
電動ポルシェ!?その…
10/31 09:50
路地裏
08/18 09:49
「すべての男は消耗品…
08/17 20:24
ガマの油
06/15 21:53
「ガマの油 」ちょっ…
06/15 07:58
52nd
04/25 21:52
007 カジノ・ロワ…
02/02 01:18
関西(大阪・京都・神…
01/30 05:21
【ネットができる宿|…
01/05 19:52
4輪&2輪
09/22 16:41
『秘伝 大学受験の国…
09/19 03:09
LPガスボンベ
07/26 11:37
ロス
05/28 22:39
テスト
05/28 22:36
大阪キャバクラnig…
04/26 20:37
キャバクラ/ニューク…
04/09 17:32
キャバクラ嬢ご用達し…
03/14 14:32
気になるキャンピング…
03/08 07:08
キャバクラ求人-Ag…
02/23 14:41
キャバクラ情報誌クラ…
02/22 19:14
No6 LPガスの充…
02/14 14:47
大阪キャバクラブログ
01/20 21:35
御当地!プルバック・…
12/20 00:53
カップヌードル
08/09 01:54
【キャンピングカー】…
08/05 16:23
【キャンピングカー】…
08/05 16:20
村松友視の「淳之介流…
08/04 11:11
荒井千暁著『職場はな…
06/29 22:35
元ちとせ/千の夜と千…
04/15 01:55
軽自動車エッセのうる…
03/26 08:21
カーナビの渋滞回避?…
03/10 20:07
車中泊なら虫の心配い…
03/07 18:35
こんなキャンピングカ…
03/07 03:56
キャンピング&RVシ…
03/02 01:17
キャンピング&RVシ…
02/23 18:45
キャンピング&RVシ…
02/18 06:43
キャンピング&RVシ…
02/17 00:23
ZECC(ゼック) …
02/15 23:27
トイレどうする?
02/15 10:25
キャンピング&RVシ…
02/10 21:46
新古車
02/04 17:19
軽自動車キャンピング…
01/25 13:10
ブレードランナー
01/14 12:03

湾岸道路のタンゴ

 忘れられないCMというのがある。
 ブリヂストンのレグノのCMで、林の中を、赤と青の2台のフェラーリが走っているCMは、25年という歳月を超えて、今だに忘れられないCMのひとつになっている。

林の中のフェラーリ001

 あんな走りは、それまで見たことがなかった。
 「踊っている」 のだ。
 ゆっくりとしたスローモーション映像で撮られた2台のフェラーリは、林の中の、見物人のいない緑のフロアの上を、手と手をたずさえながら、二人だけのダンスを踊っていた。

 バックに流れる曲が、また極上だった。
 ロバータ・フラックとピーボ・ブライソンの 「愛のセレブレーション (Tonight I Celebrate My Love) 」 。

林の中のフェラーリ002

 スーパーカーの “疾走感” とはまったくそぐわないスローバラードなのに、それこそフェラーリのためにつくられたテーマミュージックのようだった。
 その曲に合わせてステップを踏む2台のフェラーリ・デイトナは、森の中で無邪気にたわむれる恋人同士そのものだった。

 そのCMに触発されて、昔書いた小説がある。
 トヨタのPR誌を編集していた時代のもので、当時、新型クレスタの 「フォトストーリー」 をつくることになって、急遽でっち上げたものだ。

 フェラーリではなく、クレスタが主役になるというところが、ちと悲しい。
 でも、これは雑誌の性格上やむを得ないことで、頭の中では、 “ダンスを踊る” フェラーリの姿を思い浮かべつつ書いた。

林の中のフェラーリ003

 昔、このブログで、こそっと登場させたことがある。
 そのときは車名を変え、時代設定も現代にして、多少小説的な粉飾をつけ加えてみたが、今回はオリジナルに戻した。

 出来ばえは、とても、レグノのCMの域には達していない。
 しかし、自分でそれを読み返してみると、いかにあのCMに心を奪われていたか、ということがよく分かる。
 それほど、あのCMは、当時の自分を魅了していたのだ。 


 短編小説
「湾岸道路でラスト・タンゴを」


湾岸道路夜景001

 「4ドアセダンです。トヨタのクレスタ」
 と課長に言ったとき、
 「ほぉー」
 と、予想どおり、意外なものを見たような声と視線が返ってきた。

 「ジープ型のでっかいクルマはどうしたの?」
 「売って、今度のクルマを買ったんです」
 「君もいよいよ旦那さんを見つけて、子供でもつくる気になったのかね。あのでっかいジープは、お嬢さんには似合わなかったもんな」
 「そうなんです。いい彼氏が見つかったので」

 4ドア車……結婚……家庭、という図式しか頭に描けない課長の粗雑さにうんざりしながら、私は軽く受け流した。

 「僕に紹介するんだよ。君ぐらいのキャリアを積んだ女なら、男を見抜く力もあるとは思うが、念のために、僕が彼氏の品定めをしてあげよう」

 とは言っても、私の話を信じている顔ではない。
 さぐりを入れるような、ずるい目つきだ。
 いつか、忘年会の帰り、「今晩あいているかい?」
 と、ささやきかけてきたときの目だ。

 その視線から逃れるように、私は柱の時計に目をやる。
 6時10分過ぎ。

 「買ったばかりのクルマをテストしたいので、今日はこれで帰らせてもらいます」
 「いいとも。今度は僕をテストしてごらん」
 と、課長の好色そうな小声が返ってきた。

 なんというジョーク!
 と、私はこみあげてくる怒りを、そっと押し戻して、
 「いいわ、課長」
 と、ウィンクして席を立った。

林の中のフェラーリ003
 
 34歳になっても結婚していない女の立場はつらい。
 上司からは、奔放に遊びまわっている女に見られるし、若い男や女の子からは、不倫の愛人役をやっていると決めつけられる。
 いちいち弁解するのも面倒くさいので、放っておくから、あらぬ憶測だけが一人歩きする。
 だんだんクルマだけが、 “友だち” になっていく。  
 
 夕暮れの街。
 会社の駐車場の前から渋滞が始まっていた。

 昼間の仕事の余韻と、退社後の解放感が、街にあわただしげな活気を呼んでいる。
 以前乗っていたランクル80で、街を流していると、「女だてらに…」 という、好奇心をはらんだ男たちの目にさらされたものだ。
 それがなくなっただけでも、今度のクルマ選びは大正解。

 年をとるということは、人目をうるさく感じるようになることかもしれない。

 私は、バッグから、会社では吸わない煙草を取り出して火をつけた。
 煙を深く吸い込むと、まだ馴染まないこのクルマの香りも一緒に鼻腔に広がった。
 行儀よく並んだメーターパネルの上を、吐き出した煙が流れていく。

 いい走りだ。
 やはり6気筒はシルキーだ。

 どこに行くというあてもなく、交通の流れに身を任せる。
 街を流していれば、何か面白いことに出遭うという期待はもうないけれど、それでも、走っていれば、誰もいない自分の部屋でうずくまっているときの淋しさをまぎらわすことはできる。

夜のビル0026

 ラジオがテナーサックスの泣き節を流しているので、チャンネルを変える。

 バースの満塁5号を絶叫するアナウンサーの声が耳に飛び込んできた。
 かっ飛ばせ阪神!
 センチな音楽は街に似合わない。

 左折車線から遠慮がちに、しかしスマートに割り込んできたクルマに気をとられて、私は試合の得点経過を聞き逃した。
 ええい! バカ…
 と、わざと下品な感じで舌打ちする。

 私の前に割り込んだ、ブルーの52年型セリカLBが、深海の小魚たちを睥睨 (へいげい) するサメのように、宵闇の街に消えていこうとしている。

 「まさか!」
 一瞬、私は息を呑んだ。

 流れの早い交差点の中を、ブルーのLBのテールランプが右に大きく切れていく。
 私は、アクセルを踏み込み、信号が変りかける前に、急いで交差点に飛び込んだ。
 LBは、すでに、3台先を走っている。

 何をあわてているんだ、と私は自分に問いかけた。
 ブルー、52年型セリカ、LB…

 単なる偶然の一致かもしれない。
 そう思っても、ステアリングを握る手がふるえている。

 私は、空いている右車線を飛ばして、なんとか次の信号で、セリカLBの隣に並んだ。

 ネオンの逆光になって、ドライバーの顔がよく見えない。
 私は、首を必死にひねって、自分の顔を相手に向けた。
 気づいたら、合図をよこして。

 …とは思ってみたが、10年の歳月は、相手の記憶から私の顔を消し去っているかもしれなかった。

 信号が無残にも青に変り、LBは、何事もなかったかのように、スルスルとスタートしていった。
 私は、またあわててその後を追った。

 10年の間、同じクルマを乗りとおすなんて。

 でも、あの男はやっぱりそのクルマが好きだった。

 ブルーのセリカは、繁華街を離れた、淋しい倉庫街を走っていく。
 もうすでに、私がずっと尾行していることを知っているはずである。付けやすいように、わざと速度を落としているからだ。

夜景0023

 ネオンのとぎれた路地裏に入ると、セリカは静かに停まった。
 ドアが開き、男がゆっくりと立ち上がった。

 暗がりで、顔がよく見えない。
 こっちに向かって歩いてくる。
 私は、後を付けて来たことを後悔し、ステアリングの陰に顔をひそめた。

 コンコンと、ウィンドーガラスを叩く音が聞こえた。
 窓を開けると、昔と変らない、あの男の目が笑っていた。

 「久しぶりだな」
 男は短く言った。
 ぶっきらぼうで、さり気なく、しかし、とてつもなく温かい声だった。

 「トシ…」
 と、私は、かつて何度も舌の上で転がした男の名を呼んだ。

 「ずいぶん運転がうまくなったな。クルマも素敵なクルマだ」
 男は、私のクレスタをまぶしいものを眺めるように見つめた。
 私は、何と答えたらいいのか分からなかった。

 10年の歳月は、とっさに対応できるようなどんな言葉も、遠くへ押し流してしまっていた。
 「バースが打ったの。逆転したと思ったから、一瞬喜んだのだけれど、そうしたら突然トシが、急に…」
 
 いったい何を言っているんだろう。
 これでは意味が相手に通じるはずもない。

 そんな私を見て、男は困ったようにニヤリと笑った。
 ……昔と変らんな。
 そんなふうに見ている目である。

 「ちょうどいい店がある。食事がまだなら一緒にしよう」
 と、男は言った。
 「いいわ」
 と、私は目で合図した。

レストランのネオン
 
 「今でもときどき、君の夢を見る」

 男は、テーブルにひじをつき、グラスを宙に浮かしたまま、ボソッと言った。
 薬指に、結婚指輪が光っていた。
 私は、男が結婚したというウワサを聞いた日の、ひとり荒れた夜を思い出した。

 そのときも、こんなふうに、淡いライトがテーブルクロスを赤く染めるタンゴの流れる店だった。
 私は同僚の女たちをなじり、男たちを嘲笑し、見知らぬ客とチークを踊った。
 20代最後の夜だった。

 「どうして私を待っていてくれなかったの」
 言うつもりもなかったのに、ついなじる口調になった。

 「待っていれば、俺と一緒になるつもりでいたのか?」
 男は、かすかに皮肉っぽく唇を歪めた。

 「そのつもりだったわ。最後はあなたのもとに戻るつもりでいたわ」
 「今さら言っても遅いよ」
 男はぽつりと言って、目を伏せた。

ダンス0041
 
 バンドネオンの低い響きに、悩ましげなヴァイオリンの音がからみついて流れていた。

 「私が、あのとき浮気をしたから、私を嫌いになったというわけ?」
 「そういうことじゃないんだよ」
 「ではなぜ結婚なんかしちゃったのよ」
 「仕方がなかったんだ」
 「分からないわ、そういうの」

 それっきり、男は黙りこくった。
 私は、もう男が、私には分からない別の世界を持っていることを感じた。
 会ったことがよかったのか悪かったのか、私には分からなかった。

夜のテラス0023

 それから、私たちは、沈黙が来ないように、罪のない世間話をして別れた。

 別れしなに、男が何を言おうとしたのか、私には分かっていた。

 私は機先を制して、言った。
 「またどこかで、偶然会ったら…」

 男は、それだけで察したのか、軽くうなづいて、黙って笑った。

 「待って」

 私は、クルマに乗り込もうとする男の背中に向かって、叫んだ。

 「ハイウェイでも、思いっきりとばして別れない? 途中でお互いを見失ったら、それで “おやすみなさい” 」

湾岸道路夜景001

 広大な埋め立て地を、まっすぐに貫く3車線の両側で、路肩のライトポールが、ミラーボールの光のように流れていく。

 装甲の厚そうな外車、カラフルなスポーツカーが洒落のめして滑走していく。
 ブルーの52年型セリカLBが、踊るようなフットワークで、その中を分け入っていく。

 私は、セリカに寄り添うように、クレスタのアクセルを踏む右足に、そっと力を込める。
 それに合わせ、隣りの車線に入った男のセリカが、私の手を取るように、すっと後ろに回り込む。

 もし、ほかのクルマが私たちを見たら、きっと呼吸ぴったりのダンスを踊っているように見えるだろう。

 開けた窓から、海の匂いを強く含んだ風が流れ込み、私の髪を乱していく。


 ▼ レグノのCMに使われた 「愛のセレブレーション」




コラム&エッセイ | 投稿者 町田編集長 01:14 | コメント(4)| トラックバック(0)
トラックバック
こちらの記事へのトラックバックは下のURLをコピーして行ってください。
コメント
クルマが登場するショートストーリー、若い頃は好んで読んでいました。読んでるだけでは飽き足らず、自分でも書いてみようと思い立ち、されど自分自身は“絵になる”クルマには縁がなく...趣味のカヌーを絡めて短文を書き始めたのが20代半ばの頃でした。特に発表するつもりもなく、でも誰かに読んでもらいたい気持ちもあって、カヌーのディストリビューターが発行するオーナーズクラブの機関紙に送ったものが採用され、連載のようになって...今のホームページを開設するに至りました。
上手下手はともかく、文章を綴るということ、そして少なからず誰かが読んで下さるってことは本当に楽しいですね。
投稿者 aki 2010/02/22 11:21
>aki さん、ようこそ。
クルマの絡むショートストーリーといえば、昔は、五木寛之さんなどがクルマをテーマにした短編集などを出していましたね。
片岡義男さんなども、その系統の短編が多いと思います。
でも、私が一番好きなのは、東理夫さんの 『あの車に逢いたい』 でした。
アメリカの荒野や田舎町を舞台にして、何も起こらない話が淡々と続いていく、あの何ともいえぬ雰囲気が好きでした。

aki さんのカヌーエッセイも拝読しました。
素敵なエッセイを書かれているんですね。
カヌーと家族の関係を、とても分かりやすく、静かで、深い視線で見つめていらっしゃることが分かりました。

カヌーの世界は不案内でよく分からないのですが、こういう文章に満ちた世界が開けているとしたら、とても素敵な世界であるように思いました。
 
投稿者 町田 2010/02/23 03:19
クルマやアウトドアに限らず、自分は知らないけれど様々な世界に素敵な世界が広がっているんでしょうね。
どうですか?町田さん、キャンピングカー小説ってのは書かれませんか?スタインベックの「チャーリーとの旅」ぐらいしか読んだことないのですが...今日の「奥様からみたRV」ともカブる話ですが、小説の主人公になるようなキャンピングカーがあるといいのになぁって(“男のロマン”的には...笑)
投稿者 aki 2010/02/23 14:25
>aki さん、ようこそ。
スタインベックの 『チャーリーとの旅』 はキャンピングカー小説の古典ですね。車外を歩く人の足音を聞きながら、思わず銃を握り締めるなんていう描写は、いかにもアメリカ的でした。

人との温かい触れ合いもありながら、時にアメリカに絶望していたりして、小説というより、あれはアメリカ素描のようなものなのかもしれませんね。

あのようなレベルのものまで行ってはじめて 「キャンピングカー小説」 といえるような気がして、ちょっと私には大任という感じもします。

…が、せっかくのお言葉なので、いつかは、背伸びしながらも、チャレンジしてみたいとは思っています。

そのときは、いろいろご指導ください。
 
投稿者 町田 2010/02/24 02:38
名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:
<<  2010年 2月  >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            
ホビダス[趣味の総合サイト]